キヴォトスに転生した俺、とりあえず逃げ回る。 作:旅する野良猫
文字数も少ないかもです。
「さて、何から話しましょうか……」
ティーパーティが使用する一室。その部屋の主であるかのように座る桐藤ナギサが顎に手をやりながら、物々しくつぶやく。
「まず、那賀波さんは私に呼ばれた理由についてはお判りでしょうか?」
「……テスト当日にDUまで行ってトラブルを起こして帰ってきたからで合ってます?」
「えぇ、その認識で間違いないです。おかけになってください、少々お話が長くなりますから」
え。俺のこと補習授業部にぶち込んでおしまいじゃないの?
そう思いながらも、促されるままに着席する。
「那賀波ルカさん。貴女には以前から気になっていたので調べさせていただきました」
「……そんなに私、トラブル起こしてます?」
「えぇ、良からぬ噂が出回る位には」
「ヨカラヌウワサ」
地味に、平凡に生きてきたつもりだが、まさかそんな酷いのだろうか。
「自治区外に出るのは良いですが、トラブルに巻き込まれるのはいただけません。たとえ、自らトラブルを起こしてないのだとしても、この時期に品位あるトリニティ生が問題を起こしたと噂が出回るだけでも厄介なことになりかねません。それはお分かりですか?」
「……はい」
「具体的には説明できますか?」
「エデン条約が近づいてゲヘナ、トリニティ間でピリついているのに、他自治区でトラブルを起こして政治的にトリニティが不利益を被る状態にしかねないことをしました」
ヒフミがそもそも補習授業部に入部することになったのも似た理由だったはずだ。謎の銀行強盗組織のリーダー格をしている疑惑のあるトリニティ生徒。政治をする側からしたら危険でしかない。
「……すいませんでした」
「分かっているのでしたら謝罪はもう大丈夫です。学校間の問題を抜きにしろ、テストをサボタージュしています。なにより、その最中に紛争に参加。正確には参加していなかったとしても当然、然るべき処罰を受けていただきます」
優雅に紅茶を飲みながらナギサ様は穏やかな眼差しでこちらを見据える。
「はい」
トリニティにいる
「まず、暫くの間は特殊な事情を除いてトリニティ自治区外へ行くことを禁止します。それからわたくしの用意した部活への入部を強制します。また、それに伴い部活動を除いてトリニティ校舎への侵入を禁止します。良いですね?」
「へ?」
思っていた以上に厳しい処罰で声を漏らす。
自治区外に行くのがダメになるとは思わなかったし、なにより部活以外での学校への立ち入りすら禁止されるとは思わなかった。
「そ、その、3ヶ月間の謹慎処分とかでは駄目ですか……?」
「その方がルカさんに反省して頂けると判断いたしました。貴女にとっては謹慎なんてご褒美になってしまうでしょう?」
微笑んでいるように見えて内心ブチギレているかのように思える棘のある言い方だ。
本性がまるでヒキニートであると言われるなど心外だ。
いや、確かによく休みの日に自宅に籠もりっきりになるのは事実だけど、それでも時々外出もしたりするし、そうインドア派なだけだ。自宅が好きなだけ。ヒキコモリチガウ。
「ふふ、それに歩く手榴弾なんて呼ばれている生徒を通学させる程の度胸は私にはありませんので」
「え、待って。待って下さいナギサ様!? 私、そんなふうに呼ばれてるんですか!?」
そんな微妙にダサい二つ名が付いているとは思わなかった。誰だそんな二つ名を俺につけたの。
「そうですよ? 何でも、行く先々でトラブルが起きている貴女のことを指しているそうで。ピンを自分で抜いて勝手に何処かで爆発する手榴弾。まさに気が付けばトラブルに巻き込まれている貴女を指すぴったりの言い方かと」
「いや自分で言うのもあれですけどそんな生徒、早々に退学にしたほうが得じゃないですか……?」
「詳しく調べればどれも巻き込まれた被害者である生徒です。ただトラブルメー……いえ、問題のある才能を含んでいるだけで退学になど出来ませんよ。ですので、私としても心苦しいですがこういった処罰にさせていただきました」
「いや、めっちゃ笑ってますよね!?」
というか、トラブルメーカーって言いそうになってましたよね!?
