Blue Archive ─To raven.Welcome to the kivotos.─   作:タロ芋

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続きました。見てくださいACVIと同じ6話ですよ。やりましたね。
なんだかすごい閲覧数が増えてました。嬉しい限りですね。
あと感想欄ですっごい騙して悪いがが人気で笑いましたね。
今回の話ですがネル好きの人には申し訳ないです


6

 かなり昔に放棄された工場跡地。建造物のいくつかは雨風に晒され、錆びて朽ちていた。

 人気のなさや時間帯特有の暗さも相まってナニかが出てきそう。そんな雰囲気が感じられ普通の感性を持つ一般人なら近寄ることすらしないだろう。もしいるというのならそれはスケバンやヘルメット団のような所謂不良のレッテルを貼られた連中だけだ。

 

 しかし、今は良い子どころか悪い子も寝静まる時間帯でその工場跡地には些か以上に不似合いな格好をした少女たちがいた。

 

 その姿は一言で表すならメイドさんだった。

 エプロンドレスを纏い、頭にはホワイトブリムを付けた眉目秀麗の少女たち。手には箒やモップを持ってどこかの屋敷にいればそれだけで1枚の絵画になるだろうメイドたちがそこにいる。

 

 といっても、場所は深夜の工場跡地で手に持ってるのは箒やモップなんかよりもよっぽど物騒な銃火器なのだが。

 彼女たちはミレニアムが誇る特殊部隊C&Cの隊員たちで、現在はとある独立傭兵の排除の任を帯びて工場跡地にやってきていた。

 

「こちら03、指定ポイントに到着。狙撃体勢を維持」

 

 一際大きな建物の屋上で大型の狙撃銃を構えたメイドがインカムを小突く。

 

『04も現着。砲撃待機します』

 

『00も到着したぜ先輩方』

 

『はいはーい、私も到着したよ〜!』

 

『02了解。……各員配置に着きましたね。では、目標(ターゲット)が来たら作戦通り03の狙撃の後に04の砲撃を。

 それで仕留めきれなければ残りのメンバーが突撃し、目標を撃破します。いいですね?』

 

「『『『了解』』』」

 

 02(リーダー)からの確認にメンバーたちは答え、通信を終えた。

 今回の任務はカイザーインダストリーが開発した新兵器を奪取した傭兵の撃破と兵器の破壊か回収という内容だった。

 

 いつも通り自分と04が初撃を叩き込み、残りのメンバーが突撃して終わり。楽な任務だと。

 

 狙撃ポイントに待機してから数分経ち、件の傭兵が現れ03はスコープを覗き込んだ。

 

『わー、ほんとに全身真っ黒なんだね』

 

『かっけぇ……』

 

『00、01静かに、任務中ですよ。03、04用意はいいですか?』

 

「こちら03、あと少しで有効射程圏内です」

 

『こちら04、同じくもう少しです』

 

『分かりました。目標が射程圏内に入れば攻撃を』

 

「『了解』」

 

 全身黒づくめの傭兵が1歩ずつ進む。03は慣れたように照準を合わせ、引き金に指を添えて時を待つ。

 

 1歩、また1歩。ゆっくりと傭兵が断頭台に登ってくる。

 そして、あと一歩のところでという距離で唐突に傭兵は動きを止めた。

 

「っ、気づかれた?」

 

『いえ、そのはずはありません……。我々の潜伏は完璧です』

 

『普通に突っ込んでも良くねぇか?』

 

『私もネルちゃんにさんせーい』

 

『どうしますリーダー?』

 

『……作戦に変更はありません。先程も言った通りです』

 

「『了解』」

 

『……りょーかい』

 

『はーい』

 

 02からの指示に03と04は了承するが、後輩の一年たちはどこか不満げだった。

 その様子に苦笑しつつ、03はスコープを覗き直し……息を呑む。

 

 スコープの中に大きな銃口をこちらに向けている傭兵の姿が。

 最後に銃口の奥で炸薬する光が見えた後にとてつもない閃光と衝撃。03の意識はそこで途切れた。

 

