先生の活躍を見たいから頑張ったけど、なんかおもてたんと違う   作:goldMg

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それはちょっと聞いてない

 

「なあ、マジで行くの?」

 

「行きます」

 

「マジで?」

 

「行きます」

 

「でもさあ──」

 

「ゴチャゴチャうるせえな! もう向かってんだから今更文句言ってんじゃねえよ!」

 

「だってあそこ、前より砂漠化ひでぇじゃん……遭難だって頻発するって聞くし」

 

「…………」

 

「砂がボディの隙間に入ってきたらショートしたりしねえかなあ……」

 

「そしたら取っ替えろよ」

 

「……経費降りる?」

 

「降りるに決まってんだろ」

 

「…………でもやだあ゛あ゛ー!」

 

 俺たちはD.U.から出てアビドス砂漠の方角へ。

 砂漠はイヤだ砂漠はイヤだと、ポッターくらい駄々をこねるサンダースを引き連れてバイクで走っている。高速に乗って、高速を降りて、さらに数時間。途中まではモーテルや店なんかもあったけど、さらに進んでからはめっきり人の気配が少なくなった。まだ砂漠化していない地域であるにもかかわらず、だ。

 

「なあ、そろそろガソリン切れるんだけど……」

 

「一旦補給だな」

 

 ガソリンは積んである。広大なアビドスを高校に行くのはこれくらい必要だ。

 

「ナビとか見てないけど、本当にこの道で合ってんのか?」

 

「前に行ったことあるから分かる」

 

「マジ?」

 

「用事があったんだよ」

 

「へー……空き家探索とか?」

 

「俺のことコソ泥だと思ってる?」

 

「いやいや、まっさかあ! ……でも、逆に用事がわからないんだけど。砂漠しかねえじゃん」

 

「…………うるせえ! ぶっ飛ばすぞ!」

 

「なんで!?」

 

 うるせえんだよ! 俺は今砂漠に猛烈に行きたい気分なんだ! 邪魔すんじゃねえ! 

 

「──あ、おい。なんか倒れてんぞ」

 

「ホントだ」

 

 なんかっていうか、人間っていうか……あれって……

 

「……う…………た、たすけ……」

 

 近付くと、やはり。

 

「──あれ? コイツあれじゃね?」

 

「そうだなあ」

 

「なんで倒れてんのこんなところで」

 

「なんでだろうなあ」

 

 まあ、見たら分かる。

 唇が乾いている上、靴はボロボロ、髪もボサボサ。

 可愛い顔なのに、何とまあひもじい見た目だこと。

 

 脱水症状と疲労だ。

 

「とりあえず……」

 

「助けるのか?」

 

「流石にな」

 

 太陽の光から隠すだけでも変わるので、家の軒下に持って来た。人様の家だけど、誰も住んでないのでいいだろう。

 あとは水と食糧を渡せば勝手に生き延びるはずだ。

 人も通りがかるだろうし。

 

「──ああああ! 生き返った! 本当に、死ぬかと思った!」

 

 十分に飲んだかと思えば、頭から水を被りやがった。

 やっぱりやべえやつなんだ……俺と同じくらいの歳だろうに、何だこの滲み出るヤバさ。男の目の前で水被るか? 普通…………ってああ、ロボットだと思われてんのか。

 

「……」

 

 サンダースは後ろに隠れてしまった。

 

「ありがとうございます! 本当に助かりました! ……えっと……あなたは何でこんなところに……?」

 

「旅の最中でな。まさかこんなところでぶっ倒れてる奴がいるとは思わなかったけど……幸運だったな。いや、災難だったのか?」

 

「あ、旅してるんだ! いやあ、本当に……私も用事があって来たはいいけど、迷っちゃって! もう水も食べ物もないから……あ! その迷彩柄にメカメカしい見た目! あなたたちあれでしょ、PMCでしょ!」

 

「正解」

 

「なるほどなるほど……私は連邦生徒会 独立連邦捜査部シャーレの顧問、伊坂(いさか)コハネだよ!」

 

「コハッ…………ハッ!?」

 

 確かにそう言われればなんか似てるような気はするけど……いや、めちゃくちゃ似てるぞ!? 

