接触の為の
静希は後部座席に背中を預けて思考を広げ始める
正直今の状況で無茶をするのは避けたい、だが無茶をしなければ軍による包囲を無視してエドモンドと対等に話せる場など作れそうにない
軍の包囲を抜けるにはまた追いかけっこをしなくてはならないのだが、そうなると話す暇がなくなる
どうしたものかと思案していると静希は部隊が何人か車とすれ違いになって移動しているのを見つける
どうやら包囲網は着々と出来上がっているようだった
それを見て静希はある事に気付く
「ニコラス、今回作ってる包囲網はどのくらいの大きさだ?」
「え?地下の入り口、通気孔、あとはエドモンドの現在地点を囲うように部隊を配置してあるだけだよ、もちろんほとんどが地下にいる」
「現場の装備は?」
「歩兵には通常戦闘ができる程度の武器兵装、あと地下だから照明も用意してある」
まったく電車の邪魔をしないようにするのが大変だよとぼやきながら運転を続けるニコラスをよそに静希は思考を広げる
「大野さん、小岩さん、ちょっと手伝ってもらえますか?」
静希の言葉に二人は顔を見合わせた
今まで一緒にいたが静希が何かを提案しても協力を要請したことは少ない
精々その場の時間稼ぎとかちょっとした小事に対してのみの協力だった
だが今のこの状況は非常に重要な局面にある
その重要な局面に自分達に協力を求めるということは多少は信頼してくれたのだろうかと僅かに嬉しさがあった
「あぁ、何でも言ってくれ」
「何か作戦があるのね?」
ニコラスに理解されないように日本語で会話し静希はこの辺りの地図と路面図を見せてもらいながらいくつかの指示を出していく
これが失敗した場合、静希はエドモンドに接触するチャンスがかなり少なくなってしまう
下手すればこのまま事件解決なんて事になりかねないのだ
失敗は許されない
『邪薙、今回はお前にも協力してほしい』
『ほう、総動員という訳か・・・よかろう』
静希が今まで隠しておきたかった悪魔、神格、霊装、使い魔
今回は全ての仲間の力を使ってエドモンドに接触しなくてはならない
相手の出方はほとんどわかっている、だからこそ慎重に事を進めなくてはならない
ニコラスから詳しい隊員の配置を確認しながら作戦を詰めていく
まるで詰将棋のようだ
一手一手確実に少しずつ、絞め殺すように相手を追い詰めていく
今まで以上に慎重に、そして綿密な状況把握が求められる
利用できる物はすべて利用しなくては今回の状況は成功しない
「ついたよ、ここから入るのが一番近い」
地下鉄への入り口に当たる駅に到着し静希達はすぐさま駅構内へと進入していく
そこには多くの隊員とそれらを援護する為の装備がいくつも用意されていた
強力な光を出す為の照明なども用意されていてまるでテロ対策でもしているかのようだ
ニコラスが駅員と二、三会話して中に入る許可をもらい静希達は作業用通路を使って奥に進入していく
仄暗い地下通路の中には何人かの隊員がすでに配置についている
そのどれも列車の通行の邪魔にならない位置にいるためにはたから見ればこの地下通路には誰もいないように見える
静希は現在ニコラスのすぐ近くについている
護衛役の二人は準備含め非戦闘員として駅で待機してもらっている
エドモンドの姿を発見するまで警戒を密にする部隊と同様静希も強く周囲の変化に気を配っていた
大きく線路がカーブするところに僅かな音が聞こえ、静希はニコラスの前進を止める
近くには何人かの部隊の人間もいて同じように前進を止めていた
線路の向こうから列車の音が反響して周囲の空気を揺らしながら静希は確信を強くする
そこにいると
そしてニコラスより前に出てそれの前に出る
以前と同じようにそこに隠れたままのエドモンドとその連れの悪魔、ヴァラファール
「動くな」
静希の言葉を聞いて二人は動揺するが静希はその場から動かない
エドモンドもヴァラファールも静希を睨みながらそれでいてこちらの出方をうかがっているようだった
静希の後ろで列車が通過し辺りに一時的に風が巻き起こる
辺りが列車の騒音によって満たされる中静希は口を動かす
その言葉は誰にも聞こえていなかっただろう、いや聞こえるはずがなかった
だがその言葉にヴァラファールは眼を見開いていた
「動くな!お前は包囲されている、おとなしく投降しろ!」
静希が接触したのを転機に周囲に配置されていた隊員が一斉にエドモンド達を包囲する
銃を構えたその姿に動くことを許されないかと思いきやエドモンドが能力を発動する
周囲が急に強い光に包まれ、列車が自分達に向けて襲いかかってくる光景が浮かび上がる
一瞬隊員がひるんだのを見てエドモンドはヴァラファールに、静希はフィアに飛び乗り高速で移動を開始する