コロナ後遺症解明へ…横浜市大、認知障害病態の一端明らかに
横浜市立大学の高橋琢哉教授らの研究チームは、新型コロナウイルス感染症の後遺症の一つで、脳にもやがかかったように感じる認知障害の病態の一端を初めて明らかにした。患者は、神経細胞同士の間の情報伝達の要である「AMPA受容体」が脳全体で増加していた。同受容体密度が認知機能低下に関係している可能性がある。今後、治療薬や診断方法の開発に取り組む。
“ブレインフォグ”と呼ばれるコロナ後遺症の認知障害は、ひどい場合はなかなか仕事に復帰できない、深刻な問題だ。高橋教授は精神・神経疾患での研究を踏まえ、患者の脳で学習や記憶に関係するAMPA受容体の発現バランスが破綻していると予想した。
就学や就業に支障が出ているブレインフォグ患者30人を対象に、脳内のAMPA受容体の変化を調べた。同受容体を可視化する新しいPETイメージング(陽電子放出断層撮影法)技術を用いた。この結果、患者の脳では健常者に比べ同受容体量が広範囲に増加していた。認知機能スコア(RBANS)の項目の一部は同受容体の量が多いほど悪かった。
同受容体の機能を下げる薬は抗てんかん薬として実用化されている。研究チームは、2026年にもブレインフォグ患者に対する薬剤の安全性を確認する特定臨床試験の開始を目指す。患者と健常者の脳AMPA画像は、機械学習で高精度で鑑別でき、診断方法の開発も期待される。
また、同受容体密度は血液中の炎症に関連するたんぱく質量と相関していた。コロナ感染に伴う全身の炎症が原因の可能性があり、今後詳細に研究する。