 

「え? 名前変?」

 

「……いや……そうなんだ……じゃあうん、その食料と水はあげるから」

 

 ほな……

 

「待って」

 

「ん?」

 

「あの……恥ずかしながらここら辺の地理には詳しくなくて…………」

 

「そうなんだ。ここら辺を治めてるってアビドス高校はあっちだぞ。他の場所だとちょっとわかんねえけど、まあ歩けばそのうち着くから」

 

「そ、そうなんですね…………それでですね……」

 

「おう、じゃあきいつけてな」

 

「んまぁぁぁぁあ!」

 

「ぐぎぎぎぎ……」

 

 くそっ、この女……! 

 

「待ってってぇぇぇぇ……!」

 

「うぐぐぐぐ」

 

 突然のチョークスリーパー。

 アーマーを着ていなかったら落ちてたかもしれなかった。というか普通に力が強い。何だこいつ。

 

「ったく……なんだよ!」

 

「はぁ……はぁ……はぁ…………バイクに乗せてってください!」

 

「ああ!?」

 

 マジか……あ。

 

「もう足が痛くて、動かなくて……」

 

「ふーん」

 

「何でそんな一気に興味失くした顔してるの!? 痛いのに! 本当だよ!?」

 

 だって、ちょうど通りがかったから。

 

「えっと……?」

 

 砂狼シロコ(青春の象徴)が。

 

 

 ──────

 

 

「見た感じ、連邦生徒会からきた大人の人みたいだけど……学校に用が?」

 

「うん、手紙を受け取ったからさ」

 

 ──『先生』は手紙を見せた。

 

「……アヤネの手紙だ」

 

「アヤネ?」

 

「アヤネは──ううん、直接会った方がいいよね。どっちにしても『アビドス』に来るんでしょ?」

 

「うん」

 

「……そっか。久しぶりのお客様だ」

 

 砂狼シロコはちょうど通学中で、案内をしてくれるとのことだった。

 

「アビドスはすぐ近くだけど……そっちの2人はPMCだよね。ここに何の用があってきたの?」

 

『先生』に向けるものに比べて、大きく冷たい視線だ。

 確かにこの人口密度の薄さでは依頼なんておおよそ発生しないだろうし、アビドス高等学校にしても他者に依頼を出す余裕なんてない。

 警戒は必然か。

 

「あの2人は私の命の恩人! 名前は……名前なんだっけ?」

 

「……サンダースだ」

 

「──いや俺がサンダースだよ! こいつはユウジ! お前何でもかんでも人の名前使おうとすんじゃねえよ!」

 

「ちっ」

 

 空気読めオンボロロボが。

 

「えっとお……ユウジとサンダースだってさ!」

 

「……初対面?」

 

「うん。広すぎてお腹と喉がもう空っぽになっちゃって……倒れてたところを助けてもらったんだ!」

 

「…………」

 

 5%くらい視線が和らいだ気がする。

 

「2人でキヴォトスを旅してるんだって」

 

「PMCなのに?」

 

「…………確かに!」

 

 気付いたか、そこの矛盾に。

 だが、設定の練りの深さなら誰にも負けん! 

 

「俺たち零細企業だから一つの箇所に留まってると潰されやすいんだよ」

 

「零細なら逆に見逃されるんじゃないの?」

 

「こう見えても結構やれるんだぜ? だから目つけられちゃうの……」

 

 よよよ、とサンダースの渾身の泣き真似が決まる。

 後でハイタッチだな。

 

「でも、PMCが人助けするなんて……変なの」

 

「失礼だな!?」

 

「あ、ごめん。つい本音が」

 

「本音とか言うな!」

 

 シロコとサンダースが漫才をしている間に、『先生』に話しかける。

 

「それじゃあ、改めて俺たちはお暇するよ」

 

「え? いや、運んでくれるんじゃ……」

 

「へ?」

 

「え?」

 

「「…………え?」」

 

 

 ──────

 

 

