BLUE ARCHIVE -SONG OF CORAL-   作:Soburero

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パヴァーヌ編、ゲマトリアのお茶会からスタートです。
前話から1ヶ月ぐらいたってると思って読んでください。
ゲマトリア連中の話口調なんも分からん……。


パヴァーヌ編
13.研究施設廃墟先行調査


『“アレ”が、預言者を……!?それは確かなのか、黒服よ!』

 

『ええ、間違いありません、マエストロ。私自身、この目で見ていましたから。』

 

『単なる偶然では?あの先生も居たのでしょう?』

 

『そうとも言い切れませんよ、マダム。“アレ”には妙なテクストが付いていますから。』

 

『……“アレ”について、調べがつきました。』

『結論から言うのであれば、“アレ”には極力干渉しない方が良いでしょう。』

 

『……それこそ、この“箱舟”の破綻が訪れるまで、か。』

 

『賛成です。“アレ”のテクストを書き換えた時、シナリオがどう変化するのか、分かりませんから。』

『……本来であれば、興味深いところなのですがね。』

 

『そういうこった!』

 

『……まあ、いいでしょう。手駒は他にもいます。』

 

『ありがとうございます。では、話がまとまった所で、次の議題に移りましょう。』

『あの、シャーレの先生についてです。』

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 『便利屋68。これは独立傭兵レイヴンからの協力要請です。』

 

 『私達は、アビドスに放棄された、カイザーの地下研究施設を調査したいと考えています。』

 

 『あなた達も、この調査に同行してほしいのです。』

 

 『目的は、内部に残されているであろうオーパーツと、そのデータの回収。』

 

 『目的のオーパーツは最奥にあるでしょう。そこに到達するまでは、防衛システムによる抵抗が考えられます。』

 

 『そのため、道中で各所のアクセスポイントを制圧して、防衛システムを掌握します。』

 

 『それと、発見したオーパーツですが、こちらが指定するもの以外は、自由に持ち帰ってください。』

 

 『それを、あなた達へのボーナスとさせてもらいます。』

 

 『最後に、この調査は極めて危険なものとなるでしょう。』

 

 『事前調査で判明している構造は僅かです。先日の不明兵器との戦闘で、崩落している部分もあると思います。』

 

 『私達としては、この調査での命の保証は出来ません。もし依頼を受けるなら、それを念頭に置いてください。』

 

 『それでも協力してくれるなら、報酬は惜しみません。便利屋68、良い返事を期待しています。』

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 便利屋68事務所。

 直近の依頼で失敗してしまい、いつもの如く金欠だった所に、よく知る人物からの依頼が入った。

 正確には、メールでブリーフィングが送られてきたのだ。

 

 「みんな、聞いてちょうだい!あのレイヴンから仕事が入ったわ!」

 

 独立傭兵レイヴン。今ではブラックマーケットはおろか、キヴォトスでも指折りの傭兵。

 どんな危険な仕事も、ほとんどを1人でこなすはずのレイヴンから、指名が入ったのだ。

 正直、気持ちが舞い上がってしまう。それだけ私達の実力が認められている、という事なのだから。

 

 「へぇ~、どんな仕事だったの?」

 

 ムツキが横からパソコンを覗いてきたので、ブリーフィングをもう一度再生する。

 ムツキに釣られてか、カヨコとハルカもこちらに近づいてきた。

 

 「安心しなさいムツキ、私達にピッタリの仕事だから。」

 「報酬はかなり良いし、その上ボーナスも出る!レイヴンの調査に同行するだけでいい!」

 「オイシイ仕事だと思わない?」

 

 「社長、最後のところよく見て。命の保証が出来ないってハッキリ言ってるでしょ。」

 

 カヨコはそう言いながら画面を指さす。

 ただ、この警告が本気だとは、私には思えないのだ。

 

