「あの日までのお母さんも死んだ」“たった15分の横着”が奪った夫と日常 1枚800kgの鉄板落下事故 被害者家族が訴え「被害者にも加害者にもさせないために」
「あの事故さえなければ、主人が生きていてくれれば、お父さんが生きていてくれればっていう思いは本当に拭い去ることがどうしてもできません」 【画像を見る】事故当時の現場や当時の状況などを語る松本里奈さん そう話すのは、広島県府中町に住む会社員・松本里奈さんです。 松本さんは今から約13年前、突然、夫を亡くしました。 ■クリスマスに起こった悲劇 2012年12月25日、広島県東広島市を走行中のトレーラーに積みあげられていた鉄板が落下しました。 1枚800kgの鉄板15枚が対向車線を走る乗用車を直撃し乗っていた2人が死亡。その1人が松本さんの夫・康志さん(当時45)でした。 その後の警察の捜査で、トレーラーの運転手が鉄板の固定作業を怠り、たった1本のワイヤーロープで括られていたことが発覚しました。 これについて松本さんは「たった15分の横着で赤の他人2人の命が奪われた」と話します。 夫・康志さんが巻き込まれたのは「事故」ではなく「事件」でした。 ■事件から13年。康志さんが生まれ育った街では 2025年10月4日、康志さんが生まれ育った広島県府中町で開かれた安全推進大会で行われた講演「加害者も被害者もうまないために」。 同年4月に府中町で、犯罪被害者への経済支援や福祉サービスなどを提供する条例が施行されたことを受けて行われた この講演で、講師を務めたのは松本さんです。 約1時間の中に「発生当時の状況」や「犯罪被害者の遺族として伝えたいこと」が詰め込まれた松本さんの講演に、約500人が耳を傾けました。 ■松本さんが講演で語ったことは… 講演では初めに当日の朝の様子が語られました。 松本里奈さん 「主人の『行ってくるわ』に対して『あいよ』っていう一言。これが私たち夫婦が生きているときの最後の会話です。また、そのときにキッチンから見送った後ろ姿は、主人の生きている最後の姿でした」 「もし、このときが最後だとわかってたら『玄関までちゃんと見送ったのにな』とか、もっと言えば『出勤させなかったのに』など、今でも本当に大きな後悔を残しています」