BLUE ARCHIVE -SONG OF CORAL- 作:Soburero
前話から1ヶ月ぐらいたってると思って読んでください。
ゲマトリア連中の話口調なんも分からん……。
13.研究施設廃墟先行調査
『“アレ”が、預言者を……!?それは確かなのか、黒服よ!』
『ええ、間違いありません、マエストロ。私自身、この目で見ていましたから。』
『単なる偶然では?あの先生も居たのでしょう?』
『そうとも言い切れませんよ、マダム。“アレ”には妙なテクストが付いていますから。』
『……“アレ”について、調べがつきました。』
『結論から言うのであれば、“アレ”には極力干渉しない方が良いでしょう。』
『……それこそ、この“箱舟”の破綻が訪れるまで、か。』
『賛成です。“アレ”のテクストを書き換えた時、シナリオがどう変化するのか、分かりませんから。』
『……本来であれば、興味深いところなのですがね。』
『そういうこった!』
『……まあ、いいでしょう。手駒は他にもいます。』
『ありがとうございます。では、話がまとまった所で、次の議題に移りましょう。』
『あの、シャーレの先生についてです。』
――――――――――――――――――――――――――――――――
『便利屋68。これは独立傭兵レイヴンからの協力要請です。』
『私達は、アビドスに放棄された、カイザーの地下研究施設を調査したいと考えています。』
『あなた達も、この調査に同行してほしいのです。』
『目的は、内部に残されているであろうオーパーツと、そのデータの回収。』
『目的のオーパーツは最奥にあるでしょう。そこに到達するまでは、防衛システムによる抵抗が考えられます。』
『そのため、道中で各所のアクセスポイントを制圧して、防衛システムを掌握します。』
『それと、発見したオーパーツですが、こちらが指定するもの以外は、自由に持ち帰ってください。』
『それを、あなた達へのボーナスとさせてもらいます。』
『最後に、この調査は極めて危険なものとなるでしょう。』
『事前調査で判明している構造は僅かです。先日の不明兵器との戦闘で、崩落している部分もあると思います。』
『私達としては、この調査での命の保証は出来ません。もし依頼を受けるなら、それを念頭に置いてください。』
『それでも協力してくれるなら、報酬は惜しみません。便利屋68、良い返事を期待しています。』
――――――――――――――――――――――――――――――――
便利屋68事務所。
直近の依頼で失敗してしまい、いつもの如く金欠だった所に、よく知る人物からの依頼が入った。
正確には、メールでブリーフィングが送られてきたのだ。
「みんな、聞いてちょうだい!あのレイヴンから仕事が入ったわ!」
独立傭兵レイヴン。今ではブラックマーケットはおろか、キヴォトスでも指折りの傭兵。
どんな危険な仕事も、ほとんどを1人でこなすはずのレイヴンから、指名が入ったのだ。
正直、気持ちが舞い上がってしまう。それだけ私達の実力が認められている、という事なのだから。
「へぇ~、どんな仕事だったの?」
ムツキが横からパソコンを覗いてきたので、ブリーフィングをもう一度再生する。
ムツキに釣られてか、カヨコとハルカもこちらに近づいてきた。
「安心しなさいムツキ、私達にピッタリの仕事だから。」
「報酬はかなり良いし、その上ボーナスも出る!レイヴンの調査に同行するだけでいい!」
「オイシイ仕事だと思わない?」
「社長、最後のところよく見て。命の保証が出来ないってハッキリ言ってるでしょ。」
カヨコはそう言いながら画面を指さす。
ただ、この警告が本気だとは、私には思えないのだ。
「フフッ、甘いわねカヨコ。これは私達を脅かしているだけよ。」
「どれだけの危険が冒せるアウトローなのか、それを試してきてるのよ!」
「絶対そんなことないって……。」
