MODマシマシマイクラ世界で鍛えられたので透き通る世界も多分いける 作:ナナの四六三
黒い塊を指し示し、何故か隣で自慢げな顔をする少女──いや、中身は青年だったか──に私の不信感は薄れつつあった。アビドス砂漠に謎の構造物が現れたのを
トランシーバーを取り出した少女が指示を出し、数十秒後、黒い塊の一部が動き出した。一部と言ってもゆうに縦横十メートルを超える規模はあるのだが、それが二つに分かれ、内側に動き始めたのだ。一切の音を発することなく滑らかにスライドする様は見ていて違和感しかない。まるで出来の悪いゲームの大扉じみた動き──マイクラは出来の悪いゲームじゃありません!!!今調整中なんです!!!──なんだ今の。軽く頭を振って違和感を振り払い、不思議そうにこちらを見る少女の隣へ歩み寄る。そういえば──
「自己紹介を忘れていましたね。私の名前は──」
◇◇◇
「私の名前は
「え?
急にノイズ音が俺の口から発せられ、彼女は眉を顰めた。ちょっとは慣れたものの、聞くに堪えない不快な音に、俺も似たような顔になる。
「すいません。本名を言うとこうなるので……ヴィルシーナと」
「……なるほど。よろしくお願いします。ヴィルシーナ」
「よろしく……え〜と、会長」
「え、■■って呼んでくださいよ」
「いやちょっとキツイっす」
初対面の女の子名前呼びはね。前世の苦い記憶が蘇る。本気で嫌な顔をする俺を見て、連邦生徒会長はふむ、と考え込む。数秒ののち、顔を上げた彼女はいい笑顔で言った。
「では、折衷案にしましょう。『■■ちゃん』はどうですか?」
「いや変わんないからそれ」
にっこりと微笑んだ彼女から目を逸らし、俺は拠点の中へ踏み入った。
「まあそれはともかくとして、ようこそキヴォトス第一支部へ!連邦生徒会長!」
とは言ったものの、内部はまだ建築中な上に、大した設備は設置されていない。俺たちの本部はあくまで
「……これはすごいですね。えっと、あのカクカクした人たちは……?」
「おっと、すまん説明が抜けていたな。我が国民たちだ。敵ではない」
と言ってもどこからどうやって話したものか。リアルに目の前に現れたら怖いやつ上位に位置するクラフター(身長2m弱)に、それなりの恐怖を感じているらしい。結局俺は適当に話をでっち上げることにした。彼らはマインクラフターと呼ばれるスティーブを始祖とするモノ作りの得意な種族であること、ブロックでできた世界に生息していること。まああながち間違ったことは言ってない。その後はただ事実を述べた。スティーブパワーを手にした俺が彼らの世界に迷いこみ、何やかんやあって王と慕われるようになって、旅をして、キヴォトスに迷い込んだのだ、と。ちなみにクラフターの中にスティーブスキンをしている者は存在しなかった──似ている者はいたが──のでこの考察も間違いでは無いのかもしれない。
「なるほど……」
「俺たちはキヴォトスを抜けて次の世界へ進む予定だが、そのためにはここのボス格を全部潰さにゃならん。で、それにはあんたがこれからやろうとしてること。それを手伝うのが1番効率がいい」
「だから協力すると?」
「そういうこと」
というのも、実は今までの旅でバージョンの壁を越えるには、少なくとも全てのボスを討伐する必要があった。そうしないとバージョンの壁に弾かれるのである。これは多分俺が大抵の場合全ボス討伐を目標にしてマイクラをプレイしていたからだと思われる。そんなの関係あんのかよと思われるかもしれないが、創作の世界ではそういうことがよくあるのだ。ご都合主義というやつである。キヴォトスにこれを当てはめると、我々が倒すべき敵は何体いるんだコレ。ベアおばでしょ?ビナーでしょ?色彩でしょ?ゴズでしょ?デカグラでしょ?後知らねえ。さらに言えば生徒も討伐目標に含むか否かで結構話が違ってくる。全ネームド生徒
「まあそういうわけで、まずは俺たちの戦力を知ってもらいたい」
「手の内を見せてしまっていいのですか?」
「かまわんさ。これからさらに研究開発も進む予定だしな(白目)」
というわけで一通りの設備が揃った工業エリア、魔術エリア、採掘場、住宅地を案内して、最後に辿り着いたのは訓練所。あらゆる武器や魔法の試し撃ちによく使われているターゲットダミーがいくつか並んでいるだけの簡素な訓練所だ。敷地は1番広くとってある。
「ま、今のじゃよく分からなかったよな」
「ええ、まあ、何の設備なのかまでは……」
「核融合炉はわかりやすかっただろ」
「あれは驚きました……」
結構派手だからなあの施設は。そこそこ以上にコストはかかるが、運ぶのがめんどくさいから建てちゃったのだろう。クラフターはそういうところ採算度外視なんだよな。ビナーに破壊された時の被害が怖いなぁ。一応
「さて、そんでまあ今から見せるのはあの設備たちを使って作り出された王国の兵器なのですが……」
「はい」
「ま、見せてもよく分からんと思うので派手に戦ってもらいましょう」
瞬間、よく分からんという言葉にムッと不機嫌になる気配を感じたのでそれを全力で無視。俺は声を張り上げた。
「
目の前の広大なフィールド、向かい合う2人は同時にお辞儀をし、試合が始まった。
魔導士のローブを纏った見るからに魔術勢な1人とクアンタムを身につけた工業勢が1人、映えるようにやれと言ってあるので、瞬殺で終わることはないはずだ。双方本気装備ではないので、最悪ロストしてしまってもいい。魔術勢が自身にバフをかける間、工業勢は余裕を持って見つめている。
バフをかけ終えた魔術勢が取り出したのは一冊の本。アイアンなんたらと言う新興の魔術MODの本だ。ティアは……え?5?慌てて工業勢の方を向くと、そちらが取り出したのは超凶悪な銃。防御全貫通の1発10ダメくらいのツヨツヨ武器だ。エンチャントの輝きが眩しい。……あれ?双方なんか殺意高くね?それを認識した瞬間、雷が迸った。魔法である。エフェクト強化されてんなぁ!!!リアル志向に!!!
