Blue Archive ─To raven.Welcome to the kivotos.─   作:タロ芋

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続きました。

ACクロスオーバーものなのに全くACが出てこないとかマジ?


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「……あっ、ぐっ……ぅう」

 

 揺れにより意識が呼び起こされ、瞼が開く。

 体を起こそうとした瞬間に末端から中枢へ、中枢から末端へ走る鈍痛に思わず呻いた。

 

 身動ぎをするが更に鈍痛が強まり余計に痛みから逃げようと同じことを繰り返しの悪循環。

 

「……こ、こは?」

 

 痛みが何とか落ち着き、漸く状況を確認することが出来たセリカは首を動かして呟く。

 薄暗い空間に雑多に何かが置かれた場所の片隅に自分は手足を縛られ転がされているらしい。

 

 そのまま数秒惚けた後にセリカはなにが起こったことを思い出す。

 

「私、確か……アイツらに襲われて……」

 

 帰り道に突然現れたヘルメット団に囲まれ、抵抗するが多勢に無勢。

 抵抗虚しく数に押し切られ、爆撃を食らったところでそこからの記憶が無い。

 

 エンジン音と振動から恐らくは車の荷台にいることは分かるが、手足を縛られ身動ぎが出来ないため今現在どの地点を走っているか推測は不可能だ。

 

「このっ……外れ、なさい……よっ!」

 

 手足を縛るロープを外そうと藻掻くセリカだったが、粗末な縄が肌に食込み擦れるだけで寧ろ余計に傷つく結果に終わる。

 

「くっ……あぁ、もうっ……!」

 

 ジクジクと痛む手足に顔を顰め、憎々しい思いと共に荒く息を吐き出す。

 それと同時に不安がジワリ、ジワリと染みのように湧き出し始めた。

 

 これから自分はどうなるのか? 人質として使われるのか? 

 他のみんなは無事だろうか? 

 

 そもそもコイツらなんなのだ? 

 

 怖い、嫌だ、助けて。

 

「……っぅ」

 

 気がつけば視界が歪み、声にならない泣き声が零れ始める。

 なんでこんな目に合わないといけないんだ? という思いが溜め込んでいたモノを抑えきれなくなり、涙となって吹き出た。

 

 そうして声を押し殺して泣くこと数分、不意にセリカの耳に異音が混じる。

 荷台の外から耳をすませば聞こえるナニかがよじ登る音。

 

「な、なに……?」

 

 肩を震わせて怯えるセリカ。

 身構えようとするが、手足が縛られそれができずに無様に伏せて待つことしか出来ない。

 ならせめて近づいてきたら噛み付いてやる、無抵抗だなんて思わせるのは癪だ。

 

 恐れを殺して敵意を練り、セリカは来るのを待つ。

 そして、

 

『ん……あ、足が届かない。ん、んんっ……この体ほんとにちんまいの不便……

 よいしょっ……! あうっ!?」

 

 ビターン、と外幕から中に顔面から着地する小柄な影。

 

「「……」」

 

 無言の間が生じ、セリカはなんとも言えない顔で停止してる存在に向けて視線を送る。

 

「……い」

 

 やがて、か細い声が零れてきたためセリカが思わず聞き返す。

 

「い?」

 

「い、痛い……」

 

 ようやく顔を上げてみれば、微かに鼻先を赤くして目尻から涙の雫をうかべる人物……レイヴンがセリカに答えるのだった。

 

 

 

 

 

「ん、元気?」

 

「……見てのとーりよ。無様って笑う?」

 

「笑って欲しいの?」

 

「笑ったら怒るわよ」

 

「どっち……?」

 

 鼻筋をさすりながらレイヴンがセリカに近づき、調子を尋ねると憮然とした様子でセリカが返す。

 彼女の返答に首を傾げながら彼女を起こした。

 

「随分もこっぴどくやられたね。コンビニにも聞こえてきたよ」

 

 そう言ってレイヴンは経緯を話し始める

 

 