「す、すみません、アル様。私もそう思います……。あのレイヴンが危ないって言ってるくらいですし……。」
「で、でもっ!アル様がやるなら、私はどこでも付いていきますっ!」
珍しいことに、ハルカが私を止めてきた。
でも確かに、ハルカの言う事にも一理ある。
ブリーフィングからして、どんな危険があるのか想定できない、という事なのだろう。
「私は賛成!捨てられた地下施設を調べるなんて、すっごく面白そうじゃん!」
「さっすがムツキ、分かってるじゃない!」
だが、私達だって修羅場はくぐっている。
今更心配される謂れはない。
椅子から立ち上がり、思いっきり息を吸い込む。
「……はぁ、これはもうダメかな。」
「さあ社員達、準備しなさい。愉快な遠足の始まりよ!」
そう声を掛けると、各々が準備を始めた。
自分も愛用のスナイパーライフルを肩にかけ、念のため大きめのカバンも持っていく。
この仕事が上手くいったら、何を買おうか。ボーナスは社員達に渡してしまおうか。
この時の私の頭は、そんな能天気な考えでいっぱいになっていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――
便利屋たちを乗せ、アビドスに向かう輸送ヘリの中。
轟音に包まれながら、アルが口を開く。
「レイヴン!あなたいつの間にヘリなんて持ってたの!?」
「カイザーとやりあった時を覚えているか?あの時、親玉の株式を差し押さえた時の利益で買ったんだ。」
「アッハハ!相変わらずだね!」
そう、あの後ブラックマーケットで大型の輸送ヘリを購入し、移動拠点として作り変えていたのだ。
やはり傭兵をやるなら、移動拠点は個人的マスト。
車両ではなく大型ヘリを選んだのは、ルビコンでのやり方に近づける為でもある。
ゆくゆくは、ある“仕事道具”を運用するためにも、ヘリの方が都合が良かったのだ。
と、ハルカが俺の後頭部を見ながら口を開いた。
「あ、あの!ヘイロー、形が変わってるみたいですけど、大丈夫ですか?」
「ああ、問題ない。ヘイローが変わる奴はたまに居るそうだ。」
「違和感を感じたらすぐに病院に行けとも言われたがな。」
「……ねぇ、レイヴン。」
「どうした?」
「アンタのヘイローが変わったのは、蛇のバケモノと戦った時の、トドメの爆発、その直前だった。」
「あれ、アンタがやったの?ヘイローが変わったことと関係ある?」
「ああ、恐らくな。俺もハッキリとしたことは分からんが、俺のヘイローに関係しているのは間違いないだろう。」
“預言者”を仕留めるために放った、アサルトアーマー。
聞いてみれば、生徒には妙な力を持っている奴が、まあまあいるらしい。
恐らくは、俺もそういった奴らの1人と数えられるだけなのだろう。
だがカヨコはその答えが気に入らなかったのか、眉間にしわが寄っていた。
「……フーン。」
「カヨコ、どうしたの?何か気になることでもあった?」
「……何でもないよ社長。気にしないで。」
『まもなく目標地点です。準備してください。』
「聞いていたな、降りるぞ。」
窓の外を見れば、アビドスの荒野が広がっている。
武器を確認し、カバンを背負って後ろの出入り口近くに立つ。
ヘリに伝わった衝撃が、目的地に到着したことを告げた。
ヘリ後部のハッチが、ゆっくりと開いていく。
ヘリから下りて辺りを見渡すものの、目の前には何の変哲もない基地が広がるばかりであった。
「あ、あれ?普通の基地、ですよね……?」
『地表はそうです。ですが、地下にはさらに大きな空間が広がっています。』
『カーゴリフトを使って施設に入ります。』
「なるほどね。ワクワクしてくるじゃない……!」
ガコンッ!
ブザー音と共に地面が割れていき、大きなリフトがせり上がってきた。
「うわっ!こんなに大きい扉隠してあったんだ!」
「ここから降りるぞ。全員乗れ。」
ビーッ!ビーッ!
