Blue Archive ─To raven.Welcome to the kivotos.─ 作:タロ芋
はい、前話から皆さんおでこがチャーミングなこの正体がほぼほぼ一致してて笑いましたね。
一体誰なんですかねー(すっとぼけ)
話は、輝くおでこのメガネが似合う少女を拾う数時間ほど前に遡る。
レイヴンは観光へと繰り出し、エアの案内の元色んなものを見て回った。見て回ったのだが。
串焼きが評判の屋台に行けば爆破されてたり、蕎麦が有名な店に行けば爆破されてたり、お菓子が評判の店に向かえば爆破されてたり……
『*ルビコンスラング*!!! どういうことですかこれは!
ほとんど爆破されてますよ!?』
「ん、笑えるね」
目の前に広がる店だった残骸を見てエアの叫び声がレイヴンの頭の中に木霊し、レイヴンはぬぼーっとした目で見つめていた。
観光に来たはいいのだが、何故か行く先々の店がほとんど更地となっているのが続き、気がつけば帰る予定の日に突入してしまっていた。
お陰でエアの考えた観光プランが殆どおじゃんになってしまったのだ。
やはりゲヘナの治安は観光地だろうとクソだったというわけか。これもまた社会勉強というやつか? んなわけあるか。
『うぅ、せっかくのレイヴンとのデートだって言うのに……神様がいたらパイルをお腹にぶちかましてやりたいです……
こんなんじゃ、ただ可愛いだけのCパルス変異波形です……』
「ん、元気だしてエア。私はエアとお出かけしてるだけでも楽しいよ?」
友人の悲しむ姿を見るのは忍びない(そもそも見る体がない)レイヴンは慰めの言葉をなげかける。
『レイヴン……』トゥンク
「とりあえず探せば他のお店もあるよきっと」
『そう、ですね……ええ。この程度で私はへこたれません。
私はどこかのAIと違って失敗を次に生かせる優秀なオペレーターですから』
「ん、流石エア」
エアの急転直下していたテンションが一気に急上昇する。ついでに天元突破していた好感度も跳ね上がってる。
そんな一幕もありつつ、ようやく見つけた定食屋で遅めの昼食を取ることが出来た。
出来たのだが、たまたま店内にいた銀髪のゲヘナの生徒がキレだし、あわや取り出した爆弾で吹き飛ばされそうになったので全力で叩き潰すことになった。
「またお前か!? 治安維持のご協力感謝します!」
「お待ちになってくださいまし。私は美食の何たるかを理解していないあの店を許せなかっただけですのよ?」
「だからって爆破するバカがいるか! ここ数日だけで何件目だと思ってんだオメェーはよォー!
続きは拘置所で聞いてやるからな!!」
「ではカツ丼をお願いいたしますわ。もちろん出来たてで」
「お前自分の立場わかってんの!? ホントまじでゲヘナって頭おかしいのしかいないな!!」
「ん、貴方もゲヘナだよ?」
「そうだったよコンチクショウ!! なんでこんな学園来ちゃったかなぁ!」
「えっと……頑張って?」
「くそう、観光客に同情されるってだいぶクるなぁ!」
爆破未遂犯(既に犯行済み)を護送車に叩き込み、目尻からキラリと光る汗を流す一般ゲヘナ風紀委員を見送るレイヴン。彼女には強く生きて欲しい、柄にもなくそんなふうに祈らずにはいられなかった。
『色んな人がいるものなのですね……』
「ん、世界は広い……だね」
ルビコンでも色んな人間もいたのだから、気に食わなかったら店の爆破くらいする人間もいるのだろう……いや、やっぱ有り得ないな。頭おかしいだろ。
倫理観どうなってんの?
