BLUE ARCHIVE -SONG OF CORAL-   作:Soburero

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アビドス対策委員会編、いよいよクライマックスです。
多分もう1話、2話で一区切りつくと思います。
さーてどう〆ましょうかね……。


11.小鳥遊ホシノ奪還

「フ、フフッ……。見事……!」

 

 そいつは銃弾と蹴りをしこたま叩き込んでようやく気絶した。

 こいつはヴァルキューレの指名手配犯。

 取り巻きをぞろぞろと引き連れて、自身はヘビーアーマーで身を守って、見境なく破壊活動を行う厄介者だった。

 今しがた壊滅させたが。

 回収手配のために、ヴァルキューレへと連絡を入れる。

 

 『ヴァルキューレへ、こちらレイヴン。指名手配犯を確保しました。回収をお願いします。』

 

 『分かりました。すぐにパトカーが向かいます。』

 

 (エア、今回の賞金額は?)

 

 (200万ですね。他のメンバーも倒しているので、ボーナスも期待できます。)

 

 (上々だな。)

 

 悪くない金額だ。ヴァルキューレにも名前が売れるだろう。

 こちらの仕事は順調の一言だ。

 アロナの方もサーバークラッキングを続けているようで、既に有力な証拠をいくつか確保しているという。

 あとは、カイザーにどう仕掛けるかが問題だな。

 バックドアがバレていなければ、カイザーが焦って動いてくることも無いだろう。

 ゆっくり手段を考えればいい。

 何もイレギュラーが起きなければ。

 

 「レイヴン、お疲れ様です!」

 

 「来たな。こいつの取り巻きがあそこに転がってる。そいつらも回収を頼むぞ。」

 

 「了解しました!治安維持へのご協力、感謝します!報酬の振り込みは後程!」

 

 そう言うと、ヴァルキューレは件の犯人達を担ぎ上げ、装甲車へと放り込んでいった。

 少し手荒な気もするが、俺が気にすることでもないだろう。

 装甲車が走り去った所で、エアから報告が入る。

 

 (レイヴン、先生から通信が入りました。)

 

 (先生から?要件は何だ?)

 

 (分かりませんが、嫌な予感がします……。)

 

 嫌な予感か。

 エアがそういう時は大体当たっている。

 面倒なことでなければいいが。

 

 『”レイヴン、聞こえる!?レイヴン!”』

 

 「落ち着けシャーレ、聞こえてる。要件は?」

 

 『”……ホシノが。”』

 『”ホシノがカイザーに攫われた。”』

 

 「……どういう事だ?」

 

 『”ホシノがカイザーと取引をしたんだ。アビドスを辞めてカイザーに入れば、借金の大半を肩代わりするって。”』

 

 ホシノめ、最後のプランを発動したか。

 こうなるとカイザーがおとなしくしている理由は無い。

 聞いた話だが、書類上ではホシノがアビドス生徒会最後の正式メンバー。

 ホシノが退学すれば事実上生徒会は消滅。

 学区を管理するものが居なくなったとして、自動的に廃校したとみなされることになる。

 カイザーは初めからこれを狙っていたのか。

 

 「……そして取引に乗ったら反故にされて、アビドスにカイザーが侵攻してきた、という事か。」

 

 『”そうなんだ。今、カイザーに立ち向かうための戦力を集めてる。”』

 『”……レイヴン、お願い。ホシノを助けてあげて欲しいんだ。”』

 『”報酬は私が払うから。”』

 

 だが、これで俺達もおとなしくしている理由は無くなった。

 相手が喧嘩を売るなら、俺達はそれを買う。

 ようやく大々的にカイザーに力を振るうことが出来るようになったわけだ。

 

 「……分かった。引き受ける。」

 「報酬はカイザーの連中にツケておく。」

 

 『”レイヴン……!ありがとう!”』

 

 「礼を言うのは早い。敵とこちらの戦力は?」

 