 

「チッ……やっぱり襲われたか」

 

 いくつもの弾痕や爆発痕、ヒビの目立つ道路は真新しい先頭の痕跡が生々しく残っていた。

 ソレら見てここで戦闘が起こったということは明らかで、レイヴンはここでセリカが襲われたことを推測する。

 

 襲撃犯達がどこに向かったかを調べるため、痕跡を調べていると瓦礫の下に画面がひび割れたスマホを発見。

 電源を入れようと試してみるが、画面に光はなくうんともすんとも言わない。

 

「バッテリーがダメになってるのかな?」

 

 レイヴン自身連絡しようにも端末はヘリに置いてきたし、武器も殆ど持っていない。安全を考慮するなら一旦戻って先生などに話すべきなのだろうが……

 

「……そんな暇はないな」

 

 良くて人質、悪くてブラックマーケットで人身売買、さらに悪くて砂漠のどこかに生き埋めだろう。レイヴンはセリカの未来を予測し眉根を寄せる。

 

「エアなら交信で私の位置がわかるだろうし追うだけはしておくか」

 

 セリカのスマホをポケットに突っ込み、レイヴンは襲撃犯たちが作ったであろう轍の方向へ走り出した。

 

 

 

「……見つけた」

 

 岩肌から顔を覗かせ、レイヴンは眼下にいる存在たちを見て呟く。

 幾つもの車両が列をなし、砂漠を走っており1人を襲うには些か過剰にも見えた。

 

「まぁ、キヴォトス(この世界)だと数はアテにならないからね」

 

 キヴォトスの住人は明らかに人体の力を超えた異能とも呼べる超常の力を行使する者たちもいる。

 トリニティのピンクゴリラとかは最たる例だ。なんでアイツは隕石落とせるんだ? 意味がわからん。

 

 ともかく、レイヴンはどうしたもんかと考えた。

 武器は無いし連絡を取ろうにも端末もない。流石に人質もいるであろう敵の中に突っ込むほどレイヴンも考え無しでは無い。

 

 数秒考えた後、そう言えばとレイヴンは拾ったスマホを思い出す。ショートパンツの後ろポケットから画面の割れたソレを取り出し、レイヴンは軽く周囲を見渡した後に意識を集中させた。

 

 呼応するようにレイヴンのヘイローが微かに輝きを強め、インナーカラーが淡く染まる。

 周囲に極小量の物質"コーラル"が生成され、スマホへと流れるとノイズ混じりに画面が灯った。

 

「……よし」

 

 きちんと出来たことにレイヴンは頷くと手短に操作を行う。

 

「えーと……位置情報は……送信っと」

 

 目に付いた連絡先へ現在地の情報を送信し、レイヴンは集中を解いた。

 ヘイローの輝きが失われ、インナーカラーも戻ると明らかに疲労を感じられる様子でレイヴンが息をこぼしながら億劫そうに髪をかきあげる。

 

「はぁ……ほんとに疲れるやコレ」

 

 全身の倦怠感を無視してレイヴンは立ち上がった瞬間。

 

「っとと……」

 

 バランスを崩し、転びそうになるが岩を掴んで耐える。

 視界が歪み、平衡感覚が狂っているのか上手くバランスをとることが出来ずグラグラと身体が揺れるのを感じ、レイヴンはかぶりを振って修正を図った。

 

 レイヴンはコーラルをどういう訳か生成することが出来る。けれど、少量でも生成すると負荷により著しく身体に問題が生じてしまう。

 

「これでも当初よりかはだいぶマシになったんだけどね……」

 

 初めの頃は負荷が凄まじく、数日寝たきりになるのがザルだったが訓練を重ねることで身体が慣れたのかほんの短時間程度ならば少し休む程度にまで負荷を抑えることを可能とした。

 

 少し休憩を挟み、レイヴンは走り出す。

 

 岩壁を猫のようにしなやかに跳ねて着地し、ものの数秒で降りきると勢いを殺して砂漠を駆けた。

 

