愛はお互いを見つめ合うことではなく、ともに同じ菓子盆を見つめることである。

サン=テグジュペリ

 

「お菓子チョイスのセンスで、その人の全てがわかる」をモットーに開催されてきた菓子盆選手権

2016年に始まって以来、思い出したように開催されている催しです。

 

ルールは「盆にお菓子を盛り付けるだけ」

しかし、そうして出来上がった菓子盆の姿には「その人の人間性が浮かび上がる」と言われています。

「たかが菓子盆」と思われるでしょうが、客人へのおもてなしの心を小さな盆に込めるには、それだけ卓越した技術とセンスが必要になってくるのです。

これは嘘なんですが、近年ではその技術は宇宙ステーションの太陽帆を折りたたむ機構に応用されているんだとか。

 

さて、今回で17回を迎える菓子盆選手権のお題は……

 

我々、オモコロは今年で20周年を迎えます。

せっかくなので、そんな周年パーティーを祝う場にふさわしい菓子盆を作ってもらいましょう。

 


ベースとなる菓子盆選手権のルールはこちら

 

審査員を務めるのは、この男! 日本で唯一菓子盆を審査できる資格を持つダ・ヴィンチ・恐山です。

「日本菓子盆協会一級審判」などという肩書を吹聴した結果、真に受けた番組のスタッフがゲストに呼んでしまい、ラジオで別所哲也さんと共演したこともあります。

 

今回の出場者はオモコロ編集部のメンバー。

「写真撮るので、真顔でお願いします」と言ったら、なぜか全員がうっすら「お前のせいだからな」と言いたげな表情になってしまいました。

他責思考が顔からにじみ出ている彼らですが、オモコロ20周年に対しては一方ならぬ思いを持っているはず! 一体どんな菓子盆を披露してくれるのでしょうか?

それではさっそく、「理想の20周年パーティー盆」を見せてもらいましょう!

 

 

エントリーNo.1 マンスーン

まずはオモコロ編集部マンスーンの挑戦です。

社内きってのグルメ情報通で、食に関する信頼も厚い男。まさに菓子盆選手権のトップバッターに相応しい存在と言えるでしょう。

 

〜今大会に向けた意気込み〜

オモコロ20周年のお祝いなので、それにピッタリのお菓子を集めました!

 

お菓子選びのセンスは社内でも随一と噂されるマンスーン。彼が持ってくるお土産だけ、やたら減りが早いという実力の持ち主でもあります。

そんなマンスーンが繰り出す菓子盆とは!?

 

 

【使用したお菓子】

●メープル カスティーラnuevoヌエヴォ byバイ BUNMEIDOブンメイドウ
新更科しんさらしな(とらや)
●ティグレス レッドベルベット(ガトーフェスタ ハラダ)
揚最中あげもなか中里なかざと
●海苔チーズサンド(銀座あけぼの)
●レーズンビスクウィ(近江屋洋菓子店)

20周年をお祝いするために、老舗菓子店の逸品を取り揃えました。これからもオモコロが末永く続きますように、という思いを込めた菓子盆です

 

例えば、こちらの丸いチョコレートケーキとレーズンサンドはどちらも創業100年を超える老舗店のもの。オモコロとは比べものにならないほど長く重厚な歴史を重ねてきた名店の味をお楽しみください

 

他にも、ほとんどが創業100年を超える老舗のお菓子です。一番若い店舗ですら77年の歴史を誇る名店なんですよ

●ガトーフェスタ ハラダ……創業1901年(124年目)
●中里……創業1873年 (152年目)
●銀座あけぼの……創業1948年(77年目)
●近江屋洋菓子店……創業1884年(141年目)

 

●とらや……創業1526年(499年目)
nuevoヌエヴォ byバイ BUNMEIDOブンメイドウ……創業1901年(124年目)

なかでも、羊羹の「とらや」は室町時代から5世紀にも渡って続いてきた老舗中の老舗。また、nuevoヌエヴォ byバイ BUNMEIDOブンメイドウ創業100年を超える文明堂から生まれた新しいブランドでもあります。

