BLUE ARCHIVE -SONG OF CORAL-   作:Soburero

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2章の先生の動きが不思議とは聞いてましたけど本当に不思議ですねこれ。
何考えてたのさ先生?
未来でも見えてたの先生?


15.重要参考人確保

 シャーレビル、執務室にて。

 俺は先生から話が有ると呼び出され、ここまで来ていた。

 既にセキュリティは最小限になっているらしく、特に受付なども無くすんなり入ることが出来た。

 重要施設の警備をここまで抑えることは愚の骨頂だと思うのだが、それが原因で先生が死んだとしても自業自得という事で、それ以上考えないことにした。

 スライドドアの横に触れてドアを開ける。

 中には机に向かっている先生が居た。先生がこちらに気づいて立ち上がる。

 

 ”あっレイヴン。おはよう。”

 

 「ああ、おはよう。で、要件は?」

 

 ”少し、話をしたくって。そこのソファに座って。コーヒーを淹れて来るから。”

 

 言われるままに、来客用のソファに座る。

 コポコポとコーヒーを淹れる音が静かな部屋に響く。

 しばらくすると、コーヒーが注がれたマグカップが俺の前に置かれた。

 一緒に運ばれてきたシロップとミルクを2つずつ掴み、コーヒーに入れて混ぜる。

 真っ黒だったそれは、白と黒のマーブルとなり、こげ茶色へと変わった。

 向かいに座った先生はその様子を見て、おもむろに口を開く。

 

 ”意外と甘党なんだね。”

 

 「……何だ、悪いか?」

 

 ”ううん、ブラックで飲んでるイメージがあったから、つい。”

 

 またこいつは妙なことを言う。

 気恥ずかしさを飲み込むように、カフェオレを啜る。

 少し熱いが気にしない。

 

 「……で、話って?」

 

 ”……実は、ミサトから君ついて話を聞いてたんだ。君の頭の中に、機械があるかもしれないって。”

 ”レイヴン、何か知ってる?”

 

 「ああ、それか。それはだな……。」

 

 脳深部コーラル管理デバイス。

 旧世代型強化人間の頭に埋め込まれる、強化人間のCPU。

 体が変わっても、何故か残っていた物だ。

 真実を話せば面倒なことになるのは目に見えていたので、どんな言い訳をしようか考え始める。

 

 『実は、レイヴンは1度事故にあっているんです。それで脳を損傷したため、デバイスによって機能を補助しています。』

 

 ”……そうだったんだ。辛かったよね。”

 

 「そうでもない。存外慣れるものだ。色々と便利だしな。」

 

 エアからの援護射撃によって難を逃れる。

 先生もその説明で納得したらしい。

 やや険しかった表情が和らいでいく。

 

 ”それじゃあ、そのデバイスは取り出さない方が良いかな?”

 

 『そうしてください。私のプログラムもこのデバイスに格納されていますから。』

 『私はまだ、レイヴンと一緒に居たいです。』

 

 ”分かったよ。ミサト達にも伝えておくね。”

 

 「そうしてくれ。ヤブ医者め、人の情報をベラベラと……。」

 

 いったい誰に伝えたのか。守秘義務はどうなっている。

 伝えた奴の口が軽かったら、そいつの口を閉じなきゃいけなくなる。

 無論物理的にだ。

 

 ”まあまあ、2人ともレイヴンを心配してたんだよ。あまり怒らないであげて。”

 

 「……生徒で知っているのは2人だけか。あと1人は?」

 

 ”ウタハだよ。ミサトから、私と一緒に呼び出されたんだ。”

 ”多分、これから君と関わっていく人だろうから、知らせておきたかったんじゃないかな。”

 

 「だったら俺かエアに一声かければいいものを……。」

 

 ”それは、そうだね……。私から言っておくよ。”

 ”そうだ。もう1つ話したいことがあって。”

 

 「今度は何だ……?」

 