その後、護送車を見送り自分の店を爆破されかけた店主からしきりに感謝され、お代はいらないと言われついでにお土産もいくつか貰えたので良しとしよう。
余談だが、その店は後日商品の産地偽装がバレたらしく、レイヴンがもう一度訪れた頃には更地になっていた。
色々と見て周り、気になったものは買う。それを繰り返していれば気がつく頃には両手が荷物で塞がっていた。
流石にこのままでは見て回るのにも一苦労なので、宅配サービスを頼んで旅館に配送を頼めば、休憩も兼ねて公園にレイヴンは訪れる。
「ん、ん、ん…………ふぅ」
『興味の惹かれるものがたくさんありましたね』
「3回に2回は絡まれたけどね」
『……これでまだ治安がいい方だなんて嘘みたいですね』
「そうだね。ひょっとしたらルビコンよりも治安悪いんじゃないかな?」
ベンチに座り、飲み干して空となったペットボトルを遠くにあるゴミ箱に向けて狙いを定めてシュート。綺麗な放物線を描いたソレは見事狭い入口を通過した。
『いえ、そのようなことは……すみません擁護できません。流石に飲食店を気に入らなかったからって爆破するのがいる時点で比べようがありませんね』
キヴォトスの治安の悪さには流石のエアも匙を投げる始末だった。
「……でもまぁ、ルビコンよりは殺伐としてないのはいい所かな」
『……ですね』
レイヴンの目には遊具で遊ぶ小さな子供たちが見えた。子供たちの腰には拳銃が下げられてはいるが、笑顔で楽しそうで目はキラキラとしている。
それが何故か、レイヴンには酷く眩しいものに感じられた。
恐らくだが、これがこの感覚が。
「ウォルターの言っていた普通の暮らし、なのかな?」
『……ええ。きっと、彼ならばそういうでしょう』
「だと、いいね」
選択したことに後悔はない。今でも、正しいと思っている。
でも、少し。ほんの少しだけ思ってしまう。
こんなにも世界は輝いている。
こんなにも世界は鮮やかだ。
こんなにも世界は尊いんだ。
この景色を見る、私の隣には貴方もいて欲しかった。
『レイヴン…………泣いているのですか?』
「え……?」
エアに指摘され、レイヴンは目元に触れる。
指先が微かに湿り、見える位置に持って来れば透明な雫がそこにはあった。
「あぁ……そっか、私悲しいんだ」
言葉にして出せばストンと胸に落ちたような感じがした。
そうだ、何よりも今の自分を見せたい人がいないことが悲しいんだ。
喜ぶ自分を見て欲しい。哀しむ自分を見てほしい。怒った自分を見てほしい。楽しむ自分を見て欲しい。
使命よりも私のことを案じてくれていた貴方に何一つ感謝を伝えることが出来なかった。
私に生きる意味を与えてくれた貴方に恩返しをしたかった。
「エア、ちょっとだけ弱音吐くけど許してくれる?」
『……私は何も聞いてませんよ』
「……ありがとう、エア」
友人からの配慮にレイヴンは感謝し、誰にも聞こえないほどの小さな声で呟いた。
「ウォルター、貴方に会いたい…………」
「よぉ、ちょっと面ァ貸してくれや?」
しんみりとした空気を読まない害す声色が聞こえ、レイヴンは顔を上げた。
そうすれば気がつく。自分を囲うように広がるヘルメットを被った連中に。
『本当に空気を読まない連中ですね』
「次から次へと不法者……ってやつ?」
うんざりとしたようなエアの声に同意するようレイヴンは吐き捨てれば立ち上がる。
「ここだとほかの人たちに迷惑がかかる。別のところにしよう」
「ハッ、話しが早いねぇ! んじゃ、外れに誰も使ってねぇ倉庫がある。そこに行こうや」
リーダー格らしきヘルメットの後ろをレイヴンが歩き、逃げ道を塞ぐためか手下たちが周囲を歩く。
時間にして十分ほど、道中は無言のなか目的地の倉庫にたどり着いた。
そうすれば物陰からゴキブリのように不良たちが現れ、レイヴンを取り囲む。
「……それで、私に何か用?」
「おいおい、2日前に起きたこと忘れたとは言わせねーぞ?」
「2日前?」
そう言われ、レイヴンははて? と思う。
2日前といえば何かあっただろうか。精々野犬に絡まれた程度だったが。
「……何も無かったけど?」
「OK。テメェは徹底的に痛めつけてやる」
「お前たち程度で? 笑えるね」
「ハハハ! この人数を見えてねぇのか? 武器も見た所ねぇ癖に!」
嘲るように不良は言う。けれど、レイヴンにとってはひたすらに滑稽に映った。