 「フフッ、甘いわねカヨコ。これは私達を脅かしているだけよ。」

 「どれだけの危険が冒せるアウトローなのか、それを試してきてるのよ!」

 

 「絶対そんなことないって……。」

 

 「す、すみません、アル様。私もそう思います……。あのレイヴンが危ないって言ってるくらいですし……。」

 「で、でもっ!アル様がやるなら、私はどこでも付いていきますっ!」

 

 珍しいことに、ハルカが私を止めてきた。

 でも確かに、ハルカの言う事にも一理ある。

 ブリーフィングからして、どんな危険があるのか想定できない、という事なのだろう。

 

 「私は賛成!捨てられた地下施設を調べるなんて、すっごく面白そうじゃん!」

 

 「さっすがムツキ、分かってるじゃない!」

 

 だが、私達だって修羅場はくぐっている。

 今更心配される謂れはない。

 椅子から立ち上がり、思いっきり息を吸い込む。

 

 「……はぁ、これはもうダメかな。」

 

 「さあ社員達、準備しなさい。愉快な遠足の始まりよ!」

 

 そう声を掛けると、各々が準備を始めた。

 自分も愛用のスナイパーライフルを肩にかけ、念のため大きめのカバンも持っていく。

 この仕事が上手くいったら、何を買おうか。ボーナスは社員達に渡してしまおうか。

 この時の私の頭は、そんな能天気な考えでいっぱいになっていた。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 便利屋たちを乗せ、アビドスに向かう輸送ヘリの中。

 轟音に包まれながら、アルが口を開く。

 

 「レイヴン!あなたいつの間にヘリなんて持ってたの!?」

 

 「カイザーとやりあった時を覚えているか?あの時、親玉の株式を差し押さえた時の利益で買ったんだ。」

 

 「アッハハ!相変わらずだね!」

 

 そう、あの後ブラックマーケットで大型の輸送ヘリを購入し、移動拠点として作り変えていたのだ。

 やはり傭兵をやるなら、移動拠点は個人的マスト。

 車両ではなく大型ヘリを選んだのは、ルビコンでのやり方に近づける為でもある。

 ゆくゆくは、ある“仕事道具”を運用するためにも、ヘリの方が都合が良かったのだ。

 と、ハルカが俺の後頭部を見ながら口を開いた。

 

 「あ、あの!ヘイロー、形が変わってるみたいですけど、大丈夫ですか?」

 

 「ああ、問題ない。ヘイローが変わる奴はたまに居るそうだ。」

 「違和感を感じたらすぐに病院に行けとも言われたがな。」

 

 「……ねぇ、レイヴン。」

 

 「どうした?」

 

 「アンタのヘイローが変わったのは、蛇のバケモノと戦った時の、トドメの爆発、その直前だった。」

 「あれ、アンタがやったの?ヘイローが変わったことと関係ある?」

 

 「ああ、恐らくな。俺もハッキリとしたことは分からんが、俺のヘイローに関係しているのは間違いないだろう。」

 

 “預言者”を仕留めるために放った、アサルトアーマー。

 聞いてみれば、生徒には妙な力を持っている奴が、まあまあいるらしい。

 恐らくは、俺もそういった奴らの1人と数えられるだけなのだろう。

 だがカヨコはその答えが気に入らなかったのか、眉間にしわが寄っていた。

 

 「……フーン。」

 

 「カヨコ、どうしたの?何か気になることでもあった?」

 

 「……何でもないよ社長。気にしないで。」

 

 『まもなく目標地点です。準備してください。』

 

 「聞いていたな、降りるぞ。」

 

 窓の外を見れば、アビドスの荒野が広がっている。

 武器を確認し、カバンを背負って後ろの出入り口近くに立つ。

 ヘリに伝わった衝撃が、目的地に到着したことを告げた。

 

 ヘリ後部のハッチが、ゆっくりと開いていく。

 ヘリから下りて辺りを見渡すものの、目の前には何の変哲もない基地が広がるばかりであった。

 

 「あ、あれ?普通の基地、ですよね……?」

 

 『地表はそうです。ですが、地下にはさらに大きな空間が広がっています。』

 『カーゴリフトを使って施設に入ります。』

 

 「なるほどね。ワクワクしてくるじゃない……!」

 

 ガコンッ!

