キヴォトスに転生した俺、とりあえず逃げ回る。   作:旅する野良猫

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クソ遅筆マンです。
プロットはありますが、ストックが無いのに放流した大罪人です。


vol.1:補習補習授業部編 前編『これから始まる物語』
第一話 キヴォトスのドクペはちょっと糖度が高い


 

 

 

それは一丁のサブマシンガンだった。

無論それはただのサブマシンガンではない。

 

PDW(個人防衛火器)

サブマシンガンの規格でアサルト弾に近しい貫通力を使えるようにした事が売りであるその銃には50AE弾が装填されていた。

本来貫通力を持たせる事で従来の短機関銃から脱却した筈のソレは、大型拳銃用の弾丸を連射させるという狂人ですらやらないであろう愚者の武装へと変わり果てていた。

 

そう、大型拳銃弾を連射するメリットは一切ない。

エネルギー比較をしてしまえばアサルト弾と同じくらいであり、連射するならアサルトライフルを使えば良い話なのだ。

更に弾速も遅ければ反動もそれなりにデカい。

 

それだけのことをして得られる恩恵は殺傷能力の低下。

何一つとしてメリットのないカスタマイズ。

 

だが―――――――。

だから、この世界で――――。

だからこそ、このキヴォトスにおいて愚者の武装を使う理由になりえた。

 

 

 

一呼吸の間で、敵へと詰め寄り銃口を向ける。

引金を引き、眩いまでの銃口から灯される閃光は、弧を描く様に点滅を繰り返し、21発もの弾丸を正中線上に撃ち放つ。

 

「は、虚しいな」

超至近距離――最早ゼロ距離に等しい距離からの攻撃。

だがそれはあっさりと。呆気なく避けられてしまった。

「なッ!?」

「一瞬で間合いを詰めての強襲。噂に聞く通りの攻撃、末恐ろしいな。だがそれだけだ」

銃身を掴まれ、行動に迷った刹那、横腹を素早く蹴り飛ばされる。

「ぐぅっ……!!」

「如何に奇をてらった強襲で反応が遅れようと、貴様との間合いをこちらも詰めればタイミングがズレる。そのズレで射線を避けることなど造作もない。どうやら戦闘そのものは不慣れな様だな」

「黙ってよ!!」

衝動的に前へと進みかける身体を本能とも言える野性的感でバックステップ。

そして、この世界においてコンビニや自販機等でお手頃に購入が出来るグレネードの一つ、スモークグレネードを手に取って投げる。

期限間近の在庫処分セールでお値段なんと500円。

 

「……チッ、煙幕か。……しかし」

スモークが間を埋め尽くすが、僅かな光が瞬き、銃声が響く。

数発の弾丸が脇を掠め、地面を抉る。

「っ!?」

「音で分かる」

グレネードを投げて直ぐにリロードを行ったが、その僅かな音でさえ命取り。

先程まで居た場所に銃弾が撃ち込まれる。

……煙幕はまるで効かないらしい。

なら――――……!!

 

 

「……其処か!!」

刹那、煙幕越しに光が瞬きこちらの方向を捉え、放たれた弾丸が肉を削ぐ。

痛い。だが、体には命中せず頭上や頬の肉を削って通過していった弾丸程度ではこの勢いは止まらない。

「当たれるかぁぁぁぁぁあああああああああああ!!!!!!」

――――超低姿勢での突撃。

転ぶギリギリの状態で懐に最速で潜り込み、勢いそのままに体当たりで無理矢理体勢を崩させ、顎に照準を定める。

 

突貫即撃。確実に当たる距離まで肉薄して、破壊力に特化した弾で脳を揺らして気絶させる。様々なトラブルに巻き込まれていくうちに出来上がっていったその奇襲を主にしたスタイルはゲリラ戦のエキスパートにさえ牙をむく。

 

引金に力を籠め、装填された弾薬を吐き出させる――――……

 