“うん、これを渡しておこうかなって。”

 

 そう言って渡されたのは、1枚の紙。

 一番上にはデカデカと、シャーレの名前とエンブレムが描かれている。

 

 「……シャーレ入部届?」

 「……お前の子飼いになる気は無いぞ。」

 

 ”ああ、そう言うことじゃなくて。そうだなぁ……。”

 ”今のレイヴンは、何処にも所属して無いでしょ?実は、連邦生徒会的には、シャーレに所属してる生徒以外から援助を受けると、手続きが大変なんだって。”

 ”だから、形だけでもシャーレに所属してるってことにすれば、色々と融通が利くようになるんだ。”

 ”これは強制じゃないし、シャーレ専属になるって訳でもないから、安心して。”

 

 「……それで、俺のメリットは何だ?」

 

 ”レイヴンが私の仕事を手伝ってくれたら、その分の給料は払うし、君が何か助けが必要なら、シャーレとして助けられるよ。”

 ”それに、こんな言い方をするのもアレだけど……。”

 ”連邦生徒会直轄組織との、正式なコネクションが出来る。そう考えてみるといいかもね。”

 

 「……連邦生徒会からしたら、俺は厄介者だと思うんだが。加入した瞬間矯正局行き、なんて事態はごめんだぞ。」

 

 ”そのあたりも大丈夫。シャーレとして動いている間は、問題ないはずだから。”

 ”言いづらいけど、君以上の厄介者もシャーレに所属してるし……。”

 ”何かあった時も、私が何とかするよ。”

 

 何とかする、か。

 具体的な手段を言わないことが余計に不安を掻き立てるが、こいつの権限を考えれば、何とかすれば本当にどうにかなってしまうんだろう。

 やはり1人に持たせる権限ではないのでは?

 そう考えていると、視界の端にリストが写される。

 その中には、見知った名前も含まれていた。

 

 『……アビドス、風紀委員会、便利屋68、美食研究会、温泉開発部、果ては矯正局の囚人まで……。本当に誰でもスカウトできるんですね。』

 

 ”えっ、名簿見てるの!?個人情報だからあんまり見ないで!?っていうかどうやって見たの!?”

 

 『すみません、気になってしまって、つい。セキュリティを強化しておくので、それで補填としてください。』

 

 ”う~ん、それは助かるけどぉ……!”

 

 入部届を前に考える。

 今の俺は、独立傭兵としての地位が確立されている。

 シャーレに所属したという話が流れたとしても、仕事に大きな影響はないだろう。

 むしろ、シャーレとの正式なコネクションを利用できるかもしれない。

 何か問題が起きたとしても、叩き潰せばいいだけの話だ。

 

 「……良いだろう、書いておく。」

 

 ”えっ、良いの?別に今決めてもらおうって訳じゃ無かったんだけど。”

 

 「ああ。連邦生徒会に名前を売っておこうかと思ってな。必要なら仕事を回せ、対応する。」

 

 ”……抜け目ないなぁ……。”

 

 「でなければ傭兵なんてやってられんぞ。」

 

 ”そっか……。”

 

 必要な内容を書き込み、先生に手渡す。

 名前のところは“レイヴン”にしてあるが、問題ないだろう。

 この書類を通すのはこいつの仕事なのだから。

 

 ”……うん、これで大丈夫。改めてよろしくね、レイヴン。”

 

 「ああ、よろしく頼む。」

 

 ”あっそうだ。実は今日、仕事の予定があって――。”

 

 軽いノックの後に開くドア。

 執務室に1人の生徒が入ってきた。

 藍色の髪を頭の横で高くまとめた髪型、同じく藍色の瞳。

 実体化しているかのような黒いヘイローが特徴的な生徒だった。

 小脇には書類が抱えられている。

 

 「先生、おはようございます。って、そちらの方は……?」

 

 「おはようユウカ。この子はレイヴン。ついさっきシャーレに入部したんだ。」

 「レイヴン、この子は早瀬ユウカ。ミレニアムの2年生。」

 

 「独立傭兵レイヴンだ、よろしく頼む。」

 

 「よろしくお願いします。セミナー、ミレニアムの生徒会で会計をしています。」

 「……レイヴン。う~ん、どこかで……。」

 

 ”ユウカ、どうしたの?”

