群れになった分子ロボットが物質を輸送
こうして角五氏は、モーターとプロセッサを搭載した分子ロボットに、光に反応する化合物から作られたDNAをセンサーとして組み込み、群れになって物質を輸送させることに成功。群れになった分子ロボットは、単体では実現できなかった数十マイクロメートルサイズという大きな物質を自ら回収して輸送できるようになった(動画4)。分子ロボット単体と比べると、約5倍輸送効率が向上し、積荷サイズは10倍に拡大。さらに積荷の輸送先を光(紫外光)を照射するだけで任意に指定することも可能にした。
このような分子ロボットを活用すれば、有害なウイルスに対抗するワクチンや抗がん剤などを直接患部に届けることも可能になりそうだ。他にも、さまざまながんのDNAや腫瘍マーカーなどを検知して回収し、体内の安全な場所に保管しておいて定期的に観察するなどの診断にも使えるという。
とはいえ、分子ロボットの活躍が期待されているのは医療分野だけではない。例えば、実態の把握が難しいとされている1ミリメートル以下のマイクロプラスチックなど、環境破壊に繋がるさまざまな微細物質も回収して除去できるようになる。また、分子ロボットを使ってナノレベルで発電できるコイルを作ったりなど、さまざまな用途でのものづくりにも貢献できそうだ。
角五氏は、分子ロボットを動力システムとして捉えると興味深いと語る。「ジェットエンジンや自動車のレシプロエンジン、電磁気モーターなどは小さくすればするほど効率が落ちてしまうが、分子の運動は哺乳類のような大型な生物から昆虫のような小さな生物までどのスケールにしても効率が変わらない。今の技術だと、センチメートル以下で使えるモーターがないので、そこに分子で作られたモーターの用途が広がっていきそうだ」(角五氏)。
また、分子というサイズは、地球上のシステムの中でもっとも最適化されていると角五氏は語る。「これより小さくなって量子の世界まで行くと、極低温の環境でなければ動作できなくなる。分子レベルのシステムは常温での利用が可能なので、幅広い用途で活用できそうだ」(角五氏)。
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