はずだった。

「ぐぁ……!?」

こめかみに衝撃が走る。

そのあまりに強い衝撃は体幹を崩し、体ごと倒れる。

突然の出来事に戸惑うのもつかの間、激痛が頭部から伝わる。

「甘かったな。一対一なら効果はあったかもしれないが、生憎こちらは部隊で動いている」

頭に響く鈍痛が、体から力を抜いていく。

自身の脈拍に合わせ、体内から血液が失われていくのが分かる。

「えへへ……痛いですよね、こんなに血が出て苦しいですよね」

「逃げたって意味なんてないのに」

「……(これでミッションクリアだね)」

マスクをつけた少女の背後から三人の少女が声と共に姿を現す。

「あぁ姫、そうだな。早いところ連れて行こう」

ロープを取り出し、彼女――錠前サオリは言う。

「『マダム』の元へ『福音の少女』を届けよう―――――」

 

 

 

 

――――――――――

――――――――――――――――

■■■■■■■■――――――――――――――――――

 

「あっついなぁ〜〜……」

スクーターに乗り、湿気混じりの生温い風を浴びながら目的地へと向かう。

季節が夏の準備期間こと梅雨へと移ろいつつある今日このごろ。

銃声が元気よくあっちこっちで聞こえることから湿度に苛ついてる学生でごった返しているのだろう。今日もキヴォトスは平和である。

最近アビドスへと向かったらしいシャーレの近くに位置するエンジェル24シャーレ2号店。駐車スペースにスクーターを停めて入店する。わざわざこんな僻地に来たのには意味があった。

自動ドアを通って向かうはドリンクブース。ペットボトル、缶、瓶と多種多様な容器に入った飲料売り場から目的の品を数個取り出しながら、レジへにいるバイトの子に声を掛ける。

「ソラちゃん、今日箱は届いた?」

「あ、はい。届いてます!!」

そのことを確認し数本の缶を携えレジに向かう。

「これといつもの箱3つお願いします」

「はい、ドクターペッパー24本入りが3点とチェリーフレーバーが3点、計6点でお会計、9000円です」

レジ下にソラちゃんが潜り、箱を3つ取り出して会計スペースにそっと置く。炭酸飲料に衝撃を与えないよう注意出来て偉い。

「クレジットポイントで」

「9000クレジット頂きました、ありがとうございます」

「次も箱3つ個別でお願いします」

「分かりました」

「ありがとう……ここ以外だと高いんだ……!! ソラちゃんバイト頑張ってね」

命の水(ドクペ)の入った箱を担いでスクーターへと運ぶ。

自家製の三連ドリンクホルダーにチェリーフレーバーを入れ、荷台にダンボールを置き、落っこちないようロープで捕縛。

ゴーグルを装着し、ヘルメットを被ってエンジンを点ける。

「よし!! 早くかーえろ!!」

準備を終え、自宅へと向けスクーターを走らせた。

 

 

那賀波ルカ―――――

それがこの世界、ブルーアーカイブの世界に転生した俺の名前だ。ハッキリと転生したことを自覚したのは数年前。

どこの学校に行くのかを決めるタイミングでドジをカマして転生に気付いた間抜けであり、具体的に言うならミレニアムに行くつもりで居たらトリニティに入学してしまったアホである。ドジどころではない。何よりそれに気づいたのは入学許可証が届いてからで、もう後戻り出来ない状況になってからだった。それらは全て――――

(エデン条約編巻き込まれるのイヤなんだけど!!!!)

