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J/53  作者: 池金啓太
九話「悪魔と踊る異国のワルツ」
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核心への手掛かり

『メフィ、一つ聞きたいことがあるんだけど』


『あら奇遇ね、私も言いたいことがあるのよ』


どうやら静希とメフィの意見は一致しているのか負傷者を一か所に集めながら二人は意志を疎通させ始める


『話は早い方がいい、メフィ、核心だけ話したい、あいつは今まで手を抜いていたのか?』


『えぇ、間違いないわね、さっきの見るまでちょっと自信がなかったけど、確信に変わったわ』


メフィの言葉に静希は内心頭を抱える


今までの攻防自体が手加減した状態だったとしたらそもそも根本から考え直す必要が出てきてしまう


『それに、俺の能力で収納してもあいつをかばった・・・てことはだ』


『心臓への細工とは関係なしに、彼に手を貸していると考えて間違いないでしょうね』


本当に厄介なことに巻き込まれてしまったとうなだれながら静希は周囲を見渡す


戦闘があったせいで周囲には野次馬が発生しかけているが静希は小岩を捜し出して即座にその場から離れる


ニコラスは現場の事にかかりきりでこちらに気を配っている状況ではないようだった、ある意味好都合だと言えるだろう


「いいの?あそこから離れて・・・」


「いいんです、少し確認しなきゃいけないことができましたから」


静希が確認しなければいけない事は山積みになってしまっている


今まで確信を持って行動できていたが現状その確信が崩れかけている


そんな状態のまま戦闘を続けることも集中し続けることも不可能だった


「一体何を?」


「メフィとも話し合ったんですけど、あの悪魔、どうやら手を抜いてるみたいなんです」


静希の言葉に大野と小岩は目を見開く


先ほどのあの威力や部隊の何人もを重症に追いやった威力の能力が手を抜いている


にわかには信じ難いようだった


「でも・・・なんで?手を抜く理由なんてないんじゃ・・・」


「そう、手を抜く意味は無いんですよ、相手はもう十七人も殺してる、今更人を殺したくないなんて理屈が合わない・・・」


静希は今まで悪魔の能力は強力であってもそれは対物専門だと思っていた、邪薙の障壁を破壊できても人間を殺すだけの威力を持っていないそういうタイプの能力なのだと


だが先ほどの能力を見てそれは確実にないとわかった


恐らく悪魔を連れている静希達にはある程度本気で、そして普通の人間達には手加減して能力を使っていたのだろう


「じゃあなんで相手は手加減なんて・・・」


「その理由を考えるにはいくつか調べなきゃいけないことがあります、まずは大学の方に行きましょう」


静希は大野と小岩を連れてロンドン大学の近くにある軍の駐屯地にやってくる


目的地はテッドのいる作戦本部だ


静希は部屋を見張っている二人を素通りして中に入る


いつものように大野と小岩は外で待つことになった


「あぁ君か・・・先ほどは何やら大騒ぎしたようだな」


静希はとりあえずエドモンドが地下鉄の中間点あたりに潜伏している可能性があることを告げるとそのまま机に向かう


「詳しくは現場の人が報告するでしょう、そんな話をしに来たんじゃないんですが」


少々急いでいるため静希は机の上に乱雑に置かれている資料をあさりだす


「何か気になることでも?」


「えぇ、被害者の写真を見せてほしいと思いまして、あるでしょう?」


現場写真や被害者の死亡状況などは基本的にその場で写真に収めることが多い


これだけの資料があればその中にあると思ったのだ


そして思った通り、静希は殺された十七人の遺体状況が記された資料と写真を見つける


初めて見る人の死体に静希は顔をしかめ、僅かな吐き気を催すがぐっとこらえて写真を注視する


十七人の遺体は恰好はそれぞれ仰向きや俯き等の違いはあれど皆一様に身体の穴という穴から糞尿や汁を垂れ流している


そして全員に共通しているのは首に何かロープのようなもので強く首を絞めた跡が残っている事だ


静希はそのことを確認すると携帯でその写真をとりテッドになにも言わずに部屋から退出する


いきなり何をしに来たのかもわからずにテッドは首をかしげながら煙草に火をつけていた


部屋を出た静希はすぐさま大野と小岩を連れて移動を開始した


「何かわかったのか?」


「えぇ、まったく面倒なことになってきました」


「面倒な事?」


静希は歩きながら先ほど携帯で撮影した遺体の写真を二人に見せる


遺体の状況に二人は僅かに顔をしかめるがそこは静希よりも大人だ、すぐに目を凝らして写真の細部を観察しだしていた


「全員絞殺されてるね・・・何かロープみたいなもので」


「そうです、全員が共通して首を絞められて殺されてる、これがおかしいんですよ」


「おかしいって、どこが?」


普通に考えれば凶器が発覚した時点でそう難しい事件ではないのだ


犯行に使われたロープが見つかれば解決はなお早くなるだろう


だがそこで大野が気付く


「まて・・・ならエドモンドはどうやって十七人を殺したんだ?」


「え?どういうこと?」


静希が至った結論に大野が追い付く、それは最悪な状況を知らせるものでもあり、何より今までの根底を覆すような事でもあるのだ


「この十七人を殺したのは、エドモンドじゃないかもしれないんですよ」


静希の言葉に小岩は驚愕を隠せなかった


