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J/53  作者: 池金啓太
七話「有無にこだわる自尊心」
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隠密行動 捕獲

「では喜吉学園B組一班の人間は行動を開始、我々は籠城戦とその他の作戦について思案しているよ」


司会進行役がしばらく悩んだ後結論を出した


城島含め静希達は満足そうにその場から退出する


「ちょっと静希、あんなこと言って大丈夫なの?」


「相手は銃持ってんだぞ?やばいんじゃないのか?」


陽太と鏡花が問い詰めてくるが静希の頭の中ではすでに作戦は決まっていた


「五十嵐、何か必要なものは?」


城島もすでに動くつもりのようで何かと準備をしていた


その手にはいくつかの機材も用意されている


「無線をいくつか、作戦を簡単に説明する、明利はここに残って地図を見ながら敵の位置を事細かに索敵、無線で俺らに伝えてくれ、陽太、雪姉は居残り、捕縛は俺と鏡花、熊田先輩で行う」


「え?私も?!陽はわかるけど何で私まで居残りなのさ」


「雪姉だと殺しちゃうかもだろ」


雪奈の攻撃は確かにほぼ無音、隠密行動には適しているだろうが今回は捕縛が目的


もし首などにあたろうものなら攻撃力が高すぎてほぼ確実に殺してしまう


そして陽太はある程度の手加減はできるが隠密行動に向かない


外はすでに暗く、光源になりえる陽太は囮にしかならない


今回の場合敵に警戒もさせてはならないので陽太は邪魔なのである


「移動はどうする?徒歩か?」


「いえ、うちの優秀なペットに登場してもらいましょう」


二階バルコニー部分に出るとトランプの中から使い魔フィアを取り出す


地面に着地した奇形種は主の意図を察して能力を発動、巨大な獣の姿へと変貌する


「話には聞いていたが・・・実際見ると見事だな」


「三人くらいなら余裕で乗れる大きさですから、これで一気に移動、確保したら全力で離脱ですね」


驚いている城島をよそに各種装備を整えながら静希、鏡花、熊田の三人はフィアに乗る


静希と熊田の耳には無線、そして鏡花は太いワイヤーを身体に巻いている


全員暗闇に紛れることができるように黒い迷彩服を城島から支給され着こなしていた


「静希君、これ忘れないようにね」


明利が手渡したのはマーキング済みの種、これがなくては明利のナビが使えない


「サンキュ、熊田先輩はポイントに着いたら適度に索敵、合図は任せます」


「了解した、清水、後詰は任せたぞ」


「了解です・・・でも振り落とされないわよね?」


馬などに取り付けられる鞍などもなく非常に不安定な乗り心地に鏡花だけでなく熊田も居心地悪そうにしていた


「あぁ、それなら大丈夫、フィア、頼む」


小さな鳴き声とともにフィアの身体が形を変える


いや、形を変えるというのは的確ではない、静希や鏡花、熊田の足を身体の中に取り込んで固定してしまう


「うわぁなにこれへんな感じ」


「そうか、この身体もフィアの能力だったな」


フィアが使用しているのは分身に似た能力、身体の外部に発現系統の能力で獣の姿を作り出しているだけなのでそこに本物の肉体があるわけではない、つまりはフィアの思うがままに形を変えられる