 

 

 

 

「思ったより反動が強いね。腕が痺れてる」

 

『あくまでもACで使われていた武器を再現したものですからね。本来なら人間が使うことなど想定をしていませんし仕方ないでしょう』

 

 レイヴンは左右の手で一丁ずつ別の方向へ構えていたデトネーティングバズーカ『44-141 JVLN ALPHA』を地面に落とした。

 ゴトリと音を立てて転がる武器には一瞥もくれず、レイヴンは両大腿部のホルスターからマシンガン『MG-014 LUDLOW(ラドロー)』を引き抜き、安全装置を外した。

 

「残り3人。とっとと終わらせよう」

 

『ええ。彼女たちも痛い目に遭うくらい想定内でしょうからね』

 

 レイヴンは体を沈み込ませ、跳躍。

 コンテナ目掛けて落下の勢いを乗せた踵落としを叩き込んだ。

 

 ガォンッ!! 

 

 凄まじいほどの轟音。コンテナは半ばからひしゃげて粉砕され周囲を土煙が視界を奪う。

 

 そして程なくして土煙を引き裂き中から現れたのは、体をくの字に折ったバリスティックシールドを構えたクラシカルなメイド服の女と、そのバリスティックシールドをぶち破って蹴りを叩き込んでいるレイヴンの2人だった。

 

「フンッ」

 

 ミシミシとメイドの体内から嫌な音が響くのを足の感触越しに感じながら息を吐いてレイヴンは足を蹴り抜く。

 

「ゴッ……アッ……!!?」

 

 体内の空気全てを吐き出され、メイドはボールのように蹴り飛ばされ幾つもの壁を巻き込んで工場の奥へ消えていった。

 

「3人目。次はっ───と」

 

 着地し、次の目標へと視線を向けようとしたが中断して身体をそらす。

 瓦礫に弾痕が作られ、レイヴンは下手人へと視線を向けた。

 

 自分に対して敵意の籠った視線で射抜き、両手に握られた龍の紋様の刻まれたマシンガンを構える目付きの鋭いメイド服の上にスカジャンを羽織った少女がそこにはいた。

 

『レイヴン、恐らく彼女がコールサイン00です』

 

「ん。なんでメイド服なんだろうね?」

 

『恐らくは相手を油断させ攪乱するための衣装と推測します。流石は特殊部隊……動きにくいだけの衣装を平然と着こなすなんて我々の予想を簡単に超えてきますね。

 でなければあんな馬鹿みたいな格好をするはずがありません』

 

「なるほど。……なるほど?」

 

 なんだか違うような気もするがきっと深い意味があるのだろう、レイヴンはそう思うことにした。だってエアがそう言ってるんだし。

 そんな気の抜ける会話を繰り広げつつ、レイヴンは目の前の障害を排除するための行動を再開、ラドラーを構え、発砲した。

 

「ッ……! チィッ!」

 

 目の前で仲間3人を1分と経たずにやられたと言うのに、目の前のメイドは即座に回避行動をとれたのは優秀な証だろう。

 ジグザグに走行し、レイヴンに狙いを定めさせないよう立ち回り、弾丸を避けながら反撃のために龍の紋様を刻まれた二丁のサブマシンガンの引き金を引く。

 

『レイヴン、敵はまだ1人残っています。意識を目の前だけに向けることなく対応してください』

 

「ん、人数不利なのはいつもの事」

 

「独り言だァ随分余裕だなぁ! 独立傭兵!!」

 

「あの程度でやられるんだから仕方ないね」

 

「アァ!?」

 

「? 事実でしょ?」

 

「ぶっ殺す!!」

 

『短気な人ですね』

 

 レイヴンの放った事実にメイドは何故か青筋を浮かべ、攻撃が苛烈さを増してくる。

 縦横無尽に駆け回り、レイヴンを囲うように銃弾の包囲網を形成。

 

『速度だけならレイヴンよりも上でしょうか?』

 

「ん。小さいからすばしっこい」

 

「誰がチビだとテメェ!?」

 

「なんで怒ってるの?」

 

 避けれるものなら避け、当たりそうなものは腕や最小限の動きで被弾を抑えてダメージを小さくする。

 もちろん、レイヴンも反撃を行いメイドの退路を妨害するように射撃を置くことでダメージを与えていく。

 

 少しづつ弾道を修正し、その都度レイヴンはメイドの動きに対応し続ける。

 

「(チッ! こいつ、対応力が今まで戦ってきた連中よりも高ェ! 

