Blue Archive ─To raven.Welcome to the kivotos.─ 作:タロ芋
連日仕事が忙しくって執筆の時間が取れなくってチマチマと書いてて時間がかかってしまいました。そのせいで未だに百花繚乱よめてないっていうね!
その間にデカグラマトンイベ来ましたね〜。新しい預言者も来ましたしデザインが好みすぎる。なんていうかVの無人兵器っぽさがありましたねー。
これは遠くないうちに本格的に本編ストーリーでデカグラマトン編が始まるってことなんですかね?
それと、活動報告などで本作でのやって欲しいことや絡んで欲しいキャラなどがあったら思い思いに投げてくださいね。
そんなこんなでどうぞ
砂に埋もれかけた住宅街、その中心で幾つもの銃撃音が響き渡った。
爆炎が上がり、家屋が破壊され激しく燃えると空高く黒煙が舞う。
そして、一瞬だけ静寂が訪れたかと思えばひとつの家屋の壁が爆発し、土煙を引き裂いてふたつの影が飛び出した。
そのふたつの影はゴロゴロとアスファルトを転がり、勢いを利用して跳ねると後方へと着地し視線を交差させる。
片方は短く切り揃えられたピンクの髪色が目立つ鋭い目つきのショットガンを構えた少女こと"小鳥遊ホシノ"
もう片方は艶のない色の抜け落ちた灰色の長い髪に狼の耳を頭頂部に生やし、感情のない深紅の瞳に腰からは黒い翼、両手にマシンガン"DF-MG-02
両者は互いに体のあちこちを煤で汚し、ホシノは額から血を流しレイヴンは口の端から細い血の筋が垂れていた。
油断なく瞳は敵を射抜き、何か一つ身動きすればそれだけで撃ち合いが再開するという緊張感が走っている。
──コッ……
唐突に二人の間に小石が落下し、小さな音が響いた。
「「ッッ!!」」
それが合図となり、同時に引き金を引かれ硝煙が銃口から立ち上り弾丸が吐き出される。
ホシノは確実にレイヴンを仕留めるために殺意を乗せ、レイヴンはそれに対して淡々と自分の仕事を遂行するために冷徹に。
時は凡そ数日前に遡る。
その場所はかつて移転する前のアビドス高等学校の本校舎であり、度重なる砂嵐と砂漠化の影響で砂に埋もれていたのをエアが発見。
比較的浅めに埋もれていた箇所を爆破し、侵入することに成功した。(その過程で足場が崩れ危うく生き埋めになりかけた)
校舎内部は全盛期のアビドスの時のものだからか、かなりの広さを誇っており小一時間ほど彷徨う事態に陥ってしまう。
その過程で古びて風化していたが、地図をみつけマッピングしていた情報と照らし合わせることで現在地に当たりをつけたレイヴンはエアのナビゲーションの元、当時の生徒会室を目指した。
道中は過去に謎の4脚兵器に叩き落とされ、溺死しかけた中で漂着した施設を進んだ時よりも危険はなく比較的楽に進むことが出来た。
といっても、年数が経って老朽化していたり、砂の重みで崩落していた箇所があって生き埋めになりかけてしまいかけることもあったが。
掠れた文字で『生徒会室』とプレートのある部屋をみつけ、立て付けの悪かった扉を勢い余って破壊して中へと入室する。
埃の舞う空気に僅かに顔を顰めながらレイヴンは旧生徒会室の棚や机の中をひっくり返し、見つけた書類やファイルなどを端末でスキャンしてはひっくり返し、スキャンしてはひっくり返しを繰り返すこと数度。
「…………"砂嵐発生時の高熱源反応"」
『……砂嵐発生のメカニズムでは明らかに説明できない反応ですね』
その中で特徴的な文面を発見し、それに関連するものを重点的に探す。
最初の砂嵐の発生した地点や被害の規模。段々と範囲が広がり、頻度も増えていったことが記され、その過程で1枚の写真をレイヴンは手に取った。
「エア」
『ええ。恐らくこれが砂嵐の中にいると言われている機械の蛇でしょう』
「ん」
その写真は砂嵐の中で撮ったものらしく、砂塵により写りが悪く酷く不明瞭だった。
けれど、その中で一際目立つ巨大な影がクッキリと見えている。
鎌首もたげた太く、巨大な蛇を思わせる大きな影。頭部らしい部分にはいつかの4脚兵器のようにヘイローを浮かべたソレが。
「『"