数を揃えたから? 武器を持っていない? だからどうした。
「休日は武器を持たない主義なんだよ。それに」
この程度の逆境を跳ね返せなければそもそも
「私をこの程度で墜とせると思い上がったお前らのおめでたい思考に笑えるよ」
『ヘッドギアが無いので精度は落ちますが、弾道予測開始します!』
「ッ! 撃て撃て撃てッッ!」
レイヴンの気配が変わったことを察したのかリーダー格の叫びで一斉に手下たちが引き金を引く。
「射線かぶってるのにバカなの?」
視界に広がる深紅の線。それをなぞるように弾丸が殺到するなかで冷めた目で呟けば一息で跳躍した。
「まずは頭から潰す」
空中に踊り出れば天井を蹴りつけ、急加速した勢いを乗せて直進。進行上にいたリーダーヘルメットと硝子越しに目が合う。
驚愕に目を見開き、何かを叫んでいるが気にせずレイヴンは勢いよく右ストレートを叩き込んだ。
硬質な手応えが返ってくるが、即座に粉砕され奥にあった柔らかい頬へと突き刺さり、さらに何かを砕く感覚が感じられた。
そのまま後ろのガラクタが積み上げられた山に突っ込めば倉庫全体に埃や土煙による煙幕が広がる。
著しく視界が制限されるが、目につく全てが敵のレイヴンにとって関係ないどころか、迂闊に同士討ちの出来ないヘルメット団の動きを制限できるためメリットしかない。
赤い弾道予測線もデタラメな軌道を描き、殆どレイヴンを捉えておらず脅威に感じることも無い。
ひたすらに殴る。蹴る。転がってるヘルメット団の手足を掴んで投げつけ、又は盾にするか鈍器として使用。
倉庫内で連続して響いていた銃声は次第に殴打音と悲鳴に変わり、数分もすれば静かになっていった。
「ん、所詮は寄せ集めの雑兵」
『この程度の練度でレイヴンに戦いを挑むなんて愚かなことです』
途中から動きにくいと判断し、コートを脱ぎ捨て背中を大きく露出するセーター姿となったレイヴンは手に着いた埃を払い、僅かに息を吐く。
足元には大量のヘルメット団員たちが倒れ、完全に意識のないものや呻き声をあげる者に別れていた。
たいして疲労感はないが気分的な問題で何もする気が起きない。せっかくの最終日も台無しとなりどちらかと言うとマイナスだ。
さっさと旅館に帰り、露天風呂に使って気分を洗い流したい。そんな気持ちになりながらレイヴンは着ていた臙脂色のコートを探してると。
「んー! んー、ん────!!」
「……」
なにやら猿轡を噛まされ、手足を縛られ転がされた少女と目が合った。ついでに言えばその近くにコートも落ちていた。
「えっと、どうしよっかエア?」
『……とりあえず敵意はないようですし保護しておきましょう』
と、いうわけで時間は戻る。
拘束を解いて猿轡を外せば少女はキラキラした目でレイヴンの手を取り、聞いてもないのに自己紹介をし始めた。
「あの、私、陸八魔アルっていいます! 中学三年生の15歳です!
その、その、そのもう一度聞きますけど、貴方はあの独立傭兵レイヴンさんで合ってますよね!?」
「えっと、合ってる、けど……」
「やっぱり!!」
「あ、圧が強い……」
『*(聞くに絶えないルビコンスラング)*!!!!』
「ついでにエアがすごい荒ぶってるぅ……」
ルビコンにいた頃や、キヴォトスに来てからも、殺意という強い圧をもってこちらの
だが、この少女の圧はそれとは違うもので、なんというか、こちらの警鐘を刺激するようなものではなかった。
そのためレイヴンはどうすることも出来ず狼狽えており、オマケにそのような姿をエアが見たことがなかったので余計にエアが荒ぶってしまっている。
このままでは話が終わらないため、レイヴンは必死に言葉を選びながら少女に話しかけた。
「えっと、その、手を離して……くれると助かる、かな?」
「あ、ご、ごめんなさい!」
「ん」
『フシャァァアー!!』
最早人の言葉を失ってしまった友人にレイヴンは何も言わず、務めて意識を向けないよう努力する。
「えっと、とりあえず、ここから移動……しよう?」
「あ、そ、そうですね!」
さすがに足元で転がってる連中がいると流石に話をするのに適さない。レイヴンからの提案で、少女ことアルと共にその場を後にする。
道中もエアは荒ぶり、後でご機嫌取りしないとなと死んだ目(普段から死んでる)のレイヴンは思った。
「それで、なんでここに縛られてた、の?
