Blue Archive ─To raven.Welcome to the kivotos.─   作:タロ芋

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新年明けましておめでとうございます。続きました。
本作、気が付きましたが1年も続いてますね。
未だにアビドス編終わってない時点で遅筆すぎるのに付き合っていただいて感謝です。


40

 ───なんでこんなことしてるんだ私は? 

 

 レイヴンはそんな顔をしながら麺を湯切りしながら思う。

 セリカにあれよあれよと柴関ラーメンに連れてこられたかと思うとアルバイトをすることとなり、柴大将とセリカから作業の説明を受け、ホールを担当することとなった。

 

 けれど、レイヴンはあんまり声を張るのが得意ではないので可能なら裏方が良かったのだが(実際提言した)セリカが何か大将に言ってたらしくあえなく送り出される。

 

 慣れない接客作業に四苦八苦しつつ、出来上がったラーメンを客の元へと運んでいった。

 

『レイヴン、1番席のお客さんが会計ですよ』

 

「ん、わかった。……はあ、忙しい」

 

 レジ打ちをして代金を受け取り、お釣りを渡す。レイヴンが今まで様々な名義でやってきた過酷な仕事に比べればまだ楽な方なのだが、こういった接客は別の神経を使うので別の疲労が蓄積していくのかヤケに疲れる。

 

 そのまま幾人かの客を捌き、少しだけ時間が出来たと思うと店の入口が開く音が響いた。

 

 声を張るのが得意ではないが、精一杯に声を張ってレイヴンは定文を叫ぶ。

 

「い、いらっしゃいませぇぇ……!」

 

「はぁ?」

 

 なんということでしょう、そこにはホシノがいたではありませんか。

 彼女は何やら呆けた顔をしているが、今のこの姿を見られたくない人物に見られたからか無意識に頬をほんの少しだけ朱に染めてしまう。

 

 そして、客は当然彼女だけではなく後ろから続々とセリカ除くアビドスの面々がレイヴンに気がつくと全員が目を丸くした。

 

「わぁ、ワタリちゃんお似合いですよ〜☆」

 

「ん、顔赤い」

 

「えぇ、どうしてワタリさんが……?」

 

「うん、可愛いねワタリ」

 

「……なんでもいいから適当な席について」

 

『私のレイヴンをナンパするなんていい度胸ですねこの男……!』

 

 手に持っていたメニューで視線を遮るようにしながらレイヴンは席に着くよう促し、エアが先生に対して殺意の籠った叫びをあげたのを宥める。

 レイヴンに案内され、席についたがその中でホシノだけが入口で立ち止まっておりレイヴンが声をかけた。

 

「ホシノ?」

 

「…………似合ってるね」

 

「あり、がとう……?」

 

 何故か唐突に褒めてくれたことにレイヴンは首を傾げながらも礼を言うが、ホシノはハッとしたように目を瞬かせて逃げるように行ってしまう。

 それを見送り、再びレイヴンは首を傾げてエアへ問いかけた。

 

「なんだったんだろね、エア」

 

『私にも意図は分かりかねますね……。それよりレイヴン、あの人たちの注文を聞きましょうか』

 

「ん、わかった」

 

 今は仕事中、公私は分けるのがプロというものである。でも、接客は疲れるので遠慮願いたい。そんなことを思いながらレイヴンは仕事へ戻っていく。

 

 

 

 

「もー、なんでまたここに来てるのよ!」

 

 注文されたラーメンをセリカと共に運ぶと椅子に座る面々に向かって叫ぶセリカ。客とはいえ知り合いが自分のバ先に来るのはやはり恥ずかしいのだろう。

 といっても、レイヴンの知人は基本レイヴンの仕事で顔を合わせることがないのでイマイチその気持ちがわからないが。

 

「まあまあおこらないでよセリカちゃーん。おじさんのチャーシュー食べる?」

 

「今バイト中よ!」

 

「ん、替え玉と餃子おねがい」

 

「替え玉、餃子一丁承りました」

 

 セリカがからかわれてるのを横目にレイヴンは追加の注文を受けて厨房へと引っ込む。

 

「オーナー、替え玉と餃子一丁」

 

「あいよ! すぐ用意するから待ってくれな」

 

「ん」

 

 柴関ラーメンの店主のナイスガイな柴大将へオーダーを伝え、レイヴンは待つ。

 

