Blue Archive ─To raven.Welcome to the kivotos.─ 作:タロ芋
少々前回投稿した話がなんか展開的におかしいなと思ったので消して書き直しました。
カタカタ、キーボードを叩く音が響く。
「と、いうことがあってね〜。セリカちゃんに逃げられちゃった……」
「妥当じゃない?」
『嫌がってるのにストーキングを続けるのは気持ち悪いですよ』
今朝起きたことを先生が話すと呆れたように言うのはレイヴンとエアだった。
昨日のあれのせいでレイヴンはホシノとは顔を合わせずらく、けれど何かをしたい、と思ったので妥協案でアビドスの借金の契約内容を洗い直すのと序でに先生が不在により溜まっていたシャーレのタスク消化をすることにした。
「……でも、バイトでお金を稼ぐのは言いけれど焼け石に水なのは変わらない」
『ですね。結局は利息を返すので手一杯です』
書類片手にノートPCのキーボードを高速でタイピングし、出来上がったものを先生へ見せる。
「とりあえず、ざっと見て不当な支払いだったり過払い金を弾いてみた借金の総額と月々の収支で返済に掛かる期間を計算してみた」
『どれだけ甘く見積っても皆さんがヨボヨボのおばあちゃんになっても余裕で残りますね』
「どれどれ……うーむ、ワタリのお陰で数千万は減ったことを喜ぶべきかそれとも悪どい契約内容に怒るべきか……」
先生がPCの画面に表示された桁の数を見て苦い顔を浮かべて唸る。
協力すると言った手前、考えはするがやはり桁が桁だ。現実的な手段で返すとなったらとなると、やはり、難しい。
『今の今まで私たちだけでやってきて、今更大人の手なんて必要ない!!』
セリカの反応も当然だろう。今まで何度も連邦生徒会に支援要請を送ってきたというのに、その殆どを突っぱねられ少ない人数でアビドスを維持しなければならなかった。
それを今更になって助けます、だなんて虫がよすぎると言われても仕方がない。
「……難しいなぁ」
「年頃の子はそんなもんでしょ?」
「ハハハ、ワタリも同じくらいだよ」
「───」
先生に言われるが、自分の詳しい年齢を知らないレイヴンは口を噤ませざるをえず沈黙してしまう。
程なくしてお昼頃に宿直室の戸をノックする音が聞こえてきた。
『先生、アヤネですけど宜しいですか?』
「うん、どうぞ〜」
『失礼しますね』
戸を開き、アヤネが入室すると先生は歓迎の声をかける。
「やぁ、どうしたのかなアヤネ?」
「お昼時ですから皆さんでご飯を食べようという話になったんです。ホシノ先輩の提案で」
「もうそんな時間だったんだ……。うん、作業もキリがいいし休憩しようかな。ワタリも一旦やめにしようか?」
背筋を伸ばし、先生はまだ作業を続けていたレイヴンに声を掛けるが、当の本人はPCから顔を動かさずに答えた。
「別にいい。私は放っておいて」
それに、と続けて懐から長めの物体を取り出す。
「ランチはこれあるから」
「そ、それは!?」
レイヴンの取り出したものを見た瞬間にアヤネのの顔が強ばり、理解できてない先生は頭上に? マークが浮かぶ。
レイヴンの取り出したものはシンプルな包装をされたデザインの栄養バーはキヴォトスの住民なら誰もが知ってる悪名高いモノだ。キヴォトスに来てから日の浅い先生がよく分からないのも無理らしからぬだろう。(後日、先生が試しに買って食べてみたら即ゴミ箱へ投げ捨てた模様)
「ワタリ、ご飯はそんな味気ないものじゃつまらないよ? それに、こういう機会を使わないとホシノとの仲も進展しないんじゃないかな?」
「むう……」
『……そこを突かれると痛いですね』
先生に言われ、レイヴンは思わず唸り作業の手が止まる。
確かに、顔を合わせるのは気まずい。けれど、手をこまねいていれば進むものも進まない。