 

 ブザー音と共に地面が割れていき、大きなリフトがせり上がってきた。

 

 「うわっ!こんなに大きい扉隠してあったんだ!」

 

 「ここから降りるぞ。全員乗れ。」

 

 ビーッ!ビーッ!

 

 暗闇の中をリフトでゆっくりと降りていく。

 最低限の光源はあるものの、全体を見渡すには不十分だ。

 恐らくは、非常電源によって稼働しているのだろう。

 

 「……随分深いね。」

 

 『それだけ存在を隠しておきたかったのでしょう。あるいは……。』

 

 「……いざとなったら、基地ごと封印するため。こんなに深く作る理由は、それぐらいしかない。」

 

 念のためスキャンしてみると、リフトの行先にタレットが2基。

 このまま行けばハチの巣になるだろう。

 

 「……エア、タレットがある。無力化しろ。」

 

 『既に終わっています。IFFを書き換えて、こちらを友軍と誤認させました。』

 

 「仕事速いね~。これならただ探すだけで終わり?」

 

 『そうも行かないようです。今書き換えたのは第1層のセキュリティのみ。』

 『より深い第2層、第3層のシステムは、ここからは隔離されています。』

 

 「事前の作戦通りに、潜って行くしかないって事ね。」

 

 「そういう事だ。気を引き締めて掛かれ。」

 

 プシュー

 

 『まずは、アクセスポイントを探しましょう。そこから、より深い場所のシステムに侵入出来るかもしれません。』

 

 リフトが止まり、目の前のドアが開いていく。

 中は研究所らしい真っ白な空間が広がっていた。

 全員リフトから下りて、施設へと足を踏み入れていく。

 

 「……警備ロボットがたくさん……。」

 

 二足歩行の小さな警備ロボットが展開されている。

 だが、ロボットの設計からして、カイザーのそれではないようだ。

 どうやら、ムツキもそれに気づいたらしい。

 

 「あれ?アルちゃん、これカイザーのロボットじゃなさそうだよ。」

 

 「どういう事?ここってカイザーの施設じゃないの?」

 

 「……とにかく、先に進むぞ。」

 

 少し見渡せば、部屋の中でロボットアームがオーパーツと思わしきものを解析しているようだ。

 ハルカがそれを興味深そうに見つめる。

 

 「あの……、ここにある物って、持ち帰ったら、ダメですかね……?」

 

 『構いませんが、お勧めはしません。あまり価値の有るものは残っていないようなので。』

 

 「……そのようだ。ほとんどが解析済みの品だろう。」

 

 「な~んだ、残念。」

 

 「まあまあムツキ、お宝はもっと深い場所にあるはずよ。それを手に入れれば、一攫千金も夢じゃないわ!」

 

 「生きて帰れれば、だけどね。」

 

 「ちょっ、カヨコ!怖い事言わないで頂戴!」

 

 便利屋達はいつもの調子か。

 変に緊張されるよりはいいのだが、さっきのやり取りを聞いていると、どうしても不安になってくる。

 そう考えながら足を進め、ドアを開ける。

 中は管理センターのようで、大量のモニターがあった。

 

 「ここだ。エア。」

 

 「さて、何が出て来るかしら……?」

 

 『……解析完了。第2層の見取り図を入手できました。』

 『ですが、やはりセキュリティシステムは隔離されています。アクセスポイントに向かうしかありません。』

 

 ここまでは想定内。

 今の俺達は生身だから、何がセキュリティに仕込まれているのか分からない以上、それを作動させることは避けたい。

 