ただ長い時間のなかにも、変わらぬ味を守ったり、新しいことに挑戦していたりと様々な歴史が存在しているんです。

 

オモコロも長く続けていると、「あと何年続けられるんだろう…」「10年後、俺たちってどうなってるんだろう…」なんて不安になることもありますよね。

そんなときに、この菓子盆を味わい、長い年月を生き延びてきた名店たちに思いを馳せながら、僕らもまだ見ぬ未来に向かって歩んでいこうという気持ちになってもらえたら嬉しいです。

 

〜会場の反応〜

「これだけ老舗の銘菓を知ってるのはさすがだな〜」

「メッセージは分かるんだけど、こんなに並ぶと、『創業100年以上って意外と多いじゃん』って思っちゃった」

「味わう以前に歴史の情報量が多すぎる。完食する頃には脳みそが1MBくらい増えてそう」

 

オモコロ20周年に向けて、積み重ねた歴史の味を取り揃えたマンスーン。

参加者からは「たかだか20年でパーティーしてる俺たちがバカみたいじゃねえか」「これに比べたらオモコロの20年はカスや」など戸惑いの声も上がっていましたが、菓子盆自体は信頼と実績のあるお菓子で固めた隙のない作りのようにも思えます。

気になる審査員の反応は……?

 

重厚感のある菓子盆です。気圧される、と表現してもよいかもしれません。

市販のお菓子を並べることの多い菓子盆において、老舗の高級菓子をそろえた構成は独自の風格を漂わせています。実際に味わっても、どれも確かな美味しさであり、さらに「オモコロ20周年のお祝い」がテーマと伺えば、その意図にも大いに納得がいきました。アトランダムに見えた菓子の並びに意味が生じるという点で謎解きのような楽しさもあります。

 

しかし、菓子盆の本質はお菓子単体の美味しさだけではなく、盛り合わせによって意味を生み出す点にあると思います。その観点からすると、やや「個々のお菓子の力に寄りかかっている盆」という印象も否めません。盆全体の完成形としての構成が弱く、盛り付けに工夫が感じられないことが惜しまれます。盆に「中心」がないのです。

 

方向性として老舗の菓子を集めるのは大変良いのですが、あえてグレードを散らして配置に強弱をつけるなど、全体の設計を意識されるとより完成度が高まるのではないでしょうか。中心となる菓子をチョイスして据え、その周囲に軽やかな菓子を置くことで、高級菓子の存在感を一層引き立てることができると思います。

 

総じて、お祝いの気持ちを伝える意図は十分に果たされており、好感を持てる菓子盆でした。今後は「全体をどう見せるか」という視点を加えることで、さらに一段上の作品になると感じました。

 


講評が済んだら一気に菓子を貪り始める

どのお菓子も味は確かですが、菓子盆選手権ではそれを盛り付けるセンスが問われる場でもあります。今回は、そこを厳しく評価された形となったようです。

菓子盆選手権はこんな感じで進みます。

 

 

エントリーNo.2 みくのしん

続いての挑戦者は、菓子盆選手権初参加となるみくのしん!

この撮影の翌日、局所的豪雨により自宅が床上浸水するのですが、今はそんなことを知る由もなく屈託のない笑顔を見せてくれています。

 

〜今大会に向けた意気込み〜
誰もが喜ぶパーティーにうってつけの菓子盆を作りました! 甘いものが好きな人も、しょっぱい味が好きな人も楽しめるはず!

 

 

 

 


翌日のみくのしん

もう何も信じられない

 

気を取り直して、みくのしんによるオモコロ20周年盆の登場です!

いまやオモコロ副編集長を務める彼は、一体どんな菓子盆を繰り出すのか!?