 『”こっちは、対策委員会と、ゲヘナ風紀委員会、それとトリニティのティーパーティーから、榴弾砲を貸してもらってる。実地訓練って名目でね。”』

 『”カイザーは……、よく分からない。でも、大軍なのは確かだよ。アビドスの廃墟に前線基地を構えてるみたい。今からその基地に向かうんだ。”』

 

 風紀委員会はまだわかるが、トリニティからも支援があるとは。

 ヒフミ辺りが話を付けてくれたんだろうか。

 

 「それだけ分かれば十分だ。エア、バックドアは?」

 

 『まだバレていないようです。できる限り情報を引き抜いてから、サーバーを全部焼いてやります。徹底的にやりましょう。』

 

 「了解だ、頼んだぞ。」

 「シャーレ、俺は基地の中央で暴れてくる。その間にホシノを奪還しろ。出来るな?」

 

 『”もちろん、必ず取り戻すよ!それじゃあよろしくね!”』

 

 作戦会議もそこそこに回線は閉じられた。

 先生から送られてきた位置情報は、飛ばせばここから1時間で到着できる。

 こちらも準備を急がなければ。

 

 (カイザーめ、いよいよ強硬手段に出てきたか。)

 

 (正直、勝ち筋は薄いです。ですが、ルビコンでの仕事も、あなたは無理を、その力で通してきました。今回の仕事もそう変わらないでしょう。)

 (あなたなら、私達なら、やり遂げられる。私はそう信じます。)

 

 (……そうだな。やってやろう。)

 

 さあ、カイザーよ。

 砂にまみれてなお生き残った者たちの恐ろしさを、アビドスの牙を、知るがいい。

 《砂被りて、我ら有り》。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 ブオォォン!

 

 バイクのエンジンを限界まで吹かして荒野を疾走する。

 目的地は、カイザーの基地。正確には、その中央だ。

 先生たちとは反対方向からの侵入だ、さぞ混乱するだろう。

 他のメンバーは既に交戦している。

 ヒフミもファウストの名前で榴弾砲を引っ張って来てくれた。

 あとは、俺が戦場を引っ掻き回すだけ。

 前かがみになりギアを上げて、さらにスピードを上げる。

 

 (まもなく相手の射程に入ります。レイヴン、注意を。)

 

 『何だ!?バイクがこっちに突っ込んでくるぞ!』

 

 『弾幕を張れ!近寄らせるな!』

 

 防衛陣地から分厚い弾幕が展開されるが、構わず前進する。

 時折ジグザグに動くことで照準を逸らすことも忘れない。

 

 『この野郎ッ!止まりやがれ!』

 

 あと少しで陣地に突っ込むが、本当の狙いはそこじゃない。

 ハンドルを一気に切って左にずれる。

 その先は、ジャンプスタントに丁度いい岩が転がっていた。

 

 ブオォォン!

 

 アクセルを一切緩めることなく岩に突っ込み大ジャンプ。

 バイクはそのまま乗り捨て、空中から集団に向けて銃弾を撃ち下ろす。

 着地した勢いそのままにスライディングしながら両手で乱射していく。

 

 バババババッ!

 ズドンッズドンッズドンッ!

 

 『がぁああ!!』

 

 『クソッ!基地に侵入された!繰り返す、基地に1人侵に――。』

 

 減速も兼ねて通信しようとしていたカイザー兵にドロップキック。

 左腕で体を持ち上げて、顔面に蹴りこんでやった。

 そんな衝撃を貰えばタダで済むはずもなく、基地の壁まで綺麗に吹き飛んでいった。

 蹴りの反動を利用して足を大きく回し、宙返りしながら着地する。

 周りを見れば、全方位から銃口が向いている。

 

 『レイヴン、前線基地への侵入成功。交戦開始。』

 

 ダダダダダッ!