そもそもエドモンドが犯人だからこそ悪魔をひきつれているのだと思っていた、いや報告されたからこそそのように信じていたと言った方が正しいだろうか


だがその根底が崩されかけ始めている


「え、何でそうなるの?だってロープで殺したなんて結構普通なんじゃ・・・」


「一人二人殺したのとは訳が違います、十七人ほぼ同時、時間は監視カメラの映像が途切れた二分と少しの間・・・その間に十七人全員を絞殺するには」


「能力を使うしかない・・・わよね」


逆に十七人を一人一人殺していったにしては時間がかかり過ぎる上にカメラには一度に何人もの人影が映っていた、恐らくあの場で同時に殺されたとみて間違いない


人の手ではなく能力によって殺されたのだと静希達の意見は一致している


「その能力が問題なんだ、俺と五十嵐君が地下に潜ったときエドモンドの能力を見た、発現系統の発光原理による幻覚、いや投影と言った方が正しいかな」


一般的に能力による幻覚などにはいくつかの種類がある


相手と同調して感覚器官を操作することで幻覚を見せる同調型


目標にある物体がそこにあるように光を発生させる発現型


薬物などを作り出し強制的に幻覚作用を生み出す投与型


この三つが主に対象に幻覚や実際にはないものを見せる事の出来る能力である


そしてエドモンドの能力は恐らく発現型


静希と大野はエドモンドと物理的に接触したわけでも何かを投与されたわけでもない、そしてあの状況にあった幻覚を見せられた


恐らくエドモンドの能力は空中に映像を映し出す能力だ


「じゃあ・・・どうやって十七人も・・・」


「そこなんですよ、だからもしかしたら今回の事件、エドモンドが犯人じゃないのかもしれないってことです」


「でも実際に教授がエドモンドがいたのを・・・」


「扉を開けたらエドモンドがいて声を上げたら悪魔が逃げたってだけですよ、実際にエドモンドが殺したっていう現場を見たとは言ってない・・・いや・・・そもそも・・・」


静希は今まで起きたことを軽くメモにまとめ始めていた


思考を巡らせて考えをまとめていくのだがこうも前提が崩されると何もかも確認しなくては気が済まなくなってくる


そしてまず最初に確認しなければいけないことが見えてきた


静希が携帯を取り出すのだがここが海外だということを忘れていた


「あの、どちらか携帯貸してくれませんか?」


「いいけど、どこかに掛けるのか?」


「えぇ、日本の知人に」


静希の言葉に電話代がかさみそうだなと嫌な顔をするがそんなことを言っていられる状況ではないので苦笑いしながら大野から携帯を借りる


番号を押して数秒待つと向こう側からもしもしという声が聞こえてくる


最近声を聞いていなかったので一応確認する


「もしもし、石動か?五十嵐だ」


相手は日本にいるエルフの同級生、石動藍だ


『五十嵐?電話番号が変わったのか?お前の番号じゃなかったんだが』


「いやそれがちょっと訳ありでな、今携帯借りてるんだ」


『なるほど、お前が電話など何事・・・ん?お、おいお前達やめ『もしもし!?五十嵐さんですか!?』


唐突に声が変わり、凛とした石動の声から幼い子供の声へと変わる


静希はその声に聞き覚えがあった


「その声、風香か?」


『はい!東雲風香です!』


どうやら石動の近くにいて静希が電話の相手だと知り彼女から電話を奪い取ったらしい


なんともお転婆なお嬢様だ


「今石動と一緒なのか?」


『はい、能力の事について指導してもらってます、精霊との折り合いの付け方とかいろいろと、それでですねえっと、あの、今度でいいんですけど一緒に特訓とかできますか!?』


少女の言葉から特訓と言うと違和感があるかもしれないが能力者であれば日常的によく使う言葉だ、だからこそ静希は軽く笑いながらOKしようと思ったのだがそこで電話の相手がまた変わり石動が息を切らしながら電話に出る


『すまない五十嵐、あの二人のことは『返して下さいー!』気にしないでくれていい、お前からの電話に『優花!もっかい抑えてて!』『わかった!』ああもう静かにしていろ!』


どうやら電話の向こう側では幼いエルフの姉妹対高校生エルフの真っ向からの戦闘が行われているらしくかなり激しく轟音が響きだしている


しばらくして轟音が鳴りやんでから息を切らした石動が何度も謝罪しながら戻ってくる


「えっと、もう大丈夫か?」


『すまない、あの二人はお前の事になると少々面倒でな、休みの間に何度か相手をしてやってくれると助かる』


「あぁ、それは構わないけど」


随分と好かれたものだと静希は微妙に困った顔をしながらどうしたものかと考えだす


実際軍で訓練している以外は基本暇だ、何日か暇を見つけて相手をすることはやぶさかではないのだが、先ほどの轟音を聞いた後だとどうも気が引ける


石動の実力がどれほどかは分からないが、東雲風香の能力は強力だ、理性がない状態でも静希は恐らく風香に勝てなかっただろうに、今はきちんとした精霊を付けしっかりとコントロールができていると考えていい


この夏自分は生き残れるだろうかと微妙に不安になってくる


誤字報告を受けたので複数まとめて投稿


本当なら静希の「この十七人を殺したのは・・・」のくだりまでで一話分でちょうどよく次回に引くことができると思ったのですが・・・誤字め・・・!


まぁ、思うようにはいかないってことですね


これからもお楽しみいただければ幸いです

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