キヴォトスに転生した俺、とりあえず逃げ回る。   作:旅する野良猫

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皆様明けましておめでとうございます。
お気に入りに感想や、評価いつもありがとうございます。
今年もゆっくり投稿ではありますが、逃げ回るをよろしくお願いします。

今回の本編もいつも通りの勢いそのままな放流です。



第七話 トリニティでは掃除の時間がない

体操着、体操着、体操着、バスローブ、スーツ。

「うん、全員汚れても問題ない衣類に全員着替えたな!!」

掃除道具を担ぎながら俺は、全員を見てそう言った。

いやアウトなのいるじゃない!!!!

「あら……?」

「いや先生には流石に悪いからあんま汚れなそうなとこ掃除してもらうよ?」

そういう話じゃないわよ!?

コハルがネコ目になりながら突っかかる。いや、分かってるけどツッコミたくない。ヒフミも苦笑いしかしてないし、アズサもやる気満々だし。

「なんで!! 一人!! バスローブ姿がいるのよ!?

「いえ、これでも動きやすいですし、汚れても使い捨て用なのでそのまま雑巾としても扱えて非常に――――」

「そういう問題じゃないでしょ!? それお風呂あがりとかにきるものでしょ!? っていうか、そんな格好、だっ、誰かに見られたららどうするの!?」

顔を真っ赤にしながらまくし立てるコハルにやや困ったような表情をハナコは向ける。確かにバスローブで現れたときはびっくりしたけど、実質水着ハナコみたいな格好だったのでスルーした。

 

「誰かも何も、ここには私たち以外いませんよ……?」

「と、とにかくダメったらダメ!! アウトったらアウトなの!! あんたはもうその恰好禁止!!」

「あら……そうですか、それなら……」

そう言ってハナコはバスローブのひもを解きだす。

「いや待て待て待てッ!!?」

「あんっ……♡」

本気で慌ててハナコの手をつかみ、その場で始まりかけたストリップショーを中止させる。というか、コハルはなんで顔を隠すふりしてんだ、止めてね!?

「……ハナコ、今お前本気で脱ごうとしてなかった?」

「ふふふ……それはルカちゃんの早とちりではないでしょうか」

そう言ってハナコは俺の手をゆっくりと払い、再びひもを解く。

そしてバスローブをはだけた目の前のハナコに、どこか妖艶に。愛しむように微笑み、見つめられる。

ドキッっとして、ついその笑みから目をそらすようにその肢体へと視線を移せば、その笑みの真実を知ることとなった。

「え、ちょっ、る、ルカちゃん!? なんでハナコちゃん止めないんですか!?」

そう言ってこちらへと回り込んできたヒフミだが、ハナコを見て納得した。

コイツ、ローブの下に体操着着てた

 

ちくしょう、騙された!!!!!

 

「先生、どうして顔を伏せてるんだ?」

アズサ……先生も騙されてたからちょっと、そっとしておいてあげて……

 

 

……そんなことがあったが、まぁ普通?につつがなく掃除を始めた。草むしりをしながら建物の大体の構造を理解して、その後個人個人でばらけて掃除に取り掛かる。プールだけ最後に回すように言って、俺は全員のサポートと食堂を担当する。

割と不法投棄されてたガラクタを集めてアズサと即席バリケードを作ってヒフミに怒られたり、アズサのトラップがないか調べてたらハナコと仲良く宙吊りになってヒフミに怒られたり、ロビーに巧妙に隠されていた恐らくOGのものであろうエッチな合同誌を発掘してコハルに没収されたり、食堂の掃除を終わらしてサボってたら拘束されてご飯抜きになったり……アズサにパンを分けてもらえなかったら本当に泣いてたと思う。

 

 

「こんなところかな……?」

掃除がひと段落ついたタイミングで、汚れたシャツの襟を直しながら先生は言う。

さてはアズサの掃除手伝ったな、通気口とか普通に潜って掃除してたし。

「良いんじゃない? ずいぶんキレイになった気がする」

「うん、悪くない」

「そうですね、お疲れさまでした!」

そういって掃除を終わろうとするヒフミ。それに対して、ハナコが一瞬俺を見たので頷いて許可を出す。

「あ、まだ一か所だけ残ってますよ?」

「あれ、そうでしたっけ……?」

きょとんとしながら記憶を振り返ろうとしたのかヒフミは首をひねりながら上を見る。

「えぇ、屋外プールが♡」

「ぷ、プール……? あ、そういえばさっき……」

そこまで聞いてようやっと合点がいったのか納得の表情を見せる。

「じゃあ早く掃除しちゃいましょ」

「うん、コハルの言う通りだ。取り掛かるなら早い方がいい」

そう言って普通にみんなプールへと向かいだす。

「いや、みんな待って!? 私このまま木に縛られたまま放置!!?」

「ルカって……割とかまってちゃんなの?」

先生、その評価は普通に傷つきます。

 