 

 姿勢そのまま真横に加速、大きく跳躍して無防備な上から鉄の雨を降らせていく。

 着地したら集団の周りを旋回しつつ両手で乱射。

 弾幕を張っているつもりのようだが、こちらを捉えきれていないのは明白だ。

 

 『何だコイツッ!?速すぎる!!』

 

 『とにかく撃て!!やられるぞ!!』

 

 『何をしている!お前たちはたった1人も倒せんのか!?』

 

 通信から聞いたことのある声がする。

 確か、いつぞやのカイザー本社の上層部じゃないか。

 丁度いい、お前もまとめて殺してやる。

 

 『識別完了!こいつはっ……!』

 『独立傭兵レイヴンですっ!各隊に警告!レイヴンが基地に侵入した!』

 

 『レイヴンだとッ!?バカな……!奴らにアイツを雇う金が有るわけが――!』

 『シャーレの先生、貴様か……!』

 

 『”そうだよ、私がレイヴンを雇ったんだ。ホシノを助けて欲しいって。”』

 『”それにこの子は、アビドスの皆の、友達だ。”』

 『”自分が助けてもらったら、その恩を返そうとする。友達が困っていたら、自分の力を使って解決しようとする。”』

 『”レイヴンは、そんな優しい子だ。”』

 『”子供を、生徒たちを平気で苦しめる、お前達とは違う。”』

 『”さあ、ホシノを返してもらうよ!!”』

 

 『貴様ァ……!付近にいる全軍をこちらに呼び出せ!!何としても叩き潰すんだ!!』

 

 『それは違います、カイザー。』

 

 『何だとッ……!?何が違うと言うんだッ!!』

 

 『あなたはもう分かっているはずです。追い詰められているのは、あなたの方だと。』

 『叩き潰されるのは、レイヴンやアビドス、先生ではなく、自分たちの方だと。』

 『あなたは過ちを犯しました。それは、私たちを侮ったことです。』

 『私たちの中に燻っていた炎。それが今、あなたに向けて燃え盛っているのです。』

 『私には分かります。燃え尽きるのは、あなたの方です。』

 

 『そうよ!仲間を痛めつけられて、黙っていられるもんですか!』

 『あなた達全員まとめてケチョンケチョンにしてやるわっ!!』

 

 『風紀委員長としても、私個人としても、あなた達に恨みは無い。』

 『でも、この侵攻を許したら、次はゲヘナに来るかもしれない。それを止めるのは私達の仕事。』

 『悪いけど、撃たせてもらう。』

 

 『そうですっ!アビドスにとって、ホシノさんは大事な先輩なんです!』

 『ずっと一緒だった友達が居なくなるなんて、私はそんなの嫌です!』

 

 『よくも今までさんざん苦しめてきたわね!覚悟しなさいッ!!』

 

 『人の先輩を誑かす悪い大人には、お仕置ですっ!』

 

 『私達を繋ぐものは、このアビドスしかないんです。だからこそ、本気で守ります!』

 

 『ホシノ先輩を、返せッ!!』

 

 『このッ……!クソガキ共がァァァアアアアッ!!!』

 

 よく吠える、自分が招いたことだというのに。

 どうやら流れはこちらにあるようだ。

 このまま押し切らせてもらう。

 弾幕を掻い潜りながら大きく接近、銃を乱射しながら蹴り飛ばして数を減らしていく。

 

 (レイヴン、近くに待機状態のパワーローダーを見つけました。制御を奪えないか、試してみます。)

 

 (了解だ、手早く頼むぞ。)

 

 『な、何だ!?パワーローダーが、勝手に!?』

 

 『緊急停止急げ!!』

 

 『よせ、構うな!退避しろ!!』

 

 (強奪成功、あなたの方まで運搬します。)

 

 流石エアだ、仕事が早い。

 報告から僅か、ドスンドスンという重機特有の足音が響く。

 直後、大きな影が壁を飛び越えてきた。

 勢いそのままこちらの近くまで接近、敵との射線を遮るように着地した。

 

 ドォォン!