写真の下に乱雑に描き殴られた単語。おそらく、これがこの写真の主の名前なのだろう。
アビドスの調査もこれで終わりか、と判断。踵を返して帰ろうとした瞬間───
「お久しぶりですね独立傭兵レイヴン」
「────ッ」
乾いた発砲音が響く。
「おやおや、随分と乱暴ですね。これが貴方流の挨拶というやつですか?」
クツクツ、と人の神経を逆撫でする笑い声が木霊し、瞳に微かな嫌悪と敵意を滲ませて問いかけた。
「何の用だ黒服?」
「ココ最近周辺で嗅ぎ回っている鼠がいる……と報告を受けましてね。
どんな者かと思えば見知った存在でしたのでこうして挨拶に来たのですよレイヴン」
薄暗い室内、その出入りを陣取るように体に罅が走ったスーツ姿の異形"黒服"がいた。
彼は恭しく頭を下げるが、雰囲気も相まってこれっぽっちも信用出来る要素がない。
『……その発言では貴方はこの周囲で何かをしているという意図が見えますが?』
「ククッ、鋭いですねレイヴンのパートナー。ええ、その通り。私はとある企業と契約を結んでいましてアビドスでとある存在の調査に協力してもらっているのですよ」
黒服の発言を聞き、レイヴンは僅かに眉を顰める。
コイツの行っている調査は恐らくは過去に自分が行った廃墟の探索に関係するものだろう。
そして、契約している企業。アビドス周辺で有名な企業と言えば土着の"セイント・ネフティス"だが、アソコは荒事とは無縁の普通の企業だったはずだが……いや、そういえばアビドス高等学校にちょっかいを掛けている存在がいたはず。
ヘルメット団を支援し、学校を襲撃させるよう仕向ける存在。
「……カイザーとお前はグルということか?」
「おや、隠したつもりは無いとはいえ存外鼻が利くようだ……。えぇ、その通りですよ。私はカイザーの一企業とは懇意にさせてもらっているのです」
近くにあった椅子に腰掛けた黒服はあっけらかんと告げる。
『アビドス学校にちょっかいを掛けてさせているのも貴方の調査の邪魔になるから……ということですか?』
「それについては私は無関係……というほどではありませんが大部分はカイザーの行動ですね。まったく、私としては1部を手に入れられれば良かったのですが……これだから企業というのは欲深い。
……おや、そういえば貴女方はあの学園の2人に世話になっていましたね。私を打ちのめして辞めさせますか?」
黒服からの問いかけにレイヴンは鼻を鳴らし、口を開く。
「それは私とは関係ない事だ。あくまでも借金については彼女達の問題であって私が首を突っ込む理由は無い」
「それはそれは何とも…………仮にも協力してもらっているでしょうに」
「私は別に頼んではいない。あの二人が何故か世話を焼いてくるだけだ」
「ククッ、それは都合がいい」
『……それは、どういう意味ですか黒服?』
肩をふるわせ、黒服は懐から1枚の紙を取り出す。
「1つ、依頼を頼みたいのですよ」
「依頼?」
「ええ。概要を説明いたしましょうか。
目標はアビドス高等学校所属の生徒、小鳥遊ホシノとの足止めと戦闘データの収集です。
理由としては近日中にとあるモノを使用してアビドスに砂嵐を発生させる存在、ビナーと大規模な戦闘を行うためだからです。
その過程でキヴォトスにおいて有数の戦闘能力をもつ彼女に戦場を掻き乱されては堪りません。
故に、リスクを完全に排除するため彼女の足止めを確かな実力を持つことが証明されている貴方に頼みたいと判断した……というわけです。
そして、そのついでとばかりに個人的には小鳥遊ホシノのデータが欲しいので出来るならば戦闘時間を長引かせて頂きたい。
最低でも20分はお願いします。5分ごとに追加の報酬を用意しましょう。
どうでしょうか? 私は貴方のことを高く評価しています。これからも良き関係を築くために依頼を引き受けていただきたい」
『……どうしますかレイヴン? 私は貴方の判断に従います』
指をからませ、足を組んでいる黒服に警戒をしながらエアはレイヴンに問いかける。
レイヴンは僅かに間を置き、ゆっくりと口を開いた。
「その依頼は────
「いい加減にしてください! こんなものを引っ張り出して意味があるんですか!?
