キヴォトスに転生した俺、とりあえず逃げ回る。 作:旅する野良猫
皆さんありがとうございます……!!
いつも通り書いてそのまま放流してる大罪人スタイルですが宜しくお願いします。
追記。
お気に入りが1000件超えてました……!!
ビビり散らかしていますが、今後とも宜しくお願いします……!
「こ、これにはやむなき事情がありまして……」
先生の目の前にいる少女、阿慈谷ヒフミはそう言葉を濁す。
「え、えぇっと、そのですね……
ペロロ様のゲリラ公演に参加するために、テストをサボってしまって……
そ、その道中で人を轢いてしまって……」
途中まで冷ややかな目でヒフミを見る先生だが、人を轢いたと聞いて驚いた顔をする。
「あ、いえその子は無事で大したことはなかったそうなんですが。同じトリニティの生徒同士で問題を起こしてしまったのがよくなかったそうで……」
「無事ならよかった」
「は、はい。えっと、それで……その、ナギサ様に先生のサポートを頼まれまして……」
『……というわけで、ヒフミさん。先生のお手伝いをすると共に、補習授業部を導いてくださいませんか?』
『はい!? わ、私がですか!?』
『はい。あの方は部長という立ち位置にしていないと
そもそも、ヒフミさんのような優等生でないと出来ないことです』
『わ、私はそんな、優等生というほどでもありませんし……それに成績も平均くらいで今は落第の危機なのに……』
『ふふっ。そういうことですのでよろしくお願いしますね。補習授業部の副部長さん』
「副部長なんだ……!?」
「あ、あくまで臨時の部活の、ですが……補習授業部は、特殊な形で作られた部活ですし、全員が落第を免れたら自然となくなるはずです」
「うん、よろしくね、ヒフミ」
そういってどこか安堵の表情を浮かべ、先生を見るヒフミ。
「……こんな状況ですが、担当の方が先生で良かったです」
「そうなの?」
「はい。あ、補習授業部の他のメンバーには、まだ会われてないんですよね?」
「うん、そうだね」
「でしたら、出来れば一番最初に会いに行きたい子がいるのですがよろしいでしょうか?」
少し気になる言い回しに先生は首をかしげながらも許可を出す。
というより、ちょっとヒフミから怒気を感じたからと言ったほうが良いだろう。
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「もう謹慎期間終わりかぁ……」
どうせならもう後一週間くらい期間を伸ばして欲しいまである。
1DKの自宅に積み上がったダンボールを潰しながらついボヤキが出てしまった。
結局あの後ヒフミのことを熱く語りながら紅茶をキメるナギサ様には驚いたが……いや、だってあの人
「お代わりの時に茶葉の種類やらブランドでめっちゃ聞かれたのトラウマだったな……」
どれもトリニティで生活してると聞こえてくる有名ブランドばっかだった。
一番恐ろしかったのは春摘みダージリンだ。
さらっとキャッセリトンって言ってたけどそれリアル世界のキャッスルトンだろ。
100g二万以上するダージリンの皇帝じゃん。
なんでそんな良い茶葉をヒフミ語りで使うんだよ!? ってずっと思ってた。
一杯大体730円位の紅茶だぞ。しかも店じゃないんだ。分かるか?
スタバのティーラテが600〜700円位だったと思う。
それより少ない量で眼の前の学生が入れるお茶。
もう、色々とバグるよね。生きてる世界が全然違うと心底思った。味なんて一切分からなかったし。
何ならずっと震えてたし。
それをドカドカ飲んでいたんだ。眼の前で。
観察すれば感情の昂りが抑えられずに、勢い任せで紅茶を作ってたからね……?
雑に淹れてなお美味さと香りが分かる程の違いがある高級茶葉がガチャ石のように融けていく様は、根っこが庶民である俺にとって一番の地獄だった。
だが、そうやって下らないことで頭を誤魔化しながらも改めて実感する。いや、紅茶の件はマジでそのうち反省してもらいたいけどね?