 

 『レイヴン、搭乗を!』

 

 四角い箱から手足が生えたようなデザインのパワーローダーが跪き、頭頂部のハッチが開いた。

 差し出された左手を足場に駆け上がり、ハッチの中へ体を滑り込ませる。

 シートに体を預け、足をペダルまで運び、操縦桿を握る。

 すると機体が立ち上がり、ハッチが閉鎖された。

 

 ガシャン!バシュー

 

 『制御システムの書き換え開始。』

 『脳深部コーラル管理デバイスに接続、ニューラルリンクを確立。』

 『運動系のキャリブレーション開始、火器管制システムの制御をすべて変更。』

 『全アクチュエーターのリミッターを解放、動力経路を再設定、最適化、完了。』

 『ニューラルリンクのフィルターを解除、システムとの直結完了。全情報の共有を開始。』

 

 自分と機体が繋がっていく。

 パワーローダーが、自分の体へと書き換えられていく。

 センサー、レーダー、FCS、各種火器、アクチュエーター。

 機体の全てが自分に繋がっていく。

 もはや懐かしい感覚だ。

 調整が完了すると、自身の体は何回りも大きくなっていた。

 右手はガトリングガンに、両肩にはミサイルポッドが、両足は跳躍力を重視した獣の足へと変わっていた。

 背中には、翼の代わりとなるブースターが取り付けられていた。

 

 『メインシステム、戦闘モード起動!』

 

 俺はまた、鋼鉄の巨人となったのだ。

 

 『マズい、パワーローダーが奪われたぞ!!』

 

 『落ち着け!訓練も無しにアレが動かせるか!』

 

 『レイヴン、この機体はMT程度の性能しかありません。あなたの技量には追い付かないでしょう。』

 『何とか限界性能を引き出してみます。無理はしないでください。』

 

 こちらを止めようと乱射してくるが、小銃弾程度なら問題にならない。

 右手で敵集団に向けて掃射し、大きく薙ぎ払う。

 前線が崩れたらそのまま突撃、左の裏拳で兵士たちを吹き飛ばしていく。

 拳を振っている間に後ろに控えた戦車にロックオン、後ろに飛び下がりながらミサイルをばら撒く。

 

 『うおぁぁああ!?!?まともに動かせないんじゃ無かったのかよぉぉ!?!?』

 

 『カラス野郎ッ!!どんな手品を使いやがった!?』

 

 手品ではない、技術だ。

 そういえば、手品も複数の技術の集合体らしい。

 誉め言葉として受け取っておこう。

 そう考えていると、遠くで基地の壁が破られた。

 土煙の先には、自分と同じパワーローダーが立っている。

 

 『こちらアンヴィル2、レイヴンは俺がやる!全員下がれ!』

 

 『敵のパワーローダーです!レイヴン、応戦を!』

 

 ブースターを吹かして地面を滑りながら急接近、ガトリングをばら撒いて牽制する。

 相手も負けじと弾幕を張ってくるが、両足でブレーキを掛けながらブースターを一瞬限界以上に吹かすことで横にクイックブースト。

 そのまま周りを旋回しながら20mm機関砲弾を叩きこんでいく。

 

 『クソッ、ちょこまかと……!』

 

 相手はもうこちらの機動性に対応しきれていない。

 急減速しつつ大きく跳躍、装甲の薄い上からミサイルを叩きこむ。

 だが相手もこちらを捉え、ミサイルを放ってきた。

 近くの建物に身を隠しミサイルを回避。

 直後に建物を飛び越えて残ったミサイルを全て叩き込む。

 

 『クソッ!!パワーローダーにそんな動きが出来るわけがッ……!?』

 

 相手の機体は装甲がいくつも剥がれており、もう限界といた様子。

 このまま一気に仕留める。

 ブースターの安全装置を外し、限界以上の推力で突撃。

 右肩からぶつかることで、撃ち切ってデッドウェイトと化したミサイルポッドを強引に切り離す。

 勢いそのまま左手で相手の右手を掴み、肘を蹴り飛ばして破壊する。

 右手のガトリングを振りぬくことで追撃。

 

