Blue Archive ─To raven.Welcome to the kivotos.─ 作:タロ芋
メイドミドモモきちゃー!石が解けてまう!!!!!
今も思い出す。あの人の笑顔を。あの人の声を。あの人の匂いを。体温を。髪の色。瞳の色。
朝起きて、顔を合わせたおはようと言うことも。
他愛のない世間話も。
普通なら騙されないような嘘に騙されて、それに怒って半泣きになることも。
事ある事にメモをする姿も。
抱きしめてきて感じられる暖かさも。
なにもかも。
変わらないと思っていた。ずっと、ずっと続くと思っていた。
でも、そんなにことはなかった……と、失ってから気づく。
日常は簡単に壊れるということが。
平穏なんて自分の言葉ひとつで終わるって。
「…………………………ユメ先輩」
呟き、目を開いて体を起こす。
体に掛けた布団は落ち、怠い意識の中でベッドから降りて移動する。
もはや体に染み付いて動きで寝巻きのサイズのあってないパジャマを脱ぎ、下着姿になれば手早く身だしなみを整え、ハンガーに掛けていた制服へとすぐに着替えた。
「……ひどい顔」
姿見に移る自分の顔を見て少女、小鳥遊ホシノは自嘲したように笑う。
瞳は澱み、顔には生気がない。死人と大差ないではないかこれでは。
あの日から眠りは浅く、殆どまともな睡眠を取ったことは無い。
でも、無駄に頑丈なこの体はその程度では支障は出ることは無い。アイツが言うには神秘というものが関係してるらしいがどうでもいい。
後輩たちに見られることに比べたら。
「……ユメ先輩みたいに。あの人みたいな感じで」
凝り固まった頬を解すようにその両手で揉んで笑顔を作る。
あの人のように。優しくて暖かで、抜けてて抱きしめてくれるような気の抜ける笑顔を。
自分の心を騙して、偽って、演じればいい。
「…………行こう」
部屋から出て玄関へ向かう。
「……行ってきます」
靴箱の上に飾られた写真立て。そこにある一枚の写真。
3人の人物が写っていたが、そのうちの一人の顔に当たる部分だけは破られ、誰かは判別できない。
ホシノはそれに対して様々な色の感情を瞳に浮かばせながらも振り切るよう視線を外して扉を開ける。
乾いた埃っぽい空気。
肌がパサつく気候。
砂の多い景色がそこには広がり、ホシノは1歩踏み出した。
〇
先生がシャーレから出発して数日、1人だけでレイヴンはオフィスでタスクを進めていた。
カチ、カチ……時計の針が刻む音が響き、書類のめくる音。キーボードの叩く音が小さく続く。
「……ふぅ」
『レイヴン、少し休憩しましょう。少しコンを詰めすぎですよ』
「エア……ん、そうだね。そうしようか」
エアから言われ、レイヴンは作業の手を止めて背もたれに体重を預けて空を仰いだ。
オフィスの天井の板を見つめ、何も考えずにボーッとしていると甘い匂いが鼻腔をくすぐる。
『レイヴン、ココアですよ。それとお菓子も』
「ん、ありがとうエア」
首を動かすと給湯室からエアな操作するアームロボットがアームに掴んだトレーの上にココアの注がれたマグカップと幾つかの菓子の並べられた皿を運ぶのが見えた。
レイヴンは礼を言ってマグカップを手に取ると両の手で持ってゆっくりと口に含む。
少し熱いが問題ない温度の甘い液体を飲んだ後にレイヴンは皿の上のクッキーを数枚摘み口へ運んで噛み砕いて嚥下して一息ついた。
『……やっぱり気になりますか?』
「……エアには隠せない、か。うん、あの日から考えないようにはしてきたけど、やっぱり……ね」
数日前に来た1枚の手紙。
それは2年前、レイヴンがある意味で記憶に残る出来事のあった場所から送られてきた。
内容は支援と救援を求める切実な内容。
先生はそれを見てすぐにシャーレを発ったが、レイヴンは本来だったら補佐として共に行かなけれらならない。けれど、どうしてもレイヴンは行く気になれなかった。
『……お前なんて来なければよかったんだ』
あの憎しみの篭った目が。あの殺意の込められた声が忘れることなく刻まれている。
それだけの事はしたと思ってはいる。もう、二度と会うことは無いからあんなことをした。
むしろ、ルビコンにいた頃はそれ以上に酷いことをしてきたのだ。今更罪悪感や後悔なんて自分のような存在がしていいわけが無い。許されるわけが無い。
「……はぁ」
『レイヴン、ため息すると幸運が逃げますよ』
「生憎、そんなスピリチュアルな事は信じてないよ」
エアの茶化しにレイヴンは素っ気なく返すが、少しだけ気分が晴れたのかまとってる雰囲気が少しだけ軽くなったような気がした。
