「お前に出会わなければこんな人生にならなかった」
最後の打合せで僕は彼にそう言われました。
これはまだ僕が20代で音楽マネジメント業駆け出しの頃の話です。
全国放送の番組でテーマソングのオーディションがあり、そこで優勝したアーティスト(当時彼らはまだ高校生で地方在住)を僕が担当する事になりました。
デビューシングルはタイアップのおかげで順調なヒットになりました、それに気を良くして大学進学を控えた彼らは都内に引っ越しをし、大学も入学後すぐに休学をしアーティストとして全力で邁進する準備も進みましたそんな。
順調に思えたアーティスト人生・・・
だったのですが、オーディションに合格した実際の理由は彼らの純朴そうなキャラクターと番組の方向性が合致していたという事が主な要素で、本質的なアーティスト性やタレント性などを大きく考慮していなかったという事もあり、フレッシュさや話題性が逓減していく中で人気やセールスが陰ってきました。
そんな結末として、最後の日がやってきました。
契約解除の会議です。
僕としてはお互いベストを尽くしたけど結果は結果だからしょうがなかったよね、というような終わり方を想定していたのですが泣きながら言われたセリフは
「お前に出会わなければこんな人生にならなかった」でした。
僕としても言いたい事は沢山ありましたが、人生を変えてしまったきっかけに立ち会っているのは事実であり言葉を飲み込みました。
この日の出来事は自分がアーティストやクリエイターと接する時、特にオーディションの審査員をしている時に相手の人生を変える選択を自分がしている。
という事を重く慎重に考えるきっかけとなりました。
そして、それから10年以上が経ったある日
ビジネス交流会イベントに参加していたのですが、そこで「福原さん覚えていますか?」
と彼から声を掛けられました。
そして「当時は自分も世間を知らず失礼な事を言ってしまいすみませんでした」
と謝罪をされました。
今は音楽の道では無く経営者としての道を歩んでいるそうです。
エンターテインメントは勝ち負けがあるので、全ての出会いが幸せな結末では無い事が多いですが、それほどのエネルギーで向き合う仕事だからこそ、どんな結果になったとしても良い終わり方ができるようにする事の大切さを学びました。
100点は人が決める事だけど100%は自分との戦いで出来る。
自分の胸に手を当てて胸をはって100%と言える仕事は難しいですが、だからこそ常に意識しないと・・・。
今日は初心に振り返れるエピソードを書いてみました。
来年でエンタメ人生20年目、谷あり谷ありですが少しでもエンタメ業界の内情が伝われば。