 

 軽く挨拶をしたところで、ユウカが顎に手を当てて考え始めた。

 俺の名前に引っ掛かるところがあったらしい。

 嫌な予感がする。

 

 「……あぁっ!あなた!エンジニア部にパワードアーマーを作らせてる、あのレイヴン!?」

 

 「……その通りだが、何だ?」

 

 「何だ、じゃないですよ!何ですか、この予算案!エンジニア部が出してきた時はイタズラかと思いましたよ!」

 「こんな額の予算、何処から出てくるんですか!?」

 

 突き付けられたのは、一千万単位の金額が書かれた契約書。

 確かに、俺とエンジニア部が交わしたものだった。

 何処から、と言われても、俺の答えは1つしかない。

 

 「俺のポケットからだが……。」

 

 「いやいやいや、たった1人の生徒のポケットから、こんな額が出てくるわけ無いでしょう!?投資とかをしてるならともかく!」

 

 『本当ですよ。レイヴンの口座を見ますか?』

 

 「ひゃぁ!いっ、今の誰ですか!?」

 

 俺の首元にあるデバイスから、エアの声が発せられる。

 3人しか居ないはずの空間に4人目の声が出てきたことは、こいつの心臓に悪かったらしい。

 

 『失礼しました。レイヴンのオペレーター、エアです。お見知りおきを。』

 

 「あっ、よろしくお願いします……。っじゃなくて!」

 

 『あなたのスマホに、レイヴンの口座の取引履歴を表示します。確認してください。』

 

 「えぇっ!?一体どうやって!?先生、どうなってるんですか!?」

 

 ”まあまあ、ユウカ、落ち着いて。”

 

 「こんなの落ち着いていられませんよ!」

 

 「エアはハッキングが特技でな。それを応用しているだけだ。気にするな。」

 

 「不正アクセスじゃないですか!止めてくださいよ!本当に表示されてるし……!」

 

 ユウカが自分のスマホを取り出して、画面を見つめ始める。

 しばらく指を動かしていると、不意にピタリと止まった。

 スマホの画面が唐突に付きつけられる。

 

 「……っ!これ!何ですか、この振り込み!」

 「こんな額、普通に過ごしてたら振り込まれませんよね!?」

 

 「それは依頼の報酬だな。ボーナス対象を破壊し尽くしたら、そんな額になった。」

 

 「えぇ……!?じゃ、じゃあ、これは何ですか!」

 

 『違約金ですね。依頼主が報酬の支払いを拒否したので、少々強引に取り立てました。』

 

 「違約金!?じゃあ、これって……!」

 

 『全て、レイヴン個人の正当な資産です。納得いただけましたか?』

 

 「うぅ……!分かりました……。疑ってすみません……。」

 

 スマホをしまってそう言うと、俺に頭を下げてきた。

 存外、律儀な奴なのかもしれない。

 

 「構わない。お前が仕事をしている証拠だ。」

 

 「は、はい。ありがとうございます。」

 

 ”分かってもらえて良かったよ、ユウカ。”

 

 「先生にも後でお話がありますからね。」

 

 ”…………ナンノコトカナ?”