 「やはりか。よく聞け、ここからが本番だ。下に降りたら俺達は侵入者と見なされる。」

 「出来るだけセキュリティに見つからないように動くぞ。」

 

 「油断大敵って事か、了解。」

 

 「OK!それじゃ行こっか!」

 

 「フフフッ……!良いじゃない、燃えて来るわ!」

 

 「は、はいっ!行きましょう!」

 

 「……で、何処から下りるの?」

 

 「階段だ。登りは楽になるはずだから、我慢しろ。」

 

 カンカンカン……

 

 部屋から出て、5階分はありそうな階段を降りた先、次のエリアに入るドアがある。

 念のためスキャンすると、やはりと言うべきか、警備ロボットが配置されていた。

 

 「……巡回ロボット、数は多くないが、厄介だな。」

 

 「どうするの?突っ切るわけにも行かないでしょ。」

 

 『……監視カメラの掌握完了、私が誘導します。指示に従ってください。』

 

 「了解、聞いていたな、行くぞ。」

 

 ゆっくりとドアを開け、すぐにロボット達の死角に入る。

 アクセスポイントまではそう遠くない。

 俺達の実力なら問題ないはずだ。

 

 『まずは右に進んで、角でしばらく待ってください。』

 

 指示に従って進むと、通路の先からロボットが歩いてくる。

 第1層とは異なるタイプ。2m程度の、武骨な二足歩行ロボットだ。

 ご丁寧に武装されている。

 そいつが曲がり角の手前まで来てしばらく立ち止まり、来た方向へと引き返していった。

 

 『そのままロボットの後ろに、2つ目のT字路で左へ。』

 

 ロボットを気づかれないギリギリの距離で追いかける。

 1つ目のT字路は問題なくスルー。

 エアの指示通り、2つ目のT字路で進む。

 

 「うぅっ……!緊張する……!」

 

 「大丈夫よハルカ、私達なら出来るわ……!」

 

 『通り過ぎたら突き当りまで進んでください。その先のドアが目的地です。』

 

 右から警備ロボットが歩いてくる。

 アクセスポイントはその先だ。

 ロボットが通り過ぎたタイミングで一気に行くしかない。

 

 「よし、一気に行くわよ……!」

 

 ロボットが離れたことを確認して、ドアに向けて駆け出した。

 そのまま何にも見つかることなく、ドアの中に体を滑り込ませる。

 全員入ったことを確認してから、見つからないようにドアを閉めた。

 

 バタンッ!

 

 「はぁ~。何とか見つからずに――。」

 

 ガシャン

 ガシャン

 

 「……あちゃ~。」

 

 起動しているオートマタ、それも2機。

 その手には武器が握られている。

 

 「侵入者を検し――。」

 

 バババババッ!

 ズドンッ!ズドンッ!

 バスバスバスッ!

 

 ガシャン!ガシャン!

 

 「……エア、どうだ?」

 

 『……侵入は検知されていないようです。このままシステムを掌握します。』

 

 つい便利屋と共に撃ってしまったが、問題ないらしい。

 何よりだ。こんな狭いところで大群と戦いたくはない。

 

 「……意外と、どうにかなるもんだね。」

 

 「音響検知は非対応のようだからな。そうじゃなかったら押し入るしかなかった。」

 

 「こ、ここまでは順調ね……!このまま一気に本丸まで――!」

 

 『レイヴン、悪い知らせです。第2層のシステムは掌握できましたが、第3層からはシステム構造が違います。』

 『下手にアクセスすると、ロックダウンが発動する仕組みになっています。』

 

 ロックダウン。つまり、下手を打つとここに閉じ込められる、という事だ。

 突破する手段がない以上、それを作動させた時点で終わりに等しい。

 

 「何とか回避できないのか?」

 

 『それは難しそうです。短時間のID偽装は可能ですが、その後は強硬突破するしかありません。』

 

 「マズい事になってきたね……。」

 

