経済・社会

2025.10.13 11:00

米政府閉鎖に伴う人員削減で数千人が解雇──財務省や保健福祉省などの職員

Photo by Kevin Dietsch/Getty Images

Photo by Kevin Dietsch/Getty Images

米国行政管理予算局(Office of Management and Budget、OMB)は、連邦政府職員の最大労組である米国行政府職員連合(American Federation of Government Employees、AFGE、組合員80万人)が提起した訴訟に対する回答として裁判所に提出した文書の中で、8つの政府機関で約4200人に解雇通知を送付したと明らかにした。

OMBによれば、米国財務省(Treasury Department)では約1500人が解雇対象となり、その中には内国歳入庁(Internal Revenue Service、IRS)の約1300人が含まれると、ブルームバーグが報じた。

米国保健福祉省(Department of Health and Human Services、HHS)も大きな打撃を受け、最大1200人が解雇されたとOMBは報告した。

米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention、CDC)では米国時間10月10日、数十人が解雇通知を受け、その中には「疾病探偵」として知られる疫学情報サービス(Epidemic Intelligence Service、EIS)の職員約70人と、週刊疫病死亡率報告(Morbidity and Mortality Weekly Report、MMWR)の刊行スタッフが含まれていたと、ニューヨーク・タイムズが報じた。

米国国土安全保障省(Department of Homeland Security、DHS)は176人に解雇を通知したが、いずれもサイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(Cybersecurity and Infrastructure Security Agency、CISA)の職員だったと、裁判資料をもとにPBSが報じている。

解雇の詳細は米国時間10月10日の遅い時間に公表された。ホワイトハウスの予算責任者ラス・ヴォートがX(旧Twitter)で「RIF(人員削減)が始まった」と発表した直後であり、これを受けてAFGEが直ちに差し止めを求める申立てを裁判所に提出した。

そのほかに解雇があった機関は?

・米国教育省(United States Department of Education):446人

・米国住宅都市開発省(United States Department of Housing and Urban Development):442人

・米国商務省(United States Department of Commerce):315人

・米国エネルギー省(United States Department of Energy):187人

・米国環境保護庁(United States Environmental Protection Agency):20~30人

主な批判

AFGEや他の連邦労組は、OMBには解雇を実施する権限がないと主張している。その根拠の一つとして、政府閉鎖中に新たな支出を発生させることを禁じる歳出超過防止法(Antideficiency Act)を挙げている。人員削減(RIF)には、対象職員への通知発出などの関連業務が伴い、退職手当の支払いの約束も含まれるため、同法に抵触するという主張だ。

今後の注目点

解雇は30~60日間は発効しないと、連邦政府のガイダンスを根拠に『ワシントン・ポスト』が報じた。また、匿名の高官が同紙に、米国時間10月10日に公表されたものに加え、さらなる解雇が見込まれると語っている。

背景

米国連邦政府は、議会が新たな歳出計画で合意に達しなかったため、10月1日に閉鎖に入った。少なくとも上院の次回採決が予定されている米国時間10月14日までは閉鎖が続く見通しだが、政府再開に向けて共和党と民主党が交渉する兆しはない。閉鎖開始の数日前、トランプ政権は各省庁に対し、資金が途切れる機関の特定を求め、大統領ドナルド・トランプの優先事項に合致しない機関は削減対象となると警告していた。

トランプ大統領は米国時間10月10日、自らの政権が閉鎖を利用して「民主党が守りたい人々」を解雇していると記者団に述べたが、政府閉鎖の責任は民主党にあると断言した。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

タグ:

ForbesBrandVoice

| あなたにおすすめの記事

人気記事

Forbes BrandVoice!! とは BrandVoiceは、企業や団体のコンテンツマーケティングを行うForbes JAPANの企画広告です。

2025.09.25 11:00

ネット炎上時代に企業を守る「カイシャの病院」ソルナの挑戦

企業の風評被害リスクを「カイシャの病気」ととらえ、最新技術で治療し再発を防ぐソルナ。

今年7月に新社長に就任した安宅祐樹に、同社に懸ける思いと新たな成長戦略について聞いた。


「どの業種でも起こりえますが、ハウスメーカーのように高額な契約を扱う企業では、ネットの悪評ひとつで億単位の取引が成約直前に破談になることもあります。」

その原因のなかに、購入客が契約直前に社名でネット検索をかけてみたところ、事実とは異なるネガティブなワードや記事が並んでいたからというケースもあるという。

「購入客は『この会社大丈夫かな?』と不安に駆られ、直前でキャンセルになってしまうのです。こうした売り上げの実害以外にも、採用時に就職の口コミサイトの悪評によって、応募者が集まらないというケースも多々あります」

商品・サービスの購入時にSNSやレビューを参考にする人は年々増加。企業名を検索して就職先を決める学生は93.1%(マイナビ調査)にものぼる。

ところが経営者がネット事情に疎い場合は、悪質なレピュテーション(評判)自体に気づかないことも多いと、2025年7月に「カイシャの病院®」を標榜する風評被害対策企業・ソルナの代表取締役に就任した安宅祐樹(写真。以下、安宅)は語る。

ではソルナはどのように企業のレピュテーションを守ってくれるのだろうか。

ネット上の悪評対策 法的対応から目立たせない施策まで

ネット上の誹謗中傷は世界的な課題だが、日本で特に深刻化しやすい背景には、匿名掲示板文化にルーツをもつSNSの「匿名性」があると指摘されている。

総務省の調査によれば、アメリカのX(旧 Twitter)利用者の匿名率が35.7%にとどまるのに対し、日本では75.1%が匿名で利用している。

「突然の売り上げの減少、求職者応募の減少という症状が出ても、経営者に自覚がない場合、対策しようがありません。しかしカイシャの病院である私たちから見れば、例えば『元社員が風評を発生させている』と診断できるのです」