暗闇の中をリフトでゆっくりと降りていく。
最低限の光源はあるものの、全体を見渡すには不十分だ。
恐らくは、非常電源によって稼働しているのだろう。
「……随分深いね。」
『それだけ存在を隠しておきたかったのでしょう。あるいは……。』
「……いざとなったら、基地ごと封印するため。こんなに深く作る理由は、それぐらいしかない。」
念のためスキャンしてみると、リフトの行先にタレットが2基。
このまま行けばハチの巣になるだろう。
「……エア、タレットがある。無力化しろ。」
『既に終わっています。IFFを書き換えて、こちらを友軍と誤認させました。』
「仕事速いね~。これならただ探すだけで終わり?」
『そうも行かないようです。今書き換えたのは第1層のセキュリティのみ。』
『より深い第2層、第3層のシステムは、ここからは隔離されています。』
「事前の作戦通りに、潜って行くしかないって事ね。」
「そういう事だ。気を引き締めて掛かれ。」
プシュー
『まずは、アクセスポイントを探しましょう。そこから、より深い場所のシステムに侵入出来るかもしれません。』
リフトが止まり、目の前のドアが開いていく。
中は研究所らしい真っ白な空間が広がっていた。
全員リフトから下りて、施設へと足を踏み入れていく。
「……警備ロボットがたくさん……。」
二足歩行の小さな警備ロボットが展開されている。
だが、ロボットの設計からして、カイザーのそれではないようだ。
どうやら、ムツキもそれに気づいたらしい。
「あれ?アルちゃん、これカイザーのロボットじゃなさそうだよ。」
「どういう事?ここってカイザーの施設じゃないの?」
「……とにかく、先に進むぞ。」
少し見渡せば、部屋の中でロボットアームがオーパーツと思わしきものを解析しているようだ。
ハルカがそれを興味深そうに見つめる。
「あの……、ここにある物って、持ち帰ったら、ダメですかね……?」
『構いませんが、お勧めはしません。あまり価値の有るものは残っていないようなので。』
「……そのようだ。ほとんどが解析済みの品だろう。」
「な~んだ、残念。」
「まあまあムツキ、お宝はもっと深い場所にあるはずよ。それを手に入れれば、一攫千金も夢じゃないわ!」
「生きて帰れれば、だけどね。」
「ちょっ、カヨコ!怖い事言わないで頂戴!」
便利屋達はいつもの調子か。
変に緊張されるよりはいいのだが、さっきのやり取りを聞いていると、どうしても不安になってくる。
そう考えながら足を進め、ドアを開ける。
中は管理センターのようで、大量のモニターがあった。
「ここだ。エア。」
「さて、何が出て来るかしら……?」
『……解析完了。第2層の見取り図を入手できました。』
『ですが、やはりセキュリティシステムは隔離されています。アクセスポイントに向かうしかありません。』
ここまでは想定内。
今の俺達は生身だから、何がセキュリティに仕込まれているのか分からない以上、それを作動させることは避けたい。
「やはりか。よく聞け、ここからが本番だ。下に降りたら俺達は侵入者と見なされる。」
「出来るだけセキュリティに見つからないように動くぞ。」
「油断大敵って事か、了解。」
「OK!それじゃ行こっか!」
「フフフッ……!良いじゃない、燃えて来るわ!」
「は、はいっ!行きましょう!」
「……で、何処から下りるの?」
「階段だ。登りは楽になるはずだから、我慢しろ。」
カンカンカン……
部屋から出て、5階分はありそうな階段を降りた先、次のエリアに入るドアがある。
念のためスキャンすると、やはりと言うべきか、警備ロボットが配置されていた。
「……巡回ロボット、数は多くないが、厄介だな。」
「どうするの?突っ切るわけにも行かないでしょ。」
『……監視カメラの掌握完了、私が誘導します。指示に従ってください。』
「了解、聞いていたな、行くぞ。」
ゆっくりとドアを開け、すぐにロボット達の死角に入る。
アクセスポイントまではそう遠くない。
俺達の実力なら問題ないはずだ。
『まずは右に進んで、角でしばらく待ってください。』
指示に従って進むと、通路の先からロボットが歩いてくる。
第1層とは異なるタイプ。2m程度の、武骨な二足歩行ロボットだ。
ご丁寧に武装されている。
そいつが曲がり角の手前まで来てしばらく立ち止まり、来た方向へと引き返していった。
『そのままロボットの後ろに、2つ目のT字路で左へ。』
ロボットを気づかれないギリギリの距離で追いかける。
1つ目のT字路は問題なくスルー。
エアの指示通り、2つ目のT字路で進む。
「うぅっ……!緊張する……!」
「大丈夫よハルカ、私達なら出来るわ……!」
『通り過ぎたら突き当りまで進んでください。その先のドアが目的地です。』
右から警備ロボットが歩いてくる。
アクセスポイントはその先だ。
ロボットが通り過ぎたタイミングで一気に行くしかない。
「よし、一気に行くわよ……!」
ロボットが離れたことを確認して、ドアに向けて駆け出した。
そのまま何にも見つかることなく、ドアの中に体を滑り込ませる。
全員入ったことを確認してから、見つからないようにドアを閉めた。
バタンッ!
