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J/53  作者: 池金啓太
六話「水に混ざる命の香り」
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能力談議

「ところで先生はあの武器どうやって運んだんですか?」


昼食をあらかた貪り終えた雪奈が自分の武器のある方を眺めながら聞くと城島はキョトンとしている


「そんなもの決まっているだろう、投げた」


もっと劇的な輸送方法を言ってほしかったのだが、まさかの三文字である


静希は何とはなしに予想はできていたがまさかそのものずばりだとは思わなかった


城島の能力について詳細は不明だが、念動力系統の能力であることは分かっている、ならば射出角と力の調節さえ終えてしまえば目標地点に的確に投擲することができる


隕石が落ちてきたかのような衝撃音は武器の落下音で間違いないだろう


「でも投げたって・・・壊れるとか考えなかったんすか?」


「壊れたらその程度の物だったってことだ、目標に対して決定打にはならん、壊れなくてよかったな」


本当に壊れたらどうするつもりだったんだと内心怒りを覚えながら静希と雪奈はその怒りを抑える


だが確かに城島に協力を要請している以上その結果がどのようになろうと文句は言えない


城島はあくまで引率、頼まれた仕事を完全にこなし武器は所定の位置に輸送した、輸送物がどうなるかまでは言及していないのだから武器が壊れても静希達は何も言えないのだ


「実際問題、ああいう大型武器の輸送は収納系統か転移系統が適任なんだがな・・・この班の収納系統は役に立たんし」


「役に立たなくてすいませんでしたー」


「ま、まぁまぁ、へそ曲げないでよ静」


「そうだよ、静希君は頑張ってるよ」


幼馴染二人のフォローもあまり効果はないのか静希は舌打ちしながらそっぽを向いてしまう


城島の言う通り大型武器、兵器の輸送などは収納、転移の能力者がいれば大方解決する


なにせ一人いれば大量そして大質量の物でも簡単に輸送できるのだから


その気になれば戦車だって一人で手軽に輸送できるような能力者だって存在する


だがその許容量が静希にはない


収納系統としては圧倒的欠陥を抱えてしまっているだけに厄介極まりない


「せめてあと十キロ・・・いやあと一キロ一枚に入る分が増えればなぁ・・・いっそ魔素注入でもするか・・・?」


「死に急ぐなら止めんが、お勧めはしないぞ?」


冗談でそんなことを言うのだが静希は今魔素を自分の身体に無理やりにでも注入できるような悪魔や神格が近くにいる、やろうと思えばやれるのだろう


だがその見返りはどれほど増えるか分からない許容量と引き換えのほぼ確実な死である


「ま、静希からしたら切実な問題よね、あと一キロでも増えればかなり手段は増えるだろうし」


「そうなんだよ、ちょっとした武器だって収納しておける、攻撃手段だって随分変わるだろうけど・・・」


たとえどんな話をしても獲らぬ狸の皮算用、結局は無駄話だ


自分の成長の限界が見えてしまっているだけに自分の行動の限界も見えてしまうのがつらかった


それは自分に何ができるかということでもあるのだが、静希からすれば可能性は多い方がいいのにもかかわらずその可能性が少ない


だからこそ試行錯誤を重ねているのだが、なかなか上手くはいかないものである


「せめて鏡花みたいに応用のきく能力だったら良かったんだけどな、お前の能力でやってみたいことたくさんあるぞ」


物ごとを考えることに関して班でも随一の静希は各能力でこんなことができるのではないかということを常に考えている


戦術的にも好奇心としても空想は尽きない


「あんたが私の能力使ったらなにするかわかったもんじゃないわ、今回のことで十分理解した、あんたは何するにしても躊躇なさすぎ」


「なにを言うか、俺はできる事が少ないから躊躇してるような余裕がないだけだ、できる事は迷わずやる、そうでもしないと普通の能力者にもついていけないんだよ」


その言葉にえー?と鏡花に疑いの眼差しを向けられているが、静希の能力はできる事が限られている上にもともと戦闘向きではない収納系統


戦闘についていけるように静希が工夫しているだけでその能力もその効果も並みの能力者以下、下手すれば無能力者にも負ける可能性がある


だからこそ負けられない場面では静希は迷わない


出来そうなことならなんでもやってみる


それでだめなら次の手を考える


どんな突拍子もない考えも実行して初めて結果がわかる


静希は鏡花のような天才ではない


陽太のように野生動物のような直感があるわけでもない


明利のように応用のきく能力があるわけでもない


だからこそ静希は頭を使う


それがたとえどんな方法でも目的の為なら過程を厭わない


静希はそういう考えの下動いている


「あんたってそのうち犯罪やらかしそうで怖いわ、逮捕とかされないでよね?」


静希の言うことは頭では理解できていても何をするか分からないという人間の根源的恐怖を感じている鏡花からすればたまったものではない


いつ静希が道を踏み外すか不安でしょうがなかった


「あー、多分大丈夫だって、逮捕されるようなへまはやらないようにするよ」


そんな鏡花の不安をよそにあっけらかんと笑っている静希


案外こういう人間が一番過ちを犯しやすいのかもしれないと鏡花は不安の色を濃くしていた


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