『ご、ご、ごめんなさいっ! 貧乏ですみません! お金がなくてすいません!!』

 

『うるさ……なんですかこの声は?』

 

「さあ……?」

 

『あ、え、いや……! 別にそんなに謝らなくても…………』

 

『いいえ! お金がないのは首がないのも同じ! 生きる資格なんてないんです! 虫けらにも劣る存在なのです! 虫けら以下ですみません……!』

 

 すると、何やらホールからやけに喧しい声量に加えて過剰ともいえるくらいの自虐を含んだ謝罪の声が聞こえてきたではないか。

 頭頂部のケモ耳をぴんと立ててレイヴンはなんだなんだと思いながら顔だけを厨房から出すと、ゲヘナの制服をまとった四人組の団体客がおり、そのうちの万魔殿の制服姿の生徒が何度も奇麗な直角九十度を描いて頭を下げる姿が見えた。

 

「『………………』」

 

 なんかめんどくさそうだな……、レイヴンとエアはそう思うと素早く顔を引っ込める。

 それからほどなくしてやけに力のこもった様子でセリカが厨房に入ってきたかと思うと叫んだ。

 

「大将! ちょっといい!?」

 

「『…………』」

 

 替え玉と餃子を乗せた皿を両手に持ってレイヴンは何とも言えない顔で少女を見つつ、注文の品を運びに席へと向かうと…………

 

「え!!? レイヴンさん!?」

 

 ……なんか目つきの悪いゲヘナの生徒に声をかけられたんだが? 

 

「ヒトチガイデス」

 

「え……でもその姿と声は……」

 

「ヒトチガイデス」

 

「ちょ、ちょっと待ってください! ほら、このコート! 貴方から譲ってもらって…………」

 

falscher Identität(ヒトチガイデス) Ich verstehe kein Japanisch.(ワタシニホンゴワカリマセン)

 

「えぇ!!? わ、私です! 二年前に助けてもらった────」

 

「はいはいアルちゃん、店員さん困ってるから席に座ろうね~」

 

「ええ!? でもやっぱりレイヴンさんよ!? また会えたんだし……」

 

「はあ、うちの社長がごめんね店員さん」

 

「イイエダイジョウブデス」

 

「……なんで片言?」

 

 まあいいか、ダウナーな生徒が視線をお仲間へと向き直して歩いていく。レイヴンはそれを見送り対策委員のもとへと品を届けた。

 

「ご注文の替え玉と餃子です」

 

「ん、ありがとう」

 

「なにか追加の注文はありますかお客様?」

 

「はい、スマイル一つください」

 

 真面目腐った顔をした先生がいう。

 

「非売品ですお客様。爆盛り柴関スペシャルMAXでよろしいですね」

 

「貴方可愛いですね、いくつですか? どこ住み? モモトークやってますか? 身長は? 好きなアニメある? 

 お肌は白いほう? 髪の毛はどれくらいの長さですか? 寝るときはパジャマ派? スウェット派?」

 

 ノノミが悪乗りした。

 

「稼働期間は二年弱、個人情報です、モモトークはやってません、身長は144㎝、特にありません、わかりません、凡そ三m弱です、ありません、日によって変わりますが昨日は特に着てません、激辛麻婆麺ですね」

 

「あの、さっきの人とお知り合いですか?」

 

 アヤネが質問する。

 

「ヒトチガイデス、チャーシュー丼ですね」

 

「ん、銀行強盗したことある?」

 

「何回か。ジャンボ餃子ですね」

 

 シロコが質問する。

 

「………………」

 

「………………」

 

 ホシノは何も言わなかった。

 

「…………………………シャンプーするときはシャンプーハットがないと目が開けられません。お冷のお替りです」

 

「何言ってんの君……? あと……お冷はもらう」

 

 再び厨房へ戻り、大将へオーダーを伝えようとしたらヤケに盛られたラーメンが目に映り、目を丸くして尋ねる。

 

「……なにこれ、あの人たちの注文してたのと違くない?」

 

『少々……量が多いように見えますね』

 

 先の4人組が注文したのはワンコインの1人前のラーメンなのに、目の前にあるのは10人前くらいあり明らかに利益が見込めないものだった。

 

「いいえ、きちんと注文通りよ!」

 

「え、でも……」

 

「ふっ、嬢ちゃん。少し手が狂って盛りすぎただけさ。問題ないとも」

 

「……オーナーが言うなら何も言わないけど」

 