 『グアッ!』

 

 『敵機、右腕破損!』

 

 右手で相手の機体を抑えながら肩を引き外し、頭を掴んで強引に引き寄せる。

 その直後、腕があった場所には、既に発射準備が整ったガトリングが突き付けられていた。

 20mm砲弾がコアブロック目掛けて叩きつけられる。

 

 『ま、待てッ!た、助け――!!』

 

 そんな命乞いが聞こえた瞬間、右手が機体に深く突き立てられた。

 パイロットを失った機体が、ゆっくりと地面に倒れこんでいく。

 右手を引き抜くと、機械の血液であるオイルが、べったりと付いていた。

 

 『敵機、パイロットダウン。お見事です。』

 

 ゆっくりと敵部隊へ降りかえると、信じられないものを見た、という顔が大半。

 と、そのうちの1人が急に銃を投げ捨てた。

 

 『クソッ!!もうやってられるか!!俺は降りる!!!』

 

 『ハアッ!?何言ってんだよお前!!残って戦え!!』

 

 『ふざけんな!!!こいつと戦う給料は貰ってねえんだよォォ!!!』

 

 そのまま基地の外へと駆け出して行った。

 こいつは見逃してやろう。倒したところで弾の無駄だ。

 再び集団に目を向けると、残ったカイザー兵の大半が銃を捨てて逃げ始めた。

 

 『カイザー兵、逃走を始めました。もう一押しです。このまま仕留めましょう。』

 

 『分かった!皆、聞いたね!絶対にホシノを助けよう!!』

 

 『『『『オォーーーッ!!』』』』

 

 『何が、何が起きている……!?こんな、ふざけた奴らにッ……!』

 

 ふざけた奴ら、か。

 俺からすれば、ふざけているのは、お前達の方だ。

 

 「ふざけてなどいないさ、カイザー。」

 「お前は俺達と敵対することを選び、俺達はそれに力で応じた。」

 「お前は、初めから選択を間違えたんだ。」

 「これは、お前が招いた結末だ。よく味わうといい、カイザー。」

 

 『カイザーPMC理事の位置を特定しました。あなたを放り投げれば、直接乗り込めます。』

 

 「分かった、やれ!」

 

 ハッチから乗り出し、差し出された左手の上に乗り込む。

 砲丸投げの要領で投げ飛ばすらしい。

 エアが機体の制御を引き継ぎ、投げの姿勢をとっていく。

 

 『弾道計算開始、重力、風速補正完了。』

 『左腕アクチュエーター限界出力。』

 『射出します。』

 

 放り出されてしばし滞空、テントに向けて落下し始める。

 落下しながら、親玉と思わしきシルエットを避けながら乱射。

 

 バババババッ!

 ズドンッズドンッ!

 

 「ぬぉおああっ!!」

 

 着地するころには、カイザー理事のみがそこに立っていた。

 銃を向けながらゆっくりと近づいていく。

 

 「これでチェックだ、カイザー。」

 

 「何をっ……!」

 

 服の内側に手を突っ込んだ。銃を取り出す気か。

 すかさずこちらに向けかけられた右手を打ち抜く。

 衝撃によって、小型のハンドガンが吹き飛ばされていった。

 

 ズドンッ!

 

 「がぁっ!ぐっ……!」

 

 「余計な真似はするな。全部隊の武装を解除させろ。」

 

 「……何が、何がお前を駆り立てる。金か?名声か?それとも、友情などという下らんものか?」

 

 カイザー理事が後ずさりながら説得を始めた。

 見苦しい事この上ない。さっさと負けを認めればいいものを。

 

 「武装を解除させろ。今すぐに。」

 

 「私なら、お前が望むものを全てくれてやれる。今からでも遅くない。私と――。」

 

 ズドンッ!

