車は「脱カーナビ」すべき?全国でカーナビのNHK受信料未払いが相次ぐ理由とは
2025年に入り、全国の自治体や警察組織で、公用車に搭載されたカーナビをめぐるNHK受信料の「未払い」が相次いで発覚し、大きな社会問題となっています。たとえば、8月8日には千葉県浦安市では公用車18台で約244万円が発覚、6月6日には愛知県警で捜査車両など47台で約863万円という、決して小さくない金額の未払いが明らかになりました。 【画像でわかる】意外と知らない「Googleマップの渋滞情報の精度が高い理由」 しかし、「ほとんど見る機会のないカーナビのテレビ機能のために、なぜ受信料を支払う義務があるのだろうか?」と思う人も少なくないでしょう。言い方を変えれば、カーナビを設置している以上、NHKとの契約義務が発生するため、カーナビの存在意義に疑問を抱く人もいるのではないでしょうか。
なぜカーナビが受信料の対象に?
カーナビの受信料問題を理解する上で、まず押さえておくべきポイントは、その法的根拠です。NHK受信料の支払い義務は、放送法第64条第1項に定められています。条文には次のように記されています。 「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」 ここで最も重要なキーワードが「受信設備」です。NHKの公式見解によれば、この「受信設備」とは、テレビだけでなく、NHKの放送(地上波や衛星放送)を受信できる機能を持つあらゆる機器を指します。具体的には、テレビチューナー(ワンセグやフルセグ)を内蔵した携帯電話、スマートフォン、パソコン、そしてカーナビも、この「受信設備」に該当するとされています。 なお、多くの人が誤解しがちですが、受信契約の義務は、実際にNHKの番組を「視聴しているか」どうかで判断されるわけではありません。放送法の条文が示す通り、あくまで放送を受信できる機器を「設置しているか」が基準となります。つまり、「カーナビでテレビは全く見ない」という主張は、法律上の契約義務を免れる理由にはなりません。
■契約単位の違い:一般家庭と事業所のケース 一般家庭の場合と事業所の場合は契約単位に違いがあります。 一般家庭の場合、契約単位は世帯単位なので、自宅にテレビがあって契約している場合、カーナビを設置した車が増えたとしても新たに契約する必要はありません。 しかし、事業所の場合は設置場所ごとに契約が必要です。1台のカーナビでNHK契約を結んでいたとしても、他のカーナビ搭載車両やテレビが複数ある場合、その台数分の契約が必要になります。 このルールのため、多くの公用車を保有する自治体や警察では、1台あたりの契約漏れが長期間にわたって積み重なり、結果として数百万円から数千万円という巨額の未払い金につながったのです。 ■自治体の「認識不足」が原因か?全国に広がる公用車未払い問題 先述した通り2025年春頃から、まるで堰を切ったかのように全国の自治体で公用車のカーナビ受信料未払い問題が公表され始めました。 冒頭で紹介した以外でも、8月18日には山口県萩市で約262万円分の公用車のカーナビのNHK受信料未払いが判明。同月12日にも奈良県生駒市で公用車29台のカーナビと公共施設に設置のテレビ5台分のNHK受信料未払い約352万円分が発覚しています。 多くの自治体で一斉に問題が発覚した最大の理由は、多くの担当者が「カーナビのテレビ機能が受信契約の対象であるという認識を持っていなかった」ことにあると言えるでしょう。意図的に支払いを免れようとしたというよりは、長年の慣習の中で、カーナビをテレビと同じ「受信設備」と認識していなかったことが、一種の盲点だったと言えます。