――たらお、たらお。
「なによ。」
――愚痴っていい?
「………しょうがないなあ。」
――あのさ、最近何かあった、とか、そういうことじゃないんだけどさ。ふと思い出すことがあって。
私、ライターになって20年じゃない?
「そうね、学生の時からやってるからねえ。長いねえ。」
――それで、緊張症なのに、いろんな人にインタビューしてるじゃない?
「うん、有名人とかねえ…。」
――著名じゃない人も、いっぱいインタビューしてるけどね。
それでさ、インタビューの仕上がり、チェックにまわすじゃない。本人に。
「まわすね。」
――ぜんぶ書き直してくる人が、たまにいるのね。
たまにっていうか、人生で4回ね。
「それってさ、べつに、別のライターが書いても、書き直す人たちなんじゃないの?」
――たぶんね。
でさ、書き直して面白くなってればいいんだけど、悪文で、読みにくくなってるのよね。
喋ってないこと、書き足してくるのはまだいいとして、クソつまらないジョークを書き足して、「かっこわらい」が足してあったりすると、もう目眩が…。
テープ起こしした時間、無駄だったな~、私の作業全否定か! とか、思うよね。
「ライターって、技術者だと思われていないフシがあるよね。」
――うん。……ま、取材慣れしてない無名な知識人が、赤字王なのは、もう仕方ないとして。
「仕方ないのかよ。」
――媒体で働いてる人のインタビューで、『俺のルールと違うんで、これ原稿チェック以前の問題です、基準に達してない、書き直してこいよゴラー』っていうのが、一番悲しかったかな…。
あのさ、媒体ってね、全部、ルール違うんです。文章のノリとかね。
「そりゃそうだろう。」
――雑誌ごと、サイトごとにね。基準値なんてない。読み物として成立してるかどうか、その一点なんです。
私は、納品する先にふさわしい形で、文を作っているだけ。
それを視野が狭い人に、『基準値に達してない』と言われると…。
「つらいわな。」
――私、雑誌編集時代の5年間、諸先輩に鍛えて頂いたので、一応、基礎はあるつもりなんですよ。絵描きさんで言うところの、デッサンのようなものはね。
だからね、基準値に達してないって、そんな言い方されたらさあ…。
「いや、なんでそんなのまにうけるの? ハイハイって直して忘れればいいじゃない。人生で4回なんでしょ? 流しちゃえ、そんなの。」
――しかも、基準値の人の直してきた文章、『ほぼ日』系の、ホンワカ文体だったんだよね…。書かねえよ、ほぼ日文体! しかもホンワカしてねえよ、オマエの心は! 人のことを想像出来ない鬼だよ!
「ひきずってるなー。」
――というかさ、赤字入れない人ほど、男前です。これは間違いない。
「売れっ子というか、取材慣れしてる人は、赤字入れないんじゃない?」
――そう、そうなの。そうなんだよねー。
そんなわけで、毎回、取材するたびに、おっかなびっくりチェックにまわしてる…っていう感じなんですよ。
「いい加減、慣れなさいよ。」
――慣れないねえ。全然慣れない。転職したい…。
「おそいよ…。」
今日の1曲。
メキシコのバンドです。アメリカの国境近くの都市出身なので、歌詞に英語が多く含まれているんですって奥さん。
Quiero Club - No Coke
No Coke/Happy-Fi
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