米MITがトランプ氏に反旗、助成優遇案を拒否 「我々の信念と矛盾」
【ニューヨーク=清水石珠実】米マサチューセッツ工科大(MIT)がトランプ米政権による「懐柔案」を拒否した。政権はMITを含めた有力9大学に、留学生の入学制限など政権の要求に従えば助成金を優遇的に出すと提案していた。提案を拒否する意向を正式に示したのはMITが初とみられる。
MITのサリー・コーンブルース学長は、リンダ・マクマホン米教育長官に宛てた10日付の書簡のなかで、「(米政権の提案は)科学的な資金は科学的価値のみに基づいて配分されるべきだというMITの核心的な信念と矛盾する」と指摘した。そのうえで、自由な意見交換や学問の独立性を制限する提案を「支持できない」と説明した。
トランプ政権は1日、9大学に提案を送った。入学審査や教職員の雇用で人種・性別の考慮を禁じる反DEI(多様性、公平性、包摂性)施策の徹底や、学部の新入生に占める留学生の割合を15%以下にすることを求めた。保守的な思想や発言の保護も要求した。
政権関係者の説明によると、こうした条件を受け入れると、助成金が支給されやすくなったり、ホワイトハウスのイベントに招待されやすくなったりするといった優遇措置を受けられる。
提案を受け取った大学には、MIT以外に、ブラウン大、ペンシルベニア大、ダートマス大、バンダービルト大、テキサス大オースティン校、アリゾナ大、バージニア大、南カリフォルニア大が含まれる。米報道によると、政権は大学側に20日までに意見を表明するように求めている。
助成金の再開を巡っては、政権とハーバード大学の対立も続いている。米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は9日、両者が和解に向けた協議を再開したと報じた。大学側は新たに米投資ファンド・ブラックストーンの共同創立者、スティーブン・シュワルツマン氏を交渉担当者に指名し、落とし所を探っている。同氏はトランプ氏と親しいことで知られる。
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(更新)- 菅野暁東京大学 理事(CFO)貴重な体験談
先日MIT執行部の人とトランプ政権の大学に対する様々な要求について話しましたが、米国内ではおおっぴらに話ができない様子が覗えました。そのような中でコーンブルース学長からMIT関係者にレターが届き、教育省からの要請のうち一部を拒否したことを伝えてきました。そこでは「自由な意見表明や機関としての独立を制限することに反対」と述べ、「科学に対する助成は科学的メリットに基づくべき」として、政府からの提案に反対すると明言しています。冒頭述べたような雰囲気が強くなる中、勇気ある判断だと感じます。今後大学が資金的に厳しい状態になることが予想されるので、卒業生の一人として寄付で微力ながら支えたい思いです。
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(更新) - 青木慎一日本経済新聞社 編集委員・論説委員ひとこと解説
トランプ政権は第一期に中国系米国人研究者や中国からの留学生をいわれのない経済スパイ疑惑で多数逮捕しましたが、そのほとんどをスパイ容疑で起訴できず、脱税などで起訴した裁判でもほぼ政権側の敗訴に終りました。ほとんどの大学が逮捕された研究者をいったんは解雇していましたが、マサチューセッツ工科大学は、中国からの資金提供疑惑で逮捕されたガン・チェン教授を支援し、当時のラファエル・リーフ学長や約200人の教職員が「誤った逮捕だ」と抗議を続けました。MITはチェン教授の裁判費用を負担し、最終的に不起訴処分を勝ち取りました。トランプ政権の懐柔策を拒否したのは、ある意味当然の流れだと思います。 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD31C7M0R30C21A8000000/
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(更新)
2025年1月にドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領に就任しました。政権の行方など最新ニュースや解説を掲載します。