 

 「がああぁぁっっ!!アアァアッ!!」

 

 「次は頭だ。3度目は無い。」

 

 耳障りになってきたので膝を撃ち抜いて話を止めさせる。

 理事は痛みに耐えかねて地面へと倒れこんだ。

 流石に状況を理解したのか、体を支えながら無線機へと近づいていく。

 

 「――ッ!いいだろう、望みを聞いてやる……!」

 「こちらクラーケン、全部隊に告ぐ。武装を解除して投降しろ。これは命令だ。」

 「……我々の負けだ、諸君。」

 

 「それでいい。」

 

 『”レイヴン、丁度こっちもホシノの救出が終わったよ。本当にありがとう!”』

 

 先生の方も作戦が上手くいったようだ。

 ホシノの声が無線に届いてくる。

 

 『そっか、レイヴンちゃんもいるんだ……。巻き込んじゃって、本当にごめんね。』

 『それと、助けてくれて、ありがとう。』

 『ただいま。』

 

 この野郎、俺たちがどれだけ苦労したのか分かっているのだろうか。

 色々と言いたいことはあるが、取り合えず――。

 

 「……おかえり、大バカ野郎。」

 

 『うへっ!?大バカ野郎はひどくない!?』

 

 『ん。今回のホシノ先輩は大バカだよ。』

 

 『そうよ!何でカイザーとの取引に乗っちゃうのよ!ホシノ先輩のせいで本当に大変だったんだから!!』

 

 『う~ん、今日はちょっと味方できないですね☆』

 

 『せめて私達に一言相談してください!私達はそんなに頼りないんですか!?』

 

 『……うへへっ、みんな、ホントにごめんよ~。次からはちゃんと頼るから、許して~。』

 

 『あはは……。とにかく、ホシノさん、ご無事で何よりですっ!』

 

 『うん。ファウストちゃんもありがとね。』

 

 全く、しばらくホシノには誰かが付いていたほうがいいだろうな。

 まあ、俺が言わずとも先生が買って出てくれるだろう。

 

 「見事ね、レイヴン。」

 

 「ヒナか。部隊の状況は?」

 

 「こちらの損耗は最小限で済んでる。あなたのおかげで敵の前線が混乱していたから。」

 

 『悔しいですが、あなたの功績は認めざるを得ませんね、レイヴン。』

 

 「お疲れ様です、レイヴン。」

 

 「本当に助かったけど、敵陣の中央に飛び込むって無謀過ぎないか……?」

 

 風紀委員会も揃い踏み、増援を抑え込んでいたのはこいつらだったか。

 随分な数が来ていただろうに、頭が下がる思いだ。

 

 「レイヴン、こちらも仕事が済んだわ!全員投降してあなたに平伏してる。」

 

 「すごかったよ!親玉を一気にやっちゃうんだもん!」

 

 「ホント、助かったよ、レイヴン。お疲れ様。」

 

 「あ、ありがとうございます!助かりました!」

 

 「便利屋、お前達も来ていたのか。」

 

 便利屋も来ていたようだな。

 先生から依頼を受けたんだろう。

 キヴォトスに来てから、随分と知り合いが増えたものだ。

 

 「なっ!?何で便利屋がここに居るんだ!自分から捕まりに来たのか!?」

 

 「ちょ、そんなんじゃないわよ!ただ、先生が私達に助けを求めてきたから答えただけで――!」

 

 ”そうだよ。助かったよ、アル。それにみんな、本当にありがとう。”

 

 「――ッ!先生!」

 

 「シャーレ、アビドス。」

 

 「……貴様ら。」

 

 カイザー理事と生徒たちが向かい合う。

 奴らにもう切れるカードは残っていない。

 残っていたとしても、俺たちが焼き払うだけだ。

 カイザー理事の顔を見つめながら、先生がゆっくりと口を開く。

 

 ”カイザー理事。”

 ”もうお前達の力は必要ない。”

 ”アビドスから手を引いて、後は私達に任せて。”

 ”これからの問題は、私達で解決していくから。”

 

 「……解決出来ると思っているのか?砂嵐に、武装組織、莫大な借金も。」

 「本当に、子供たちの力で解決できると?」

 

 ”やって見せる。私の生徒たちが、それを望んでいるのなら。”

 ”私はそれを、出来るだけ手助けする。”

 ”それが、大人である、私がすべきことだから。”

 ”責任は、私が背負うよ。”

 

 「……ハ、ハハハッ……!いいだろう、好きにしろ。」

 「いずれ後悔するだろうがな……!」

 

 『いいえ、あなたには今後悔してもらいます。』

 

 「――ッ!?何を言って――。」

 

 ガァン!

