goo blog引越し体験談
goo blog サービス終了のお知らせ 

かくれた国家カトリック

ヨハネ・パウロ2世の死去で再び、カトリック(もしくはカソリック)の組織や影響力の大きさが認識されております。ただ、一般の人々にとってはカトリック教徒でない限り、なかなかカトリックの実態を知る機会というものはありません。幸か不幸か管理人はカトリック教徒でないにもかかわらず、その礼拝に出席したり、また修道院を訪問したり、人よりは(といっても、わずかですが)カトリックについては知っているつもりですので、信徒の方々に失礼のない範囲で、ご紹介したいと思います。

まず、これは皆様もご存知ですが、カトリックは法王を頂点とした強固な一枚岩を結成しております。いわば完璧な中央集権。世俗の民族、国家の枠を超えた宗教的な世界統一国家です。おそらくかなりのカソリック教徒は世俗の国家と宗教国家のどちらかを選ばなければならないとしたら、迷わず宗教国家のほうを選ぶでしょう。極端な話し、ブッシュが強大国家の大統領だからといって、彼が動かせるのはたかが2億強、法王が動かせる人の数は10億を越すといわれています。

つづいてカトリックはある意味で極めて革新的です。女性蔑視、中絶反対など極めて保守的な側面がある一方、全てとは言いませんが、管理人が経験したアメリカのいくつかの教会の礼拝は、正面の大きなスクリーンに歌の歌詞を映すわ、ギター演奏はあるわ、大変ポップなもので、カトリックは保守的と信じていた管理人は度肝を抜かれたものです。また仏教や、他の宗教との対話を積極的に進め、他宗教をよく研究し、その良さを認めているのも、プロテスタントより、むしろカトリックです。

そして行動的です。世界のどこかで何か災害や戦争が起こると、そこに真っ先に駆けつけて弱者の救援活動をするのは赤十字でもなく、ましてやどこかの政府でもなく、カトリックの修道士、修道女達だそうです。「ブラック・ローブ(Black Robe, 1991)」という映画があります。17世紀、当時フランスの植民地だった北米ケベックの大自然を舞台に、身に纏った衣装から先住インディアンに“ブラック・ローブ”と呼ばれている、カトリックの若き伝道師の行方不明者捜索の旅を描いたヒューマン・アドベンチャー、その厳しさゆえにあくまでも美しいカナダの大地を映し出した映像美でも有名な作品ですが、若き、ひ弱な貴族の子弟(いわゆるいいとこのボンボン)が、カナダの未開の奥地に単身、身を挺して入り込んでいく、人は信仰によってここまで変わるものか、と思わされる映画です。

一方邦題は知りませんが、「The Priest, 1994」という映画もあり、これは修道士の同性愛を赤裸々に描いた映画で、男同士がS○Xで指を絡めあうところが大写しにされたり、ももすごくショッキングで、(いろっぽい)映画ですが、友人のアメリカ人の修道士に、こういうことって本当にあるの、と無礼にも聞いたら、まあね、という返事でした。

修道院の話題に移りますが、修道院というと、人里はなれたところにぽつんと建つ、そういったイメージで、それはそれで正しいのですが、全部がそうとは言えません。イエズス会や女子パウロ修道会などの修道院は都会にあり、普通の大きな民家やアパートのよう、どちらかというと修道士、修道女の寄宿舎といった感じです。女子パウロ修道会はあまり知りませんが、イエズス会の場合、修道士はたいてい普通の職業についています。弁護士や、大学教授、医者などなど。そういう人たちが一つの建物に住み、当番で炊事もこなし、信仰に基づいた生活を日々送っているのです。

生活は質素、医者や弁護士となるとかなりの収入ですが、収入は一度修道会に入り、それぞれの修道士はそこから生活に必要な額を受け取る仕組みです。もちろん修道士になると死ぬまで生活は保障されますが、それにしてもみんな独身で養う家族もなく、まったく収入と見合わない質素な生活、修道会の財力は膨大なものとなるはずです。ジョージタウン大学のイエズス会修道院の食堂で食事をしていた時、隣の席に座り、我々と同じものを食べ、なおかつ当時まだ小さかった長男をあやしてくれたおじさん、クリントンの宗教顧問だそうです。バチカンの地下にはフォート・ノックスを凌ぐ金塊が眠っていると、うわさされるくらいです。

カトリックの災害や紛争における救援活動、人道的活動の裏には一般信者や修道会によって支えられる膨大な資力があります。さらに、いったん修道会から「○○に行け」と転任や派遣を命じられると3時間以内に現地に出発する規則になっているそうです。くだんのアメリカ人の彼は「僕は3時間以内に出発できるよ」とこともなげに言い放ち、おなじ修道院にいた日本人の修道士、「僕にはとても無理です」といいましたが。

公の場でこそきらびやかな法王ですが、生活はいたって質素、普通の修道士よりやや大きめの個室と身の回りの世話をするブラザーが何人か、その程度だと聞いたことがありました。おおっぴらにバチカンを攻めよう、壊滅しようというテロ集団はありません。世界中の10億を越すカトリックを敵に回すと、国家だってひとたまりもありません。
この広告を非表示にする

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了しました。

最近の「よしなしごと」カテゴリー

バックナンバー