「はぁ~。何とか見つからずに――。」
ガシャン
ガシャン
「……あちゃ~。」
起動しているオートマタ、それも2機。
その手には武器が握られている。
「侵入者を検し――。」
バババババッ!
ズドンッ!ズドンッ!
バスバスバスッ!
ガシャン!ガシャン!
「……エア、どうだ?」
『……侵入は検知されていないようです。このままシステムを掌握します。』
つい便利屋と共に撃ってしまったが、問題ないらしい。
何よりだ。こんな狭いところで大群と戦いたくはない。
「……意外と、どうにかなるもんだね。」
「音響検知は非対応のようだからな。そうじゃなかったら押し入るしかなかった。」
「こ、ここまでは順調ね……!このまま一気に本丸まで――!」
『レイヴン、悪い知らせです。第2層のシステムは掌握できましたが、第3層からはシステム構造が違います。』
『下手にアクセスすると、ロックダウンが発動する仕組みになっています。』
ロックダウン。つまり、下手を打つとここに閉じ込められる、という事だ。
突破する手段がない以上、それを作動させた時点で終わりに等しい。
「何とか回避できないのか?」
『それは難しそうです。短時間のID偽装は可能ですが、その後は強硬突破するしかありません。』
「マズい事になってきたね……。」
「……これが命の保証が出来ないと言った理由だ。」
「偽装の時間が切れる前に、アクセスポイントにたどり着く必要がある。ここからはスピード勝負だ。」
「くっふふ~。やっぱりアウトローの仕事はこうでなくっちゃ。ねっ、アルちゃん?」
「そっ、そうよムツキ!この程度、私達なら、どうってことないわ!」
「さ、流石アル様ですっ……!」
「ハァ……。まあ、ここまで来てるし、付き合うよ。」
カンカンカン……
『ここから先は広い空間が広がっています。目的地はその最奥です。』
念のためスキャン。
エアの言う通り、かなり広い空間が広がっている。
恐らく、俺達が求めている物もここにあるだろう。
「偽装って、ロボットたちも誤魔化せる?」
『問題ないはずです。最悪、私がロボットに侵入して、機能を停止させます。』
「よし、なら一気に行くぞ。」
ガタンッ!
ドアを蹴り開けて全員飛び出す。
最低限の照明で薄暗い空間を、全力で駆けていく。
そこまでしても、ロボット達は俺達に興味が無いような素振りを見せる。
エアの偽装はしっかり効いているらしい。
「す、すごい!本当にロボットが……!」
「無駄話は後だ!メインフレームに近づくぞ!」
「……ここがそうか!って――。」
「カードキー式!?この空間からどうやって探せっていうのよ!?」
頑丈そうなドアの横には、カードキーを読み込むための機械が取り付けられていた。
そもそも、カードキーがこの空間にあるという保証もない。
探せば探すだけタイムリミットが迫る。
「……仕方ない。エア、やれ!」
『分かりました。これからドアをこじ開けます。侵入は検知されますが、これしか方法がありません。』
『ここに居るすべてのロボットが私達に向かってくるでしょう。ドアを開けるまで持ちこたえてください。』
「ウソでしょ!?結構な数が居るのよ!ソレ全部捌けっていうの!?」
「アッハハ!面白くなってきたじゃん!」
「あ、アル様は私が守りますッ!」
「……やるしかないか。」
「ああもう!こうなったらトコトンやってやるわよ!!」
アルがそう言うと、ドアを背に陣形を組み始める。
俺も両手の銃を構え、敵襲に備えた。
あまり動けない状況での防衛戦、どこまでやれるか。
『……始めます。システムにアクセス開始。』
ビーッ!ビーッ!