 

●グリーン豆(春日井製菓)
●とんがりコーン(ハウス食品)
●プチアソート(明治)
●チーズアーモンド(三幸製菓)
●アスパラガスビスケット(ギンビス)
●ひとりじめスイーツ 贅沢ラムレーズン(栄光堂)
●コアラのマーチ(ロッテ)
●一口芋餅

もし自分の家にいろんな人が遊びに来たら……と考えてお菓子を選びました!

 

甘いお菓子が好きな人にはコアラのマーチ! しょっぱいお菓子が好きな人にはとんがりコーン! お酒が好きな人にはグリーン豆!

そんな感じで、いろんな好みに合うようにお菓子を選んでみました! 素朴な味わいで僕が大好きなギンビスアスパラガスもありますし、プチアソートはみんな懐かしくて会話も弾むだろうなぁ〜!

 

盛り付け中に思いついて、とんがりコーンの容器にお菓子を盛ってみたんですけど、これもパーティーっぽくて気に入ってます。子どもの頃ってこういうのも楽しかったよな〜!

 

あと、一口サイズの芋餅を手作りしてみました! 腹ペコだけど、みんなのお菓子をいっぱい食べるのは忍びない……そんなキッズにはこの腹持ちする芋餅をつまんでほしいです!

 


周囲のギャラリーから「手作り」という点に審議が入る

え? 手作りってダメなんですか?

ダメってことはないけど。お菓子選びのセンスを競う場だからかなりの奇策ではあるよね

まあ、ルールで禁じてはいませんが……。ただ、市販のお菓子と比べるとどうしても味は見劣りしてしまうのでは?

それは大丈夫! 味には自信あります!

 

では一口……

どうどう!? 美味しい?! いい感じにできてる???

……!

 

 

これは……

 

 

 

 

おばさんが作った味がします

 

おばさんが作った味がするそうです。

 

〜会場の反応〜

「子どもが遠足の前日に夢で見る菓子盆じゃねえか」

「パーティーでふるまうにしては、生活感が出すぎじゃない?」

「小学生のお勉強会で、お母さんが張り切ったときに出す菓子盆?」

 

庶民的なお菓子で統一し、等身大の菓子盆で勝負に出たみくのしん。

手作り芋餅もみんなで食べてみましたが、「おふくろの味のフリー素材みたいな味がする」「郷土資料館のまかない飯として出されてそう」と、その素朴さが評価されていました。

果たして、審査員はこれをどうジャッジするのか!?

 

賑やかな盆です。「菓子盆は窓である」という言葉がありますが、これはまるでパーティーの買い出しを楽しんでいる姿が透けて見えてくる盆でした。

整然とした美しさとは違いますが、雑多な楽しさが前面に出ていて、それ自体が一つの魅力になっています。配色的にはややゴチャゴチャしていると言えてしまうかもしれませんが、一つ一つの選択に「これを食べてほしい」という思いが込められているように感じられ、作盆者の人柄が素直に伝わってきます。

 

菓子盆はおもてなしの遊びです。この人はこういうものが好きなのだな、これを薦めたいのだな、という気配が押しつけがましくなく自然に漂っているのは、それ自体が技術というよりも人徳なのかもしれません。

 

盛り付けも見どころがありました。グリーン豆をお弁当容器に収める細やかさがある一方で、とんがりコーンをあえて蓋に盛る大胆さもあるのが面白いですね。

 

そして芋餅。「お菓子」かどうかは正直疑わしいところですが、逆にこれが盆の中心を定めてしまっているのが面白いところです。口にした瞬間に主婦の顔が鮮明に浮かび上がってきた(ほくろの位置までわかる)のは、これは誰なんでしょうか。どういう特殊能力なんでしょうか。

 

全体を通して、ダイニングテーブルなどよりちゃぶ台を囲んでわいわい楽しむ情景が浮かぶような盆でした。形式美よりも親しみを優先し、笑いながら食べられる盆です。1.5リットルのでっかいコーラもほしいところですね。コカ・コーラじゃない、なんか謎の安いやつ。

 


なんかちっちゃくなった?

