Blue Archive ─To raven.Welcome to the kivotos.─ 作:タロ芋
気がつけば10月ですね。気温の変わり目と言うやつで体調にも気をつけましょう。
そして、今回はアイツが出てきます。
その日、レイヴンは依頼で畑の収穫の手伝いを終わらせた帰りだった。
麦わら帽子とシャツの上にオーバーオールをという格好のレイヴンが、依頼の報酬と一緒に渡された野菜を齧りながら歩いていた時。
「こんにちは、独立傭兵レイヴン」
「『ッ!』」
唐突に背後から声を掛けられる。
息を呑んだレイヴンは、即座に反転してバックステップと同時に腰のホルスターから『HG-003
ソイツは一言でいえば『異形』だった。
形は四肢のある人型でスーツを着込んでいた。けれど、頭部の右目にあたる箇所には発光部があり、そこから顔全体に亀裂が走っており、手袋と袖の隙間から見える地肌にも同様の亀裂が見える。
キヴォトスでも動物やロボットが人間のように活動している。けれど、目の前のこいつはソレらとは違う雰囲気を纏い、明らかにヤバイとレイヴンの警鐘を鳴らしていた。
『レイヴン、アレは私の警戒網を何一つ反応させず、唐突にその場に現れました。
つまりは本来だったら気づかずにこちらに攻撃をすることが出来たという訳です。……警戒を怠らずに』
「ん、分かってる……」
「おやおや、声をかけただけだというのに凄い警戒心だ。私は貴方に害意を持っている訳ではありませんよ。ただ、私は貴方とお話をしたいだけです」
でなければこうして姿を表さない、言外に語り異形はクツクツと笑う。
口もないのにどうやって喋っているのかは分からないがこうして声が聞こえるということに違和感を感じつつもレイヴンは一先ずは異形の言うことを信じることにした。
それでも、銃を握る手は離さずなにかすれば即座に発砲できるようにしているが。
「ククッ、どうやら話は聞いてくれるようですね」
「ん、話だけは聞く」
「私はそれだけで十分です。では、立ち話もなんですから座れる場所に移動するといたしましょう」
異形がそう言い、指を鳴らせばその背後の空間が揺らめく。
「……ッ!」
『これは……!』
レイヴンの目には成人男性が丁度くぐれるくらいの大きさの楕円状の穴が出来ており、その先は見通せない漆黒の揺らめきだけが広がっていた。
普通ではありえない現象を見て2人は言葉を失う。
「では、行きましょうか。あぁ、もちろん念押しますが貴方に危害を加えるつもりなどはありません。
それでも信用ならないならば、即座に撃ってもらっても構いませんよ」
異形はそう言い、自らが作り出した穴を潜り姿を消した。
『……レイヴン、どうしますか?
私としてはあまり行くことに賛成はできませんが……』
「ん、私もそう思う……けど、このまま帰ってもアイツに何されるか分からない」
『……わかりました。ですが、すぐに逃走できるようにしておいて下さいね。
フル装備ならばまだしも、今の装備はほとんど丸腰と言っても過言ではありませんから』
「ん、わかった。一応位置情報とかは常にモニタリングしておいて」
『勿論です』
会話を切り上げ、レイヴンはゆっくりと穴へと進んでいく。
フリーとなっている左手を先に穴の中へと入れ、少しずつ、ゆっくりと進み全身がくぐった。
「ようこそ、レイヴン。まずは珈琲でも如何です? アイスブレイクというやつです」
整頓された空間。どこかの建物の室内で異形はレイヴンに対して歓迎するように言うが、本人からしたら怪しさ全開である。
無言の拒否を受け取り、異形は肩を竦めて窓際にあるデスクチェアへと腰掛けレイヴンに近くのソファに座るよう促した。
「では、改めて自己紹介と行きましょう。私は『ゲマトリア』に所属するキヴォトス外の世界より来た
他に所属しているメンバーからは『黒服』と呼ばれています。どうか、貴方も黒服と気軽にお呼びください」
異形、黒服は手を組んで名乗る。
その中でエアとレイヴンの2人は黒服の自己紹介の中にあったひとつの単語に反応を示した。
『ゲマトリア……あの施設のデータベースにあった単語ですね』
『ん。ということはこの身体となにか関係あるのかな?』
『かもしれません……なにか情報を引き出せるならお願いできますか?』
「『ん、わかった』……そのゲマトリアってなに?」
「簡単にご説明しましょう。はるか昔、キヴォトスにはとある存在の解明を行う研究機関がありました。
ゲマトリアとはその機関に援助を行っていた組織の名です。
