【あらすじ】東京の西のほうに暮らす、ぱっとしないライター・ゆきよは、今日も、UFOキャッチャーでとってきたお気に入りのクマのぬいぐるみ・たらおと会話するのであった。
「ゆきよさん、ブログ更新してなかったわね。」
――実家帰ってたのよ。資料とりに帰ってて。そしたら実兄に、大量に酒を飲まされ気絶した…。
「お母さん元気だった?」
――最近どう? ってきいたら、東京ポッド許可局が面白いわ、って言われた。
「ああ、TBSで放送してるんだよね。」
――前にCDラジカセ欲しいって言ってたから、プレゼントしたんだよね。そのラジカセでラジオ聞いてるんだと思うんだけど、よりによって東京ポッド許可局かよ! って感じですね。
うちってさあ、近所に書店とか全然ないの。だから、情報源って、新聞とテレビとラジオしかないの。最近、ちょっとネットを始めたらしいんだけど…。基本は、新聞をすみずみまで見て、情報をひろってるみたい。
でも母にさ、クレイジーケンバンドの話とかさ、幸代がクドカン取材したのってずっと前じゃない? 初ロングインタビューだったはずよね? とか言われるとさ。うわ、なんか、サブカル女なのって血筋なのかしらーって、おそろしくなるよ。
「基本、情報魔だよね。」
――そうなんだよねえ…。ケーブルテレビも結構入ってるしさ、私よりいろんなこと知ってるかもしれない。
銀座でOLやってる時、宝塚とか、松竹歌劇団とか、ラインダンス見に行っててさ。ラインダンスって、新人のデビューなのね。
で、右から3番目の子、売れるわね! とかチェックするのが好きだったんだって。
「先物買い……。」
――あと、クレージーキャッツが売れる前に…。
「売れる前!」
――同窓会のパーティで、バンドで呼んだんだって。で、暇な時間があったから、一緒にバレーボールしたって言ってた。
「なんだそれ。」
――他にも、詳しくきけば、いろんな話、出てきそうだと思うんだけど…。
母って、東京の巨大建築のこと、すごい知ってるの。東京タワーの基礎をつくるのに、コンクリートとかねろねろ入れるじゃない。ああいう会社の経理にいたから。
彼女いわく、「東京タワー、どんなにコンクリ入れても固まらなくて、武士のたたりじゃないかとうわさが出て、職人さんががんがん辞めた。しょうがないので、ギャラをばっかんばっかん上げて、やとって、無理やり作った。」んだそうだよ
――渋谷系のシンボルなのに…。
「まあ年上の人と会話すると、生々しい昭和の話がきけますよ。当たり前だけど。
………あ、あと、明日月曜日、16時の更新、長年あっためてきた企画が実現したので、見てねー! モヤモヤさぁ~ず2ファン必見だよ!」
「唐突ですな。」