Blue Archive ─To raven.Welcome to the kivotos.─ 作:タロ芋
おあ、おあオアアアァァァァアッッ!!!!
石が!!過酷すぎる!!!グワァァアッ!!!
「……ごめん、あとは勝手にやっておいて。
他の子達には用事があったから帰ったって言って」
ホシノはそれだけ言うとレイヴンに背を向け、どこかへと行ってしまう。それを止めることは出来ず、ただ見送るしかできない。
『…………レイヴン』
「────」
1人廊下に座り込み、俯くレイヴンにエアはなんて言えばいいのか分からなかった。
数秒、もしくは数分。そこまで長い時間では無いけれど精神的にはずっと長い間が空いた後に誰に聞かせるでもない小さな呟きが木霊する。
「……わかってたつもりだけど、キッついなぁ」
健常な肉体となり、それに釣られるように情動が少しづつ得たレイヴンにとって先程のホシノの言葉は覚悟をしていた。
戦場で相手から幾ら罵倒されようとレイヴンが乱されることは無く、躊躇いもなしに引き金をひけることが出来る。
だが、今はそんなことは役に立たずレイヴンに重く鋭い一撃となりやってきた。
多分、これがツケなのだろう。自分の所業に対する返しが今になってやってきただけで、何処か甘く見ていた認識の齟齬に対する揺り返しがこうしてやってきた。それだけ彼女を傷つけてるともいえるだろう。
そしてレイヴンは少しの間、そこから動くことが出来なかった。
〇
「あ、おかえりワタリ」
ロボットたちに物資の搬入を任せ、やることを終えたレイヴンが戻ると先生が気が付き声をかける。
「ん、これ搬入した物資のリスト。確認しといて。
サインはホシノから貰ってるから」
レイヴンは懐から取り出したタブレットを先生に渡し、受け取った先生は軽く見たあとにとあることに気が付き、尋ねた。
「あれ……? ホシノはどこにいるんだい?」
「っ……ホシノは用事があるみたいで問題ないことを確認したらどこかに行ったよ」
一瞬だけ言い淀むが、レイヴンの様子に一同は気づいた様子はなく特に指摘はしない。
「えぇ! ホシノ先輩ってば帰っちゃったの?」
「ん、いい時間でもあったから仕方ない」
「あはは、確かにシロコ先輩の言う通りですね。
……纏まったお話は明日にしましょうか」
「ですね〜。先生とワタリちゃんはどうしますか☆」
ノノミが聞くが、レイヴンは自分の所有する輸送ヘリがあり寝泊まりは問題ない。そのため、その問いかけは先生に向けられているようなものだった。
「私は……どうしよっか?」
「……私に聞かないでくれる?」
悩む素振りを見せる彼に返すレイヴンに肩をすくめるが、そこでとある人物が手を上げる。
「あの、とりあえず校舎に誰も使っていない宿直室がありますから、どうでしょう?」
提案をするのは1年生の奥空アヤネであった。
「ケホッ、コホッ……このとおり少しだけ埃っぽいですけど掃除をすれば問題なく過ごせると思いますよ」
「うん、ありがとうアヤネ。何から何まで悪いね本当に」
「い、いえ! 救援を要請した手前ですからこの位はさせてください先生」
アヤネに案内され、通された宿直室は埃が舞い掃除が必要な様子だった。入口にいる2人の間を抜け、レイヴンは机の上をなぞり付着した埃を息を吹きかけて払うと声を出す。
「見つめあってるところ悪いんだけどさっさと掃除始めない?」
『量産品の青春ドラマみたいな空気感って傍から見てると凄くアレですねレイヴン』
「「あ、す、すみません……」」
ということで時間が遅いからと先生がアヤネを帰し、レイヴンと先生の2人で掃除を始めた。
背の届かないところは先生に任せ、それ以外は分担して手早く済ませていく中でふと、先生が口を開く。
「気になったんだけどワタリとホシノは昔に何かあったのかい?」
「……いきなり何?」