 

 ユウカが先生に笑顔を向けると、先生はユウカから目を逸らす。

 笑顔に圧があったのは見なかったふりをした。

 

 「領収書。後で確認しますからね。」

 

 ”ハイ……。”

 

 どうやら金銭管理を任せているらしい。

 そんなこと自分でやればいいとは思うものの、自分は資産があるため大して気にしていないという事実を思い出し、口に出すのは止めた。

 

 「……それで、仕事は何だ、シャーレ。」

 

 ”……ユウカ、説明をお願い。”

 

 「ちょっと待ってください。レイヴンさん、少し席を外して――。」

 

 ”大丈夫だよユウカ。この仕事を手伝ってもらおうと思って呼んだからね。”

 

 「……せ~ん~せ~い~?勝手に人を増やされると困るんですけど?」

 

 ”まあまあ、レイヴンは言いふらしたりする子じゃないから、大丈夫だよ。”

 

 この反応、どうやら部外者が立ち入るような内容では無いようなのだが、先生はあまり気にしていない様子。

 機密保持が雑なのは本当にどうかと思うぞシャーレ。せめて事前連絡はしろ。

 それが原因で襲撃されたとしても、俺は助けんからな。

 

 「ああもう、分かりました!信じますよ!レイヴンさんもいいですか。」

 

 「問題ない、説明を頼む。」

 

 ユウカがポケットから小さなデバイスを取り出し、机に置いて起動する。

 すると、空中にホログラムで構築された地形が展開された。

 3階建ての雑居ビルと思わしき建物に、赤い点が付いている。

 

 「ミレニアムの提携企業からタレコミがあったんです。ミレニアムに産業スパイが潜り込んでるって。」

 「このスパイの確保に、先生に協力してほしいんです。」

 「スパイが誰なのかは、既に分かっています。でも、ミレニアムがスパイを確保する正式な理由が無かったので、今まで監視することしかできませんでした。」

 「そこで、わざと偽情報を掴ませて、ミレニアムとして確保する理由を作りました。そのデータには、位置情報を送信するウイルスも仕込んであります。」

 「スパイは今、ミレニアム郊外に身を隠しています。護衛も雇っているみたいです。」

 「先生は、C&C、Cleaning&Clearing4人と、レイヴンさんの指揮をお願いします。他にも支援が必要なら言ってください。」

 

 なるほど、目的は重要参考人の確保、というわけか。

 情報をどう受け渡すかは知らんが、早めに確保した方が良いのは確かだ。

 

 ”……結構深刻な問題だね。タイムリミットはある?”

 

 「遅くとも今日中ですね。居場所を変えられる前に確保したいです。」

 

 『……なるほど。このスパイですが、1時間ほど前から移動していません。取引相手を待っているのでしょう。』

 

 ここでエアからのハッキング情報。

 リアルタイムで情報が飛び込んでくるのは本当に助かる。

 

 「ならバイヤーも含めて確保したいところだな。護衛の数は?」

 

 『およそ20人。ブラックマーケットの傭兵によって構築されています。練度も大したことは無いでしょう。』

 

 「無駄な取り巻きをぞろぞろと……。通信を傍受しろ。何1つ聞き逃すな。」

 

 『分かりました。』

 

 ”し、仕事が早い……。”

 

 「えっと、とりあえずスパイさえ確保出来れば、私達としては問題ないので、そこまで張り切らなくても……。」

 

 「甘いな。情報を買ってるやつが今回の親玉だ。そいつらを潰さんとまた同じことが起きるぞ。」

 

 「それは私達も分かってます!裏に誰が居るのかを確かめるために捕まえるんですよ!」

 

 『スパイのスマホにアクセスできました。位置情報を表示します。』

 『バイヤーが情報を受け取れば、ウイルスを使って、バイヤーも追跡できるはずです。』

 

 ホログラムを見ると、黄色の点が1つ増えている。

 これがスパイの居場所なのだろう。

 これなら別々に追跡できる。

 

 「ならあえて取引させてから確保するのもアリだな。ユウカ、どうする?」

 

 「えっ、ここで私!?えっ、ええっと……!」

 

 ”そうだね……。ウイルスが解除されちゃうと、追跡できなくなるし、早めに確保した方が良いんじゃないかな。”

 

 「そっそうですね!そうしましょう!」

 

 「なら今すぐにでも動いた方が良い。ヘリを用意する。」

 

 「えっ!?レイヴンさん、ヘリも持ってるんですか!?」

 

 「当然だろう。キヴォトス中で仕事をするんだからな。」

 

 「……分かりました。私も一緒に行きます!先生、行きましょう!」

 

 ”分かった、急ごう!”