「──女の子の背中にしがみついてけって、結構鬼畜なんだね!?」

 

「ただのおんぶだろ。それにキヴォトス人の肉体は強靭だからそれくらい余裕だ。…………だろ?」

 

 シロコは、やや困惑しつつも頷いた。

 同調圧力をかけたとも言う。

 

「出来るけど……バイクでいいんじゃないの?」

 

「ほら、俺たち旅してるからさっさと先に行きたくて……」

 

「先に行っても広大なアビドス砂漠しかないよ?」

 

「だからいいんじゃねえか」

 

 マッドマックスみたいでかっこいいだろ。

 俺たちは西へ行く。

 

「──いやいや! 決定しないで!? 乗り心地いい方が良いよ!」

 

「え? でも好きだろ?」

 

「……なにが?」

 

「女の子の匂い嗅ぐの」

 

「!??!?」

 

 何だこいつ、何に驚いてんだ。

 言ってたじゃねえか、良い匂いがするって。

 

「え、何でそんな顔して……シロコ!? 違うよ、私そんなんじゃないよ!」

 

「……どっちなの?」

 

 シロコはジリジリと距離をとっている。

 

「確かに女子高生の匂いが良い匂いなのは間違いないけど──私はそんな、公衆の面前で人の匂いを嗅ぐような人間ではないよ!」

 

 それはただの嘘じゃん。

 

「……でも、私がおんぶする必要はないよね」

 

「うんうん!」

 

 結局、俺たちのバイクに乗せることになった。流石に自転車とバイクだと速度差があるので、ややゆっくり目に向かう。

 そもそもシロコはこれから学校だからな。

 いきなり汗だくにさせる必要もない。

 ──とか、俺が考える必要もないのになあ。

 

「快適だね!」

 

「いや、暑いけどな……」

 

 アビドスはそもそも砂漠に程近い位置にある。日射の熱量も相当なもので、大気の熱も無準備に運動をすればぶっ倒れるぐらいにはある。

 そんな中で俺はフルアーマーなもんだから、ファンを回さなければ暑いったら仕方ない。

 

「そういえばこれ、何の音なの?」

 

「ファンだ」

 

「そうか、放熱してるんだね。熱で回路が死なないように! ロボットだもんね!」

 

「……その通り、よくわかったな」

 

『ブフォォッ』

 

「?」

 

『い、いや! なんでもない、咽せただけだ!』

 

「ロボットなのに……?」

 

 お前マジで、余計な情報漏らすなよ……? 

 

「あー! ついたー!」

 

 高校まで後少しというシロコの言葉通り、バイクで走れば15分ほどで着いた。

 

「あそこから徒歩でこの距離はちょっと厳しいかもね……」

 

「そう?」

 

 シロコと『先生』が仲良く話している……! 

 よし、終わり! 

 閉廷! 

 解散! 

 

「じゃあ俺たちはこれで」

 

「うん! ありがとうございました! ──って、あれ? 向こうのほうに茶色い何かが……」

 

「……砂嵐!?」

 

 このタイミングで!? 

 

「うわあああ! ヤバいよお! 俺死んじゃうう! ちぬうううう!」

 

 サンダースは一瞬にしてパニックになった。

 ちなみに死なない。

 

「……はあ」

 

 ため息だって出るってもんですよ。

 まさかこんな事になるなんて。砂嵐が酷いのは聞いてたし遭遇するのも初めてじゃないけど、こんなタイミングで発生しなくても良いのに。

 

「シロコ先輩、その方達は?」

 

「この人はうちの学校に用があるんだって。こっちの2人は旅人、砂嵐から一時的に避難してるだけ」

 

「──こんにちは!」

 

『先生』は元気に挨拶をした。

 

「こ、こんにちは……でも来客の予定ってありましたっけ……」

 

「シャーレの顧問先生です、よろしくね」

 

「え、ええっ!? まさか!?」

 

「連邦捜査部『シャーレ』の先生!?」

 

「よかった……これで弾薬や補給品の援助が受けられます……あ、早くホシノ先輩にも知らせてあげないと……あれ? ホシノ先輩は?」

 