『所詮雇われ、雇用主には逆らえませんからね』

 

 雇われは雇用主には基本的従うものだ。レイヴンはモニョモニョと口を動かしながら諦めた様子で引き下がる、セリカがラーメンを運ぶのを見送りながら追加のオーダーを告げる。(なんとか全員食べきれはした模様)

 

 

 

「ふぅ、ラーメン美味しかったわね!」

 

「そうだね〜」

 

「うん、こんな辺鄙なところで掘り出し物ってやつだね」

 

「はい、あの店員さんと店主さんは優しい人でした」

 

 便利屋68の4人はアビドスの街中を歩く。思い出されるのは先ほど食事のために入ったラーメン屋での出来事だ。

 親切な店員と店主の計らいにより全員がお腹いっぱい食べることが出来た。

 

「それにしても2年ぶりにレイヴンさんに会えたのに挨拶すらできなかったわ……」

 

「アルちゃんレイヴンにお熱だよね〜。そっかー、あの店員の子がレイヴンなんだね。

 てっきり筋骨隆々の大男を想像してたけど全然違かったね〜」

 

「は、はい。でもあの人がアル様が便利屋を営むキッカケになった人なんですね……

 ということは恩人のアル様の更に恩人……? 私にとっての大恩人ですか!?」

 

「そうはならないでしょ……」

 

「それにしてもレイヴンさんとまた会えたし、親切な人達はいたし、この仕事は絶対成功させないと!」

 

「「…………」」

 

 便利屋68社長のいつかのメガネ少女の陸八魔アルがいうと、室長であり彼女の幼馴染『浅黄ムツキ』は微笑み、便利屋の頭脳の課長『鬼方カヨコ』は頭痛を抑えるように口を噤むが、カヨコは間を開けて口を開いた。

 

「ねぇ、社長……」

 

「うん、何かしらカヨコ?」

 

「あの子たちの制服……気がついた?」

 

「えっ、制服? なにが……?」

 

 その言葉にカヨコはやっぱりかと息を吐き、面白そうにムツキは笑って教える。

 

「アルちゃんアルちゃん。……アビドスだよ、アイツら」

 

「…………」

 

 ムツキの衝撃的な告白に呆けたように停止するアルだったが、数秒経つとワナワナと身体を震わせ白目を向いて(あの顔を)浮かべて叫ぶ。

 

「なななな、なっ、なんですってぇぇぇ──────!!!?」

 

「アハハハハ、その反応ウケる〜」

 

「はぁ……本当に全然気づいてなかったか……」

 

「えっ? そ、それって私たちのターゲットってことですよね? わ、私が始末してきましょうかっ!?」

 

「あははは、遅い、遅い。どうせならもうちょっとしたら攻撃を仕掛けるんだしら、その時暴れよっ、ハルカちゃん」

 

「う、うそでしょ……あの子たちが? アビドスだなんて……

 う、うぅ……なんて残酷な運命のイタズラなの」

 

 打ちひしがれたようにアルがうわ言のように言うが、便利屋の面々はそんな彼女とは裏腹にきっちり割り切っているようだった。

 

 そんな様子の彼女にムツキが囁くように言う。

 

「ねぇねぇ、アルちゃん。アルちゃんの尊敬するレイヴンってこんなことに迷っちゃうのかな?」

 

「うぐっ……た、確かにレイヴンさんだったらたとえ親切になった相手でも依頼で敵対しても私情は挟まないわね…………う、うぅ、うううううっ!!」

 

 レイヴンがその場にいたらなんとも言えない顔で否定しようにも積み重ねた行いのせいで否定できないことを言われ、アルは呻くが観念したように顔を上げて叫ぶ。

 

「えぇ、そうね! 私たちは泣く子も黙るアウトローの便利屋68! 

 これくらいでへこたれてられないわ!! あの日宣言したことを嘘になんてできないもの!! 

 行くわよ、バイトを集めて!!」

 

 アルの宣言に便利屋の面々は準備を進めるのだった。

 

「……でも、恐らくというか十中八九レイヴンって今回はアビドス側だよね」

 

「ねー、アビドスの子達と仲良さげだったし」

 

「……一応レイヴン対策に部隊は分けておこうか」

 

 そのような会話をしながら。




続きません。
便利屋登場です。

( ゚∀゚)o彡°アルチャンカヤイイヤッタ-!

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