……エデン条約編は、このまま補習授業部で流されるままに行けば多分バッドエンドになりかねないということを。
自分の思考をまとめるのに足りない糖分を補うべく、苦渋の決断でイザゾン(カイザー系列のネットストア)から買ったドクペを冷蔵庫から取り出しプルタブを開ける。
この三日間、現実逃避という意味合いもあったが、本来のメインストーリーを思い出していた。
桐藤ナギサから送られたリストには前世で見知った四名の名前があった。そこに俺が加わる形で補習授業部が構成されている。
つまり、本来のメインストーリーと皆の思考や背景は似通ったものの筈だ。ならばストーリーをなぞるように動ければ問題はない……が、それは難しい。
具体的に言うなら、
俺の神秘の特質性とストーリーの噛み合いが悪過ぎる。
重度の巻きこまれ体質と悪運とも言うべき間の悪さ。
ヒフミの一件があってから色々と試して、自分の神秘の特質性とも言うべきそれを調べて大まかなことを知った。
そしてストーリーに関わるとろくなことにならないということも。だからこそ、今の今まで学生生活を捧げて逃げてきたのだ。
巻き込まれるトラブルは俺一人なら酷くても抗争に巻き込まれる程度で済む。が、それは俺一人に限ればの話だ。
他の生徒が絡めば規模や被害はデカくなる。
補習授業部はヒフミ、ハナコ、アズサ、コハルの四人がいてこそ成り立つものだ。四人で必死に補習授業をして、テストを受けて、ファミレスで駄弁って心から笑えるそんな関係を作る彼女たちの居場所。
それらは全てこれからゆっくりと作られていくものだ。
だからこそ――――
そう考えた時、インターホンが鳴り、巡らせた思考が霧散する。
「んぇ、イザゾンか?」
ドクペを追加で購入した記憶はないが、とりあえず出る。
「すいませんちょっと待ってくださいね」
玄関で応対するためにサンダルを履き、ドアを開ける。
ドアの先には先生と
「……えーーっと、人違いです!!」
とりあえず、ドアを閉じる。
が、ヒフミの足がドアを閉じ切るより早く割り込まれ、こじ開けられる。
「先生……少し待っていただいてよろしいですか?」
「う、うん。優しくしてあげてね……?」
「え、あのヒフミさん?」
「なんですか、ルカちゃん?」
あぁ駄目だこれ……話が通用する気がしない。
「い、痛くしないでください……」
「しませんよ!?」
「ヒフミ、暴力はなるべく抑えてね……?」
「先生までッ!? いや、私、ルカちゃんに着替えをしてもらおうとしただけですよ!?」
「怒ってない?」
「確かにちょっとは怒ってますけど、それは部長なのにいなかったことに大してです」
「……撃たない?」
「撃ちませんよ!? 私ルカちゃんからそんなふうに思われてたんですか!?」
流れ的にこのまま俺は殺されるのかと思っていたので正直驚いている。
「着替えなら待ってて貰えれば……」
「ドア、閉じようとしてましたよね?」
笑いながらも冷たい眼でヒフミに見られる。なんかコレ既視感があるな……
助けを求める眼差しを先生に送るが首を横に振られてしまう。
「それに何度か私にそれをして、毎回ベランダから逃げ出してますよね?」
「いや、今回はちゃんと……」
「あはは……でも、ちょっと今はルカちゃんを信じられないので、監視させていただきますね?」
「ハイ」
先生に黙祷を捧げられながら自宅内にヒフミ、いやファウスト様と戻る。……今度からドアスコープちゃんと見よう。
「おまたせしました先生」
ヒフミにジッと監視されながら身支度を整えて表に出される。
「あーー……初めまして先生。那賀波ルカと言います」
「よろしくね、ルカ」
改めて先生の顔を見る。眼鏡をかけたそこそこ良い顔の男性。
とりわけ凄いイケメンというわけではないが清潔感があり、好感を持てる。
それが俺の感じた先生への印象だ。
「これで後三人ですね」
「一番最初、私なんだ……」
「はい。というかルカちゃん、部長なのになんで今日部室に居なかったんですか……」
「いや今日の放課後まで謹慎食らってたんだよ……というかなんでヒフミは謹慎処分受けてないんだよ」
「わ、わたしはルカちゃんと違って真面目なので……」
ちょっと目を逸らしてる気がするのだが、気の所為だろうか?