 

 銃を背中に背負い、シャーレ屋上のヘリパッドに急ぐ。

 既にエアがヘリを待機させていたので、中に乗り込んでいく。

 全員乗ると、機体は空へと浮き上がり、賞金首の元へ飛び立っていった。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 ”スパイは、まだ動いてないみたいだね。”

 

 『ですが、移動準備を始めています。仕掛けるなら今しか無いでしょう。』

 

 雑居ビル手前の路地裏で、先生とエアが状況を確認する。

 バイヤーが現れなかったのか、偽データの信号は、スパイと同じ場所にあった。

 

 「で?作戦はあんのか、先生?」

 

 ”この感じなら、正面からでも行けそうだけど……。”

 

 「ふふっ。ご主人様の指揮があれば、きっとうまくいくよ!」

 

 「お任せください、ご主人様。」

 

 先生の横にいるのは、3人のメイド。

 そう、メイドなのだ。

 胸元がザックリ空いている奴、ロングスカートでカバンを抱えた奴、果てはミニスカメイドの上にスカジャンを羽織ったチビも居る。

 もう1人居るが、そいつは離れた場所で配置についているらしい。

 そいつもメイド服な上、バカみたいにスカートが短かったが。

 こいつらがセミナーお抱えの秘密部隊だとは信じたくない。

 

 「……エージェント部隊だと聞いていたんだが。この格好は何だ……?」

 

 「C&Cの正装です。普段はメイド部として振舞うために、この格好をしてます。」

 「まあ、公然の秘密となってますけど……。」

 

 「何だぁ?飛び入りしといて、いきなりケチ付けてくんのかよ?」

 

 「………………。」

 

 「オイ何とか言えよ!」

 

 ”まあまあ。”

 

 チビがこちらにガンを飛ばしてきた気がするが、気のせいだと思いながらスキャンで状況を確認する。

 ブリーフィング通り、3階建ての雑居ビル。

 目標のスパイは、3階に立てこもっているようだ。

 1階と2階には護衛が展開されているが、情報より少ない。

 少し離れた場所で待機しているのかもしれない。

 これは、時間をかけるだけ厄介になるパターンだな。

 C&Cの最高戦力と聞いているネルに向き合う。

 

 「……ネル、と言ったか。3階に直接侵入できるか?」

 

 「あぁ?ンなこと楽勝だけどよ。何する気なんだよ?」

 

 「なら話は早い。」

 「00、3階に突入して対象を確保しろ。01は俺と一緒に正面から突入、取り巻きを排除する。」

 「02、聞いてるか?狙撃支援と退路の確保を頼む。特に相手の狙撃手は見逃すな。」

 「03、離脱のために足を確保しろ。00と対象が乗せられればそれでいい。」

 「ユウカはシャーレの傍に居ろ。こいつには護衛が必要だ。」

 「電撃戦で行く。時間をかけるなよ。」

 

 「おい何でお前が作戦決めてんだ!オマケはオマケらしくしとけ!!」

 「先生も何とか言えよ!」

 

 「でも、それが1番行けそうじゃない?なんとなくだけど!」

 

 『同感だ。傭兵と侮っていたが、良い作戦だな。』

 

 「皆さん、指揮を執るのはご主人様です。ここは、ご主人様に決めていただきましょうか。」

 

 「アタシは反対だ!こんな奴の言う事聞いてたまるかよ!!」

 