アイツらの目的って私だったみたいだけど……」
手頃なカフェに入り、ロボットの店員に珈琲を頼めば話の続きということになった。
「えーっとですね……お恥ずかしい限りなんですが聞いてくれますか?」
「内容に、よる?」
「実は私はアウトローに憧れていてですね……」
「ねぇ……聞いてる? 聞いてないの?」
「それで、偶然にも今日ヘルメット団や不良グループの人たちが集まってある人物に報復をするってきいたんです」
「……聞いてないね」
レイヴンは手元の珈琲を1口飲めば顔を顰め、角砂糖を無心で入れまくる。
「アウトローに憧れてる身としてはこれは行かなきゃ! って思ってこっそりと後をついていったのはいいんですけど……」
「バレて捕まって転がってた?」
「はい……」
「バカなの?」
「あぅ!」
『ふーん、短絡的な行動するから痛い目みるんですよ。おバカですね!』
レイヴンからのツッコミを受けアルが胸を抑えて呻けば、少しだけ気分が良くなったのかエアが続くように囃し立てる。
「で、でも! こうして貴方に会えました! それだけで私にとってはお釣りが来るんです!!」
『あ、また手を! いい加減にしてください!』
「あ、うん……さっき言ってたよね、ファンだって」
「はい! 数は少ないですけど出てきた記事とか動画を何度も見返してるくらい熱中してます!
お陰ですぐに貴方が本人だってわかりましたから!
あの人数差で物怖じせずに啖呵を切るところとか、すごい体捌きで銃を使わずにバッタバッタとなぎ倒していく様は本当に凄かったです!! 感動しちゃいました!」
『ニワカですけど、わかってますね貴方!
どの姿のレイヴンもいいですが、戦ってる姿が凄くいいんですよ!』
「情緒大丈夫?」
友人の手のひらの返しようが凄くて思わずレイヴンは突っ込んでしまう。
ついでに言えばエアの声はアルには届いていない。
「あの、それでなんですがどうやったら貴方みたいになれますか!?」
「なんて?」
「私、レイヴンさんみたいにアウトローになりたいんです!」
「えぇ……」
『素人は黙っててください。レイヴンみたいになるなんて無理に決まってるでしょう!』
ゲヘナでは珍しいくらいマトモそうな子とは思っていたが、普通にぶっ飛んだことを言い放つアルに、レイヴンは聞き間違いかと思いたかったがそんなことは無かった。
自分みたいになりたいって言うのはつまり、企業をぶっ潰して惑星封鎖機構もぶちのめすってことだろうか?
普通に無理だろ。レイヴンはそう思って言おうと思ったが、キラキラと混じりっけなしの尊敬の視線を向けられ出かけた言葉がつっかえてしまう。
何度か言おうか迷った後に、ようやく絞り出した言葉は。
「えっと……応援してる、よ?」
『……レイヴン』
そんな当たり障りないものだった。
エアからの呆れたような言葉に何も返せず、飽和液状態の珈琲を飲んで視線を逸らす。
ピコン
突然電子音が聞こえてくる。レイヴンは自分の端末を取り出すが通知は来ていない。ということは。
「わっ、知らないうちにこんなに通知が来てる!? しかもムツキからだ!!」
「知り合い?」
「幼なじみなんです! 多分連絡つかなかったから心配してるのかも……」
「じゃあ、行かないとね」
「はい。あの、今日は本当にありがとうございました! 今度会った時、絶対にお礼をさせてください!!」
「ん……あ、ちょっと待って」
席を立って店を出ようとしたアルをレイヴンは引き止める。
「? なんですかレイヴンさん」
「これ、あげるよ」
レイヴンは畳んでいた臙脂色のコートを彼女に渡す。
突然のことに目を白黒させるアルにレイヴンは言った。
「アウトローになるなら形から……ってね。
君がアウトローになった姿、楽しみにしてるから」
「……っ〜! あ、あ、ありがとうございます!! 絶対にこのコートに相応しいアウトローになってみせます!」
満面の笑みを浮かべ、大きく手を振る少女にレイヴンはその背が見えなくなるまで小さく手を振り返す。
そして、彼女の背が見えなくなった頃でエアがレイヴンに話しかける。
『……レイヴン、良さそうな理由をつけてコートを渡しましたが、汚れたアレを洗濯するのが面倒くさかっただけですよね?』
「ん。デザインもあんまり好みじゃなかったからちょうど良かった」
『はぁ……とんだ旅行になりましたね』
「ん。温泉に入って休もう」
続きません。けど、感想と評価は待ってます。
どうでも良い人物紹介
・一般ゲヘナ風紀委員
謎の銀髪ゲヘナ生を護送した風紀委員の人。ゲヘナ2年生。
よくそのゲヘナ生を担当することが多いために、ほぼほぼ問題を起こしたらその生徒の相手をすることになる不憫な人。この人の作るカツ丼が美味しく、それ目当てでテロを起こされてる時もある。
割と強く、卒業するまでは某テロリスト集団とドンパチやってた。
・ヘルメット団リーダー
お忍び旅行のレイヴンに絡んでボコされた人。
なお、レイヴンの正体は分かっておらず滅茶苦茶強い観光客としかわかってない。