 さっきまで当たってなかったはずの動きでさえ当て始めてきやがったッ!!)」

 

 コールサイン00ことネルは自分が今相対している存在に戦慄を隠せなかった。

 自分がC&Cに所属しそれなりに時間が経っているが、その間に自分が遂行した任務はほとんど何の苦もなく遂行してきた。

 先輩たちですら自分の戦闘能力には及ばず、約束された勝利の証である00を与えられていることに、ネルは所謂、調子に乗っていたのだ。

 

 今回の任務も自分が前に出て他のメンバーが援護して終わりだと思っていたのに、現在はどうだ? 

 先手は相手に取られた挙句2人を即座に落とされ、目の前で02も撃破された。

 今は3人の回収に向かっている01(アスナ)が来るまでの辛抱とはいえ、こうして戦っているというのに向こうは自分を完全に舐め腐った様子だ。怒りで頭が逆に冴えるタイプのネルからしても、その怒りで思考が埋まりかけてしまう。

 そんな折。

 

「……ん、だいたい分かった」

 

 ふと、レイヴンが呟けば姿が消えた。

 

「ッ、どこ行きやが────なっ!?」

 

 何かが足を打ち据え、体勢を崩されて体が宙を舞う。

 ネルが何事かと思い視線をめぐらせれば事情を察した。自分よりも低く、地面スレスレにまで体を低くして足払いの体勢のレイヴンを捉えたのだ。

 

「こ……のォっ!!」

 

「無駄」

 

 スローになる光景でなんとか腕を動かした引き金を引こうとするが、無慈悲にレイヴンの右拳がネルの体躯を貫く。

 早く、鋭く、重い一撃は抵抗すら許さずネルを地面と縫いつけた。

 

「ガッッ…………!?」

 

 コンクリートの地面が僅かに陥没し、放射状にひび割れる。

 喉奥から錆臭い感覚がせり上がり、吐き出せばレイヴンの外套に赤い彩りが加わった。

 

「おやすみ。もう二度と会わないだろうけど」

 

 ほとんど意識のないネルが見た光景は、自分を見下ろし、銃口を向けた鴉の姿。

 閃光が瞬き、ネルの意識は容易く暗闇に沈む。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふー、いくらあのレイヴンだろうとC&Cとの連戦に大隊規模に展開された部隊を前にすればすり潰されるだろう」

 

 カイザーインダストリー本社の社長室。窓際に置かれた高級デスクチェアに座り、最高級無添加オイルをグラスに注いで香りを堪能するオートマトンがいた。

 彼はカイザーインダストリー理事。カイザーコーポレーション系列企業のカイザーインダストリーの代表取締役だ。

 

 そして、今回の騒動の原因でもある。

 事の顛末はこうだ、ココ最近カイザーコーポレーションの業績が悪化しており、原因を調べれば他企業や勢力の依頼を受けて様々な妨害を行っていた傭兵がいたのだ。

 それこそココ最近名の売れてきた独立傭兵レイヴン。

 傭兵なら金さえ積めば簡単に自分の陣営に引き込めると思うだろうが、レイヴンはその異名通り様々な陣営から無差別に節操なく依頼を引き受けている。

 

 本社はそれを知り、引き込むにはリスクが高いと判断。排除することに決めた。

 そのために下準備を行い、レイヴンに偽りの依頼を出し、ミレニアムに情報を流し争わせた。

 そして、疲弊したところを後詰めとしてカイザーの保有する傭兵や部隊で強襲。撃破。

 

 レイヴンを仕留められれば良し。ついでにミレニアムの戦力も削ぐことが出来る一石二鳥の計画だ。

 ついでにゴリアテの性能試験もできるし正に楽な仕事と言えるだろう。

 

 本社からの査定が楽しみだ、そう言わんばかりに夜景を肴にしてグラスに注がれたオイルを飲もうとカイザーインダストリー理事は傾けた直後。

 

 ドォォォォォォン……!! 