〔不明なアクセスを検出。ロックダウン発動。侵入者を排除します。〕
「来るぞ、構えろ!」
警告と共に空間が赤く染まる。
ロボット達が一斉にこちらを認識し、こちらに近づいてくる。
射程に入った敵から、鉛玉を叩きこんでいく。
バババババッ!
バスバスバスッ!
ズドンッ!ズドンッ!
「クッ!数が多い……!」
待機していたロボットも起動しているのか、どれだけ撃っても数が減らない。
階段の方を見ると、ロボットが降りてきている。
他の階層からも集まってきているのか。
「でもこいつらだけなら、何とかなるかも!」
〔脅威レベル、上昇。ゴリアテを起動。〕
「ゴリアテ!?こんな場所で戦ったら持たないよ!」
「クソッ!エア、まだなのか!?」
『あと少しです!何とか持ちこたえてください!』
ガシャン!
ドォォォン!
部屋の奥で何かが弾けた。
煙の奥から、白い大きな何かが出てくる。ゴリアテだ。
扉を破壊して侵入してきたのか。
ゴリアテは頭の砲門をこちらに向け、射撃体勢を取ろうとしている。
この状況で頭の主砲を喰らったらひとたまりもない。
「うわわわわっ!!ついに来ちゃったわよ!?」
「全員、俺に集まれ!!」
「えッ!?なんで――。」
「死にたくなければ集まれ!!」
便利屋達が俺の周りに集まっていく。
それを確認してから、目を閉じて、意識を集中させる。
すると、ヘイローに光が集まり、スパークし始めた。
そして、光が強くなったところで、それを解き放つ。
バチバチバチッ!
ブアッ!
ドォォォン!
「――ッ!?これは……!?」
「ば、バリア!?」
パルスプロテクション。
コーラルの群知能に直接干渉することで作り上げる、設置型のバブルシールド。
それが俺達を、ゴリアテの主砲から守ったのだ。
『ロック解除!早くアクセスポイントへ!』
「よし!みんな急いで!」
全員でドアの中に滑り込み、急いでドアを閉める。
ドアの向こうでは、どうにか俺達を仕留めようと、銃声が鳴り響いている。
少しすると、パルスプロテクションが破れたのか、銃弾がドアを叩き始めた。
「エア、急げ!」
『今やってます!』
ドアを破られないようにと、アルとハルカが必死の形相で抑え込んでいる。
銃声が収まったと思った次の瞬間、強烈な衝撃がドアを叩いた。
ゴリアテがドアを殴りつけているのだろう。このままじゃ持たない。
迎撃に備え残ったメンバーが銃を構えたその時――。
〔管理者によるアクセスを確認。ロックダウン解除。〕
アナウンスと同時に、衝撃が止んだ。
一面の赤が白く染まっていく。
足音からして、ゴリアテも帰っていったらしい。
全く、生きた心地がしない。
アルも気が抜けてしまったのか、その場にへたり込んでしまった。
「……止まったようだな。」
「……はあぁぁ、よかったぁ……。」
「だ、大丈夫ですか、アル様!?」
「だ、大丈夫よハルカ……!ちょっと、ちょ~っと、疲れただけだから……!」
「え~、ホントに~?アルちゃん、さっきゴリアテにビックリして無かったっけ?」
「き、気のせいよ!もしそう見えたとしても、それは、えっと……!」
「武者震い……!そう、武者震いしていただけよ!」
「くっふふ~、そういう事にしといてあげる!」
「よくやってくれた、便利屋。お待ちかねの宝探しだ。」
「セキュリティはどうなってるの?」
『管理者権限を奪いました。セキュリティは全て私達の味方です。』
「なら良かった。心置きなく探せるって訳ね。」
「そういう事だ、行くぞ。」
さっきの広間に戻り、照明のブレーカーを上げていく。
強い光に照らされた先にあったのは、俺にとっては懐かしいものであった。
「何これ……!?」
「巨大、ロボット!?」
「うわ~、ゴリアテよりずっと大きいじゃん。」
「す、凄い……!」
「……やはり流れ着いていたか。」
G1ミシガンの乗機、《ライガーテイル》。