 意外だが、他の連中は賛成の姿勢だ。ネルを除いて。

 どうもこいつの態度は、俺に因縁をつけてきた狂犬を思い出す。

 目を合わせたら殴りかかって来そうなところがそっくりだ。

 あいつは実際に殴りかかって来たしな。

 

 ”う~ん、ここはレイヴンの作戦通りに行くのが良さそうだね。”

 

 「なっ!?マジで言ってんのかよ先生!」

 

 「OK!それじゃ行こっか、ご主人様!」

 

 『こちら02、準備完了。』

 

 「参りましょうか、ご主人様のお望みのままに。」

 

 「だぁもう分かった!やれば良いんだろやれば!」

 

 「あっ、ちょっと待ってください!」

 「言い忘れてましたけど、今回は周りの被害を抑えてくださいね!前回の賠償金の請求、とんでもない額になったの、忘れてませんよね!」

 

 「うっ……。わ、分かってるって。」

 

 「……過剰破壊の常習犯、噂通りか。」

 

 「アァ!?どういう事だよそれ!」

 

 ”まあまあネル、落ち着いて。ほらっ、作戦開始!”

 

 「チッ!レイヴン、後で覚えとけよ……!」

 

 イライラするなら、それを敵にぶつけてこい、というセリフはグッと飲み込んだ。

 それを言ったら、きっと無駄に殴り合う事になるだろうから。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 ドアの両サイドにアスナと張り付く。

 ドアノブに手をかけながらアスナを見れば、OKサインで返事が来た。

 ノブを軽くひねって後ろ蹴りで蹴り開ける。

 同時にアスナが突入、俺も武器を取り出し即座に援護する。

 

 バァン!

 バババババッ!

 

 「なっ、敵襲!?」

 

 「アスナ、いっくよー!」

 

 「クソッ、C&Cか!ボスを逃がすんだ、急げ!」

 

 バババババッ!

 ズドンッズドンッ!

 

 相手は机を倒してバリケードにし始めた。

 訓練されているのか、判断が早い。

 だがアスナは、バリケードの横から回り込み、敵を追い立てていく。

 俺は顔を出した奴から眉間を打ち抜いていく。

 

 「なっ、何でレイヴンも居るんだよ!」

 

 「そいつらに構うな!ボスの離脱を――。」

 

 「させるか。」

 

 ドッ

 ガァン!

 

 机を空中に蹴り上げて、ドロップキックで集団に向けて蹴り飛ばす。

 巻き込まれた奴が吹き飛ばされ、倒れこんでいく。

 反撃の心配はなさそうだ。

 

 「クソッ!これでも――!」

 

 ズドンッ!

 ドゴォォン!

 

 グレネードが投げ込まれそうになるが、持っている手ごとショットガンで吹き飛ばす。

 撃ち抜かれたグレネードは誘爆、持ち主を吹き飛ばした。

 

 立ち上がろうと奴らの眉間に銃弾を撃ち込んでいき、意識を奪っていく。

 足を掴んできた奴もいたが、頭を踏みつけて黙らせた。

 

 『1階の制圧完了。2階に移動します。』

 

 「うわぁ~、すごく早いね!やるじゃん!」

 

 「お前もいい腕だ、01。対象の確保を急ぐぞ。」

 

 『こっちは捕まえたぞ。アカネ、どうだ?』

 

 『車を拝借出来ました。近くまで乗り付けますね。』

 

 バァン!

 

 『02、狙撃成功。スナイパーを排除した。』

 

 『”よし、このまま押し切ろう!”』

 

 先生の指揮を合図に2階へ上っていく。

 先ほどと同じように、俺が開け、アスナが突入、それを俺が援護する。

 1階と違い防衛陣が出来上がっていたが、些細な問題だ。

 

 バガァン!

 バババババッ!

 ズドンッズドンッ!

 

 「ぐあぁぁ!!」

 

 「オラアァァア!!!」

 

 ゲシッ

 バババババッ!