「ホシノ先輩は隣の部屋で寝てるよ。私、起こしてくる」

 

 すっごお(恍惚)

 

「えーと……ちょっと待ってね。物資を出すから」

 

「物資を出す? ……そういえば、先生は物資をどちらにしまっているのですか?」

 

「んー……」

 

 シッテムの箱をしばらくスイスイといじる。おそらくアロナと会話をしつつクラフトチェンバーへの接続を行っているのだろう。

 

「ほいっ!」

 

「──うわあ!? い、いきなり物資が!」

 

「良かった良かった! これでまずは一安心だね!」

 

「は、はい。ありがとうございます……ですが、今のは一体……」

 

 この後すぐに──

 

『攻撃攻撃ぃぃ!』

 

『ひゃっはあああ!』

 

 来たわね、蛆虫ども。

 ……砂嵐の中なのによく来たな。

 

「す、砂嵐の中、武装集団が学校に接近しています! カタカタヘルメット団のようです!」

 

 よく考えたら俺ってカタカタヘルメット団初見かもしれん。ちゃんと見とこ。

 

「──ホシノ先輩を連れてきたよ! 先輩! 寝ぼけてないで起きて!」

 

 原作通りの流れになってる……! 

 すごい! 

 俺、原作の背景くらいの位置に多分立ってる! 

 窓際でポツンって立ってる! 

 

「ホシノ先輩! ヘルメット団が再び襲撃を! こちらの方はシャーレの先生です!」

 

「むにゃ……お空のクジラ……あ、先生? よろしくー」

 

「ちょっと! 二度寝しないで出動! 学校守らないと!」

 

 いつまでも寝ぼけ眼な彼女はともかく、真剣な表情のアヤネに対して、『先生』は穏やかに話しかけた。

 

「指揮は私が取るよ」

 

「せ、先生が? ……いえ、先生ならばきっと出来るのでしょうね。よろしくお願いします!」

 

「あなた達はどうする?」

 

 どうやら俺たちは出撃しないのかということらしい。

 

「パス」

 

「俺も無理ぃ! こんな砂嵐の中に出てったら砂が詰まって動けなくなっちまうよ! だめなにょん!」

 

「──そっか」

 

「私はオペレーターを担当しますので、先生はこちらでサポートをお願いします!」

 

「うん! それじゃあみんな、行こう!」

 

「はーい! みんなで出撃です!」

 

 

 ──────

 

 

「カタカタヘルメット団残党、郊外エリアに撤退中。砂嵐も止みました! 私たちの完全勝利です!」

 

『──!』

 

『──!』

 

「みなさん、お疲れ様でした。学校へ帰還してください」

 

 大 蹂 躙。

 やはり小鳥遊ホシノは本気を出さないようだ。

 まあ、こんな場面で出す必要があるほど低級のアレじゃねえもんな。

 

「やっと砂嵐やんだよ……あーやだやだ、何でこんなところに来なきゃならねえんだか……」

 

「……っ」

 

「あ」

 

 バカすぎだろこいつ。

 

「あ、いやごめん。そういうつもりで言ったわけじゃねえんだ、ただ、砂粒が入ると駆動系がやられやすくてな……すまん!」

 

「い、いえ……」

 

 気まずっ。

 部屋出て、校舎内でも散策しますか。

 

「ふん、ふん、なるほどなるほど」

 

 そうして見て回ると、綺麗な状態に保たれている。

 数人で回しているとは思えない。

 

「窓ガラスが残ってるのは奇跡だな」

 

「──そうだね、あんなに激しい襲撃なのに」

 

「うん……まあ、その、なに? アンタは俺じゃなくて生徒についてるべきだな」

 

「驚かないんだね」

 

「俺は俺自身が安全な存在だとわかってるけど、全ての人間がそうってわけじゃないからな。大人として当然の対応だ」

 

「旅……あれは本当なの?」

 

「どう思う?」

 

「…………さあね」

 

「──生徒たちが戻ってきたみたいだな」

 

「そうだね、教室に戻らなきゃ」

 

 さて、俺もサンダースを回収してこの場を離れますか。リスクが高すぎる! こんな場所いられるか! 