「フッ、フッ、フッ…………」

 

 短く呼吸を繰り返し、足を取られやすい砂の上を見事なフォームで走るとレイヴンはグングンと目の前の車列へと接近し最後尾のトラックの荷台を掴む。

 

「フッ……!」

 

 腕の力だけでぶら下がり、レイヴンは体を起こして荷台の中へ入ろうとするが。

 

「あ、足が届かない……」

 

 小さな体は手足も短く物理的に届かない。何度か挑戦することでようやくレイヴンは荷台の中へと侵入することが出来た。

 

 そして、荷台の中には半べそかいてこちらを見ているセリカが見える。これが、一連の流れだ。

 

 

 

「サラッと車に走って追いつくってとんでもない事してるわねアンタ」

 

 レイヴンが拘束をとき、手足を回してほぐしながら説明を聞いたセリカは開口一番にそんなことを言う。

 

「ん、似たようなことと出来るやつなら割といるよ。ホシノだって多分できるし」

 

「……否定しようにもあんまり出来ないわね」

 

 近くに乱雑に置かれていた愛銃の調子を確かめ、問題ないことを確認したセリカ。そんな彼女にレイヴンは問いかけた。

 

「それで、このまま逃げる?」

 

「ハッ、冗談! このままやられっぱなしはナシよ」

 

「ん、その心意気は大事」

 

 コッキングレバーを引いて弾倉から弾薬を薬室へ装填、安全装置を解除してセリカは獰猛に笑う。

 レイヴンは座っていた木箱から下りるとコキコキと関節を鳴らした。

 

「……って、アンタ拳銃すら持ってないのに戦う気なの?」

 

「ん、問題ない」

 

 怪訝な様子のセリカだったが、レイヴンはヒラヒラと手を揺らして答える。

 そういえばコイツ、先輩の肋へし折ってたんだっけ? 少し前に本当かどうか怪しいが、そんなことを言っていたの。セリカは思い出し、とりあえずは納得した。

 

 危なくなったら自分が助ければいいか、とも。

 

「じゃあ、まずはこのトラックを奪うけど運転出来る?」

 

「出来るけどなんでよ?」

 

「……小さいから普通のシートだと前見えないんだよね」

 

「あ〜……まぁ、ほら牛乳飲めばいいんじゃない?」

 

 セリカも小柄な部類だが、レイヴンはそれ以上に小さい。顔をしょぼしょぼさせるレイヴンにセリカは何故か慰めることになったが、気を取り直して動き出す。

 

 

「ふんふ〜ん♪」

 

「ねえ、その下手くそな鼻歌やめてくんない? 寝れないんだけど」

 

 トラックの運転席、ご機嫌な様子で音程の外れた鼻歌をする同僚へ助手席で仮眠を取ろうとしていた不良が文句を垂れた。

 

「なんだよ、せっかくアビドスの連中のひとりを捕まえられたんだから気持ちよく歌わせてくれたっていいじゃんかよ」

 

「カラオケだったり1人のときなら別にいいけど、こちとら夜更けまでアイツを監視してたんだよ。

 せっかく休めると思ったところでアンタのリサイタルってなんの冗談?」

 

「はいはい私が悪ぅござんした! にしてもアビドスの連中とアホだよねー。あんな払えもしない借金の為に無駄な頑張りをしてるんだから」

 

「それについては同意。とっととアタシらに校舎を渡せばいいのにねぇ」

 

 ハハハ、と車内に嘲笑が響く。

 所詮はドロップアウトした不良どもの中身のない会話だ。そもそも他者を食い物にするようなクズどもがアビドスの少女たちの想いを侮辱する権利などない。

 

 助手席の不良が何気なしに窓を見やり、停止する。

 

「あ、バレた」

 

「は……?」

 

 窓に張り付く深紅の瞳の存在と目が合ったからだ。

 次の瞬間、窓の外にいる存在が小さな拳を握りしめると勢いよく振りかぶる。

 