数秒逡巡した後、レイヴンは小さく首を縦に振るのだった。
『柴関ラーメン』
それが向かっている店の名前だ。
「へぇ、そこにセリカがいるの?」
「可能性はあるという話ですけどね」
「それに、柴関ラーメンはアビドスでいちばん美味しいラーメン屋さんなんですよ〜」
「ん、よく皆と食べに行ってる」
先生が3人に教えられながら道を歩く少し後ろをレイヴンとホシノが続く。
「「…………」」
二人の間に会話はない。それどころか目も合わそうとしない。
昨日の2人は最悪すぎる会話の終わり方で、元々余りコミュニケーション能力の高くないレイヴンにはどうすればいいかわからなかった。
『……どうしよう、エア。昨日のアレで今日だから分からないよ』
『……申し訳ありませんレイヴン。今回ばかりは私でもどうすればいいか。
……漫画やアニメーションではこうした時は河川敷などで殴り合うのがいいとありますが』
『絶対それはないと思うよ……?』
『ですよね……』
交信でエアとホシノと仲の修復をするため、あーでもないこーでもないと考えを出し合うが、そのどれもが余りいい案がでてこない。
グルグルと定まらない思考が周り、外に意識の向かないレイヴンは前で歩いていた彼女たちに声をかけられてることに気が付かなかった。
「──リちゃん? 聞こえてますか、ワタリちゃん?」
「んぇ……?」
声にようやく気が付き、レイヴンが顔を上げると目的の店らしき柴関ラーメンという暖簾が見える建物の前で立ち止まっている4人が見え、着いたことを理解する。
「いらっしゃいませ! 柴関ラーメンで……わわっ!?」
店内に入り、柴関ラーメンの制服姿のセリカが営業スマイルでキビキビと接客していたが、その相手が誰か気がつくと愕然てしたように叫び、イタズラが成功したような笑みを浮かべたノノミが口を開く。
「あの〜☆6人なんですけど〜」
「あ、あはは……セリカちゃん、お疲れ……」
「おつかれ」
「み、みんな……どうしてここを……!?」
「うへ〜、やっぱりここだったね〜」
「やっ、どうも」
「…………ん」
「せっ、先生まで……やっぱストーカー!?」
「うへ、先生は悪くないよー。セリカちゃんのバイト先と言えば、やっぱここしかないじゃん? だから来てみたの」
「ホシノ先輩かっ……! ううっ……!」
唸るセリカのそんな背後からとある人物が現れ、声をかける。
「アビドスの生徒さんか。セリカちゃん、おしゃべりはそれぐらいにして、注文受けてくれな」
「あ、うう……はい、大将。それでは、広い席にご案内します……こちらへどうぞ……」
唸りながらセリカは席へ案内し、座るとレイヴンは思わず立ち止まってしまう。
先生はノノミの隣に座り、残っているのはホシノがすこし詰れば座れる空間だったのだ。
「えっと……他に席あるから私はそこに……」
レイヴンは近くの空いている席に移動しようとしたが、
「……別に、さっさと座れば?」
流し目でホシノに言われ、レイヴンは少しだけ身を縮ませながらオズオズと彼女の隣に浅く座った。
それから程なくして各自は注文を済ませ、ラーメンが運ばれて来る。
「……むぅ」
レイヴンは目の前に湯気の登るラーメン(特製味噌の炙りチャーシュートッピング)を見つめて小さく唸った。
手元にある割り箸をぎこちなく使い、何度か麺をつまもうとするが、尽く失敗してしまい上手く食べることが出来ない。
そんなレイヴンの様子に気がついたのか、ホシノが呆れた様に声をかけてくる。
「……まさか、まだ箸使えないわけ? 2年も経ってるのに?」
「…………別に、必要なかった、だけ」
「…………はぁぁぁあ。貸して」
「ん……?」
「いいから、貸して。早く」
「……ん」
溜息を長くこぼし、ホシノはレイヴンからひったくるようにラーメンと小皿を引き寄せ、テキパキと麺や具材を分ければミニラーメンが出来ていた。