惑星封鎖機構の新型機、HC型執行機。
その残骸が、天井のクレーンから吊り下げられていた。
ミレニアムのオーパーツオタクから聞いた話でピンと来たのだ。
俺の機体のほかに、流れ着いている物があると。
「……レイヴン、流れ着いたって、どういう事?」
「……これは、“外”から流れてきたものだ。俺が居た世界からな。」
「えぇっ!?レイヴンって、“外”から来たの!?じゃあ、何でヘイローが!?」
「俺にもわからん。知っている奴が居たら、話を聞きたいぐらいだ。」
「俺達はデータを回収する。その間に持ち帰るものを見繕っておくといい。」
そう声を掛けると、便利屋達は残骸を漁り始めた。
俺はライガーテイルに近づき、機体のブラックボックスにアクセスする。
「……ここに居たのか、ミシガン。」
胴体には、レーザーで焼かれたと思わしき傷跡が、いくつも平行に付いていた。
ミシガンと同等以上の実力で、こんな傷をつけられる武器を使いこなせる人間。
俺はそんな奴を、1人しか知らない。
『……レイヴン、通信ログを回収できました。記録された場所は、ウォッチポイント・アルファ。聞きますか……?』
「……再生しろ。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『……貴様が来るか、V.Ⅳ。アーキバスはG13を送り込んでくると思っていたんだがな。』
『期待通りの相手でなくてすまない、ミシガン総長。』
『……どうやら戦友にも、為すべきことがあるようだ。』
『……貴様らの思惑がどうあれ、レッドガンとして叩き潰すのみだ。』
『……突入しろッ、役立たず共ッ!!!』
『色男が貴様らと踊りたくてウズウズしてるぞ!!奴が膝をつくまで付き合ってやれッ!!!』
『了解です、総長!!』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「………………。」
V.Ⅳラスティ。やはりお前だったか、戦友。
お前は今、どこにいるんだ。
お前も、キヴォトスに来ているのか?
『……ベイラム関係の設計図を回収できました。他に使えそうな情報も回収しておきます。』
「……ああ、頼むぞ。HCはどうだ?」
『今アクセスできました。パルス技術とブースター関連の設計図が残っています。』
『ミレニアムが喜びそうな情報ばかりです。』
「大当たりだな。探りに来た甲斐があった。」
「それにしても、ここの主はブラックボックスに手を付けなかったんだな。」
『手を付けなかったのではなく、付けられなかったのだと思います。』
『アクセスを試みた痕跡がいくつもありますが、いずれも失敗しているようです。』
「だろうな、解析されていたら厄介だった。」
「そういえば、ここの主は誰か分かったか?」
『詳細は不明です。ですが、ログの中に繰り返し出てくる単語がありました。』
『“ゲマトリア”。研究者の集まりのようです。恐らく、ここはゲマトリアの施設なのでしょう。』
「……“技研”を思い出すな。人体実験などしていなければいいが。」
『残念ですが、それは期待できなさそうです……。ログの中には、“ボランティア”や“被検体”という単語も出てきます。』
『“ゲマトリア”……。彼らの目的は一体……。』
研究者の集まり、俺からすればロクなものではない。
“狂った遺産を山ほど生み出した、狂人たちの集まり。”
ウォルターとカーラは、技研をそう評価していた。
恐らくは、そのゲマトリアもそうなのだろう。
そう考えていると、ムツキから声が掛かった。
「ねえレイヴンちゃん!これとこれ、どっちが高いと思う?」
「左手の方だ。中々いい値段になったはずだ。」
「OK!それにしても、沢山転がってるなぁ。何でこんなに残していったんだろ?」
「……さぁな。」
ここの主がどんな結末を辿ったのであれ、俺達には関係の無いことだ。