 

結局ロープに括られたままプールに連行される。

「これは……」

「だいぶ大きいな、どこから取り掛かれば良いのか……いやそもそも、補習授業科目に水泳は無かったはずだけど?」

プールを最後にやると言っていたのを覚えていたのかアズサが懐疑的な視線を俺に向ける。

「試験に関係ないなら、別にこのままでも良いじゃん。掃除する必要ある?」

「何のために今日一日を掃除するって言ったと思ってんだ」

「あれ比喩表現じゃなかったんですか!?」

「いや試験に関係ないなら、別にこのままでも良いじゃん。掃除する必要ある?」

普通に戻って勉強しない? とヒフミとコハルは言う。

ヒフミはともかくコハルは退学を知ってちょっと焦っているようにも見えた。

「いえいえ、よく考えてみてください、コハルちゃん」

その不安を知ってかはたまた欲求を満たしたいのかはわからないが、ハナコが語り始める。

「キラキラと輝く水で満たされたプール、楽しい合宿、はしゃぎ回る生徒たち……想像するだけで楽しくなってきませんか?」

「……え、何!? わかんない、何か私に分からない高度な話してる!?」

「コハルは頭コハルだなぁ……」

「ですが確かに、こうして放置されているプールを見てると……何だか寂しい気持ちになりますね」

ただ普通に青春っぽいことしたくないかとハナコに言われたのだが、一切伝わらず本人がちょっと困ってるの面白いな。

すぐにヒフミがカバーして使われていないプールに感想を述べてカバ―してるのもあってちょっとずつ仲良くなっているのを肌で感じる。

 

「このサイズだし、昔はきっと使われていた時期もあったんだろう。当時は、にぎやかな声が響き渡っていたのかもしれない」

プールサイドから屈んで中の汚れを見ながらアズサは言う。

「それでも、こんな風に変わってしまう。“Vanitus Vanitatum”ここはその体現をしている」

落下防止用の縁を手でなぞりながら、どこか絵になる構図でぽつりと漏らした言葉にヒフミもコハルも頭にハテナが浮かんでいる。

 

「古代の言葉ですね、“全ては虚しいものである(Vanitus Vanitatum)”……確かにそうかもしれませんね」

「あー、ハナコ、ちなみにその言葉にはちょっとした続きがあるんだよ、二人ともそれは知ってる?」

俺がアリウスもベアトリーチェも、全部ひっくり返せるように準備してたらたまたま見つけたたった一言だが、ちょっと調子に乗ってウキウキしながら二人に聞く。

「うん、“故にこの言葉すら虚しい”」

「……良く知ってるな、古書読み漁ってないと出てこない小ネタみたいなモンなのに」

「昔、たまたま知る機会があったから」

そう言ってちょっとどや顔をするアズサ。

「ま、まぁそういうことで、今からこのプールをきれいに掃除してそしたらみんなで遊ぶから虚しい時間はいったんおしまいって訳だ!!」

「ふふ、楽しそうですね♡」

「え、えぇっ!?」

「え、本気!?」

コハルとヒフミが難色を示すが有無を言わさず言葉を続ける。

「本気も本気、今から全員水着か濡れてもいい服装に着替えて掃除。そんで終わったら水入れて今日は遊ぶ!! ほいアズサお着換え行ってこい!!」

「了解した、着替えてくる」

「えっ、あ、ちょっ、アズサちゃん!? あっ早……!?」

「ほら、コハルも行きなって。ハナコに着替えさせられるとか怖くない?」

ちょっとハナコをちらつかせて脅かせばすぐさまコハルも着替えに向かった。が、ヒフミはまだちょっと納得していないらしい。

 

「ハナコも着替えてきなよ、ヒフミとちょっと話したらすぐ後で追いかけるから」

「いえ、実は私水着はもうこの下に着ていまして……♡」

 

「あぁ、なるほど……それでヒフミは何か納得できないの?」

「いえ、その、掃除自体は賛成なんですが、こういう時のルカちゃんが久しぶりで……」

その眼は俺を通して昔を思い返しているようにも思えた。

いつもなら逃げ出しているはずなのに、何故俺が律儀にもこの場にいるのか。何故真面目に取り組むのか。そう言った俺が行っている行動そのものへの不安とも捉えられた。

「はぁー……合宿所全体を最低限とはいえ、掃除してるんだからこれから勉強したってすぐ疲れて寝ちゃうでしょ。それなら早めに寝て早く起きて勉強した方が絶対いいと思ったんだよ」