「話は歩きながらしよう。とりあえず学校に戻ろうか」
先生がそう言って俺達を学校に向わせる。
――――というわけで登校すべく歩いていたわけだが、
「当たるかぁァァァーー!!」
スケバンの背中に回り込んで突っ込んでいき、愛銃のマガジンを空にする勢いで打ち尽くし、前線を押し上げる。
はい、絶賛戦闘中です。逃げようとはしたけど追われる規模がそこそこにデカいので先生に助けてもらいながら戦ってます。
「もったいないですが……ペロロ様!!」
「何だこの鳥!! ……鳥か?」
ヒフミが投げたペロロ投影装置を囮にリロードをしながらヘルメットグループの正面にウォールランの要領で飛び出て薙ぎ払う。
トラブルまみれの生活の中で編み出した戦闘スタイル。
キヴォトス人の身体能力を最大活用した奇襲全振りのパッションファイター。
緩急をつけて突っ込んだり、力いっぱい蹴り飛ばしたり。
分かりやすい言い回しなら、小賢しい猪武者といったところ。
全然格好良くない言い回しだが、事実なので仕方ない。
何せ近距離じゃないと銃が全然当たらないのだ。
「ちっ!! ちょこまかと動きやがって!!」
「お前ら、茶髪はいいからこっちのアッシュカラーをやれ!!」
「トリニティ生の癖にフザけた髪色しやがって!!」
「品性のカケラもねえ!!」
「髪色は元からだ!! 品性が無いのはそっちだろ、何だそのゲーミングヘルメット!?」
薙ぎ払った先から更に現れた虹色にペイントされたヘルメットを被ってる奴に足払いをする。
後続のヘルメット共に日頃の鬱憤を少し込めて蹴り倒し、マウントポジションを取りながらバッグからお値打ちグレネードを取り出す。
事前に貼り付けていた粘着テープの保護シートを剥がしそのままくっつけ、即座に離れる。
ヒフミの元に戻り、先生を担ぐ。
くっつけたグレネードが炸裂し、催涙ガスが溢れる。
「ゲッホゲホ……!!」
「何だコレ、目が痛え!!」
「催涙ガスだこれ!! 誰かマスク持ってない!?」
「痛っ!? 今撃ったの誰!?」
正しくグレネードが機能しているのを確認して――……
「逃げるぞぉぉぉーーーー!!」
撤退行動に移る。
「え、ちょルカ!?」
「あの数大人しく捌いてたら今日一日課外補習で終わっちゃいますよ!!」
「いや、残り数人だったよ!?」
「んなワケ無いでしょ!! どうせ後から増援なり応急処置なりでどんどん湧いて気がつけば百人斬りする羽目になりますよ!!」
さっきまで周囲を多くの人で埋めて作られていた包囲網が手薄になった今だからこそ逃げの選択が取れる。
更に言うなら、ヒフミとセットなのだからどうせロケラン、砲撃、機銃にパワーローダーと個人武装の上澄み兵器持ちが続々と出てくるに決まってる。
トラブルは常に激化していくのが基本だ。そんなのの相手はしたくない。倒せるとしても時間がかかるし面倒くさい。
でも、先生の指揮が凄いのは実際に受けてみてよく分かる。きっと想定している以上の事が起きても対処できるだろう。
が、そんなことをしていれば日が暮れてしまう。
仮に都合良く他の生徒が助太刀に来てくれるとしても、長丁場の戦いになりかねない。
今日すべきことは補習授業部の顔合わせであって、戦闘を行うのが目的ではない。
ましてや、増援で来る敵を殲滅などする必要性がないのだ。
「暴徒の鎮圧なんぞ、そこらにいる正義実現委員会か自警団に任せりゃ良いんです! はい、ヒフミ逃げながら銃撃たない!!」
そういうことしてるから
「……そっか、慣れてるね」
「気持ちよく出かける時に追いかけ回されることが多いものでして……ね!!」
曲がり角で先回りしていたスケバンをヤクザキックで退かす。
先生のウェイト分もあるからちょっと重めの一撃になった気がするが、まぁキヴォトス人だし大丈夫だろ。
「……先生、敵の通らない道案内って出来ます?」
「ちょっと待ってね……うん、任せて」
タブレットを見て、アロナに確認を取っていたのか一瞬間があってから了承してもらった。
「よし、じゃあ先生は道案内おねがいします。んで、ヒフミは私の後ろで人が来たら言って。戦闘は出来るだけナシの方向で」
「わ、分かりました」
「次の突き当りを左。そろそろ撒けたんじゃないかな」
担がれたまま先生が道案内をすること五分。
だいぶ学校に近くなった辺りで先生がそう言う。
人通りの多い通りに行く前に担いでいた先生を降ろして、警戒を解く。
少し歩けば三日前に見た懐かしき我が校の校舎が見える。
それ程思入れもないけど、三日ぶりの学校。
「疲れたぁ……じゃあお疲れ様でした」
「しれっと帰ろうとしないで!?」
「連休明けの学校程、切実に帰りたくなるものでして……ね?」
「あはは……先生がいるのにいつも通りですね」
ヒフミが乾いた笑い、いやドン引きにも近い苦笑いをしながら、俺の制服の襟を持ったかと思うと――……
「行きましょう、先生」
「うん、行こっか」
「へ?」
そのまま校舎に向かって俺を引きずる様にして歩き出した。
「待って! 首!! 首締まってる!! 息を!! 息をさせてください!!」
「ヒフミはルカと仲が良いんだね」
「ルカちゃんはその、なんというか、あまり人と交流をしない子だったので……」
「え、このまま本当にいくの!? マジで!?」
次回、全員集合です。
今後もゆっくり書いていきますが、お付き合い頂けますと幸いです。
いつも誤字脱字報告、感想、評価ありがとうございます!!
作者は乞食なのでガソリンになってます!!
これからも頂けますと喜びます……!
後、ラフですが那賀波ルカのイメージイラストをあらすじとかに貼っておきます。