例え、自分が生み出したものに殺されていたとしても。
――――――――――――――――――――――――――――――――
ミレニアムサイエンススクールの教室の1つ。
ブルーシートを広げて何かを調べている生徒が居た。
壁を軽く叩いてこちらに気づかせる。
「……ん?は~い、どちら様?」
あの廃墟の情報をくれた、オーパーツオタクだ。
丸メガネの奥には、クマが溜まった目が見える。
「オーパーツの買取を頼む。」
「おっ!待ってましたよ、レイヴンさん!もしかして、後ろの皆さんと、あそこに潜ってきたんですか?」
「ええ、そうよ。レイヴンから依頼を受けて、ね。」
「うひゃ~、そりゃ凄いな~。あそこ、うちの調査班が中々入れなくて困ってたところなんですよ。」
「……もしかして、マスター権限とかも、持ってたり、しませんかね……!」
「このメモリーに。」
データチップを差し出すと、かなり興奮した様子でそれを受け取った。
廃墟の情報を教えてもらう代わりに、今後の調査のためにマスター権限を渡す、そういう約束だったのだ。
「うひょ~!!ありがとうございます!!これで中に入れる……!ワクワクしてきたぁ!!」
「あっ!そのオーパーツも高く買い取りますよ!いや~助かりました!」
「査定終わったら呼びますんで、ちょっと待っててくださいね!!」
そう言うと、オーパーツが入ったバッグをひったくる様に持っていき、中身を調べ始めた。
それを見ていたムツキが、二の腕を軽くつついてきた。
「……あの人、いつもあんな感じなの?」
「ああ、だが悪い奴じゃない。ただ――。」
ドゥワァ!!チップマルマルノコッテルゥ!!!
ウヘヘッタカラノヤマダァ……!!
「……ちょっとオーパーツへの情熱が激しいだけだ。」
「……そっか。」
教室の外で待っていると、いきなりドアが開いた。
生徒の手には小さな紙切れが握られている。
「はい、今回の買取額です!ちょっと額が大きいんで今回は小切手で出させてもらいます!」
「確かに。また頼むぞ。」
「ありがとうございました!またオーパーツを見つけたら絶対に、絶ッッ対に!!私のところまでお願いします!」
「……ああ、覚えておく。」
腰が折れそうな勢いでお辞儀をする生徒を尻目に、俺達は教室を後にした。
「便利屋、今日のボーナスだ。受け取っておけ。」
「ええぇっ!?いいのこんなに!?これって、あなたが渡したデータ代も入っているでしょう!?」
少し歩いた後、俺は小切手をそのまま便利屋に渡した。
百万単位の金額が書かれた小切手は、アルには刺激が強かったらしい。
「構わない。俺達はデータを回収したかっただけだ。今回は想定以上の成果が出てる。」
「手付金と思って受け取っておけ。」
「――ッ!相変わらずなのね、レイヴン……。」
「分かったわ、ありがたく受け取っておく。ただし、条件があるわ。」
「条件……?何だ?」
「私達に、おいしいラーメンを教えること。これが条件よ!」
アルは腕を組み、胸を張りながらそう言った。
全く、相変わらずなのはお前もだろう。
「アルちゃん素直じゃないな~。仕事の打ち上げで一緒に食べたいって言えばいいのに~。」
「ちょっとムツキ!?そ、そんなんじゃ無いわよ!私はただ、報酬には仕事をしないとって考えてるだけで……!」
「良いだろう、俺も腹が減っていたところだ。チャーシューが旨い店を知ってるぞ。」
「――!そう!それなら、ご一緒させて貰おうかしら!」
そうしてみんなでラーメンを味わった後、俺達は解散した。
解散した直後に、小切手を無くしたとアルに泣きつかれ、一緒に探し回ったのは、別の話だ。
いよいよ近いうちに、レイヴンが“アレ”を手に入れます。
構想も固まってきたので絶対に乗せます。
乞うご期待。
次回
ロマンを追い求める者
技術屋ってこんなのばっかなの?
次回も気長にお待ちくださいませ……。