Blue Archive ─To raven.Welcome to the kivotos.─ 作:タロ芋
今年も終わりですね。これが最後の更新です。
「あ、あのホシノ……えっと、その、少し……いい?」
セリカ救出から数日、レイヴンは騒がしい会議を終えてホシノへと声をかける。
声をかけられた当人は振り返り、至って平坦な声で返した。
「……なに?」
「えと、この書類のここの部分でちょっと分からないところあったからホシノに聞きたかったから……」
『アビドスの生徒会長たるホシノならばわかると思ったのですが、宜しいですか?』
「そう……ちょっと貸して」
「ん」
レイヴンは持っていた書類をホシノへと手渡し、受け取った書類へと目を走らせる。
「ここは資料室にある3番目の棚にあるファイルを見れば分かるよ」
「あ、うん。ありがとう」
「要件は終わり?」
「う、うん」
『ありがとうございました、ホシノ』
「別に、これくらい」
そう言うと、ホシノは身を翻して歩き出す。
「……ああ、あと」
ふと、立ち止まりホシノは言う。
「私は生徒会長じゃないから」
「『……?』」
「ホシノって生徒会長じゃないの?」
「あー……確かに外の人ならホシノ先輩が生徒会長って思うわよね。うん」
資料室で目当てのファイルを探すが、レイヴンが自分の手が届かないことに気が付いた。
仕方なく台を探してると、たまたま近くを通りかかったセリカの手を借りることでファイルを回収。
その礼としてレイヴンは自販機でジュースを奢り、ベンチに座るとホシノが言ったことをセリカに話した。
レイヴンの疑問にセリカは同意するように頷く。
「一応、今いるメンバーでの最上級生がホシノ先輩であってるけど、何でか生徒会長には頑なに就こうとしないのよ」
「じゃあ、今この学園のトップは厳密的には空白ってこと?」
「書類上はそうなるわね。まぁ、ホシノ先輩が実質トップなことにはかわりないけど」
そもそも、人数が5人だけの学園で権力などあってないようなものだ。対策委員会の上下関係もかなりふわふわとしており、よく上級生が下級生に怒られてるのもしばしば見る。
あの日からレイヴンはセリカと関係が縮まり、他愛のない会話をする所謂友人と呼べるような関係になった。
ホシノとの関係修復をできるよう色々も手を貸してくれたおかげで、先程のように話しかければきちんと返してくれる程度にはすることができた……が、やはりそこまで深く踏み込めているとは思えないが、こういうデリケートなことは少しすずつ進めていくものだと1人納得させる。
色々と話しつつ、話題は契約関係の話へと移った。
「やっぱり書類関係はきちんと見ないとダメよねぇ。アンタらも相手側が契約破った時ってあった?」
「ん、結構あるよ」
『ええ、それはもうたくさん』
「あー、やっぱりあるのね。例えばどんなの?」
アビドスはカイザーから借金をしているが、相手は悪名高いカイザーグループ。先生やレイヴン、エアの3名が協力して契約内容を洗い出して借金の総額をあーだこーだ頭を悩ませながら減らそうとしている。
『そうですねぇやっぱり多いのが報酬を出し渋ることですね』
「ん、連絡をして報酬の催促をしては向こうがあーだーこーだ言って逃げるのを繰り返してきて最終的には『そんなに欲しいならくれてやる、鉛玉をなぁ!』って言ってきた」
『まぁ、当然熨斗つけて取り立ててやりましたね』
「他には虚偽の依頼で誘き出して襲ってきたことだね」
『理由は復讐だったり、賞金目的、名を上げるため……ですかね』
「昔にカイザーのクソが虚偽の依頼をしてきてね。報復で1つの部門を潰してそこのトップをこr……しま…………消したよ」
「意味変わってないじゃない」
「……メンツって大事なんだよ」
『ですねぇ。傭兵家業をやっていると信用が第一ですから。
まぁ、依頼で過去に護衛をした人物に襲撃をかけるというのはご愛嬌ということですが』
「随分と物騒な愛嬌ね……」
レイヴンとエアの経験談にどうやらセリカは辟易としたらしい。どこもかしこも金に連なる話は必然的に汚い悪意がつきものだ。
当然、その桁が大きいほど膨れ上がる。
「ねぇ、アンタなら一発でガッポリ稼げる話って知ってる?」
「ん、あるにはあるよ」
「…………」
『やめといた方がいいですよセリカ』
「ま、まだ何も言ってないわよ」
「傭兵なんてなるもんじゃないよ」
「────」
目を泳がせるセリカにレイヴンは諭すように言う。止むを得ず傭兵を選んだレイヴンと違い、セリカはまだ若く未来のある少女だ。
傭兵というのはどこまで行っても自己責任。金のために好きに生き、理不尽に死ぬ。そんな最低な存在。