「ちょっ」
「あぶっ!!」
こちらに飛んできた攻撃を防ぐのを忘れていた。
しかし、跳ね回る魔術勢になかなか銃弾は当たらず、当たったとしても魔術によるダメージカットもあるし、お手軽回復魔法のヒールですぐに回復されてしまう。工業勢はジリ貧と言っていい。魔術禁止を言い渡しているので、回復はバンテージ頼りになるし、敵は防御貫通攻撃持ちだ。結局工業勢は逃げ回る魔術勢を捉えきれずに削り負けた。へにょへにょ、とクラフターの体から力が抜け、煙となって消滅する。後には首の乗った墓だけが残された。バフをかけてる間に殺せばよかったのに……(畜生ロボ並感)その場合は飛び跳ねながらバフしてたか。
「ま、今回はこういう決着になったが、本来なら工業勢も魔術を使って戦うだろ。となると回復のリソースも互角になるし、突き詰めていけば結局はどっちが先に即死級の攻撃を叩き込めるかってとこだな」
「殺しちゃダメでしょ!?」
「別にあいつらも俺も死んでも死なないって、あれ?言ってなかったっけ?さっきのも死んだんだぜあれ。まあ見せようか。死んでもいい奴、こっち来い」
ついさっき全ロスして──なお、その顔はわざわざスキンを変えたらしくFX顔になっていた──自暴自棄になった観客の1人が腰を上げた。近場のベッドを叩いたのを確認して、俺は無造作に取り出した
そして2秒もしないうちに先程のクラフターがベッド上空に現れ、歩いてきて墓を荒らして、ぺこりと一礼して去って行った。ちなみに墓の中から出てきたのは大量のフグだった。あなた、疲れているのよ。
「まあ見ての通りだ。俺たちは死なないし、わりかし強いからな、戦力に数えてくれていいぞ」
「あなた達本当に生物ですか……?」
失礼なことを宣う連邦生徒会長だこと。人間ではないが、立派に意志を持ってるぞ俺たちは。それに俺だってスティーブパワーを持つだけのただの超人だよ。多少精神崩壊してるかもしれんが。しゃあないんや、狂わないとあれはやってられん。痛いし。
グゥ、とお腹のなる音がした。見れば、空腹ゲージが3つを割り込み、
「……」
「うん、まあ、はい。レストランに行きましょうか」
無言の抗議に屈した俺は、会長を食堂に連れていく。オーナーはたった今冒険から帰ってきたところらしく、キヴォトスには栄養素豊富な食材がたっぷりある!!!と大興奮している。どうやら勝手に街に出て色々買ってきたらしい。街の皆さんには新型のロボってことでどうかスルーしてくれませんかねぇ。今日のオススメメニューはそんなキヴォトス産のトマトを使った料理ということで、サラダとトマト煮込み、ドリンクはもちろんトマトジュース。トマトばっかり。次々と調理され、カウンターに並べられていくオススメメニューを引っ掴んで席に直行、2秒でジャクジャクと皿ごと平らげてしまったクラフターの一人を見て連邦生徒会長はちょっと顔色を悪くした。
「……もしかしてここではあれが正しい食べ方なのでしょうか……?」
「うんまあそうだけど、俺たちはゆっくり食べようか……」
と言っても会長はピクセルを食べることは出来ないだろうし裏技を使うとしよう。ある時のことである。その日俺はラーメンを持ってぼーっと久しぶりにリアルラーメン食べたい……と考えていた。そしたらいつの間にかリアルラーメン持ってたってわけ。これが俺のチート能力かなんなのか知らないが、マイクラアイテムに気合い注入すると
俺がシェフから受け取り、設置したサラダは瑞々しく、トマト煮込みは熱々だ。サクラMODのお盆の上にはパンが
「「いただきます」」
クラフターとなって早何年か忘れたが、こうしてゆっくり食事を摂ることがなかったから新鮮だ。今まで大体いただきもしゃもしゃ、ご馳走様!!だったからな。効率という面でもそうだが、悠長に飯を齧る暇は無かったのである。黙々とスプーンを動かし、パンをちぎって口に運ぶ。懐かしい食事の仕方に手間取るかと思ったのだが案外覚えているものだ。
「「ごちそうさまでした」」
それと同時にサラサラと端から崩れ落ち消滅する食器を見て目を剥く会長が面白かった。
ヨシ!アンケートよろしく!あとチャンネル登(殴。