ただの奇形種ならばここまでの微細なコントロールはできないのだろうが静希とのリンクを形成しているために微細な能力の変化も容易なようだった


「ひょっとしてあんた、この子が家に来てから頻繁に乗ったりしてたの?」


「当たり前だろ、何の練習もなしでこんなことさせるか」


自分の家に来たのであればその能力をまず確認する、静希が気をつけている点の一つだ


悪魔にしろ神格にしろ霊装にしろできることとできないことは大別しておく必要がある


でなければこういった有事の際に行動できない


「よし、それじゃ行ってきます、フィアGO!」


静希の掛け声とともにフィアの体が大きく跳躍する


二階部分から森の中に着地、木々を縫うように高速で移動していく


最初こそ、その急加速に身体が折れそうになった鏡花と熊田もすぐに慣れたのか体勢を整え周囲を見れるまでに順応していた


それにしても速い、周りが木々に囲まれているせいでそう感じるのかもしれないが少なくとも自動車くらいの速度は出ていそうだった


『静希君、あと二百mくらいで目標に接敵するよ』


明利の通信が入った瞬間静希はフィアの身体をタップし緊急停止させる


辺りは森独特の青臭い匂いに包まれている、そして月の光も入ってこない程に植生が濃い


完全な暗闇といってもいいほどになにも見えない


「了解、端の敵に接触するにはどう移動すればいい?」


『進行方向からみて左に三十m行けば部隊の右翼部分に接触すると思う、気をつけてね』


「あいよ」


再度フィアの身体をタップし明利の言った地点に到着し次第準備を始める


「熊田先輩、索敵と位置微調整頼みますよ」


「任せておけ、隠密活動は得意な方だ」


熊田の能力が発動し、静希達は奇襲の準備を着々と進めていく


暗闇の中、武装した彼らは周囲に気を配りながら歩を進めていた


森の中を警戒して歩くその姿は、一般人とはいい難い


だが訓練された兵士とも違う


おびえながらも前に進もうとする探索者を想わせる


頭にはヘルメット、そして口元を布マスクで覆い隠したテロリストのような風貌


多少の訓練は受けているようだったがそれでも一流とはほど遠い


『各員報告しろ、異常ないか?』


耳から聞こえる無線の声に中心から順に仲間が報告をしていく


右翼端にいる彼も左前方に僅かに見えている同僚を確認し異常なしと告げる


この辺りは暗く、ほんの五mほどの位置にいる仲間すら目をこらさなくては見えない


前もほとんど見えないのだが最も不確定なのが足元だ


十分に気をつけて歩いていても何度か躓いてしまう


それはどうやら仲間も同じようで何度か声をあげながら転びかけては叱咤されている


自分もああはなるまいと気をつけて歩いていた


だが突然現れた謎の突起に、彼は躓き、僅かにバランスを崩す


その瞬間、背中に何かが落ちてきて彼を地面に押し付ける


何かが襲ってきた、そう判断し声を上げようとする前に首を強く絞められ僅かにうめき声を上げることしかできない


いつの間にか関節まできめられ、持っていた武器も地面に転がってしまっている


そして近くにいたはずの同僚の姿を探しながら空中をかくようにもがくが身体が数秒も経たないうちに地面の中に吸い込まれていく


いつの間にか首の拘束は外れ彼は完全に地面に吸い込まれた


彼を襲った強襲者静希は近くに潜んでいた二人、鏡花と熊田に合図をして即座に彼の落とした武器を回収する


「任務完了、しっかり捕縛しておけよ?」


「問題ないわよ、ワイヤーで雁字搦めにしておいたわ」


土の中から気絶した侵入者であり不幸な人物第一号を取り出してフィアの背中に乗せる


「明利、これから撤収する、安全に帰れるルートを教えてくれ」


『了解、ナビゲートするね』


全員フィアの背中に乗り気絶した状態の侵入者を連れてその場を去っていく


静希達が行った作戦は実にシンプル


まず静希がフィアの身体で固定されながら木の上に隠れ待機、そして地上に鏡花、熊田の両名を見つからないように配置しターゲットとなる人物が静希の直下を通過する瞬間、鏡花が能力を発動する


足をかけてバランスを崩したところに静希が上から襲いかかり目標を抑えつけ、声を上げられないように首を絞める


そこに鏡花の能力を使って地面の中に取り込む


その状態で気絶させれば一丁上がりだ


「案外うまくいったわね」


鏡花の言葉に静希も軽く安堵の息をつく


捕縛した人物が暗視装置を持っていなくて助かった、もしそんなものを装備されていたら闇に隠れている静希達など一発で分かっていたのだから


「途中で通信が入った時はどうしようかと思ったけどな」


「ただの点呼で大助かりだ、この後も利用させてもらおう」


侵入者たちの進行速度はそれほど速いものではなかった、通常歩行より少し遅い程度


恐らく罠などの警戒をしていたのだろう、それが静希達にとって大いに助かる点だった


これが走っていたりしたら戻るときに苦労していたかもしれない


静希達が明利のナビゲートで二階のバルコニーに戻ると城島がその場で待っていた


全員が無事であり、そして捕縛されてきた一人の男を見てほほ笑む


「ただ今戻りました」


「御苦労・・・どうだった?」


「なんか・・・軍隊って感じじゃなかったです」


静希達の報告に城島は少し考えるような顔を浮かべるが即座に切り替えて男を引きずりながら作戦室へと移動する


「向こうにはばれていないだろうな?」


「確実にばれてないと思います、熊田先輩が上手いことやってくれてますよ」


熊田が行っているのは後処理工作


先ほどの点呼時に捕縛した男の声紋を再現できるようにし、点呼確認が行われる度にその声で問題なしと報告し続けている


実際は問題の元凶が報告しているのだが


「喜吉学園B組一班が戻りました」


中には数人の生徒と教師が残るばかりとなっていた、どうやら他の生徒も行動に移っているようだった


「おぉ、捕縛は上手くいったようだな」


「えぇ、これより尋問に移ります、防音機能付きの部屋を一室お借りしますがよろしいですね?」


「それは構わないのですが・・・」


司会進行役だった教師が言葉を濁すとともに顔を曇らせた


「何かあったのですか?」


「いえ、他の何人かの生徒が自分たちも目標の捕縛に動くと言ってきまして」


「なんですって?」


静希達以外にも侵入者捕縛の為に行動開始した生徒がいる


何らおかしなことではないのだが、城島の表情はあまり芳しいとは言えない


「何班ほど?」


「二班です、どちらも優秀な班ではありますが・・・」


「・・・いざという時は我々が対処するべきでしょうね、では失礼します」


そう言い捨て、静希達をひきつれて城島は退室する


髪の隙間からのぞく目は苛立ちのようなものを抱えているようだった


「先生、何かまずいんすか?他の奴らが動いたこと」


「まずいもなにも問題だらけだ、お前達のような場数を踏んでいる奴らじゃないんだぞ?普段通りに動けるような生徒だけとは限らない」


「・・・場数って・・・そんなたいしたことは」


鏡花と陽太が顔を見合わせて自分たちが今までやってきたことを思い出す


確かに普通の高校生ではやってこなかったかもしれないが、できないことではなかった


奇跡を起こしたということはなく、今まで実力と運で切り抜けてきたと思っている、運の部分は悪魔と神格に関しての部分だけ、たいした実績が彼らにあるわけではない、二人はそう思っていた


誤字報告を含めた複数同時投稿


最近誤字が多いから気をつけています


これからもお楽しみいただければ幸いです

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