「……じゃあ、アンタはなんで傭兵なんて続けてるのよ?」
「…………それ以外の生き方をまだ見つけられてない、からかな」
レイヴン……強化人間C4-621として目覚めてからは戦って戦って戦い続けた。
それが唐突にキヴォトスに流れ着き、ナニカの肉体に意識を宿して新しい人生が始まったが今までの生き方をすぐには変えることはできない。
ウォルターの願った普通の生き方を送れるように努力をしているが、どうにもこれが難しい。
知人のひとりに自称平凡な人物がおり、少しの間彼女の真似をしてみたがなんか違かった。
過去にウタハに普通の暮らしとは何かと問うてみたが、彼女は難しい顔でレイヴンに言う。
『"普通"という定義は人によってそれぞれ違うからね……私の普通はこうして情熱と笑いを持って気の向くままにモノを創り出すことだ。
けど、ワタリの普通は私のこの普通とは違うだろう? もちろん、リオやヒマリも違う。
ワタリの普通は恐らくだがまだルーチンができてないんじゃないかな?』
『なぁに、君は君の普通を手に入れられるよう私は手伝うよ。もちろん、私は君の友人だからね』
そう言ってウタハは笑って爆発に巻き込まれたのだが。
「……私には難しい問題ねぇ」
「ん、私にも難問だね」
『人生は哲学……ですね』
レイヴンとセリカは悩ましげに空を見上げ、一息つく。
広がる空は何処までも透き通り青く美しいものだ。
「じゃあ、アンタの普通の暮らしを見つけられるようちょっと手伝って欲しいんだけど。いいかしら?」
「……別にいいけどそのブレスレットは詐欺だからやめた方がいいんじゃない?」
「嘘!? これ4万もしたのに!!? って、ちがーう!!」
セリカは叫び、勢いよく立ち上がるとその指先をレイヴンの鼻先へと突きつける。
「社会勉強ってやつよ!」
「社会……?」
『勉強……?』
レイヴンは首を傾げ、エアと共に呟くのだった。
「…………もうお昼か」
顔を上げ、ホシノが時刻を確認すると時計の針が丁度12時を回っておりどうするかとホシノは考える。
今日の学校は昼で終わりのため、昼食は特に用意していない。適当にコンビニで買って済ますかと考えていたところに。
「ん、先輩暇?」
「うん? シロコちゃんじゃない。どうしたのー?」
能面のようだった顔がいつものような間の抜けた笑顔へと変わり、大切な後輩へと向けられる。
ホシノの表情の変化にシロコは気付かずに会話を続けた。
「ん、みんなとご飯を食べる話になった。先輩もどう?」
「おー、いい考えじゃなぁい。ちなみにどこで食べるのー?」
「ん、柴関ラーメン。セリカをからか……見守るために」
「うへぇ、なにか聞こえた気がしたなぁ?」
「ん、気のせい気のせい。先生たちが待ってるから行こ?」
「はいはい。ところであの子はいるのー?」
「あの子? ……ん、ワタリのこと?」
「……うん、そうだよ〜」
はたして、今自分はいつものように演技できているだろうか?
ワタリ、ワタリ、ワタリ…………嫌いだけど嫌いになれない。好きだけど好きになれない。
憎いはずなのに今は揺らいでる。
恐らく、後輩のセリカが余計なことをしているのかあの子は不器用なくせして自分に何かと声をかけてくるようになった。
今は直ぐに自分が会話を強引に終わらせる事で何とかなってるけど、続けば……分からない。
だから、出来るならいて欲しくない。そんなことを思ってたら、どうやら昼食をとる面々の中には居ないようだ。
そのことに安心して、自分は後輩たちと合流する。その中にはアビドスの外から来た"先生"がいた。
先生、大人の先生。嫌いな大人。嘘つきの大人。…………ユメ先輩がああなってしまった原因。
この人はホシノが出会ってきた卑劣な大人とは違うのは薄々わかっている。けど、これまで裏切られてきた経験がそれを認めようとしない。
あの二人が来てからアビドスは少しずつ良くなっている……でも、理性では理解出来ても感情がそれを拒絶する。
ぐちゃぐちゃな頭でホシノは考える。けれど、器用に話しながらも進む。
内面と外面で乖離し、上手く纏まらない。
そんな考えの元、目的地へ辿り着き扉を開けると───
「い、いらっしゃい……ませぇぇ」
何故かそこにはワタリがいた。ついでに言うと何故か柴関ラーメンの制服を着て。
「?????」
突然の出来事にホシノは思考が停止し、固まる。
なんで? ワッツ?
「…………似合ってるね」
今なんて言った私は?
続きません。
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