 拳は容易く窓を突き破り、破片が車内に降り注いだ。

 

「うぉぉおっ!?」

 

「何!? 何、何、なにぃ!?」

 

 突然の出来事に不良たちは悲鳴混じりの叫びを上げるが、直ぐにその叫びは消えてしまう。何故ならば、

 

「良くもやってくれたわねぇ!!」

 

「いだだだだだっ!!?」

 

 今度は運転席側の窓から荷台に転がされていたはずのセリカが叫びながら銃を乱射したからだ。

 運転をしていた不良は抵抗もできずに鉛玉をぶちあてられ、操作などできるわけがなく当然のごとくトラックが蛇行運転を始める。

 

「おわぁ!? ハ、ハンドル!! 離すなバカ!」

 

「あだだだっ! 無理だっての!?」

 

「ん」

 

「ぐぇっ!?」

 

 助手席側の不良の首筋をレイヴンが掴み、その小さな手のどこにそんな力があるのか万力のごとく締め上げあっという間に絞め落とてしまう。

 

「よいしょ」

 

 力の抜けた不良をレイヴンは外へと投げ捨て、セリカもやることを終えたのか窓から丁度投げ捨てるところだった。

 2人は車内へと侵入し、レイヴンは助手席にセリカは運転席へ座りハンドルを握って車体を安定させる。

 

「第一関門突破だね」

 

「ええ。ひと暴れしてやりましょうか!」

 

 セリカが吠え、アクセルをベタ踏み。加速によるGによりシートへ体が沈むがACを操縦する時に比べたら安眠できるほど快適だ。

 前方の車へトラックは車間を詰めていき、激突。ひしゃげる音と内臓を揺さぶるような振動に襲われるが、2人は無視。

 

「ほらほらほら! 逃げないとペシャンコになるわよ!!」

 

 相当鬱憤が溜まってたらしく、ハンドルを握るセリカは聞いてるとどちらが悪役か分からないことを口走ってるではないか。

 そして、本来なら仲間のはずが追突されるという強行に慌てふためくヘルメット団たちは当然のように車内にあった無線機へと手を伸ばす。

 

『おい! どうした? トチ狂ったのか!?』

 

『殺す気かお前ら!?』

 

『まじ有り得ないんだけど! エナドリ零れてパンツビッシャビシャよ!!』

 

 途端に騒がしくなる車内。よっぽどご立腹なのか身を乗り出してこちらに向けて中指を立てるやつもいるでは無いか。

 レイヴンはセリカに目配せを行い、彼女が不敵に笑うと肩を竦めて無線機に手を伸ばす。

 

「あー、こちらアビドス対策委員会」

 

『ッッ!』

 

「単刀直入にいうけどお前たちが捕まえた子は解放させたから

 せっかく苦労してストーキングして弱いくせに数を集めてボコしたのに残念だったね」

 

 うけるー、と真顔でレイヴンが言うと通信機の先から無言の殺意が膨れ上がった。

 

「加えて、既に仲間たちに位置情報を伝えてある。……何が言いたいかって言うとお前らは詰みってワケ

 いぇーい、パーフェクトゲーム」

 

 煽る、ひたすらに煽る。

 これから発生するだろう戦闘の規模を激しくするために。救出に来るだろう彼女たちがすぐ分かるために。

 

 負ける、という可能性はない。精鋭(ネームド)なんてヘルメット団には基本的にいないことは知ってるからだ。

 

「さて、始めようか」

 

 ──システム 戦闘モード、起動──

 

 ヘイローと瞳が強く光る。

 




続きません


─その頃のエア─

『むぅ・・・・どう頑張っても重量がtを超えてしまいますね。
現行のキヴォトスの技術力や資源ではどうしてもこれくらいが限界でしょうか・・・・?
はぁ・・・どこかに手頃な義体でも転がってませんかねー?
・・・・早くレイヴンと物理的に触れ合ってあんなことやこんなこと。くんずほぐれつしたいんですけど!』
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