この一言に尽きた。

この世界において俺が知っている範囲でのストーリーは全て主人公的立ち位置に存在する『先生』がどうにかする。

因みにどうにか出来なかったらピタゴラスイッチ式に世界が終わりを迎えるのでどうにかするしかないのである。その中でもエデン条約編と呼ばれるこの世界の物語においてターニングポイントを担っている章がある。そのストーリー下ではトリニティ生徒のほとんどが巻きこまれる事件が起こる。

ユーザー視点では一番好きな話なのだが、知ってる中で最も被害がデカくなる話だ。

何せ巡航ミサイルがブチ込まれ、内戦クラスの戦いが始まる。

転生前の世界なら大勢の死傷者が出てるだろう。

色んな子たちがボロボロの重傷になりながらも戦うのだ。

委員会や役職に就いてない一般生徒たちは暴動を起こしかけたり、小競合いが生じるギスギス空間を形成する。

正直言ってストレスで胃が死ぬ。

ここまではまぁでも転生したんだし頑張って乗り越えようという気にまだなる。

だか、考えてみて欲しい。世界を滅ぼそうとしている奴がいたとして、ソイツにとっての目的である世界の崩壊とか危機を止めれる存在がどう止めるのか。その術を知ってる転生者とかがいること自体がこの世界に置いてとんでもないデメリットなのである。

よって俺は決めた。

 

ストーリーキャラから逃げ回ろう―――――と!!

とりあえずトリニティ、ゲヘナ生徒は一般生徒でも関わると面倒なことにしかならないので全力で関わらない様に動く。でも、成績悪いと補習授業部送りになるので成績は上位になる様務める。

そうやって着々とストーリーキャラ達から逃げ回った。

まぁでも、ストーリー見ていた側からすると、何もしないのは辛いのでひっそりとアビドスに匿名で募金をちまちま送っていたりする。正直雀の涙にもならないだろうけど……。

 

そして結果としていうなら大成功だった。

友達は居ないけどな!! ガハハ!! 

そりゃそうですよね!?

通ってる学校で全然人と話さず、ただ黙々と図書室で勉強してる悲しいぼっちに誰が話しかけてくれるのかって話ですよ!!

いや、話しかけてくれる子はいた。

はい。いました。でも尽くストーリーキャラだったので全力で逃げた。ええ、それはもう某有名RPGのメタル枠の如く逃げ出しましたとも。故にぼっち道まっしぐら。

まぁ、必要なことなので諦めた。

でもガン逃げに徹しててもなんでかねぇ……?

トラブルの方からこっちに突っ込んでくるんですよね……。

 

直後、戦車特有の派手な炸裂音が轟き、目の前の交差点にいたヴァルキューレの生徒達を薙ぎ払いアスファルトを削り飛ばしながら着弾した。こんなふうにトラブルにモテまくりな今世である。

「わぁ……」

キュラキュラキュラとキャタピラ特有の金属が擦れる音を出しながら戦車数台が目の前を通り抜けていくが、赤いヘルメットの車長がこちらを見る。頼むから絡みに来ないでくれというこちらの思いは虚しく、片やヘルメット越し、片やゴーグル越しであれどハッキリと互いの目が合ってるのが感覚的に分かる。

そして、その会合はヘルメットが無線を取り出した事で終わりを迎える。

「トリニティのガキだぁ!!!! 捕まえろ!!!!」

「ですよねーーーー!!!!!!」

半泣きでスクーターのアクセルを全開にする。後輪がスリップしなからも勢い良く停車中の戦車の間へと飛び出す。

「なっ、逃がすか!! 追え!!」

急発進で身体を一瞬置いていかれそうになるが、気合とキヴォトス人由来の筋肉で無理矢理耐える。

アクセルはそのままに、刺さっているキーを奥に押し込んで捻る。ガソリンタンクからゴポンッと燃料が流れていく音が鳴り、スクーターでは出ることのないであろうエンジン音へと変わる。

「隊長!! あの原付、更に加速して戦車じゃ無理です!!」

「音が原付じゃないッス!! あれ違法改造してるッスよ!!」

「それなら砲撃の用意をしろ!! 衝撃でコケさせろ!!」

「さっきヴァルキューレの奴ら撃ったので最後です!!」

「……………マジ?」

「マジです」

 

65km――――

―――70km―――

―――――84km―――――――――

デジタル式の速度メーターが白色数字から赤色数字へと変わっていく。そして90kmを境にメーターが青枠で表記される。

「よし、このまま撒けそう」

後ろから追い縋ろうとしたのだろう。だがこちらが出せる速度を察し諦めた戦車たちを尻目に安堵する。

このまま大人しく帰路に就く……はずが、装甲車二台がしっかり追いかけてきた。いつもならこれで逃げ切れるのに!?