「いつも逃げたりしてるのにこういう時だけ、変にルカちゃんは真面目になりますね」

そういって、いつものあははという笑いじゃなく穏やかな笑みを浮かべて笑う。

ヒフミはこういうところが苦手だ。何というか見透かされている気がするのだ。本当に答えてほしいであろうこととはズレたことを答えた今も分かっているかのような表情をする。

それが小恥ずかしいし、こう、むず痒い。

「変な事には首を突っ込んではいないですし、ヒフミの考えているようなトラブルには巻き込まれていません。単純に私以外が退学になるのが気に食わないだけだよ。これでいい?」

「分かりました。信じますね?

「分かったから着替えてこい、私も中に水着着てるからこのまま掃除参加する」

ちゃんと納得してくれたのか更衣室に向かうヒフミ。

 

「そんで、ハナコは何の相談?」

「いえ、そんなものありませんよ?」

あっけらかんとした物言いに思いもしなかった肩透かしを食らう。

「え、じゃあなんで残ってんの……?」

「それを……私の口から言わせたいんですか?」

「え、いやだって……ひゃっ!?」

プール掃除前に準備体操でもしようと伸びをしたタイミングで、いつの間にか後ろに回ったハナコがそっと背中に触れる。

「ちょっ、え、あっ……ん♡ おま、どこ触……やぁ♡」

「どこと言われましても♡ ルカちゃんはお判りでしょう?」

そっと優しく触れるか触れないかのギリギリを狙って腹部から太ももへと指先がイヤらしく動いて、短パン越しに爪でカリカリと弱くくすぐられる。

「ハナコまって……くすぐらないで……っ」

「本当にくすぐったい人のようには思えないのですが……♡」

そのまま人の体を好き勝手に弄り倒そうとする手を捕まえる。

「はぁ……はぁこんにゃろう……ハナコ、マジでやめて……」

肩で息をしながら、本気で思ったことを伝える。このままだったら多分足に力が入らなくなるとこだった。

 

「……止めたから許すけど、なんでこんなことしたの?」

ハナコはここからコハルやヒフミ、アズサたちと共に心を通わせていくはずだ。こんな人にいきなり襲い掛かる子ではないはずだ。

「その……」

僅かに下がる視線。苦しそうなちょっと困った顔。

何となく。何となくではあるが、踏み込み過ぎたと思った。

だからかもしれない。甘いと他からは言われるかもしれないが聞かないことにする。

「やっぱいい。もうしないならいい」

そう言って本当はあまり良くないけれど、走って水道の栓を捻り、蛇口に取り付けられていたホースを持ってハナコに水をかける。

体操服はずぶ濡れになっているがちゃんと宣言通り、下にスク水を着ていたらしい。

「ハハハハハッ!! そんな下ばっか向いてるから避けれないんだぞ! ほら、掃除道具もってプール内行くぞ!!」

ホースでプール内に水をまきながら洗って他三人を待つ。

段々ハナコも乗り気になってきたのか楽しそうにしている。

 

ハナコも俺もずぶ濡れになって笑っているとアズサとコハルが合流する。

「あれ、ルカ。もう掃除をしているの?」

「中に水着を着てたからね、ヒフミはまだかかりそう?」

「なぜか腹部を異様に気にしてた。一般的な健康体なのに」

「まぁ、先生いるからなぁ……」

まだヒフミは遅くなるだろうと想定して、掃除の準備に取り掛かる。

ちらっとコハルを見ればハナコに襲われていた。と言ってもさっきみたいなガチ寄りではなく、普通の猥談からやや高度な話を行き来するという、俺が喰らったことに比べればまだ可愛らしいレベルだった。

 

水を撒いて、撒いた個所をアズサが洗ってコハルとハナコがピカピカに磨き上げる。綺麗にチームアップされ、洗礼されていく清掃は、ヒフミが来る頃には完全に完成されたものとなり、ヒフミがちょっと拗ねた。

 

後はもう俺が知っている原作通り青春の一コマを過ごした。

掃除を終えて、水がプールを満たすのを眺めたり、水を掛け合ったりして夜まで過ごした。

色々と考えることはあったが明日から正真正銘、補習授業部編の本番が始まっていく。それを頭の片隅に置いて、締め上げたアズサを寝かせて、目を閉じた。

 




次回模擬試験か番外編です。

今年もまたゆっくり書いていきますが、お付き合いいただけますと幸いです。

いつも誤字脱字報告、感想、評価ありがとうございます!!
作者は乞食なのでいつもガソリンになってます!!
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