「どう思われますか?」とのことなので、率直に意見を述べます。
「クラウド上のPLC」は、設備制御を目的とするものではなく、監視・シミュレーション・最適化といった総合知能化を目的とした仕組みだと思います。だとすれば、PLCである必然性は薄く、普通のアプリケーションでもよいのではと感じます。
理由をPLCの原点に戻って説明します。
PLCの本質は“Scan and Execute”、つまり周期的スキャンによる決定論的制御にあります。
制御装置の使命は、外界の変化に即応して安定した動作を行うことです。非同期・割り込みだらけの処理では、入力変化のタイミングで挙動が揺らぎ、機械制御では致命的な不安定を生みます。
PLCはそれを避けるため、すべての処理を「時分割で周期的に」実行し、常に同じ順序・同じ周期で動くよう設計されています。
この時間の決定性こそがPLCの核だと思うのです。
余談ですが、このスキャン構造はサンプリング理論や制御理論の時間離散化と同根です。PLCとは「現実世界の連続現象を、一定周期で観測し、決定的に反応するマシン」であり、これはまさに離散時間システムそのものです。
話が「クラウド上のPLC」から遠のきましたが、ここから徐々に戻していきます。
IPC制御のような、ハードウェアから分離されたソフトウェアPLCであっても、本質は周期スキャンによる決定論的処理です。
デジタルツインや仮想PLCでは、時間決定性は弱まるものの、周期実行の概念は残っています。
しかしクラウドPLCは、決定性そのものを要求しない(あるいは実現できない)環境です。したがって、サイクル同期を前提に設計する必要すらないのでは、と思います。
なので私は、これはもはや「制御のためのPLC」ではなく、「知能化のためのアプリケーション」に近いと考えています。もっと言えば、PLCと呼ぶには無理があると思います。