 

 少し彷徨いてから、サンダースが放置されている筈の教室に戻ると騒がしくなっていた。

 

『──大人ってすごい』

 

『うんうん、ママが来てくれたおかげでおじさんはやーっと眠れるよ〜』

 

『は、ははは……』

 

『ちょっと! 先生が困ってるじゃない! それにホシノ先輩はその辺でしょっちゅう寝てるでしょ!』

 

『あはは……少し遅れちゃいましたけど、改めて挨拶させてください先生』

 

 どうやら挨拶が始まったタイミングだったようだ。邪魔しないように入るのは挨拶が終わってからにしよう。

 

『私たちは、アビドス対策委員会です。私は1年のアヤネ、委員会で書記とオペレーターを担当しています。そしてこちらは同じく1年のセリカ』

 

『どうも』

 

『こっちがノノミ先輩とシロコ先輩』

 

『よろしくお願いしますね、先生』

 

『よろしくね、先生』

 

『そしてこちらは委員長で3年のホシノ先輩です』

 

『いやぁ〜よろしく、先生〜』

 

 間延び口調……ドジっ子……うっ、頭が! 

 

『ご覧になった通り、我が校は現在危機にさらされています……そのため「シャーレ」に支援を要請し、先生がいらしてくれたことで、その危機を乗り越えることができました。先生がいなかったら、さっきの人たちに学校を乗っ取られていたかもしれませんし、感謝してもしきれません……』

 

『……対策委員会って、そもそも──』

 

 ──扉を、勢いよく、開けたあ! 

 

「え? な、なに?」

 

「そこのガラクタを回収させてくれ。砂嵐が止んだから学校を出る」

 

「……急だね」

 

「部外者の俺たちがいつまでも君たちの内部情報を聞いているのはよくない。そうだろ? 奥空アヤネ」

 

「え? ……そ、うですね。なるべくなら内部だけの話で……」

 

「そういうことだ。行くぞサンダース」

 

「了解」

 

 

 ──────

 

 

「おい、お前の目的がやっとわかったぜ」

 

「?」

 

「あの学校に用があったんだな」

 

「ああ、まあそうだな」

 

 短期的にはな。

 

「そうなると……離れる必要あるのか? 割と自然な流れで潜り込めたのに……」

 

「俺はあいつらをどうにかしたいわけじゃない。ただ、観察したいだけだ」

 

「…………いや、きしょすぎだろ。一片たりとも擁護できる部分がないぞ?」

 

「好きに言え」

 

「ロリコン」

 

 おっ、戦争かな。

 

「待て待て待て! 冗談!」

 

「…………」

 

「ったく…………そうだ、一つ気になったんだけどよ」

 

「ああ」

 

「何であいつらあんな少人数で学校とか言ってんだ?」

 

 おっ、戦争かな。

 

「何でだよ! ……いや、本当に何でだよ」

 

「人様のプライベートに突っ込むもんじゃねえぞ」

 

「砂漠化だろ? 店もないだろ? 人もいないだろ? なにがあんのあそこに。…………資源?」

 

「まあアレだよ。金や生活よりも大事なものってのがあそこに残されてんだよ」

 

「はあ〜?」

 

「ロボットにはわかんねえだろうけどな、人間ってのは成長すんだよ」

 

「舐めんな。そんくらい知ってるわ」

 

「じゃあわかるか」

 

「…………わかんねえよ! 教えろバーカ!」

 

「青春だよ」

 

「いきなり何言ってんの……」

 

 その反応やめてね。

 

「冗談じゃねえよ。今、アビドス高校の5人は自分たちの思い出を守るために頑張ってんだ。辛くとも、苦しくとも、毎日を一生懸命過ごして、目の前の問題と向き合うことで得られるもの。仲間との楽しかった思い出を必死に守ってんの」

 

「ふーん……それってあそこじゃないとダメなのか?」

 

「外から様子を見て、別の場所でもできるじゃんって冷笑するのは簡単だよな」

 

「……」

 