 

「な、なにごとだぁ!!?」

 

 工場の一角が爆発し、衝撃に理事はひっくり返る。

 グラスからこぼれたオイルがスーツを汚してしまったが、それに気づかずに理事は窓に張り付いて声を張り上げた。

 

「し、失礼します!!」

 

 すると、社長室の扉が乱雑に開かれ外から部下の職員が泡を食ったように入ってきた。

 

「なんだ! 何が起きたんだ!? 説明しろ!!」

 

「れ、れ……!」

 

「れ、なんだ!?」

 

「レイヴンです! やつです! あのカラスが来ました!!」

 

「な、なにぃぃぁ!!?」

 

 職員の簡潔な説明に理事は電子回路がヒートするほどの驚愕を受けた。

 

「有り得んぞ!! いくら手練であっても学園の精鋭部隊を相手にした後に大隊規模の部隊と戦ったんだぞ!?」

 

「ですが、こうして来てるのが事実です! どうしますか!?」

 

「決まっておるだろうバカモノ!! 迎撃、迎撃だー!! 

 PMCのやつにも応援を頼め!!」

 

「は、はい! 了解しました!!」

 

「クソッ、クソッ、どういう訳だ!? 部隊は全滅したのか!? ならば連絡くらい来るだろうに!」

 

 部下が部屋から走って出ていけば理事は手早く逃げる準備を始める。

 普通だったら連戦に次ぐ連戦で疲労しているのだから、畳み掛けて椅子にふんぞり返って報告を待つというのが組織のボスとしてあるあるだ。

 しかし、この理事は人一倍自己保身と危機管理能力が高かった。

 上層部に媚びへつらい、立場の弱い上司や頭角を現してきた同僚や後輩を蹴落とし、自分の株をあげるためにやりたくも無い現場仕事を行って部下からの信用も得た。

 使えないやつは自分の手を使わずにあの手この手で辞めさせたりもした。

 

 権力闘争も媚びたおかげで得たコネクションや危機管理能力で生き延び、努力してこの地位を手に入れたのだ。

 

 だが、その危機管理能力が警鐘をガンガン鳴らしている。それはもう過去一で。

 今の地位は惜しい。行きつけの超高級クラブ『Cradle』の超人気嬢の『リリウム』ちゃんと会えなくなるなんて想像したら涙が止まらなくなってしまう。

 

 けれど、命あっての物種だ。本当に、本ッッッッッ当に心苦しいがここで死ねばリリウムちゃんと会えなくなってしまう。

 

 既に大規模な部隊を投入して失敗した挙句工場に襲撃されていることから、例え無事に生き残っても良くて平社員に降格。悪くてキヴォトス湾にドラム缶に詰められて沈められるだろう。

 幸いにも個人で幾つにも分けて保管してある資産や別企業でのコネクションを用いれば、多少は落ちるが殆ど変わりない地位を手に入れることが出来る。

 

 元々そこまでカイザーに思い入れもある訳では無い。理事は端末を操作してすぐに裏手に脱出用のヘリを回すよう社内電話を操作しようとしたが。

 

「な、なぜ繋がらんのだ!?」

 

 何度も受話器を取り、ボタンを押せどもビジートーンが聞こえてくるのみ。

 理事の焦りは加速していく。仕方なく理事は外に出てヘリポートへと向かおうと扉に手をかけるが。

 

「あ、開かない!?」

 

『何をしようとしても無駄ですよ。カイザーインダストリー理事?』

 