こうして手をこまねいてる間に確実にアイツらの手が伸びてるんですよ! いつまでも夢想なんか見てないで現実的なことを考えてください!!」
アビドスの校舎を歩いていれば、そんな怒鳴り声と共に乱雑に扉が開かれ生徒会室からホシノが出てきた。
「ッ、ワタリですか」
目を丸くして立ち止まっていたレイヴンに気がついたのか、ホシノは何処かバツが悪そうに目をそらす。
そんな姿にレイヴンは僅かに首を傾げながら何があったのか尋ねた。
「ん、どうしたの? 随分と荒ぶってるけど」
「……なんでもありません。見回りに行ってきます」
「そう。なんか手伝えることなら手伝うけど?」
「必要ありません。貴方はあくまでも部外者ですから」
「……ん、またね」
些か言葉にトゲが感じられ、如何にも何かあったと感じとれるがレイヴンは理由を聞こうにも口下手なのとコミュニケーション能力にかなり難があるため、引き留めようとした頃には既にホシノの背中は曲がり角へ消える寸前だった。
レイヴンは肩を僅かにすくめ、視線を戻すと生徒会室の扉に手をかけて開いて入室する。
「あ、ワタリちゃん……おかえり〜」
「ん、ただいま」
『ただいま戻りましたユメ』
すると、中にいたユメが挨拶を行いレイヴンもそれに返答するが彼女の様子に違和感を覚えた。
いつも浮かべてる笑みとは違い、今のユメの笑みは無理やり笑っているようなそんな感じだった。
「ユメ、さっきホシノが怒ってたけど何かあった?」
「あー……聞こえちゃってたかな?」
「少しだけ」
『何があったのですか?』
「あはは……そっかあ」
ユメは困ったように頭の後ろへと手を当て、僅かに俯く。
レイヴンは視線を動かすと、生徒会室の机の上に破かれた紙らしきものを発見した。
「それ……なに?」
「これ?」
「ん」
レイヴンが頷くとユメはその紙を手に取り、レイヴンに見えるように掲げる。
「『"アビドス砂祭り"……?』」
「うん。昔……まだ砂嵐が酷くなかった頃に毎年やってたアビドスの名物のお祭りなんだ〜。
ほかの自治区からもたくさん人がこのお祭りを見に来るために来てたらしいんだよね」
「らしい?」
「ん。何年も前に郊外にあるオアシスが枯れちゃったからずっと開催されてないからね〜
私も話で聞いてるだけで見たことは無いんだ〜」
ユメは慈しむようにポスターを撫で、感慨深く呟く。
「いつか絶対アビドスを復興させて、このお祭りをもう一度再開させる。これが私の夢なんだ
……まぁ、ホシノちゃんには夢を見すぎだって怒られちゃったけど」
たはー、と呆れたようにユメは笑う。
レイヴンはその様子を見て、気がつけば口を開いていた。
「ユメは辛くないの? ほとんど無理難題ともいるような額を返すために殆どの時間を取られてるのに。
それに、わざわざ2人が貴重な時間を費やす価値はここにはあるとは思えない」
「……ワタリちゃんの言いたいことはわかるよ」
「なら」
「……実はね、何度も辞めちゃおうかなって思ったことがあったんだ」
「────」
「殆ど減らない借金。頑張ってお金を稼いでも利息を払うだけで手一杯。
襲撃してくる不良たち。在校生も私ひとりでやってられるか〜って感じでね」
ユメは過去を懐かしみながら思い出す。
入学した頃には新入生は自分1人で同級生なんて一人もいない。オマケに一応在学生であった数人の先輩たちは自分に雑に引き継ぎをさせると直ぐに
唖然としながらも気合を入れて頑張るぞ、と決意したはいいが直ぐに打ちのめされることになる。
ありえない額の借金に目をひんむいたり、数少ない自治区の住人からの
最初の数カ月は頑張れば報われるって思ってやってこれた。でも、段々と『どうせやっても無駄じゃないか?』と思い始めてきた。だけど、どうしても諦めることが出来なくて誤魔化しながらも日々を過ごした。
『……辛いなぁ』
けど、やっぱり誤魔化すのも無理があって思いがけず弱音が出てしまう。
「でも、さ。そんな時にある子がこの学校に来たんだ〜」
『今年から入学することになりました小鳥遊ホシノです。どうぞよろしくお願いします』
そんな言葉と共に渡された入学証。
目を点にしながら思わず何度も聞き返してしまったし、どうしてこんな辺鄙なところに? って自分で言ってて悲しくなるような質問もした。
『昔、小さい頃にこの学園の人にお世話になったことがあったんです。だから、今度は私もそうなれるようにと思って入学を決意したんです』
誇らしげに言う彼女に救われたのだと思う。
「いやぁ、後輩なのに先輩に対して遠慮がないし最初は何だこの子は! って思ったよ?