 

 「ガッ!貴様、何をする!?」

 

 ”えっ!?レ、レイヴン!?”

 

 頭を押さえつけて手を後ろ手に縛りあげる。

 縛り終わったら首根っこを掴んで外まで運び、適当な場所でうつ伏せに寝かせる。

 

 ドスン

 

 「パ、パワーローダー……!?」

 

 エアの制御するパワーローダーが、カイザー理事に向けて、ゆっくりと歩き始めた。

 何が起こるのかを察した理事が、芋虫のように暴れだす。

 

 ドスン ドスン ドスン

 

 「まさか……!?レイヴン、今すぐこれを外せ!!」

 

 「外して欲しいなら、それ相応の言い方があると思うが。」

 

 ドスン ドスン ドスン

 

 「わ、分かった!お前にボーナスを出す!報酬の倍だ!!」

 

 ドスン ドスン ドスン

 

 「ぐっ!?なら、3倍!3倍でどうだ!?」

 

 ドスン ドスン ドスン

 

 「そ、そうだ!アビドスの連中にもボーナスをやろう!復興資金に充てるといい!!」

 

 ドスン ドスン ドスン

 

 「ぐっ!ヌゥゥ……!」

 「――帳消しにする!!!」

 

 ドスン

 

 理事の一言をきっかけに、後1歩で踏みつぶされるといったところで、パワーローダーの歩みが止まった。

 理事がそのまま言葉を続ける。

 

 「アビドスの借金を、私の権限で帳消しにする……!それでいいんだろう……!?」

 

 「分かっているなら早く言え。」

 

 手を縛っている結束バンドをナイフで切って解放する。

 理事が立ち上がると、スマホを操作し始めた。

 何かしてくる可能性もあるが、そうして来たら撃ち殺せばいい。

 

 「……終わったぞ。これでいいんだろう。」

 

 『……アビドスの借金の消失を確認しました。これで返済義務も消失します。』

 

 「全く、油断ならないガキだ……。」

 

 『それと、伝えておきたいことがあります、カイザー理事。』

 

 「何だ!私はもう――!」

 

 膝に手を付いて息を整えている理事だったが、エアの言葉はなお続く。

 恐らく、こいつにとって最悪の言葉が。

 

 『カイザー本社は貴方を解雇することを正式に決定したそうです。』

 

 「――は?」

 

 『児童誘拐、人身売買、アビドスに対する不当な貸し付け、インサイダー取引などの証拠を、ヴァルキューレ、クロノス、そして連邦生徒会にタレこみました。』

 『ついでに、その情報が入っていたサーバーも焼いています。そのサーバーに繋がっているサーバーも含めて。データの復旧は出来ないでしょう。』

 『タレこみの被害は既にカイザー全体に伝わっています。本社は責任をあなたに押し付けるつもりです。』

 『負債を回収するために、あなたの財産は全て本社によって差し押さえられます。』

 

 「何を……、言ってる……?なぜ、私が……?」

 

 『つまるところ、あなたはもう用済み、という事です。』

 『不憫ですね、助けてくれる相手もいないなんて。』

 

 「――ッ!貴様ッ……!」

 

 理事が俺を睨みつけてくる。

 恨む相手が違うぞカイザー。

 過去の己の選択を恨むがいい。

 

 「カイザー、1つ教訓を贈ろう。」

 「1度生まれたものは、そう簡単には死なない。」

 

 「貴様アアアアアアアッッッ!!!!!」

 

 ダァン!

