不満うっ積の公明限界 自民の裏金軽視、麻生氏ら起用が引き金に<連立崩壊 緊急リポート>
自民党の高市早苗総裁は1時間半に及んだ公明党の斉藤鉄夫代表との会談で「検討の時間がほしい」と何度も何度も繰り返した。 【表】想定される今後の政治日程 それでも四半世紀を超える自公連立政権から離脱するという斉藤氏の決意は揺らがなかった。 斉藤氏が会談後の記者会見で連立離脱の理由として最も重視したと説明したのが、「政治とカネ」の問題だった。 公明は自民派閥裏金事件のあおりを受けて昨年秋の衆院選と今年7月の参院選で敗北し、「党存亡の危機だ」と総括。参院選の比例票は前回から100万票近く減らし、過去最低の521万票にとどまった。 斉藤氏は4日、総裁に選出された高市氏との初めての会談で、裏金事件の全容解明や企業・団体献金の規制強化を求めた。その直後に高市氏は、政治資金収支報告書への不記載が計2728万円に上った旧安倍派幹部の萩生田光一氏を幹事長代行に起用した。 公明幹部は「代表が政治とカネの問題に対する懸念を伝えた直後に萩生田さんを登用したら公明党を軽視していると捉えるのが普通だ」と語気を強める。クリーンさを売りにしてきた公明。9日の全国県代表協議会でも、選挙のたびに自民議員を応援してきた地方議員から連立離脱を求める声が噴出した。当初は党内でも「歌舞伎」だとみられていた連立離脱が「本気」になった。 斉藤氏は高市氏から総裁が代われば連立維持はありうるのかと問われ、「誰が選ばれても同じだ」と答えたが、高市新執行部の顔ぶれと一連の対応も公明の神経を逆なでした。 その象徴が、「公明嫌い」(公明関係者)を隠さない麻生太郎元首相の副総裁就任だった。麻生氏は6日、連携相手と想定する国民民主党の榛葉賀津也幹事長と水面下で接触。「公明はいっそのこと出て行けば良い」と周囲に漏らし、その発言は公明や支持母体の創価学会に逐一伝わった。官邸関係者は「麻生さんは早期解散して自民と国民民主で過半数を取り、公明を切るつもりだった。高市さんも麻生さんの言いなりだ」と明かす。 公明は連立を離脱することで政策実現が困難になり、指定席だった国土交通相のポストも失う。自民との選挙協力がなくなり「小選挙区では100%勝てない」(元幹部)との声も聞かれる。にもかかわらず創価学会幹部は「自民執行部の布陣がひどすぎる。一緒にやっていくことはできなかった」と漏らした。 一方、自民内の危機感は薄かった。 高市氏周辺は「自民と公明は一心同体だ」と、連立離脱はないと高をくくっていた。高市氏の側近議員は9日時点でも「週内に収まるところに収まる」と周囲に話していた。 自民も公明との選挙協力がなくなれば、大幅な議席減は避けられないとの見方が強い。ベテランは「総裁選ではどの候補も野党との連立拡大については熱心に語っていたが、公明との連立は前提条件だった。高市さんが甘かった」と指摘する。 高市氏は総裁就任後の人事で麻生氏を重用する一方、菅義偉元首相や森山裕前幹事長ら、長年公明との調整役を担ってきた前執行部メンバーを排除した。公明幹部は「現執行部はパイプがなく、公明の真意をつかめなかったのだろう」とみる。 高市氏は10日、各テレビ局の番組を行脚する予定だったが、党首会談後、急きょ全てキャンセルした。公明の離脱で自民は衆参両院で大きく過半数を割り込むことになり、野党は「政界再編だ」(立憲民主党幹部)と鼻息が荒い。政局の流動化は極まり、確実視されていた初の女性首相の座は不透明になった。