でも直ぐに頼りきりになっちゃってね〜。先輩としての威厳なんてどこそれ? って感じだね!」
「けど、さ……」
顔を上げ、ユメは続ける。
「だから今も頑張れてるんだと思う。だってさ、私よりも年下の子が諦めてないんだもう。だったら私も折れてられるかー……! ってね。
それにホシノちゃんって責任感が強いからその分私がガス抜きさせてあげないとね〜」
「……それがアレ?」
「……うぐぅ。それは、まぁ、うん……」
レイヴンの言ったことにユメは呻いてしまった。
そんな彼女の様子を見つめながらレイヴンは考えた後に、口を開く。
「……私たちならどうにかできるよ? ねぇ、エア」
『はい。今我々の総資産を計算してみましたが問題ない程度の損失です』
レイヴンの所有している資産はエアと共に様々な手段を用いて増やしており、アビドスの膨大な借金はポンと出せるという訳では無いがそれでも時間を置けば直ぐに補填できるくらいだ。
そんな提案を聞き、ユメは何度か目を瞬かせれば淡く微笑んでレイヴンに向けて手招きをする。
レイヴンは素直に従い、彼女の元に寄れば椅子に座らされた。
「ワタリちゃんとエアちゃんは優しいねぇ〜」
「? 言ってる意味がわからない」
『ユメ、言ってる真意が理解できませんよ?』
「フフッ、そう言ってる時点で2人は優しいよ」
座らせたユメはブラシでレイヴンの髪の毛を優しく梳き始める。
「だって、こう言ったらなんだけど私たちとワタリちゃんが過ごしたのってせいぜいひと月と少しでしょ?
なのに、私たちのためにそこまでしてくれるっていうってのは君たちが優しくないとできない事だもん」
「そんなことは……」
ユメに言われ、レイヴンは口篭る。
自分はそんなにユメに褒められるような存在では無いからだ。
こうしてユメ達に手を貸したのはあくまでも自分のためであり、彼女達のためではない。
本当に優しければ最初から協力している。
「んもう、そうやって自分を卑下しない!」
「むぎゅ……」
『あ、ユメ! 私のレイヴンに激しいスキンシップはやめてください!!』
「……私はエアのじゃないよ」
前に回ったユメに両頬を挟まれ、額をぶつけられる。
大して痛くは無かったがエアががなるが、冷静にレイヴンは返した。
「ワタリちゃんがどんな考えであっても私は助かったし嬉しかった。それは多分ホシノちゃんも同じ。
そんな君が自分を下げるようなことをするのはとっても悲しくなっちゃう」
「ん……」
「だから、ワタリちゃんは優しいんだよ。そういう事じゃ駄目かな?」
「…………善処してみる」
「宜しい。じゃあ、これでOK!」
額を離したユメは手早くレイヴンの髪を結うとあっという間に三つ編みが出来ていた。
「自分でやるのはいいけどやっぱり他の子の髪の毛を弄るのが楽しいんだよねぇ〜。
ワタリちゃん、女の子なんだからお肌や髪の毛のお手入れは忘れちゃダメだよ?」
「…………」
「うわ、凄い嫌そう」
『レイヴンはモノグサな所がありますからね』
「モノグサじゃないよ。単純に費用対効果に大してメリットを見出せないだけだよ」
「ほんとかなぁ?」
牛乳石鹸や水で洗顔をしていた事を知ってるユメはそんなレイヴンの発言に疑問を呈するが、あえて突っ込むことはしなかった。ユメは優しいのだ。
「……ユメ、本当に大丈夫?」
「うん。これは私たちの問題だからね。こんなことまでワタリちゃんが背負うことじゃないよ。
…………本当の本当にどうしようも無かったら頼っちゃうかもしれないけど……」
頬を指先で掻きながら言うユメに意思は固いようで、レイヴンは何を言っても無駄だと判断する。
……目的は達成した。ならば────
「……ユメ、お別れを言いに来た」
「えっ!? もう!?」
『……ええ。欲しいデータは入手出来たので』
「ホシノちゃんには言ったの!?」
「……さっき別れの挨拶はしといたから」
「そ、そうなんだ……」
唐突な告白にユメとレイヴンの間に間が訪れる。
レイヴンは何度か口篭るが、おずおずと喋りだした。
「…………えっと、その」
「?」
「…………2人といる間はその、騒がしかった」