 「……これが命の保証が出来ないと言った理由だ。」

 「偽装の時間が切れる前に、アクセスポイントにたどり着く必要がある。ここからはスピード勝負だ。」

 

 「くっふふ~。やっぱりアウトローの仕事はこうでなくっちゃ。ねっ、アルちゃん?」

 

 「そっ、そうよムツキ!この程度、私達なら、どうってことないわ!」

 

 「さ、流石アル様ですっ……!」

 

 「ハァ……。まあ、ここまで来てるし、付き合うよ。」

 

 カンカンカン……

 

 『ここから先は広い空間が広がっています。目的地はその最奥です。』

 

 念のためスキャン。

 エアの言う通り、かなり広い空間が広がっている。

 恐らく、俺達が求めている物もここにあるだろう。

 

 「偽装って、ロボットたちも誤魔化せる?」

 

 『問題ないはずです。最悪、私がロボットに侵入して、機能を停止させます。』

 

 「よし、なら一気に行くぞ。」

 

 ガタンッ!

 

 ドアを蹴り開けて全員飛び出す。

 最低限の照明で薄暗い空間を、全力で駆けていく。

 そこまでしても、ロボット達は俺達に興味が無いような素振りを見せる。

 エアの偽装はしっかり効いているらしい。

 

 「す、すごい!本当にロボットが……!」

 

 「無駄話は後だ!メインフレームに近づくぞ!」

 

 「……ここがそうか!って――。」

 

 「カードキー式!?この空間からどうやって探せっていうのよ!?」

 

 頑丈そうなドアの横には、カードキーを読み込むための機械が取り付けられていた。

 そもそも、カードキーがこの空間にあるという保証もない。

 探せば探すだけタイムリミットが迫る。

 

 「……仕方ない。エア、やれ!」

 

 『分かりました。これからドアをこじ開けます。侵入は検知されますが、これしか方法がありません。』

 『ここに居るすべてのロボットが私達に向かってくるでしょう。ドアを開けるまで持ちこたえてください。』

 

 「ウソでしょ!?結構な数が居るのよ!ソレ全部捌けっていうの!?」

 

 「アッハハ!面白くなってきたじゃん!」

 

 「あ、アル様は私が守りますッ!」

 

 「……やるしかないか。」

 

 「ああもう!こうなったらトコトンやってやるわよ!!」

 

 アルがそう言うと、ドアを背に陣形を組み始める。

 俺も両手の銃を構え、敵襲に備えた。

 あまり動けない状況での防衛戦、どこまでやれるか。

 

 『……始めます。システムにアクセス開始。』

 

 ビーッ!ビーッ!

 

 〔不明なアクセスを検出。ロックダウン発動。侵入者を排除します。〕

 

 「来るぞ、構えろ!」

 

 警告と共に空間が赤く染まる。

 ロボット達が一斉にこちらを認識し、こちらに近づいてくる。

 射程に入った敵から、鉛玉を叩きこんでいく。

 

 バババババッ!

 バスバスバスッ!

 ズドンッ!ズドンッ!

 

 「クッ!数が多い……!」

 

 待機していたロボットも起動しているのか、どれだけ撃っても数が減らない。

 階段の方を見ると、ロボットが降りてきている。

 他の階層からも集まってきているのか。

 

 「でもこいつらだけなら、何とかなるかも!」

 

 〔脅威レベル、上昇。ゴリアテを起動。〕

 

 「ゴリアテ!?こんな場所で戦ったら持たないよ!」

 

 「クソッ!エア、まだなのか!?」

 

 『あと少しです!何とか持ちこたえてください!』

 

 ガシャン!

 ドォォォン!