「俺たちの出る幕はねえよ、真面目に」

 

「ここからどうすんだ?」

 

「ビルでも陣取って様子を眺める」

 

「…………きっっっっしょ!!!」

 

 

 ──────

 

 

「ああ……うう……」

 

 退屈はロボットをも殺す。興味が無いことを観察し続けるというのはなかなか難しいらしい

 それに加えて頻繁にやってくる砂嵐はサンダースのメンタルを削り、今では壁に持たれて呻くだけのスクラップ前夜だ。

 

「油……挿しテェ……」

 

「はいよ」

 

「あり……がと……」

 

「寝てばっかだと固まっちまうぞ」

 

 多少身体を動かせば、風に乗って入り込む砂も隙間から落とすことができる。だけど、こうも横たわっていては油などと絡まって固着してしまうというものだ。

 

「ウオアアアアア」

 

 半狂乱になって走り出すロボット。

 怖いな。実に怖い。事務員が見たら泣き出すだろう。

 

 俺たちがアビドス高等学校と接触してから4日が経っていた。ちなみにビルを陣取っているわけではない。

 生徒と先生が一緒に動くタイミングで、細かく位置を変えて観察をしている。

 具体的にはセリカが誘拐されるところを見るために。

 

 すでに柴関ラーメンには行っている。聖地巡礼を経て満足だが、それはそれとして少し妙なこともあった。

 

 現在の時刻は午後7時。

 2人が一緒に歩いている。

 

『それでダンゴムシがポケットからいっぱい──』

 

『あはは! なにそれ、先生話盛ってるでしょ!』

 

『本当だよ! 気付いたら教室の床がダンゴムシで埋まっちゃって──』

 

『やっぱ盛ってるじゃん!』

 

 セリカのバイト帰り、2人は仲良く爆笑していた。

 そのタイミングで正気を取り戻したサンダースが口を開く。

 

「誘拐されねえなあ」

 

「…………」

 

 そう。

 俺たちはセリカの誘拐され待ちだった。

 

「そう聞くとマジで俺たちってゴミなんだなって……聞いたことねえもん、誘拐され待ちなんて」

 

 そうは言っても、ゲーム世界においては最初のバイトの日──つまりは3日前の時点で誘拐されているはずだ。先生赴任から間もなく(おそらく2日目?)誘拐という、スピーディーな仕事の進捗管理には惚れ惚れするなあと、PMCとしてはそちらにも感動してたのに何も起きない。

 

「こうなると、俺たちは意味もなく女子高生達の事を見てるクソキモい二人組ってことになっちまうな」

 

 そこは元から変わらないから。

 

 それにしてもあの先生、4日間でセリカと仲良くなったぞ。

 

「幼稚園児ならわかるけど……めちゃめちゃ早いよな、仲良くなるの」

 

「女だからかね」

 

「あー……それはありそうだな」

 

 これが男であれば、確かにもう少しだけ距離の詰め方が慎重に──ならないか、うん。だって女の子の足を初対面で舐められるんだもんな。

 

「やっぱ関係ないと思うわ、俺」

 

「いやあるだろ」

 

「多分男でもあんな感じだ」

 

「知らねえよ……というか男の先生もいるのか?」

 

「いると言えばいるし、いないと言えばいない」

 

「ハッキリしろ」

 

 並行世界の存在は、いる判定に含めることができるのか? 

 

「──おい、待て。なんかスケバンが」

 

「!」

 

 サンダースの言う通り、スケバン達が集まってきた。

 物陰や路地裏、果てはマンホールに至るまで。マジでゴキブリみたいに色々なところから現れた。

 そんな大勢で何をしに──というのは野暮か。

 

『おうおう! 黒見セリカちゃんよお! よくもこの前はやってくれたなあ!』

 

『何よ、あんたたち……ってまたカタカタヘルメット団? まだいたんだ。ここで全滅させて──って、うわっ!』

 

 最初は正面しか見ていなかったセリカも、背後からの銃撃に状況を把握したようだ。

『先生』は今の銃撃が掠って、びくついていた。

 