そして、私たちはその組織の名を拝借させてもらっている……というわけです。如何でしょう?」
「私たち……ってことは貴方みたいなのがほかにいるってこと?」
「ククッ、それについては部外者にはお教えできません……とだけ」
「……そう」
『……どうやら、私たちの知るゲマトリアとは別物のようですね。ですが、あの空間を跨いだ穴といい、この姿といい警戒をするに越したことに変わりはありませんが』
エアの言葉にレイヴンは同意しつつ、これ以上望んだものは手に入らないと判断。さっさと本題に移ることにした。
「それで、ゲマトリアの黒服が私になんの用?」
「ええ。本日は独立傭兵レイヴンのお力を見込んでひとつ仕事を頼みたいのです」
黒服が手元にあるリモコンを操作すれば、壁面にあるモニターに光が灯る。
いくつかのマップ情報とブレの酷い画像が表示された。
「依頼内容はこの座標にある廃墟郡にある私のドローンのログ回収です。
この廃墟の地下には過去に廃棄された研究施設があると言われており、過去に何度か私はその地下施設への入口を見つけ出そうとドローンなどを侵入させているのですが、そのほとんどが消息を絶っています。
その事からこの廃墟には侵入者を排除するナニかがある事が推測できます。
故に、今回は実力を保証されている貴方に力を貸してほしい……という判断に至った迄です」
「回収に必要な物資や費用などは私が用意しましょう。貴方にはついでに用意した調査ビーコンなどの設置をしてもらいつつ、先に言った廃墟を守護する兵器の調査か可能ならば破壊をお願いしたい」
「報酬については前金でこれくらいを。もちろん、仕事を遂行すればさらに倍の金額を用意しましょう。
私は貴方を高く評価しています。そちらにとっても悪い話では無いと思いますが?」
黒服からの問いかけにレイヴンは───
『レイヴン、もう少しですよ』
「ん、やっと着く」
持っていた端末から顔を上げ、レイヴンは息を吐く。
結局レイヴンは黒服の依頼を受けることにした。
別に報酬などに目が眩んだ訳では無い。目的は別にあり、レイヴンも地下施設に用があったからだ。
レイヴンは前からちょくちょく似たような廃墟は探索しており、その過程で以前に規模は小さいが稼動状態が維持された無人の兵器製造工場を発見したことがある。
その工場をエアが掌握し、現在はレイヴンが使用しているACの一部武装を再現した武器を開発し弾薬を製造するのに使っている状態だ。
このことからキヴォトスの廃墟には無人の施設があると判断。レイヴンとエアは使えそうなものなら再利用することにした。
どうせ捨てられたものだ。自分たちが有効活用しても問題は無い。指摘されてもエアのハッキング能力でシラを切らせてもらうが。
今回の黒服からの依頼も渡りに船というやつで、有効活用出来そうならあの怪しいヤツには色々とでっち上げて施設は使えなかったと報告するつもりだ。
長い地下通路を進み、硬質な足音が唐突にパシャリと湿った音を立てる。
「ん……」
左手の黒い箱を下ろし、ゆっくりと顔をあげれば天井部分が崩落し、外から陽の光が降り注いでいた。
レイヴンが右手を掲げ、狙いを定めれば手首を微かに動かした。
パシュッ、軽い音を立てて手首から先端にアンカーの付いたワイヤーが射出され、天井へと突き刺さる。
簡単に抜けないか確かめたレイヴンが手首をもう一度動かせば、キュルキュルと小さな音を立ててレイヴンの体が上へと上がる。
穴付近に近づき窪みなどに手足を引っ掛ければ、身体能力の高さをいかんなく発揮して数分と経たずにレイヴンは地上へと登ることが出来た。
「やっと着いた」
『お疲れ様ですレイヴン』
手に着いた埃を払い、レイヴンは周囲を見渡す。
朽ちた無数のビル群やその壁や罅に侵食するように自生している植物。空から降る陽の光で1枚の絵画のような光景がそこには広がっていた。
「苔……?」
『どうやら最近までここは水没していたみたいですね』
生憎、そんなのに対して情動することのないレイヴンは、足元や色んなところに群生していた物体を指先で摘み何度か擦り合わせる。
「色々と崩落してるし、水の溜まってるところに落ちないようにしないとね」
『ですね。足元に気をつけつつ、ドローンのログ回収をしましょう』
足元に下ろしていた箱を掴み、レイヴンはゆっくりと廃墟へと足を進み出した。
続きません。
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