 

 部屋の奥で何かが弾けた。

 煙の奥から、白い大きな何かが出てくる。ゴリアテだ。

 扉を破壊して侵入してきたのか。

 ゴリアテは頭の砲門をこちらに向け、射撃体勢を取ろうとしている。

 この状況で頭の主砲を喰らったらひとたまりもない。

 

 「うわわわわっ!!ついに来ちゃったわよ!?」

 

 「全員、俺に集まれ!!」

 

 「えッ!?なんで――。」

 

 「死にたくなければ集まれ!!」

 

 便利屋達が俺の周りに集まっていく。

 それを確認してから、目を閉じて、意識を集中させる。

 すると、ヘイローに光が集まり、スパークし始めた。

 そして、光が強くなったところで、それを解き放つ。

 

 バチバチバチッ!

 ブアッ!

 

 ドォォォン!

 

 「――ッ!?これは……!?」

 

 「ば、バリア!?」

 

 パルスプロテクション。

 コーラルの群知能に直接干渉することで作り上げる、設置型のバブルシールド。

 それが俺達を、ゴリアテの主砲から守ったのだ。

 

 『ロック解除!早くアクセスポイントへ!』

 

 「よし!みんな急いで!」

 

 全員でドアの中に滑り込み、急いでドアを閉める。

 ドアの向こうでは、どうにか俺達を仕留めようと、銃声が鳴り響いている。

 少しすると、パルスプロテクションが破れたのか、銃弾がドアを叩き始めた。

 

 「エア、急げ!」

 

 『今やってます!』

 

 ドアを破られないようにと、アルとハルカが必死の形相で抑え込んでいる。

 銃声が収まったと思った次の瞬間、強烈な衝撃がドアを叩いた。

 ゴリアテがドアを殴りつけているのだろう。このままじゃ持たない。

 迎撃に備え残ったメンバーが銃を構えたその時――。

 

 〔管理者によるアクセスを確認。ロックダウン解除。〕

 

 アナウンスと同時に、衝撃が止んだ。

 一面の赤が白く染まっていく。

 足音からして、ゴリアテも帰っていったらしい。

 全く、生きた心地がしない。

 アルも気が抜けてしまったのか、その場にへたり込んでしまった。

 

 「……止まったようだな。」

 

 「……はあぁぁ、よかったぁ……。」

 

 「だ、大丈夫ですか、アル様!?」

 

 「だ、大丈夫よハルカ……!ちょっと、ちょ~っと、疲れただけだから……!」

 

 「え~、ホントに~?アルちゃん、さっきゴリアテにビックリして無かったっけ?」

 

 「き、気のせいよ!もしそう見えたとしても、それは、えっと……!」

 「武者震い……!そう、武者震いしていただけよ!」

 

 「くっふふ~、そういう事にしといてあげる!」

 

 「よくやってくれた、便利屋。お待ちかねの宝探しだ。」

 

 「セキュリティはどうなってるの?」

 

 『管理者権限を奪いました。セキュリティは全て私達の味方です。』

 

 「なら良かった。心置きなく探せるって訳ね。」

 

 「そういう事だ、行くぞ。」

 

 さっきの広間に戻り、照明のブレーカーを上げていく。

 強い光に照らされた先にあったのは、俺にとっては懐かしいものであった。

 

 「何これ……!?」

 

 「巨大、ロボット!?」

 

 「うわ~、ゴリアテよりずっと大きいじゃん。」

 

 「す、凄い……!」

 

 「……やはり流れ着いていたか。」

 

 G1ミシガンの乗機、《ライガーテイル》。

 惑星封鎖機構の新型機、HC型執行機。

 その残骸が、天井のクレーンから吊り下げられていた。

 ミレニアムのオーパーツオタクから聞いた話でピンと来たのだ。

 俺の機体のほかに、流れ着いている物があると。

 

 「……レイヴン、流れ着いたって、どういう事?」

 

 「……これは、“外”から流れてきたものだ。俺が居た世界からな。」

 

 「えぇっ!?レイヴンって、“外”から来たの!?じゃあ、何でヘイローが!?」

 