 ダァン!ダァン!

 

 「火種から消すべきだ。」

 

 こちらに向けて駆け出そうとした所に、M500を頭に1発。

 倒れこんだら続けてもう2発。

 頭からバチバチと火花を散らし、理事は完全に黙り込んでしまった。

 これで、火種は消えた。しばらくはカイザーも大人しくなるだろう。

 

 『……口座の差し押さえが完了しました。匿名の寄付金として、アビドスに送金させてもらいます。』

 『株式も差し押さえようかと思ったのですが、時間が掛かりそうです。』

 

 「十分だ。よくやったな、エア。」

 

 エアの仕事も済んだ所で、沢山の視線を背中に感じる。

 振り返ると、俺以外の全員が、俺の所業に絶句していた。

 

 「「「「「『”………………。”』」」」」」

 

 「「『「………………。」』」」

 

 「「「「………………。」」」」

 

 「……何だ?」

 

 ”……レイヴン。やりすぎ……。”

 

 「……ハァ。」

 

 止めろお前達、そんな目で俺を見るな。

 これが一番早いんだからしょうがないだろう。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 カイザーにアビドスから引き上げることを約束させ、先生一行は安全な場所まで移動することになった。

 その道中では、和気あいあいとした会話が続いている。

 ちなみに、パワーローダーはアクチュエーターが焼き付いてしまったため、基地で乗り捨てている。

 

 「いや~、ホントに借金が無くなっちゃうなんて思ってなかったよ~。」

 

 「……過程は真っ黒だったけどね。」

 

 『委員長!今すぐにでもレイヴンを捕まえるべきです!あんなことまでしたんですよ!』

 

 「アコちゃん落ち着きなって……。」

 

 「それにしても、見事な腕前だったわね。その……、何かコツとかは有るの?」

 

 「え~?おこちゃまのアルちゃんには厳しいんじゃない?」

 

 「ちょっと!?どういう事よ!?」

 

 『……あれ?なんだか、揺れてませんか?』

 

 ”本当だ。地震かな?”

 

 地面が小さく揺れている。

 ここまでであれば大したことは無いのだが――。

 

 「……変に長い。嫌な感じ。」

 

 ドォン!

 

 突如、地面から大きく突き上げられる。

 まるで、何かが地面の下で暴れているような揺れ。

 レイヴンにはこの揺れ方に、ある存在を思い出していた。

 

 「うわぁ!かなり大きいぞコレ!」

 

 ”みんなしゃがんで!頭を守って!”

 

 『レイヴン、巨大な熱源がこちらに接近しています!あちらの方角から、何かが……!』

 

 エアが指し示した方向から、砂煙が上がっている。

 しかも、それはこちらに近づいてきていた。

 近づいてくるたび、揺れは大きくなる。

 

 「熱源!?エア、熱源って何なのよ!?」

 

 「……ロクなものじゃないのは確かだ……!」

 

 『……地中から、来ます!』

 

 ドォン!

 

 地面から顔を出したのは、巨大な白蛇のような機械。

 4つの目に、白磁のような装甲、口の中には鋭い牙。

 とぐろを巻きながらもたげた頭の上には、ヘイローが浮いている。

 そしてその目は、こちらを捉えていた。

 

 「……何、アレ……!?」

 

 「蛇の、バケモノ!?」

 

 「……アイス、いや、サンドワームか!」

 

 ”みんな、今すぐ逃げるよ!!”

 

 「無理だ、逃げられる相手じゃない!奴の狙いは俺達だ!」

 「全員、構えろ!!」

 

 ギュオァアアアア!!!

 

 「もう一仕事だ……!」




ようやく戦闘モードを起動させられました!
やっぱACはこれがなきゃなぁ!

次回
ジャイアントキリング
それは、奇跡の親戚にすぎないのか

次回も気長にお待ちくださいませ……。
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