祝杯
「すいません、深山雪奈先輩と熊田春臣先輩はいますか?」
鏡花が代表して二年B組の内部に顔を出すと、すぐに雪奈と熊田が気付いたのか嬉しそうに近付いてくる
他の生徒は何人か数える程度しかいない
「もしかして待ってたのか?」
「もちろん、来ることはわかってたからね」
付き合いの長さからか、それとも城島からここに向かわされることをあらかじめ知らされていたのか、どちらにせよすれ違いにならず良かった
「優秀班になったんだって?おめでとう!私らとしても鼻が高いよ」
「まったくたいしたものだ、自慢にさせてもらおう」
二年生からの称賛に静希達は照れながら恥ずかしそうにお互い視線を合わせていた
「それでこれから打ち上げでもしようと思うんですけど、一緒にどうです?」
「それは構わないが、一緒でいいのか?二年がいると少し肩身が狭いんじゃないか?」
「なに言ってんすか、先輩らいなかったら俺ら優秀班になる前にお陀仏になってたかもしれないっすよ、いてくれなきゃ」
多少気を使ったつもりなのだろうが、熊田の提案は全員に却下される
実際二年生がいなければ今までの実習はほとんど完遂することはできなかっただろう
そう考えるとこの最優秀班は二年を含めた全員の功績と言っていい
「そんじゃ行こう、会場は俺んち、あいつらも出れるし、会場にはもってこいでしょ」
「静んち行くならいろいろ買おうよ!ピザとか、フライドチキンとか!」
「はいはい、帰りに買ってこう」
全員で移動しながら静希のマンションに向かう前にいくつかの店によって食べ物やドリンクを大量に買いだしていく
全員が持つ料理を大きなテーブルに並べていく
和風洋風関係なしにそれぞれ食べたいものを並べたせいでテーブルの上が阿鼻叫喚の様相を醸し出している
「全員飲み物いきわたった?」
「オッケーだ」
全員にドリンクを配ったところで班長の鏡花がドリンク片手に立ちあがる
「えー、では我らが一班、最優秀班決定を祝して!乾杯!」
「「「「「乾杯!」」」」」
グラスを合わせて全員が食事にくらいついていく
「いやぁ、めでたいねえ、実習中はほんとこの班どうなるのかと心配だったけど」
「まぁ世は事もなし、無事に済んで何よりだ」
「ほんとよね、シズキ達が優秀だなんて他の班はどんなのだったのかしら」
「何にせよめでたい席だ、今日ばかりは無礼講としよう」
「ほんとに?じゃあその頭思う様撫でさせてもらうわよ!」
「鏡花様、飲み物がこぼれてしまいますよ、マスター空いたお皿お下げいたします」
「悪いな、あ!陽太てめえ!それとっといたのに!」
「さっさと食わないお前が悪い、食は早いもの勝ちなんだよ」
「あ、あの静希君私の分あげるよ?」
和気あいあいと食事を楽しみながら会話は弾み、やがて会話の内容は静希達の成績へと向いていた
「んん、悪くはないんだけど、手札が決定打に欠けるよね、とんでもない方法は思いつくけど、何というか爆発力がないというか、突破力が足りないというか」
「五十嵐の場合、力押しより機転で何とかするタイプだ、元よりそういった強引さは苦手分野だろう」
「そういうのは陽太に任せるよ、俺はこれからも司令塔ポジションにいさせてもらうって」
静希の成績を注視していた二年二人は唸りながら視線の先を陽太の成績に移す
「こりゃ典型的な近接バカの評価だ、分かりやすいったらないね」
「昔の深山の評価に似ているな、能力が強力な分多少頭脳が削れてる感は否めないが」
「いいんすよ俺は、考えずに突っ込む!真正面からぶっ壊す!男の美学です」
陽太に関してはすでに考えることを放棄しているためにどうしようもないのだが、これで頭まで使おうものなら知恵熱を出してしまうだろう
次に見たのは鏡花の成績
「見事だね、非の打ちどころなしってところか」
「だが他の三人に比べて精神安定が低いな、こればかりは実戦で鍛えるしかないからなんとも言い難いが」
「実際メフィが出てきたときなんてガタガタでしたから、あんなの出てきて立ち向かえる二人が異常なんですよ」
異常といわれた静希と陽太は視線を合わせて疑問符を飛ばす
「そんなに変か?俺ら」
「変なことをしてるつもりはないんだがな、あの場合倒すことより時間稼ぎが目的だったし」
「シズキ、いいこと教えてあげる、悪魔相手に時間稼ぎってすごい自殺行為なのよ?」
へーそうなのかと特に興味もなさそうに流すと雪奈の視線は明利の成績表に向かう
「明ちゃんのはなんというか安定してるね」
「そうだな、能力的にはバランスがいい・・・身体能力が低いのが難点だが」
「ま、毎日ランニングは続けてるんですよ?少しは体力ついたと思うんですけど・・・」
能力の応用力もありその使用用途も的確、状況に応じて集中も確実に行える
だが確かに体力のなさは酷評されても仕方ないレベルだ
「そういえば毎朝静希と走ってるの?ずっと?」
「うん、雨の日とかはさすがに走れないけどね」
「ふーん」
「な、なに?」
「いや何も~?」
ニヤニヤと笑みを浮かべながら鏡花は飲み物をちびちびと口の中に入れていく
どうにも明利は居心地悪そうにしていた