 「俺にもわからん。知っている奴が居たら、話を聞きたいぐらいだ。」

 「俺達はデータを回収する。その間に持ち帰るものを見繕っておくといい。」

 

 そう声を掛けると、便利屋達は残骸を漁り始めた。

 俺はライガーテイルに近づき、機体のブラックボックスにアクセスする。

 

 「……ここに居たのか、ミシガン。」

 

 胴体には、レーザーで焼かれたと思わしき傷跡が、いくつも平行に付いていた。

 ミシガンと同等以上の実力で、こんな傷をつけられる武器を使いこなせる人間。

 俺はそんな奴を、1人しか知らない。

 

 『……レイヴン、通信ログを回収できました。記録された場所は、ウォッチポイント・アルファ。聞きますか……?』

 

 「……再生しろ。」

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 『……貴様が来るか、V.Ⅳ。アーキバスはG13を送り込んでくると思っていたんだがな。』

 

 『期待通りの相手でなくてすまない、ミシガン総長。』

 『……どうやら戦友にも、為すべきことがあるようだ。』

 

 『……貴様らの思惑がどうあれ、レッドガンとして叩き潰すのみだ。』

 

 『……突入しろッ、役立たず共ッ!!!』

 『色男が貴様らと踊りたくてウズウズしてるぞ!!奴が膝をつくまで付き合ってやれッ!!!』

 

 『了解です、総長!!』

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 「………………。」

 

 V.Ⅳラスティ。やはりお前だったか、戦友。

 お前は今、どこにいるんだ。

 お前も、キヴォトスに来ているのか?

 

 『……ベイラム関係の設計図を回収できました。他に使えそうな情報も回収しておきます。』

 

 「……ああ、頼むぞ。HCはどうだ?」

 

 『今アクセスできました。パルス技術とブースター関連の設計図が残っています。』

 『ミレニアムが喜びそうな情報ばかりです。』

 

 「大当たりだな。探りに来た甲斐があった。」

 「それにしても、ここの主はブラックボックスに手を付けなかったんだな。」

 

 『手を付けなかったのではなく、付けられなかったのだと思います。』

 『アクセスを試みた痕跡がいくつもありますが、いずれも失敗しているようです。』

 

 「だろうな、解析されていたら厄介だった。」

 「そういえば、ここの主は誰か分かったか?」

 

 『詳細は不明です。ですが、ログの中に繰り返し出てくる単語がありました。』

 『“ゲマトリア”。研究者の集まりのようです。恐らく、ここはゲマトリアの施設なのでしょう。』

 

 「……“技研”を思い出すな。人体実験などしていなければいいが。」

 

 『残念ですが、それは期待できなさそうです……。ログの中には、“ボランティア”や“被検体”という単語も出てきます。』

 『“ゲマトリア”……。彼らの目的は一体……。』

 

 研究者の集まり、俺からすればロクなものではない。

 “狂った遺産を山ほど生み出した、狂人たちの集まり。”

 ウォルターとカーラは、技研をそう評価していた。

 恐らくは、そのゲマトリアもそうなのだろう。

 そう考えていると、ムツキから声が掛かった。

 

 「ねえレイヴンちゃん!これとこれ、どっちが高いと思う?」

 

 「左手の方だ。中々いい値段になったはずだ。」

 

 「OK!それにしても、沢山転がってるなぁ。何でこんなに残していったんだろ?」

 

 「……さぁな。」

 

 ここの主がどんな結末を辿ったのであれ、俺達には関係の無いことだ。

 例え、自分が生み出したものに殺されていたとしても。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 ミレニアムサイエンススクールの教室の1つ。

 ブルーシートを広げて何かを調べている生徒が居た。

 壁を軽く叩いてこちらに気づかせる。

 

 「……ん?は~い、どちら様?」

 

 あの廃墟の情報をくれた、オーパーツオタクだ。

 丸メガネの奥には、クマが溜まった目が見える。

 