 

「へぇ……噂には聞いてたがお嬢様のクセに随分とゲテモノじみた単車に乗ってんじゃねぇか!!」

「良いエンジンじゃん!! あーしらが有効活用してやんよ!!」

「逃がさねぇぞオイ!!」

「ザッケンナッコラァーー!!」

両方の装甲車、後部座席から身を乗り出して銃を構えるのがミラーから伺えたかと思うのもつかの間、一斉に撃ち出してくる。

「なんでいつもトラブルの方がレベルアップしてくのーー!!?」

銃声が響き渡りながらも、必死に射線を切るために不規則な蛇行を繰り返す。しかし、こちら側からは牽制はおろか銃を撃ち返すことが出来ず、装甲車がじわりじわりと距離を詰めてくる。

「中々のテクじゃん!! でもアタシらには及ばないね!!」

「ハハーー!! その様子じゃ120kmが限界ってトコ!?」

「オラオラオラオラ!! そろそろ一発当っとけや!!」

「スッゾコラァーー!!」

「いやどうして最後の子クローンヤクザ口調なのさ!?」

一瞬銃声が止む。つい気になったのもあり、ツッコんでしまった。もしやいきなりツッコミをされ、驚いたのだろうか。

 

「「「「ザッケンナゴラァァァ!!!!」」」」

銃声の勢いが激しくなった。

「どうしてぇーーーー!!!!?」

「アタシらの大切な仲間をよりによってクローンヤクザだって!?」

「ふざけんな!! あんな汚いオトナ御用達の用心棒と一緒にすんなし!!」

「テメェはウチらを怒らせた!!」

「ドグサレッガァーー!!」

四人の逆鱗だったらしい。

四人全員怒らせてしまった。でも最後の子の口調はどう聞いてもクローンヤクザだと思う。

「悪気は無かったんですごめんなさいぃーーーー!!!!」

「とりあえずそのエンジン寄越せぇ!!!!」

「身代金取ったらその後考えたげる!!」

「しばらくはウチらの専属メカニックな!!」

「パシレッコラァーー!!」

「それ言外に奴隷にするって言ってません!?」

激昂してより苛烈になった弾幕はスクーターのカバーパーツを掠め、確実に仕留めに掛かっているのが分かる。

「あぁ……もう!! あんまり使いたくないのにぃーー!!『ラトナシステム:モードアクティブソナー』で起動!!」

その宣言でスクーターのサイドカバーに付いていた小型ドローンが起動する。そして装着していたゴーグルのレンズ投影式モニターに独自で組んだプログラミングフォーマットが展開、即座にUIが表示される。

『音声入力によりラトナシステムがオンライン化します。

起動シークエンス正常動作を確認。

IFFアクティブスケールで使用。

GPS精度確認。誤差2m前後。

100m圏内におけるユーザー内にストーリーキャラクターの反応確認できず。

現在確認できる他ユーザーのみをマップに表記します』

ゴーグルレンズ上に表示された地図に自分の現在地を示す白丸と他の人を示す赤丸が地図上を動きながら映し出される。

「自宅までのルート検索!!」

『目的地までの距離を検索、基本ルート構築。

 

検索結果、最短30分。

なお、ユーザー反応を回避しながらの迂回路の場合2時間となります』

レンズに映るマップにルートが表示される。

「予想バッテリー稼働時間は?」

『コードレス充電をしながらであれば50分の連続稼働が可能です。サブバッテリーが100%の使用が可能であれば2時間の連続稼働が可能です』

「りょーかい!!」

大通りから少し道幅の狭い道路へ被弾覚悟で進路を切り替える。

ここから信号を一つ通って脇道に逸れれば装甲車が通れない小道に出れる。大通りと違って狭い一車線道路は射線を切るのが難しく、牽制の取れないコチラにとって不利だが、大通りでじわじわと追い詰められるより追ってこれない脇道にまで逃げ込んだ方がいいと踏んでのもの。

……とはいえ――――――――

「あの4人、腕が立ちすぎる……!!」

予定したルートは残り70Mはある。

被弾覚悟ではある……が、想定以上に当たっててメッッチャ痛い。幸いなのは4人ともスクーターに積んでるエンジンが目的になっているのもあり、私ばっか狙いまくっていることにあるだろう。でも痛い!!