初参加にして、なかなかの高評価を獲得したみくのしん。自らの体積と引き換えに勝利をもぎ取るのか!?

 

 

エントリーNo.3 永田

続いては菓子盆選手権において最多優勝の記録を持つ永田。

今回は、指先から伸びる触手で脳に直接刺激を与えながらの参加です。

 

〜今大会に向けた意気込み〜
お祝いの場に置いてあっても違和感のない、TPOに合わせた盆をご用意しました

 

●TOKYO フルール・ド・メモワール(ジェイ・ドゥ・ セルクル)
●ケーキサブレ ホワイト(サブレミシェル)
●フリュイルージュジャムサンド(アトリエうかい)
●プティミルティペタル(ショウダイビオナチュール)

 

お祝いといえば、ケーキ。なので、奇をてらわず、ケーキを模したお菓子を中心に盆を構成しました

 

それだけじゃあ芸がないので、花びらをイメージしたお菓子を散らして、より華やかに魅せる工夫も施しています

 

豪勢な見た目ですね。こんなに派手な菓子盆も珍しいな

なんせ20周年ですから。それなりのお菓子を揃えないと失礼ってもんです

 


ケーキの下にもラングドシャが敷き詰めてある

見えないところにまで、こんなに立派なお菓子を……

20年前とは違って今は潤沢に予算が使えるので。金に物を言わせていただきました

 


若かりし頃の永田

1記事の原稿料が500円だった時代を乗り越えたから今がある。ありがとう、オモコロ

 

堂々とした高級路線にたじろぐ審査員。お菓子選びと盛り付けのセンスを競う場で、悪びれもせずに「金に物を言わせる」と言い切る姿勢が吉と出るか凶と出るか!?

さきほどのみくのしんさんとは正反対のアプローチですね。これをどう捉えるか……

パーティーなんだから、これくらいカマさないとね。味の方も確かなので、ぜひご賞味ください

 

では一口……

 

 

 

 

あ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愚鈍になっちゃったそうです。

 

〜会場の反応〜

「スネ夫の菓子盆」

「いいお菓子だな〜とは思うけど、いい菓子盆とは思えない」

「どうしたんですか、永田さん。らしくないっすよ」

 

てらいのない高級路線で誰よりも華やかな菓子盆を作り上げた永田。

周囲からは「金を得た代わりに大事なものを失っている」「こんなものに俺たちは負けない」と非難轟々でしたが、審査員の目にはどう写ったのでしょうか?

 

やはりお祝いといえばケーキ、という発想は安直でありながら核心を突いています。

ショートケーキを模したお菓子を中心に据え、それを取り囲むように花のようなお菓子を散らしていく構成は、とても華やかで素直に感心させられるものでした。

 


過去に永田が手掛けてきた菓子盆

ただ、これまでの永田さんの作品と比べると、どこか物足りないようにも感じます。

菓子盆の妙とは、普段は注目されないようなお菓子同士の組み合わせが思わぬ魅力を生み出すところにあると思いますが、今回は主役であるショートケーキ型のお菓子があまりに強く、全体がその存在に振り回されてしまっている印象を受けました。

 

華やかさそのものは確かに素晴らしいのですが、その印象の大部分がショートケーキの力に依存していると見えてしまうのは惜しいところです。

むしろ量を抑え、三分の一ほどに留めてノイズを足してみることで、かえって一体感のある盆になったのではないでしょうか。

 

高級路線というのは菓子盆において諸刃の剣です。高級であることが想像以上に強い影響力を持つため、それをどう制御するかが難しいのだと思います。

今回の作品はその力を最大限活かしつつも、バランスを整える余地がまだあったように感じました。

 

常勝を誇る永田がまさかの苦戦を強いられる結果に。

この「パーティー菓子盆」というお題……一筋縄ではいかないようですね。

 


次々と甘いものを食べる上に菓子盆を作る待ち時間も長いので、頭がボ〜っとしてくるらしい

 

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