『……人の過去を聞くのは不躾ではありませんか?』
箱型の小さなロボットの上部に乗り、窓の上あたりを雑巾で拭いていたレイヴンは唐突な問いかけに作業を中断させ、僅かに棘の滲んだ声色で振り返った。
「機嫌を損ねるつもりは無いんだけど気になってね。ほら、先生っていう手前生徒が困ってることは見過ごせないんだ」
「……別に困ってなんかない」
「うーん……そっか……」
視線を戻してポツリと答えたレイヴンに先生は追求はしなかった。レイヴンにとっては少しだけソレが助かり、再び掃除の音だけが続く。
「ワタリ、エア」
「……なに?」
『……なんでしょう?』
先生が呼びかけ、2人に優しい声色で語りかける。
「私はいつだって生徒の味方だからね。もちろん、その中には君も入ってるから」
「『─────』」
少しだけ沈黙し、レイヴンとエアは少しの呆れの混じった感情が浮かぶが、それもまたこの人物の美点なのだろう、と思った。
「……じゃあ少しは馬鹿みたいなことで遭難したり過労死しない事を心がけるといいよ」
『ですね。じゃないと頼りないですもの』
「手厳しいなぁ〜!」
2人からの厳しい指摘に先生は苦い笑みを浮かべるしかできないが、少しだけレイヴンの肩の力が抜けて顔の険も和らぐ。
掃除は終わり、2人は道具を片してレイヴンは自分のヘリへと戻ろうとするが、その直前に宿直室の入口でレイヴンは立ち止まり先生に声をかけた。
「先生」
「ん、なにかな?」
先生は首をかしげ、レイヴンは何度か逡巡したがやがてか細い声で声を出す。
「……えっと」
「……あ、ありがとう」
「じゃあ、それだけだから」
それだけ言い残し、レイヴンは凄まじい速度でその場を去っていってしまう。
引き止めるまもなく行ってしまったレイヴンに呆気の取られた先生の目に頬を僅かに染めた横顔が映るのだった。
「…………」
月明かりが降り注ぎ、微かに照らされる部屋の一角にホシノはいた。
膝を抱え、ただ無言で虚空を見つめ続ける瞳に光はなく何処までも虚ろで真っ黒だ。
「今更……なんで、今更……」
小さく動く口は何度も何度も壊れたレコーダーのようにループさせ、部屋の中に木霊させ続ける。
『私は……君たちと、友達になりたかった…………』
深紅の瞳に深い後悔の色を浮かばせて自分に向けて言った言葉にホシノの心はグチャグチャに乱される。
───だったら、なんで、あの時にあの人を助けてくれなかったんだ?
「遅いよ……もう、戻れないよ……」
ホシノの時間は2年前のあの時から止まっている。
止まった時計の針が進むにはまだ、何もない。
続きません。
皆さんも大変でしょうが頑張りましょうや。
古びたカメラの映像記録
少しのノイズの後に映りだされるのは澄んだ青空に広がる砂漠の地平線。
その中で気だるげな声が響く。
『ねぇ、なんで私の調査に同行するのは許可したけど水着なの?
なんでツルハシもってるの?』
映像がゆれ、視点が移るとそこにはツルハシ片手にスクール水着姿の2人の少女がいた。
『ふっ、ワタリ。この湖の跡地にはお宝が眠っています。そして、それを掘り起こせば地下の水脈も発見できる。一石二鳥!!どうですこの冴えた考えは!!』
桃色の髪の少女が興奮したようツルハシを掲げ、同意するよう青緑の少女が手を振る。
『さぁ、張り切ってお宝さがしだよワタリちゃん、ホシノちゃん!』
『はいっユメ先輩!!ほら、ワタリもツルハシもってる掘りますよ!!』
『えぇ・・・・めんどくさい』
『まぁまぁ、レイヴン。何事も体験ですよ!』
『エアもなんで乗り気なのぉ?』
撮影者らしき人物は少しした後にカメラを近くの石の上に置き、固定すると立てかけてあったツルハシを手に持って先に行ってしまった2人の後を追いかけていった。
少しだけ映ったその口元はかすかに微笑んでいるように見える。