「そういえば先生は今どんな感じ?」
『もうアビドスの自地区内ではあるでしょう。遭難したとしても、きちんとレイヴンと私が事前に砂漠越えの為の装備をさせましたし問題はありませんよ。
それに、発信機も機能して逐次位置情報を────あっ』
「ん?」
『……レイヴン、いいお知らせと悪いお知らせがあります。どちらから聞きたいですか?』
「…………良い方からで」
『はい。先生は無事にアビドス自治区にはいます』
「……悪い方は?」
『……発信機が壊れたのか位置情報が少し前から更新されていません』
「……………………そっか」
レイヴンは答え、ココアを飲んで一息つくと窓へ視線を向けた。
どこまでも青く透き通り、雲ひとつの無い空は今日も美しい。
さて、仕事の続きをしよう。
『レイヴン』
「何も言わないで」
『そうはいってもあの人が遭難しちゃってる事実は変わりませんよ!』
「や、絶対行きたくない」
首を横に振って断固として拒否する。
なんで自分が行かなければならないのだ。別に救出に行くのなんてロボットに任せればいいじゃないか。
『そんなこと言ったってアビドスにはあの蚯蚓がいるんですからレイヴンがロボット任せにして、気がついたら先生は砂の染みになってました……ってなったら目も当てられませんよ?』
『─────それに』
『レイヴンだって彼女とは仲直りしたいと思ってるんですよね?』
「むぅ……」
エアの言葉に思わず唸る。
図星だったからだ。
割合的には殆どレイヴンが悪いし、別にもっといい別れ方もあったはずだ。というか、あの依頼なんて引き受けなければこんなこじれた話になることはない。
でも、何か返したかった。あの時のレイヴンにとってはあの手段が最善だと思ったからだ。
殺し殺されという命のやり取りを続けてきたレイヴンにとって、銃口を向け合うことは即ち相手が自分どっちかが死ぬまで続く。
キヴォトスに流れ着いてもレイヴンの価値観は変わらない。変わったのは相手が死なないこととわその代わりに相手の心をへし折ることになったことだ。
中にはそれでもレイヴンに牙を向けてくる骨のあるやつもいるが、それはなにか違う。
つまりはどうしたらいいか分からないのだ。
2年前のウタハたちとの出来事も喧嘩とは違うものだったし、ルビコンでのイグアスとの戦いも違う。
あーだこーだ、とうじうじ言葉を飾るが、やがてレイヴンはポツリと口に出す。
「…………仲直りの仕方なんてわからないもん」
『フフッ、もう答えが出てますよレイヴン?』
エアは笑い、レイヴンはバツが悪そうに唇を尖らせて俯く。
「……一緒にどう謝るか考えてくれる?」
『勿論。ですが、言うのは貴方ですよレイヴン?』
「ん……わかった」
レイヴンは言うと椅子から立ち上がり、机の上に置いていた腕章を腕へ通す。
オフィスの扉にかけてあるプレートをOPENからCLOSEへ変え、ビル内の警備システムを起動させるとレイヴンはシャーレビル直上に待機させていたヘリに乗り込み発進させた。
目標はアビドス自治区へと。
続きません
・とある音声記録
『・・・・連邦特務捜査部シャーレの先生の日常業務補佐の募集?
こ、これよ!!これをやれば他の子達よりも先生とお近付きになれるわ!!
ここで一発ガツンと先生の印象に残れば一気に!』
『あらあら、ユウカちゃんったら楽しそうですね〜』
『の、"ノア先輩"・・・そろそろ足が痺れてきたんですけど・・・・』
『うふふ、コユキちゃん?まだ正座をしてから五分だけですよ〜☆』
『うわ〜ん!!ノア先輩の鬼ぃ!"シロちゃん"と一緒にユウカ先輩にイタズラしただけじゃないですかァ!
シロちゃんだけお咎め無しなんて酷い!!』
『ふふっ、シロちゃんは"霞先輩"が後でキツくやっておくと言ってましたからね。
このバツが終わったらコユキちゃんも霞先輩のところに行きましょうね〜』
『嫌だー!!あの人怖いんですよ!何でシロちゃん、あんな人に懐いてるんですかー!!?』
騒がしい少女たちの記録。これはとある少女がシャーレという部活にやってくる少し前の記録である。
活動報告やX(Twitter)のアカウントに絡ませたいキャラややって欲しいシチュエーションなど投げてくだされれば幸いです。
Xアカウント
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活動報告
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=306077&uid=141625