「ルカさんとはとても仲良く出来そうです」
「性格悪いって言われません?」
「私の周りでは友人を除いて鳥の囀りしか聞こえないもので……」
「性格悪いって言われません!?」
おかしい。俺の知ってるナギサ様じゃない。
ナギサ様はこんな皮肉の効いたジョークは言わないし言えないだろ。いや言うのかもしれないけど、こんな愉快な人ではなかったと思う。
「さて、話を戻しましょう。先程言った部活動ですが、これは一時的なものです。一定期間で部員は居なくなると思いますので、そうなったらルカさんが復学出来るシステムとします」
「つまり?」
「条件が満たせなければずっとそこにいて下さい」
「実質無期懲役ではないでしょうか?」
「なんとでも言って下さい。肝心の詳細ですが、部の名前は補習授業部。名前の通り、今回のテスト結果がよろしくない者や貴女のようなトラブルメーカーを集め、補習授業を行う部活です」
やっぱり補習授業部コースらしい。ここからは原作を捻じ曲げる覚悟も必要になるかもしれない。
そう思うとわずかに声が震えた。
「……そ、そこで俺は一緒に勉強をすれば良いんですか?」
「えぇ、ルカさんに部長として、他の方々をまとめて頂きます」
「……は?」
「シャーレの先生に顧問をお願いしましたので、くれぐれも粗相の無い様にお願いしますよ?」
「え。いや、え? は? 待って下さい????」
原作じゃ、部長ってヒフミじゃなかったっけ!?
みんなで話して相応しいよって決まるワンシーンがあった筈だ。
いやいやいきなり原作崩壊なんて聞いてないんだけど?????
え、ブルアカ宣言は!?
あれがなきゃエデン条約編が壊れかねないよね?
……まさかヒフミ不在とかいうのはやめてくれよ?
「突然のことで困惑するかも知れませんが普段人と交流をしない、持たない様にしている貴女にとって最良の処罰と考えました。とはいえ、なんの準備もなしとは言いません。3日間程、自宅謹慎という形で落ち着く期間を設けます。その間にどう纏めるか等を考えておいて下さい。後ほど、入部者の生徒をリストにして自宅にお送りしておきます」
「え、いやぁ、あの……」
「どうかしましたか? あぁ、スタンドのお菓子でしたらお好きにどうぞ。因みにそちらのキャラメルマドレーヌはわたくしが作ったもので以前、ヒフミさんに喜んでいただきました」
「多分それ、ヒフミ絶対意味分かってないと思いますよ。後なんでそれ私に言うんですか?」
しまった。つい反射的に返答してしまった。いや、キャラメルマドレーヌなんて単語が出てきたナギサ様が悪い。
「……以前ヒフミさんと食事に行かれたそうですね?」
「確かに行きましたけど、それ絶対誤解してますから安心してください」
それに一年生の頃の話だ。それ以降今に至るまで一切関わらないよう必死に逃げ回っているのだから。
「えぇ、きっと周りと交流を持とうとしないルカさんを思ってのことでしょう。ですが、それ以降今日まで断り続けるどころか避けられているとわたくしに相談をされました」
誤解して無いのはいいけど、誤解であって欲しかった。
ナギサ様が俺を見る目がとても暗く淀んでる。死んだ目をしていて怖い。
「わたくしのヒフミさんを何故避けるのですか?」
「いやヒフミさんはヒフミさんであって、ナギサ様のではないかなぁって……」
「は?」
「何でもないです、すいませんでした」
「ではお話の続きです」
「はい……」
笑顔で俺に殺意さえ含んでいそうな眼差しを向けるナギサ様。
いやこの人本当に俺の知っている桐藤ナギサか怪しくなってきた。
ド直球に不満投げてきたよこの人。さっきまでなんで避けようとするのか聞いてきたのに、不満が爆発したらしい。
「どうかしましたかルカさん?」
「いえ、その、ナギサ様から誘ってみるのはどうかなぁ〜なんて……」
「それが出来れば苦労してません。 マカロンで貴女の自宅埋め尽くしますよ?」
「それ誤解生むから止めてくださいね!?」
俺、ここに説教されるつもりで来たのになんで恋愛相談始まったの?
――――「聞いてますかルカさん!」
「え、あっはいすいませんお茶に夢中だったもので……!?」
「そうでしたか、これから話も長くなるでしょうしお代わりを入れましょう」
本当に何故こんなマジのお茶会が始まったんだろう……
しかも俺、部長になってるし……
次回日常回です。(当社比)
今後もゆっくり書いていきますがお付き合いいただけると幸いです。
尚、作者は乞食なので評価やコメントを頂けるとなんかこう、滅茶苦茶喜びます。
前回コメント、評価くださった人ありがとうございます!
作者のガソリンになってます。
今後ともお付き合いいただければ幸いです。