「まぁ、ホシノちゃんが良く怒ってたねぇ」
「……ユメにも色々としてもらった」
「うん。まるで妹ができたみたいで新鮮な気持ちだったね」
「…………あの、えっと……なんていうか」
「……悪く、なかった」
レイヴンが漸く出せた言葉にユメは目を丸くしたが、段々と破顔し吹き出した。
「そっかぁ〜。えへへ、そっか……」
心底嬉しそうに、楽しそうに。
夕日を背にしてユメは笑う。
「じゃあ、またね! 良ければまた遊びに来て欲しいな!」
満面の笑みでユメは言う。
「ん……また」
レイヴンは小さく頷き、彼女に向けて最後の会話を行った。
「…………えっと、もうひとつ」
「うん? なぁに?」
「……できるだけ、ホシノとは仲直りしといた方がいい。
何時でも会える……っていうのは身近なようで簡単に遠のいてしまうものだから」
それはレイヴンの心からの言葉だった。
レイヴンはエアの為にウォルターと決別する道を選んだ。
そのことに後悔はない。けれど、せめて最後に一言だけは別れの言葉を交わせた筈だ。そんな小さな後悔が今もレイヴンの胸の奥にささくれのようにチクチクと主張している。
そんなレイヴンの言葉にユメは何を感じたのかは分からない。
「わかった。できる限りホシノちゃんとは仲直りするよ」
「ん……」
これが、ユメと本当に最後の会話だった。
「エア、アイツに連絡入れて」
『……内容はどうしますか?』
すっかり冷たくなったアビドスの夜空の下でレイヴンの吐息は白く染め上がる。
「依頼を受けるが報酬はこの口座に振り込んでおくことを伝えておいて」
深紅の瞳には揺れる光はなく、ただ平坦な色が浮かぶだけだった。
「はぁ……はぁ……」
緩慢な動作で砂漠を進む。
手足は鉛のように重く、意識はモヤがかかったように朦朧として全身は痛みを主張してまともに感覚が機能しない。
「ユメ……先輩……」
瀕死のホシノはあちこちに散らばる何かの残骸に足を取られながら1歩ずつ足を踏みしめる。
轟々と強い風と風に乗った砂粒が体を叩いた。
「あぐっ……!」
小さな体は宙を僅かに舞い、受け身も取れずに砂丘から落ちると何度も転がり平衡感覚が狂わされ背中が突き刺さっていた戦車の砲身に強打してようやく停止し、衝撃に呻き声を漏らす。
「私、が……たすけ、なきゃ……」
「ひどい、こと……いっちゃ、た……」
「あやま、ら……いと」
何度も力が抜けて砂に顔をぶつけながらホシノは立ち上がる。
何度も転んで、何度もぶつかって、何度も何度も何度も。
けれど、歩む足を止めず、焦燥感を押し殺し、不安を黙らせて黙々と進む。
不意に、つま先が何かにぶつかった。
ゆっくりと、視線を下に向ける。
「あぁ……」
目の前のソレを認識が出来なかった。
「ああぁぁ…………」
ガリガリと何かが削られる。
「ぁぁぁぁあぁぁあっっっ……」
力が抜け、膝が折れる。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!」
喉が震え、視界が揺れる。
ただ、広大な砂漠に1人の慟哭が砂嵐に紛れ、消えていった。
「……ホシノには悪いことしたかな」
『……ユメにも悪いことをしましたね』
全身に包帯を巻き、左手をギブスで固定して吊ったボロボロなレイヴンは自分が目覚めた手術台の上に座る。
「……できる限り酷い怪我にならないようにはしたけど手加減って難しい」
『……アチラは本気でしたからね』
「ん。……それにしても何であんなにホシノは怒ってたのかな?」
『すみませんレイヴン。私には分かりません……』
「ん……そっか」
『ですが、レイヴン良かったのですか?』
「なにが?」
『報酬全てをあの学校の口座に振り込んでしまったことです』
「……」
レイヴンは肩を竦め、栄養バーを頬張る。
食べ慣れたソレは何故か酷く味気なかった。
続きません。
さて、黒服がビナーを呼び出すのに使ったモノは何ですかね。
付け加えて会うならレイヴンはソレがなんなのか知りませんし、アビドスがどつなったかは敢えて知ろうとしてませんし、エアも敢えて調べてません。
感想、評価がモチベとなります。