『こ、この数……まさかあんた達、最初から私を狙って……!?』

 

 つまり、そういうことだろう。

 彼女と『先生』に突きつけられた銃口が意味するところを察することは容易かった。

 

『やれ!』

 

『っ!? ま、待って! 先生が──』

 

 そんな声など知ったことかと、360°と言って差し支えないほどの飽和攻撃が彼女たちを襲った。

 その中には、信じられないことに機関砲も混ざっている。

 

「おいおい……ありゃあ俺でも厳しいぜ」

 

「……」

 

 コンクリートや街路樹、街灯なんかを吹き飛ばして余りあるほどの火力は並の人間であれば、血の跡くらいしか痕跡が残らないだろう。

 果たして──

 

『…………む、無傷!?』

 

 2人は無傷だった。

 セリカは信じられないとばかりに目を見開いているが、彼女の服に破れはない。

 

『な、なに今の……銃弾が……?』

 

 目の前で起きたことが信じられないと呟いている。

 

『どうなってんだよ!』

 

『なんだ今の!?』

 

 理不尽な結果に、カタカタヘルメット団の間では動揺が広がっている。しかし、『先生』も決して余裕があるわけではない。その表情に見られるのは焦り。

 

「まさかこのタイミングで、とは思わなかったな」

 

「何がどうなってんだ……」

 

「…………」

 

『先生』の手元にあるタブレットは最初こそしっかり光を放っていたが、明滅を繰り返して画面が暗くなってしまった。

 おそらく、強大な負荷がかかったのだろう。

 こんな初期の段階でアレを見ることになるとは、全く予想していなかった。そもそもの話、彼女がセリカと一緒に襲撃されるというのがおかしいということでもある。

 

『先生! 今の見た!?』

 

『っ……』

 

『どうしたの先生!? どこか痛むの!?』

 

『…………いや、なんでも──っ!?』

 

 セリカに気付かれまいと隠した彼女が見たものは、サンダースと俺も気付いていた。

 

『くたばれっ!』

 

 上空から赤い曳光を作り出しながら迫撃砲弾が落ちてきた。

 

『っっ!』

 

『うわっ──』

 

 爆音がその場に響き破る。

 セリカが咄嗟に『先生』を押し倒していたように見えたが、間に合ったかどうか。

 

『──げほっ……うう…………先生!? しっかりして、先生!』

 

 爆煙が晴れると、セリカが『先生』のことを揺さぶっている。外傷は見られないところから、衝撃によるショックからの失神だろう。

 そして、セリカの後ろから忍び寄る影が。

 

『っ……先生! せんせ──』

 

『黙ってろ』

 

『うっ……』

 

 銃床が後頭部に叩きつけられた。

 意識が一瞬で断絶して、『先生』の上に被さるように倒れる。

 

 ……マジ? 

 

「お、おいおい、どうすんだよアレ。2人とも倒れちまったぞ」

 

『こんなもんでいいのか?』

 

『ああ、生きててもらわないと逆に困る。車に乗せたらランデブーポイントへ向かうぞ』

 

 2人は装甲車の中に押し込められた。

 

「おいバカ! 聞いてんのか! アレはアレでなのか!?」

 

「……知らん」

 

「知らん!? え、じゃあアレただ誘拐されてるだけ!?」

 

「そうだな」

 

「どうすんだよ!」

 

 流石に理解の範疇は超えている。

 しかし、やるべきことは明確だった。

 

「サンダース」

 

「!」

 

「あの2人を追いかけろ」

 

「お前は?」

 

「俺は高校へ向かう」

 

「……そうか」

 

「それと!」

 

「!?」

 

「アレを見ろ」

 

「あ? どれだよ」

 

 2人が気絶してその場に落としたもの。

 それはセリカの銃と、『先生』が使っていたタブレット。

 

『これは私たちが有効活用してやる。こっちは……ん? なんだこれ、電源もつかないな』

 

 カタカタヘルメット団員が二つを回収していた。

 

「アレは先生のタブレットか」

 

「隙を見て二つを回収しろ」

 

「…………了解」

 

 ミッション開始だ。

 

 

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