「そろそろ終わりといこうか!」

「メカニックヘルメット一名確保〜!!」

「やっとカイザーモーターからぼられずに済むぜ!!」

「ハリツケッコラァーー!!」

捕まえる気満々で放たれる弾幕が加速し被弾率がヒドいことになる。というか待って、制服ズタボロじゃん!!?

あいた、イデデデデデテ!!?

衝撃で運転が覚束ない。なんならブレた運転でガードレールをかすめ、ちょっとした擦り傷になる。

慣れたくはないが転生してから今の今までずっとこの調子なのだ。嫌でも慣れた。

もはや俺にとってトラブルはキヴォトスで生活するのとイコールで結びついた日常的な出来事なのである。

「後ちょっと……!!」

目線の先にある脇道に逸れて4輪禁止路に出れば、逃げ切れる。

こんなありふれた(ありふれて欲しくないけど!!)出来事でヘルメット団入りは流石に勘弁して欲しい。

「オラ逃げんな!!」

「逃げるに決まってるでしょって!!」

縁石をうまく避け、歩道に乗り上げたタイミングでリアタイヤをロックして車体を倒す。

フレームがガリガリとアスファルトに削られる音を出しながら滑り、目的の脇道へと吸い込まれていく。

「私の勝ちだぁ!!」

振り返ると、停車した装甲車から降りて何かを叫びながら追いかけようとするヘルメット達の姿が見える。

「こ――――ガキぃ!!――ど――みか――――!!」

「―――――!!」

「――――――――――――!!」

「トッツカマエッゾコラァァァァーー!!!!」

いや最後のセリフだけはしっかり聞こえた。

思わずガッツポーズをしたくなるが、前を向いて丁寧な運転に意識を切り替える。

よく言うだろ?『帰るまでが遠足だ』って。急に戦車が突き当りに停車していることもあるのがキヴォトスなのだ。

 

「しかしまぁ、我ながらよく逃げれたなぁ……」

スクーターに取付けた給電パーツに充電の為、戻って行くドローンをチラッと見ながらそんなことを思う。

 

 

――――ラトナシステム。

このキヴォトスにおいて、俺こと那賀波ルカがエデン条約編及びストーリーキャラ達と深く関わらず、なんなら誰からも知られないよう生きる為に作り出した製作物の一つ。

 

最速帰宅用逃亡ツールである。

 

ギミック自体は簡単で、キヴォトス人なら、というかストーリーキャラならみんな入れているスマホアプリ『モモトーク』のふるふる登録機能に対して自動でハッキングを行い、それを探知するといったもの。

ハッキング用の小型ドローンとゴーグル間で通信を行っており、常に情報はアップデートされ、ゴーグルに映されたマップに所在が表記される。

元々個人的に好きなゲームで使われていたツールの再現をしようとしたものだが、如何せんハード面もソフト面も全て自作であり、正直に言ってしまえば本家の劣化版である。

フルスペックで起動させれば10分でドローンがバッテリー切れを起こすし、出力を抑えても30分保てば良いほうだ。その為、普段は設定しておいたストーリーキャラの名前で登録されたアカウントが近くにいる際に通知が出るようにだけしてバッテリー消費を抑えたり、スクーターに取り付けた充電パーツに繋いで給電してたり。でもそれでも保たない時があるのでサブバッテリーを持ち歩いていたりする。