ソルナが展開するサービス「カイシャの病院®」はまず、そうしたネット上の風評被害を治療するコンサルティングを行う。

現在の企業の発症状況を分析、説明し、取りうる手段をコンサルティングしていくのだ。そのうえで具体的にはGoogleなど検索エンジンの表示対策を最新技術で行うほか、求人サイトの悪質な口コミ対策も行うという。

「風評の種類にもよりますが、弁護士と連携して、記事や投稿自体の削除申請のコンサルティングを行う場合もありますし、記事自体が削除できない場合でも、人々の目に触れにくくする対策は取れます」(安宅)

そのうえで風評の発生元にもしっかりとアプローチするのがソルナのやり方だ。

「元社員が悪評を流しているケースや生成AIによって拡散されるデマやフェイクニュースなど、その発生源は多様化しています。私たちはそれらを検知・分析し、根源治療を行うことが役目です」

ソルナ 代表取締役 安宅祐樹
ソルナ 代表取締役 安宅祐樹

履歴書ではわからない応募者の素の顔を知る

風評被害の根源治療の一環としてソルナのもうひとつの看板サービスとなるのが「ネットの履歴書」である。

炎上や風評の“発生源”が元従業員の書き込みに由来するケースが少なくない。通常の履歴書では判別しようのない候補人材の“ネット上の素の顔“を調査することで、採用段階で高リスクの人材を見極め、発生源を生まないことが、根源に働きかける第一歩となる。

「公開情報を起点に裏アカウントを含む関連アカウントを特定し、情報収集できる技術が私たちにはあります。SNS上の暴力的な言動や経歴詐称、リテラシー欠如などを把握して、採用後に炎上やトラブルを引き起こすリスクを事前に把握する材料となります」 

同時に、採用後の社内から生じるリスクにも備える必要がある。ソルナは顧客企業の従業員を対象にSNSリテラシーを高めるeラーニング/研修を提供し、従業員発の炎上リスクの発生を未然に防ぐ体制づくりを支援している。

要するに、採用前は高リスク人材を特定し、採用判断に生かすことでリスクを未然に防ぎ、採用後は社員教育によって炎上を抑止する。この二段構えで“発生源”にアプローチして企業を守るのがソルナだ。

大隈重信の志を継ぎ、社会的意義のあるビジネスを

25年7月に創業者・三澤和則氏が会長に就任するタイミングで、代表取締役を引き継いだ安宅は、どのような人物なのだろうか。

「実家が大隈重信の家系で、祖父母に“世の中のためになることをしなさい”と言われながら育ちました。ただ政治よりも企業が世の中を動かしていると考え、経営者を目指しました」

実際のビジネスを肌で体験するため、大手証券会社の法人営業に飛び込んだ安宅は、多くの経営者たちと接するなかで、次第に中小企業の事業承継にかかわるようになった。 

事業承継の解決策は企業によるM&Aだけではなく、経営力のある人材が引き継ぐことで企業が継続・発展する可能性があることも実感。こうした気づきから安宅は「事業を引き継げる優秀な経営者になろう」と決意し、渡米してMBAを取得。その後は大手コンサルティングファームで経営支援に従事し、2024年には事業承継に悩む企業を支援するため、自ら会社を譲り受け経営していくサーチファンドを立ち上げた。

「百を超える経営者と会いながら、どの企業を引き継ぎたいのかを考えていました」

そんな矢先の昨年出合った、ソルナという企業が彼の心をつかんだ。 

「ソルナを引き継いだ理由のひとつに、風評被害対策市場が年率20%超の成長を遂げているという魅力があります。しかし、それ以上に大きかったのは、“会社の病気”である風評を治療することに大きな社会的意義があると感じたことです。加えて、ソルナは10年連続で増収を達成するなど確かな実績と優れた技術を築いていながら、営業やマーケティングにはまだ大きな伸びしろがあると感じていました。私はこれまで培ってきた営業力や営業戦略立案の経験でその可能性を引き出し、シナジーを生み出せると確信し、この会社を引き継ぐ決意をしたのです」

風評被害対策からブランド強化支援、そして世界へ

安宅がソルナの経営者として取り組むのは、海外とのネットワークを生かした既存サービスの強化と、その先にあるグローバル展開だ。

「検索アルゴリズムは頻繁に変化し、生成AIも進化を続けています。こうした急激な技術変化に対応するためには、日本国内の技術や人材だけでなく、海外の優れた知見や人材を積極的に取り入れることが欠かせません。私は海外とのパイプを生かし、優秀なエンジニアを登用することで、AI時代においても意味のある風評被害対策を提供し続けていきたい。そして将来的には、日本発の信頼あるサービスとして、海外市場にも展開していきたいと考えています」

安宅は将来のソルナ像についてもこう語る。

「予防と治療を並行することで、企業は風評被害を鎮め、本来の健全な状態を取り戻すことができます。私たちが目指すのは、健全な状態を出発点として、さらに企業のブランドを強くしていくことです。そのために、SNS上の情報を活用したマーケティング支援やブランディングのコンサルティングといったサービスも展開し、企業がより前向きに成長できるよう伴走していきたい。そして、この取り組みを日本にとどまらず世界へ広げていきたいと考えています」


ソルナ 

「ネットの履歴書」 サービスの詳細はこちら

Promoted by ソルナ / text by Ryoichi Shimizu / photographs by Shuji Goto / edited by Akio Takashi ro