「ッ、だ、誰だ!!」

 

 唐突に女の声が聞こえ、理事は肩を跳ねて振り返る。

 音の出処はどうやら電話の出力スピーカーからだった。

 

『おや、自己紹介がまだでしたね。私は独立傭兵レイヴンの頼れるオペレーターです。

 話は戻しますが周囲一帯の通信回線は私が封鎖させていただきました。もちろん、カイザーPMCに応援を寄越されないようにダミー情報を送っていますよ』

 

 どこまでも穏やかな声。けれど、言ってる内容は何一つ安心できない。

 

「こ、こんなことをしてタダで済むと思っているのか!? 

 たかが独立傭兵くらい、カイザーの力を持ってすれば!!」

 

 苦し紛れの脅しをかけるが、返ってくるのは失笑を隠そうとしない言葉だった。

 

『何か勘違いをしているようですね。先にこちらに対して害意を向けたのは貴方がたでしょうに。

 それに、契約事項にも書いていたはずですよ。

『依頼内容の不備、もしくは故意によりこちら側に損害があった場合、報復を行う』……と。

 虚偽の依頼に加え、学園の特殊部隊をけしかけた挙句に大隊規模での襲撃…………言い逃れは許しません』

 

 一際大きな爆発が轟けば、ナニカが窓を突き破ってくる。

 

「ご、ゴリアテの頭!?」

 

 巨大な砲門のソレはゴリアテの頭部にあたるパーツだった。

 接続部は乱雑に引きちぎられたかのような跡があり、砲門は半ばからひしゃげて折れている。

 理事はその場でへたり込み、震え出した。

 

『落とし前はつけさせてもらいますよ、カイザーインダストリー理事』

 

 無慈悲な宣告が下されれば、パキリと砕ける音が聞こえる。

 錆びたブリキ人形のように軋んだ首を動かせば自分にとっての死神がそこにはいた。

 

 全身を黒い外套で覆い、同色の漆黒の翼を広げた鴉が。

 

「ヒ、ヒィッ!?」

 

 腕で這いつくばり、部屋の隅へと逃げる理事とそれをゆっくりと追いかけるレイヴン。

 床に転がる本や瓦礫を投げてなけなしの抵抗をするが殆ど意味をなさず、遂には壁際に追い込まれてしまう。

 

「ま、待ってくれ!! 虚偽の依頼を出したことは謝罪する!! この通りだ済まない!! 

 私は所詮雇われ!! 上からやれと言われたら拒否できないことは知ってるだろう!?」

 

「……」

 

「や、やめろ! 無言で銃を押し付けるな!? いいのか!? このまま殺ってしまえばお前らは赤字ではないのか!?」

 

「ん…………」

 

 理事の言葉にレイヴンは僅かに動きを停めた。

 それを見て理事は凄まじい勢いで演算回路を稼働させ、ペラペラと自己保身のための美辞麗句を捲したてる。

 

「私はカイザーコーポレーションの中でもかなりの市場規模をプレジデントより預かっている身だ。ともすれば、お前たちの損失を容易く埋めるほどの額を用意することが可能だ。

 このまま見逃してくれる……というのならば悪いようにはしない。どうだ? 悪くない取引きだろう!? 

 も、もちろん本社にはお前たちに襲われたという報告はしない!」

 

『レイヴン、どうしますか? 私は貴方の指示に従います』

 

「ん……」

 

 理事からの取引に暫しレイヴンは悩んだ素振りを見せる。

 1秒、1分。理事にとって永遠とも言える時間。その間は生きた心地がしなかった。

 そうして、レイヴンが動き出す。懐から端末を取りだしたナニかを操作すれば画面を理事に向けて出してきたのだ。

 

「こ、ここに振り込めということか……?」

 

「ん……」

 

「す、素晴らしい!! 道理を弁えているようだな! 

