【独自】証拠動画を入手…大阪万博で大量購入された中国製バスで続出する「操縦不能トラブル」の実態

「大阪・関西万博」で使用されているEVバスを販売する気鋭のスタートアップで車両トラブルが続出している。自動車生活ジャーナリスト・加藤久美子氏がその深層に迫る

EVMJの本社工場前の駐車場には不具合続きでついに「返品」された筑後市のスクールバスの姿もあった
EVMJの本社工場前の駐車場には不具合続きでついに「返品」された筑後市のスクールバスの姿もあった

「お客様の安全を守れない」乗務員が明かした不安

「国内初のEVスクールバス」として話題を集めた福岡県筑後市が契約したEVバスも、今年4月の導入以前のテスト段階から数々の不具合が出ており、運行開始からわずか2週間で全4台が運行中止となった。その後、点検や改修を終わらせて6月上旬に運行再開したが、その日に自動ドアのセンサーが反応しなくなるトラブルが発生。再びEVMJの本社に戻った。10月1日には契約が解除され、同市内の車両は全てディーゼルバスに戻されている。導入台数トップを誇る、愛媛県松山市に本社を置く「伊予鉄バス」でも、これまで20台以上を購入してきたが多数の不具合が発生しているという。

冒頭の「操作不能動画」もそんな最中に発生した。これらのトラブルを受け、大阪メトロのバス運転手の間では、こんな不満が噴出してきているという。

「日頃から雨漏りやエアコンの不具合、ドアが開かないやら閉まらないやらたびたび故障や不具合がありました。雨漏りは天井からだけではなく、タイヤが雨水を巻き込んで車内に入ってくる“下からの雨漏り”もありました。走行中にネジが落下したり、点検口の蓋が落下したり……。坂の途中や右折待ち、交差点の真ん中で急に動かなくなってレッカー移動させたことも。

安心安全にお客様を乗せることができないので、とにかく一度全て総点検をしてほしいとたびたび大阪メトロに言ってきましたが聞き入れてもらえず……。そして9月1日にハンドルが利かなくなって中央分離帯に衝突する事故が発生したのです」

そんな状況を鑑みて、9月5日、国交省が驚きの発表を行った。万博バスを含む全国に納車されたEVMJ扱いのバスに対して「全車両総点検」を命じたのだ。

しかし、この点検が正しく行われるかについても疑問が残る。業界をよく知る事情通が明かす。

「EVMJは点検項目で異常が認められても、報告書を提出する際には客先の担当者に『異常なし』で虚偽の報告をしているのが現状です。大阪メトログループの大阪シティバスと『OMタクシー』の両現場で、EVMJの点検者が持っていた記入済み点検項目チェックシートと、大阪メトロに報告された点検結果表を見比べて確認をしているので間違いありません。おそらく、国交省にも異常なしで報告されるのではないでしょうか。大阪メトロ以外の他の事業者が所有する車両でも同様の虚偽報告がされている可能性が高いと聞いています」

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