【独自】証拠動画を入手…大阪万博で大量購入された中国製バスで続出する「操縦不能トラブル」の実態

「大阪・関西万博」で使用されているEVバスを販売する気鋭のスタートアップで車両トラブルが続出している。自動車生活ジャーナリスト・加藤久美子氏がその深層に迫る

福岡県北九州市若松区にあるEVMJ。総額100億円の工事は現在2期工事が終了。写真の本社事務所だけで約10億円がかかっているという
福岡県北九州市若松区にあるEVMJ。総額100億円の工事は現在2期工事が終了。写真の本社事務所だけで約10億円がかかっているという

中国メーカーの電気バスをそのまま輸入

そもそもなぜこんなに不具合が多いEVバスが、万博に1社独占で大量に採用されたのか。そこには「国産のEVバスである」という誤った認識の広まりもある。4月15日、西村康稔元経産相(62)は自身のXに、

〈大阪のバス会社が中国製EVバスの導入を進めていたことに危機感を持ち、日本企業製のバスの導入を奨励しました。民間の取引ですので強制はできませんが、最終的に①会場内・駐車場からのシャトルバスは約100台全て日本企業のEVMJ製造のバスに、②桜島駅からのシャトルバス約100台のうち約3分の2が日本企業のEVMJといすゞ製造のバスとなっています。全体で約9割が日本企業製造のバスです〉

と投稿した。

しかし、EVMJが日本の企業であることは確かだが、「製造はしていない」のである。前述したように、同社は主に中国のEVバスを輸入・販売する会社である。そのためインバーターなどの主要部品を含めて全て中国メーカーの仕様で製造されている。100億円をかけて完成させた北九州市の工場で行われているのは料金箱や乗降用ボタン、行き先表示などの設置だけだ。これではとてもじゃないが国産EVバスとは言えない。

EVMJに対し、9月1日に発生した中央分離帯への激突事故の原因と、北九州市の工場での製造工程、国交省の「全車両総点検」への対応について質問状を送ったところ、期日までに以下のような回答があった。

「完成車を並行輸入という形で国内に輸入しておりますが、(中略)保安基準はもとより、日本が求める品質・安全水準と更なる技術向上に資するべく、国内仕様への架装のみならず、当社品質管理基準に基づく車両検査、テストコースを用いた安全性・走行性能等の各種試験・検証、EVバスおよび充電システムの設計・開発業務などを実施しております。

現在、大阪メトロ様と事故原因について検証を続けております。(全車両点検については)正確な情報を正しくお伝えすべく、総点検完了後に経緯等含めて公式に発表できるよう準備を進めております」

なお、環境省補助金の執行団体であるJATAでは9月26日に「不具合が多発しているEVMJのバスに関する補助金申請には留意してください」なる注意文も出している。国交省もEVMJが扱う一部のバスに対してノンステップバスの認定をしないことを新たに決定した。

行政もじわじわと動き始めているが、大阪メトロや伊予鉄では年内にEVMJ扱いの新しい中国製バスを導入する予定だという。数々の不具合が発生し、事故も起こり、現場のドライバーが「怖くて乗れない!」と訴える現状を、きちんと精査しているのだろうか。

  • PHOTO加藤博人

加藤 久美子

自動車生活ジャーナリスト

山口県下関市生まれ。大学卒業後は日刊自動車新聞社に入社。その後、フリーへ。『くるまのニュース』『AUTOCAR JAPAN』『ベストカー』などの自動車メディアへの寄稿も多く、年間約300本の自動車関連記事を執筆している。

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