 すぐに入力しようとも! プレジデントは大変お喜びになるだろうとも。

 お前たちには褒賞が下るぞ!」

 

 見逃された、理事は見るからに安堵すれば端末を操作して表示された膨大な金額を一括送金。

 この程度の端金で生き残れるのならお釣りが来る。

 

 震える手で素早く操作を終えれば、きちんと振り込まれたかレイヴンは確認して端末を懐に戻した。

 

「で、ではこれで失礼させてもらおう! お前たちはこれからもカイザーと良好な関係を築くよう努力を────

 

 パンッパンッパンッ!!! 

 

「ぇあ……?」

 

 理事は気の抜けた声を出し、視線を胴体に向けた。

 幾つもの風穴が作られ、バチバチと火花が飛び散り四散する。

 今度は視線を上げてみればレイヴンの無機質な赤い瞳と、掲げた手には硝煙が登る龍の紋様のされたサブマシンガンが握られているのが見えた。

 

「お、おまえ……なにを…………」

 

『レイヴン、入力された情報から紐づけられた各種口座を確認。全ての預金を回収出来ましたよ』

 

「ありがとうエア。……そういう事だから用済み、ね?」

 

「ど、どんな教育を受け─────」

 

 理事が最後まで言い終えぬうちにレイヴンは引き金を引く。

 マガジン内に残された弾丸を撃ち尽くせば完全に機能を停止したオートマトンが床に倒れ込む。

 

「じゃあ、帰ろっか」

 

『そうですねレイヴン。今日はゆっくりと休みましょう』

 

 銃を投げ捨て、レイヴンは部屋の扉を開けてその場を後にした。

 

 

 

 次の日、クロノスジャーナリズムスクールの報道するニュース番組では昨日未明、カイザーコーポレーション系列企業のカイザーインダストリー本社で原因不明の爆発事故が起こったこと。

 匿名のタレコミでカイザーグループの幾つもの不祥事が発覚したことが全区で流れることとなる。

 

「エア、サメがトルネードで打ち上げられてるよ?」

 

『興味深いですねレイヴン。続編もあるみたいだから見てみましょう』

 

「…………」

 

 とある独立傭兵はそんなことは知らず、友人と呑気に映画を見てるのであった。




見逃されると思った?残念。そんな慈悲はありません。
感想、評価をまってます。



追記、どうでもいいキャラ紹介
・コールサイン02
ネルとアスナの先輩にあたるミレニアム3年生の現C&Cのリーダー。
左手にシールドに右手にショットガン『MAG-7』のカスタムしたものをつかっているヴィクトリアスタイルのメイド服にメガネを付けた人。
マニュアル人間というやつで型にハマれば強いけど想定外にめちゃくちゃ弱いところがある。今回は相手が悪すぎた。多分二度と出てこない
戦闘スタイルは盾で受け止めて要所要所で反撃する堅実な戦い方。ネルですら防御を抜くのには一苦労するくらいには強い。けど、レイヴンに一撃でぶち抜かれた模様。
仕事終わりにビールを一気するのが似合うOLみたいなイメージ。

・コールサイン03
ネルとアスナの先輩の後方支援担当のミレニアム2年生。
使用する武器はWz.35対戦車ライフル。
出オチ担当。多分二度と出てこない

・コールサイン04
ネルとアスナの先輩。03と同じく後方支援担当のミレニアム2年生。
使用する武器は迫撃砲。
出オチ担当。多分二度と出てこない。
03と違って弾幕大好きってどうでもいい設定がある。

・カイザーインダストリー理事
今回の命乞い枠。元ネタはもちろんみんな大好きスウィンバーン。
レイヴンに依頼の概要を説明したのはこいつの部下。
超高級クラブ『Cradle』の超人気嬢の『リリウム』ちゃんが大好きで今度外泊(デート)する予定だった。尚、二度と来ない模様。
騙して悪いがするってことはされても文句言えねぇーよなー!?

・リリウムちゃん
超高級クラブ『Cradle』の超人気嬢でクールな性格が特徴。
元ネタなみんな大好きACfaのリリウム・ウォルコット。カイザーグループ上層部の大体が貢いでる。
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