【独自】証拠動画を入手…大阪万博で大量購入された中国製バスで続出する「操縦不能トラブル」の実態
「大阪・関西万博」で使用されているEVバスを販売する気鋭のスタートアップで車両トラブルが続出している。自動車生活ジャーナリスト・加藤久美子氏がその深層に迫る
ハンドルが利かずに中央分離帯に激突
9月1日、大阪メトロの子会社である『OMタクシー』が運行するオンデマンドバスで、前代未聞のありえない衝突事故が発生した。筆者は、その時のドライバーの様子とバスの動きを記録したドライブレコーダーの映像を入手した。ドライバーがハンドルを左に切って衝突を回避しようとしているのに、バスは右に進み、中央分離帯に激突してやっと停止した。ドライバーは取り調べに対して、「ハンドルが利かずに起こった」と証言しているが、動画を見れば、その証言の正しさは誰の目にも明らかである。
しかし、このバスを販売した『EVモーターズ・ジャパン(以下、EVMJ)』は、事故直後に開かれた上層部参加の検討会で驚くべき結論を出したという。EVMJの関係者が囁く。
「運転手の証言に、社内カメラの映像まであったにもかかわらず、事故は車両側の不具合ではなく『運転手のわき見運転』が原因という結論が出されたのです。社内でもそのような報告がなされました」
今年発生した同社の事故はこれだけではない。4月28日には大阪・関西万博の舞洲万博P&R駐車場待機場において回送中のシャトルバスがコンクリート擁壁に接触する事故が発生している。EVMJは事故原因の調査報告のリリースを出したが、その中では悪いのは外付けの自動運転システムにあり、「EVバス車両側の不具合ではない」と締めくくっている。ただ、国交省によると、ドアの開閉不良や走行中の緊急停止など、車両側の不具合も報告されているという。
事故の原因を隠ぺいし、虚偽の報告をしたと捉えられかねない対応を続けるEVMJ。老若男女多くの人が日常的に使用する公共の乗り物を販売する会社としてはありえないことだ。EVMJとはどんな会社なのか。
同社は福岡県北九州市に本社を構える’19年4月1日に設立された会社だ。主に中国3社(WISDOM、恒天、愛中和)のEVバスを輸入・販売するスタートアップである。’22年、国内販売の実績ほぼゼロの状態で大阪・関西万博の会場やその周辺で使用する専用のEVバス100台(最終的に150台)を受注したことで話題になった。万博関連以外にも全国各地のバス事業者へ急激にシェアを広げており、’25年3月末には300台以上に急増。阪急バス、伊予鉄バス、富士急バス、東急バス……と日本の名だたるバス事業者が続々と同社のEVバスを導入している。
しかし、不具合報告も非常に多い。故障やブレーキ部品の脱落、重要保安部品の破断や脱落など、信じられない不具合が多数報告されている。