「セリカちゃーん、フォークとかってあるー?」
「フォークー? 別にあるけど、どうしての先輩?」
「うへー、ちょっとねー。ありがとセリカちゃん」
ホシノがセリカに呼びかけ、有無を尋ねると怪訝な顔をしながらもフォークを持ってきた彼女からソレを受け取り、レイヴンへと渡す。
「……ほら、これなら食べやすいでしょ?」
「えと、ありがと、う……ホシノ」
「別に。セリカちゃんのバイト先が汚れないようにしただけ。貴方のためじゃない」
「……ごめん」
「別に。早く食べないと伸びるよ」
「ん……」
それだけ言うと、ホシノは会話を終わらせてラーメンを食べることに集中し始め、レイヴンも続くようにラーメンを啜り始める。
上手く啜れいが、懸命に口へと運び小さな口で咀嚼して飲み込むと淡く呟いた。
「……ん、美味しい」
「でしょー? 柴大将の作るラーメンは絶品なんだから!」
レイヴンの感想を聞いたセリカが自慢げに言うと、レイヴンは頷きながら答える。
「ん。これなら美食研究会も爆破しない」
「……何そのグループ?」
「ん、自称美食家の他称テロリストグループ」
「なにそれ……」
レイヴンからの説明にセリカが困惑するが、あの連中はテロリストと評する以外の説明が思いつかないのだ。そんなことがありつつも食事を終え、会計を済ませるのだった。
「先生、一応領収書切っといて。後で経費で落としとくから」
「ワ、ワタリっ……!!」
「…………眠れない」
夜が更けてきた時間、ヘリ内部の居住空間でベッドに寝そべり目を閉じていたレイヴンは眉根を寄せて呟く。
時刻は午後の8時過ぎ。良い子が寝る……には早い気もするが基本的に早寝のレイヴンからすれば既に寝入っている時間だった。
レイヴンは何度か眠ろうと目を閉じるが逆に目が冴えてしまい、仕方なく寝るを諦めてベッドから降りる。
近くのポールハンガーに掛けていた薄手のパーカーを羽織るとレイヴンは部屋の外へ足を進めた。
「……ふぅ」
空には月が浮かび、星々が瞬く中で時折夜風が足元を通り過ぎ空気を冷やす。
そんな静かなアビドスの街中をレイヴンは特に目的もなく彷徨っていた。
2年前と変わらない光景……いや、砂に呑まれている部分が少し増えている。そんな光景を見つめながら1歩、また1歩と進む。
いつもだったら話題などを振ってくれるエアは寝ているのか作業に集中しているのか沈黙しており、本当の意味で1人でいるレイヴンは少しだけこの独りという感覚の居心地が良く感じられた。
「…………ホシノ、どうしたんだろう」
人の感情に鈍いレイヴンでも、何となくホシノに何処か違和感があるのを感じていた。
確かに、2年前にホシノを裏切るような真似はしたが、それだけでああはなるだろうか?
そもそもいくら人は変わると言っても、あそこまで変わるだろうか?
ホシノはユメのことを慕っていた。2年前、ユメは3年生。学生なら留年していたとしても1年もあれば大抵は卒業する。
アビドスを止むを得ず去ってしまい、彼女がいなくなった後である程度真似をするにしても、さすがにあそこまで寄せるだろうか?
そんなことを考えながら歩き続いてると、
「……あれ、アンタ……確か先生の?」
「ん……?」
背後から声を掛けられ、振り返ると昼頃に顔を合わせた黒見セリカがそこにはいるのだった。
続きません。
画質の荒いスマホの記録映像
『ワタリちゃん、頑張って!』
『・・・・別に箸なんて無理して使う必要なくない?』
『フォークとかなかった時に困るのはワタリなんですから我慢して覚えてください。ほら、レッツトライですよ』
『レイヴン、ファイトです!』
『む、むむむむむぅ・・・・・』
食卓を囲み、更に盛られた料理を拙い扱いで懸命に食べようとする人物を懸命に応援する少女たち。