 

 後ろから鉄パイプで殴りかかってきたが、振り下ろされたそれを右に躱し、踏みつける。

 そのままLMGで下から上に向けて大量の鉛玉を浴びせていく。

 それでも意識があることは褒めてやる。

 

 「チクショウ……!何で俺達が……!」

 

 ズドンッ!

 

 「よしっ、2階もお掃除完了!」

 

 バタンッ

 

 「グッ、離せ!私を誰だと思ってる!」

 

 「はいはい、話は向こうに着いてから聞いてやるよ。」

 

 3階の階段から下りてきたのは、目標のスパイの首根っこを掴んだネルだった。

 あとは、ここから離脱するだけ。

 

 『対象の確保に成功、これより離脱します。』

 

 ビルの前にアカネが運転するセダンが止まっている。

 後部座席のドアを開け、スパイを押し込む。

 スパイを挟むようにネルとアスナが乗り込んだら、ドアを閉める。

 

 「そらっ、乗りな!」

 

 「は~い!1名様ごあんな~い!」

 

 「安全運転で参ります。シートベルトは締めてくださいね。」

 

 ドアを軽く叩いて発進させる。

 セダンが離れた後、エアが操縦するヘリが、地面ギリギリまで降下してきた。

 中には既に、ユウカと先生が乗っている。

 

 バババババ

 

 『レイヴン、増援が迫っています!離脱を!』

 

 軽く助走をつけ、開いた後部ハッチからヘリに飛び移る。

 機体内まで乗り込むと、ハッチが閉じつつ急上昇。ミレニアムに向けて飛び去っていく。

 増援はアカネたちを追跡できていない。

 C&Cの実力、確かだったようだ。評価を改めなければな。

 

 今回の報酬だが、ユウカと先生の押し問答の後、シャーレの経費で支払う事となった。

 決裁書を提出した後、先生は連邦生徒会の財務室から呼び出され、これでもかと絞られたらしい。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 ワタシハナニモハナサナイゾ……!

 ン~?ジャアコノカツドンハイラナイノカ~?

 

 「……それで、こいつはどうするんだ?」

 

 「聞き取りをした後、ヴァルキューレに引き渡します。さすがに、そのまま外に返すわけにも行きませんから。」

 

 「手ぬるいな。爪でも剥がしてやればいいんだ。」

 

 「それをやったら私達が捕まりますよ!?とにかく、このスパイは五体満足で引き渡します!これは、セミナーとしての決定です!」

 

 ン~カツドンウマッ!

 ヌゥウウッ……!

 

 「そうか。なら、奴のスマホをハックして得られた情報も要らんよな。」

 

 「えッ、いつの間にやってたんですか!?っというより、それも犯罪ですからね!?」

 

 「細かいことを気にしてたら生きられん。で、要るのか?要らないのか?」

 

 「うぅ……!今回はお断りします!ミレニアムにも優秀なハッカーは居ますので!」

 

 「そうか、好きにしろ。それじゃあ、これで仕事は終わりだな。」

 

 「ええ、もう結構です。今日はありがとうございました。」

 

 「また仕事があるなら言ってくれ。じゃあな。」

 

 バタンッ

 

 「……はぁ。レイヴンさん、イマイチ考えが読めなくて怖いのよね……。」

 

 「ハハッ。冷酷な算術使いにも、怖いものはあったんですね。」

 

 「からかわないでよ、もう。後でどんな人なのか、先生に聞いてみないと……。」

 

 ホ~ラ、アゲタテノカツダゾ~。ハナスナラタベラレルンダケドナァ~ザンネンダナァ~。

 ヌゥウウウウ~~!!




ユウカ、あまりにもオカン。
C&C、ゲーム開発部、ヴェリタス、エンジニア部、先生。
この問題児達をまとめ上げるの大変すぎる……。

次回
ナイトフォール、起動
鬼に金棒、虎に翼、レイヴンに機動兵器

次回も気長にお待ちくださいませ……。
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