 「オーパーツの買取を頼む。」

 

 「おっ!待ってましたよ、レイヴンさん!もしかして、後ろの皆さんと、あそこに潜ってきたんですか?」

 

 「ええ、そうよ。レイヴンから依頼を受けて、ね。」

 

 「うひゃ~、そりゃ凄いな~。あそこ、うちの調査班が中々入れなくて困ってたところなんですよ。」

 「……もしかして、マスター権限とかも、持ってたり、しませんかね……!」

 

 「このメモリーに。」

 

 データチップを差し出すと、かなり興奮した様子でそれを受け取った。

 廃墟の情報を教えてもらう代わりに、今後の調査のためにマスター権限を渡す、そういう約束だったのだ。

 

 「うひょ~!!ありがとうございます!!これで中に入れる……!ワクワクしてきたぁ!!」

 「あっ!そのオーパーツも高く買い取りますよ!いや~助かりました!」

 「査定終わったら呼びますんで、ちょっと待っててくださいね!!」

 

 そう言うと、オーパーツが入ったバッグをひったくる様に持っていき、中身を調べ始めた。

 それを見ていたムツキが、二の腕を軽くつついてきた。

 

 「……あの人、いつもあんな感じなの?」

 

 「ああ、だが悪い奴じゃない。ただ――。」

 

 ドゥワァ!!チップマルマルノコッテルゥ!!!

 ウヘヘッタカラノヤマダァ……!!

 

 「……ちょっとオーパーツへの情熱が激しいだけだ。」

 

 「……そっか。」

 

 教室の外で待っていると、いきなりドアが開いた。

 生徒の手には小さな紙切れが握られている。

 

 「はい、今回の買取額です!ちょっと額が大きいんで今回は小切手で出させてもらいます!」

 

 「確かに。また頼むぞ。」

 

 「ありがとうございました!またオーパーツを見つけたら絶対に、絶ッッ対に!!私のところまでお願いします!」

 

 「……ああ、覚えておく。」

 

 腰が折れそうな勢いでお辞儀をする生徒を尻目に、俺達は教室を後にした。

 

 「便利屋、今日のボーナスだ。受け取っておけ。」

 

 「ええぇっ!?いいのこんなに!?これって、あなたが渡したデータ代も入っているでしょう!?」

 

 少し歩いた後、俺は小切手をそのまま便利屋に渡した。

 百万単位の金額が書かれた小切手は、アルには刺激が強かったらしい。

 

 「構わない。俺達はデータを回収したかっただけだ。今回は想定以上の成果が出てる。」

 「手付金と思って受け取っておけ。」

 

 「――ッ!相変わらずなのね、レイヴン……。」

 「分かったわ、ありがたく受け取っておく。ただし、条件があるわ。」

 

 「条件……?何だ?」

 

 「私達に、おいしいラーメンを教えること。これが条件よ!」

 

 アルは腕を組み、胸を張りながらそう言った。

 全く、相変わらずなのはお前もだろう。

 

 「アルちゃん素直じゃないな~。仕事の打ち上げで一緒に食べたいって言えばいいのに~。」

 

 「ちょっとムツキ!?そ、そんなんじゃ無いわよ!私はただ、報酬には仕事をしないとって考えてるだけで……!」

 

 「良いだろう、俺も腹が減っていたところだ。チャーシューが旨い店を知ってるぞ。」

 

 「――!そう!それなら、ご一緒させて貰おうかしら!」

 

 そうしてみんなでラーメンを味わった後、俺達は解散した。

 解散した直後に、小切手を無くしたとアルに泣きつかれ、一緒に探し回ったのは、別の話だ。




いよいよ近いうちに、レイヴンが“アレ”を手に入れます。
構想も固まってきたので絶対に乗せます。
乞うご期待。

次回
ロマンを追い求める者
技術屋ってこんなのばっかなの?

次回も気長にお待ちくださいませ……。
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