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J/53  作者: 池金啓太
九話「悪魔と踊る異国のワルツ」
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中間管理の気苦労

静希達はまずニコラスを呼び出してテッド達のいる駐屯地へと向かった


昨日の報告を含めた最終確認の為である


駐屯地へ向かうとそこはずいぶんと慌ただしそうにしておりあちこちで走っている隊員とすれ違った


いつものようにボディチェックを受けて静希が中に入ると隊員に何か指示を飛ばしているテッドの姿がある


こうして見てみると実際に人の上に立つ人間がどれほど大変なのかがわかる


書類と格闘しながら部下に指示を飛ばし上とかけあいながら現場を整える


ある種の才能かカリスマがなければ務まらないであろうことは見るだけでも理解することができた


部下が部屋を出ていくのを見送ると同時に静希が来た事に気付いたのか僅かにため息をつきながらこちらに目を向ける


その瞼の下には僅かに隈ができており明らかに睡眠不足であることがうかがえる


恐らく昨日静希が話をした後から不眠不休で活動していたのだろう


こうしてずっと行動している人を見ると自分が怠けているように思えてなんだか居心地が悪い


「あぁ・・・ミスターイガラシ・・・その後首尾はどうだ?」


「え、えぇ・・・こちらは問題なく交渉を終了しました・・・作戦行動に問題はありません」


そうかと疲労をあらわにしながらつぶやいてまた書類と格闘しながらどこかへと連絡をつけながら副長と打ち合わせを始める


向こうはそれでもいいかもしれないがこちらとしてはそれだけでは済まないのだ


「二つほど頼みがあるんですが、構いませんか?」


「あぁ・・・手間にならないことを頼むぞ、こちらはかなり切羽詰まっている」


それははたから見ても明らかだ、栄養ドリンクくらい差し入れで持ってくるべきだっただろうかと同情しながら静希は手元から二枚のメモを取り出す


「これを用意してほしいんです、作戦行動前に必要になるでしょうから」


「これは・・・そうだな問題ない、ウォルト、ニコラスに用意させろ・・・それだけか?」


「あとはエドモンドの身の安全を保証することですかね、彼は被害者でしょうから」


まだ彼が犯人ではないという証拠は出ていないが静希は確信を持っていた


何度か話し、そしてこの作戦に参加する以上エドモンドが犯人である確率は確実にゼロに近い数値まで下がっている


問題なのは実際の証拠がまだそろっていないことだ


「仕掛けはもうできてるんですか?」


「問題ない・・・上からはかなり文句を言われたが黙らせた・・・あまりこういう無茶はしたくないんだが・・・」


疲労と共に心労も抱えているようなその表情に静希は班長である鏡花の面影を重ねる


中間管理職とはこういう空気を持つものなのだろうか、現場と本部の板挟みにあうその姿は仕事に疲れたサラリーマンを連想させる


隊長と言っても苦労が絶えないんだなということを直に触れることで理解した静希はこれ以上は無理を言わないでおこうと頭の片隅に刻み込んだ


「ところで・・・本当にこれで問題はないのか?何か見逃し等は?」


「今のところは・・・可能な限り情報も集めた・・・後は不確定要素さえなければ問題は無いでしょう・・・それこそ貴方達の尽力次第ですよ」


大きいため息と共に額に手を当てたテッドは本当に疲れているようだった


どちらかと言えば肉体的なものよりも精神的な負担がかかっていることが大きな要因となっている


彼の心配も、そして静希の懸念も一致している


それは部隊の人間が余計な行動をしないかという一点に絞られる


ここの部隊の人間はエドモンドに、正確にはヴァラファールに攻撃された経験を持っている、ある種恨みのような感情を持っていてもおかしくない


テッドがある程度統率しているとはいえ感情まで押さえることができる訳ではない


この作戦の概要を知っているのはこの場にいる三人、静希、テッド、ウォルトの三人とエドモンドのみ


テッドからすれば今まで頼りにしていた部隊の人間を一番に警戒していなければいけないことになる


それは辛いことでもあり情けないことでもあった


敵を欺くにはまず味方からとはいうがこのような形では後々説明したとしても部下が納得するかどうか


「こちらからエドモンドへの交戦は極力控え、対応に関しては君に一任するように言ってある・・・だがそれもどこまで続くかは分からん、手早く済ませることをお願いする」


「えぇ、承知していますよ」


部隊の人間からすればよそ者が自分達よりも活躍しその場を任されているのだ、これを不満と思わない者はいないだろう


自分達の国の自分達の任された事件なのにろくに仕事ができないもどかしさ、フラストレーションはかなり溜まっているだろう


その矛先が静希かエドモンドに向けられても不思議ではない


メフィの力を借りれば薙ぎ払うことなど容易だろうが静希の敵は部隊ではない、攻撃される謂われはあっても攻撃する理由はない


こうなってはできる限り無駄なく行動を終えるしかないだろう


静希は副長と共に部屋を出て作戦の準備を開始していく


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