そんな必死こいて作ったシステムだが、ヴェリタスとかがちょっとその気になったら簡単に対策をとれてしまうので、俺にとってはあんまり使いたくない。……のだが、今日みたいなストーリーキャラ以外で強かったり特別な雰囲気のある相手には使わなければ逃げ切れないので使わざるを得ないのだ。

 

トリニティ自治区のエリアに入り、一息を入れようとスクーターを端に寄せて停車する。

「ここまでくれば流石に襲撃はないだろ……疲れ果てそうだよ畜生……」

緊張とストレスでクラクラする頭に糖分を与えるべく、ホルダーに入ったドクペのプルタブを開けようとして気付いた。

「ひょっとしてこれ……やっぱり!!」

荷台に積まれたドクペの箱に穴が空いて、中身が漏れていた。

私の9000クレジットが穴まみれの缶ゴミに変換されたことに頭を抱える。

「明日テストのある私にどう戦えと……?」

プルタブを開けて、チェリーフレーバーのドクペを流し込む。

「たった3本じゃ一夜漬けのお供にもならないよ……」

いっその事カイザー便でお届けしてもらおうか……?

唯一ドクペを取り扱うオンラインストアはカイザー系列企業であり、言うまでもなくクソ高いのだ。

なんだよ!! 送料別で4500クレジットって!?

送料込ならDCは6000クレジットでトリニティ自治区は8000クレジットとか消費者を馬鹿にしてんのかって位高い。

実質3箱分くらいの価格で1箱しか届かない暴利の塊であり、ユーザーを貪り殺すことしか考えてないとしか思えないので滅多なことでは使いたくないし、個人的に利用したくないのだ。

「大人しくコーラでも買って頑張るかぁ……」

飲み干したドクペ缶をゴミ捨て場に捨てて、スクーターに跨り帰り道をナビ検索する。

しかしさっきまでは気づかなかったが、変に騒がしい。

抗争等の騒がしさではない。というよりトリニティ自治区においてはそういった戦闘行為は人前でそう滅多に起きることではない。まぁ起こる時もあるが大体正義実現委員会が解決するし、解決し終わってる場合が多い。

 

「何かのイベントとかやってるのかな?」

ルート上通り掛かることもあり、ふと気になって騒ぎのする方にチラリと視線を向ける。集団が何かを囲っているらしい。ストリートパフォーマンスかなにかだろうか。そんなことを考えながら走り抜けようと。通り過ぎようとした瞬間。

ポケットの中のスマホが震えた。そして対向車線から明らかにスクーターでは出ない速度で、コチラに真っ直ぐ突っ込んでくるスクーターが1台。

「ど、退いてくださーーーーい!!」

その声はゲームで聞いたものと同じで。

逃げ回ることを決意した時から何度も声をかけてきた極々普通の少女の声。

そう―――――。

阿慈谷ヒフミ(ネームドキャラ)が避ける間もなくスクーターに乗ってスクーターごと俺を撥ね飛ばした。

 

(あぁ、終わった。ネームドに絡んじゃった……今日は厄日か何かで?)

そんなことをヒフミに撥ねられて空を舞いながら思う。

意識が加速しているのか、緩やかに落下していく身体。

不意に視線に入ったさっきの囲いの中心。

ずんぐりむっくりとした白い姿に、だらしなく舌を伸ばしクレイジーな瞳をして、俺を轢いた阿慈谷ヒフミが愛してやまないモモフレンズのキャラクター、ペロロ。

そして同時に理解する。

ここにヒフミがいる理由。そして今後起こるであろう問題。

 

 

(私も補習授業部入りとか勘弁してくれよぉ……)

最も行きたくない学校に入って、最も関わりたくない出来事に関わることになる。どれだけこちらが努力してもまるで嘲笑われるかのように。もしも運命というものが存在するなら俺にだけ異様に厳しいと思う。

もう巻き込まれることがわかってるからか、そんな考えがよぎって俺は意識を失った。

 




一話分書き終わって勢いままに投稿した罪人ですが、ゆっくりでも書いていきます。
作者は乞食なので、評価やコメント頂ければ幸いです。
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