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名ばかりの「友党」、公明党を犠牲にした自民党のツケである連立解消

大濱崎卓真選挙コンサルタント・政治アナリスト
写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ

公明党が26年続いた自民党との連立を解消する決断を下しました。1999年から続いてきた自公連立体制の終焉は、間違いなく日本政治の転換点となります。本稿では、この歴史的決定に至った背景を、選挙プランナーの視点から分析します。

公明党の衰退原因は党員の高齢化ではない

自民党の選挙現場、例えば街頭演説、あるいは個人演説会場の場で、公明党議員が来賓として呼ばれれば、ほぼ間違いなく紹介されるフレーズは「友党・公明党」というぐらいに、公明党は長年、自民党から「友党」と呼ばれてきました。

ところが、先の衆議院選挙で公明党の議席が32議席から24議席へ、参議院選挙でも改選14議席から8議席に激減した最大の要因は、ほぼ間違いなく「友」のはずの自民党の政治とカネの問題にありました。友に足を引っ張られた構図の公明党だったにもかかわらず、メディアでは公明党の党勢衰退を「党員の高齢化」という一般論で片付けられることが多かったのです。公明党の党勢衰退の要因は、自民党の不祥事による「もらい事故」であるという現実がありながら、その責任を自党の構造問題に転嫁される屈辱を味わうことになりました。

もちろん、一般論があながち間違っているわけではなく、支援母体である創価学会員の高齢化という課題は確かに存在します。集団就職の時代に爆発的に増えたとされる創価学会員は、まさに団塊の世代を超えて、高齢化し、(5歳刻みで)投票率が下がり始めるとされる75歳を超えて、票の絞り出しに苦戦していることに間違いはありません。しかし、これは共産党など他の政党の支持層にも共通する問題であり、実際のデータを見ると、高齢化だけでは説明がつかないことがわかります。2021年から2024年の衆院選比例代表得票数の変化を見ると、公明党は約711万票から約596万票へと115万票(16%以上)も減少していますが、一方で、同じく高齢化が指摘される共産党は、2022年参院選約362万票から2024年衆院選約336万票への減少にとどまり、減少幅は公明党より緩やかです。

これは単純な高齢化では説明できない、公明党特有の構造的問題を示唆しています。

「友」のせいで被弾する公明党

2022年参議院選挙後の旧統一教会問題も含め、公明党は「友」のせいで被弾し続けました。宗教団体を支持母体とする政党として、「宗教と政治」という文脈で批判を浴びることになったのです。さらに自民党派閥の政治資金パーティー裏金問題では、公明党は政治改革をリードしてきたにもかかわらず、有権者の目には「連立与党」として一体と映り、責任を共に負わされました。まさに「友」のせいで被弾していたにもかかわらず、見捨てられたという雰囲気が党内に漂いました。安全保障などの問題においては、菅政権や岸田政権など比較的ハト派の政権においてコンフリクトにならない時期が続いていたとはいえ、「平和の党」としての礎こそ守り抜きつつ、「大衆と共に」の党是からは離れているのではないか、というわだかまりが生まれつつありました。

思い返してみれば、連立離脱への予兆として、2023年に公明党が東京都において自民党への選挙協力を見送った事件がありました。あのとき、公明党石井幹事長(当時)は、「信頼関係は地に落ちた」と、連立関係であるにもかかわらず、極めて厳しい言葉をメッセージとして残しました。あの事件から2年、その東京都連に所属する下村博文氏の支部長復帰、そして萩生田光一氏の幹事長代行就任という人事は、その間も厳しい党勢にあり続けた公明党にとって「追い打ち」にしかなりませんでした。これらの人事は、公明党執行部や創価学会にとって、自民党が公明党との関係修復よりも党内論理を優先したと捉えられるに十分だったでしょう。

斉藤鉄夫公明党代表と高市早苗自民党総裁との会談において、高市氏側は一方的に斉藤代表から連立離脱を伝えられたと述べ、政治資金規正法の改正についてもその場で回答を迫られたと主張しています。しかしながら、これまでの経緯を考えれば、公明党は2023年以降複数回にわたって警鐘を鳴らしてきたわけであり、むしろ言い換えれば二人三脚で歩み続けるなかで確実に被弾している状況にもかかわらず、具体的な対応を「友」が取ってくれない、という理不尽な状況になり、さらに今回の人事でそれが決定的になったことで、「これ以上は被弾できない」という状況になった、というのが実際のところでしょう。

次の統一地方選挙をどう持ちこたえるか

前回の統一地方選挙では、複数の選挙区で公明党候補が落選するという「公明党ショック」が発生し、特に都内では区議会議員背挙で複数候補落選などの事態も発生したことから、政治・選挙業界に大きなショックを与えました。これまで公明党は、創価学会の強固な組織票によって、地方選挙では圧倒的な強さを誇ってきたのであって、組織票を基盤とし、「勝利」こそがすべてである同党にとって、地方選挙での落選自体かなりレアな出来事でした。その鉄壁の守りが東京を中心に崩れたということは、構造的な支持基盤の崩壊が始まっていることを意味します。

さらにここ1〜2年の党勢衰退は間違いなく自民党の影響を受けており、高齢化以上のインパクトを与えています。有権者の間には「自民党と一体」というイメージが定着し、自民党への批判がそのまま公明党への不支持につながる構図が固定化してしまいました。公明党執行部は、再来年春に控える統一地方選挙を前に、連立を継続するよりも離脱して独自路線を歩む方が、むしろ寿命が長いという判断に至ったともいえるでしょう。

「友」を大事にしない自民党に寄り添う政党があるのか

「友」を大事にしなかった自民党が、公明党を切って新たに友を作ろうとしても、見るも無惨な状況になった公明党の現状を見てしまっては、どの党も二の足を踏むでしょう。26年間の選挙協力は双方にとって武器になった一方で、最終的に公明党がこれほどまでに党勢を衰退してしまった要因もまた自民党との連立にあったという事実は、他の政党にとって重要な教訓となります。国民民主党や日本維新の会といった、自民党が新たなパートナーとして期待する政党も、公明党の轍を踏むことを警戒せざるを得ません。

特に深刻なのは、選挙における実務的影響です。公明党の組織票は、小選挙区制において自民党候補の当選を左右する決定的要素でした。2024年衆院選でも、公明党が推薦した自民党候補263人のうち180人が小選挙区で当選しています。この協力関係が失われることは、自民党にとって選挙戦略の根本的見直しを迫るものとなります。

公明党の連立離脱は、日本の政党政治における根本的な転換点となる可能性があります。「友党」という美名のもとで築かれた関係が、実際には対等なパートナーシップではなく、一方的な犠牲を強いる構造であったことが明らかになりました。自民党は、公明党という貴重な「友」を大事にしなかった代償を、今後長期にわたって支払うことになるでしょう。今後の日本政治は、自公連立という安定的な枠組みを失い、より流動的で予測困難な局面を迎えることになります。

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選挙コンサルタント・政治アナリスト

1988年生まれ。青山学院高等部卒業、青山学院大学経営学部中退。2010年に選挙コンサルティングのジャッグジャパン株式会社を設立、現在代表取締役。不偏不党の選挙コンサルタントとして衆参国政選挙や首長・地方議会議員選挙をはじめ、日本全国の選挙に政党党派問わず関わるほか、政治活動を支援するクラウド型名簿地図アプリサービスの提供や、「選挙を科学する」をテーマとした研究・講演・寄稿等を行う。『都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップ』で2020年度地理情報システム学会賞(実践部門)受賞。2025年度経営情報学会代議員。日本選挙学会会員。行政書士。

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