Blue Archive ─To raven.Welcome to the kivotos.─   作:タロ芋

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続きました。日刊10位にのってましたね。・・・・・マジ?
たくさんの高評価感謝です。楽しみにしてくれる方々がいるのなら幸いです



5

 ミレニアムサイエンススクール本校舎の屋上。風車が置かれ、風の力によってモーターが回り大きな風車が回る光景を床に寝そべりながら見ていた少女がいた。

 短く切り揃えられた赤みがかった橙の髪。強い意志を宿したツリ目な瞳。八重歯の見える小さな口。

 何処と無く猫のような雰囲気に、細く華奢な体格を包むのはミレニアムの校風とは不似いなメイド服とスカジャンだった。

 着崩され、胸元が見える少々だらしの無い格好だが何故か不思議とその少女とはマッチしているようにも見える。

 

 少女がそのまま昼寝をしようかと思っていれば。

 

「ネールーちゃん!」

 

 そんな元気な声が聞こえてくる。少女は気怠げな視線を向ける。

 そこにはアッシュグレー長髪に青色の瞳のツリ目の蠱惑的な笑みを携えたグラマラスな体つきの自分と同じようにメイド服を着た女生徒がいた。

 

「んだよ、アスナ。なんか用か?」

 

「うん! お仕事の時間だってさ! ブリーフィングはさっき終わったところだけどねー。

 先輩たち怒ってたよ?」

 

「別にアタシにゃ必要ねーだろ。敵を倒してはい終わり。みたいな内容だろどうせ?」

 

「せいかーい。詳しく言えば、どこかの企業がなんだか危ない兵器を作ったのはいいんだけど傭兵さんに奪われちゃったみたいだよ〜」

 

「はぁ? んだそりゃアホすぎだろ」

 

「だよね〜。それで私たちにおハチが回ってきたみたい」

 

「ほーん……。つまりあれか? 傭兵に奪われた兵器をあわよくばアタシらが回収か破壊。そして傭兵の撃破か」

 

「そうそう。1時間後に出発らしいから準備しておこう!」

 

「へーへー」

 

 ネルは勢いを乗せて飛び跳ね立ち上がり、勝気な笑みを浮かべて歩み出す。

 彼女の所属する部活の名は『Cleaning&Clearing』略して『C&C』

 ミレニアムサイエンススクール内で凄腕のエージェントたちが所属し、学園の害となるものを秘密裏に排除する組織だ。

 そして、2人はその組織の中でも若年でありながら戦闘能力だけで言えば既に先達を超えている。

 片方は約束された勝利の証であるコールサイン『OO(ダブルオー)』を与えられた小さき暴君『美甘ネル』。

 片方は類稀な直感を持ち、それを活かした戦闘能力はネルと勝るとも劣らない、コールサイン『01』を与えられた『一ノ瀬アスナ』。

 

「んで、その兵器を奪った傭兵の名前は分かってんのか?」

 

「えーとねー。確か〜……」

 

 アスナは顎に指を添え、記憶を掘り出す。

 

「『レイヴン』! 独立傭兵レイヴンだよ!」

 

「聞いたことねぇな。どーせ木っ端だろ?」

 

「それはどうだろーねー。先輩たちが言うにはココ最近すっごい活躍してる有名人らしいよ?」

 

「ハッ! じょーとーだ。アタシがボッコボコにしてやるよ」

 

 獰猛に笑い、ネルはまだ見ぬ敵に戦意を滾らせる。

 どんな相手だろうと真正面から食い破るだけだ。

 

 そして、ネルはその存在を記憶に強く刻まれることになる。

 これから先、任務の先々で遭遇し辛酸を舐めさせられ続ける、漆黒の翼で戦場を舞う渡り鴉の姿を。

 

 

 

 〇

 

 

 拠点でもある輸送ヘリの生活スペース兼ガレージで、レイヴンは装備の最終確認をしていた。

 全身に艶消しの装甲の取り付けられたプロテクターを纏い、至る箇所に銃器やマガジンをマウントしていく。

 

 そんな折、

 

『レイヴン、もうすぐでミッションポイントに到着します』

 

 エアからの交信にレイヴンは作業の手を止めずに答える。

 

「ん、わかった」

 

『……最後にもう一度ミッション内容を復唱しておきますか?』

 

「お願い」

 

『わかりました。では、依頼主はカイザーコーポレーション系列兵器製造企業カイザーインダストリー。

 内容は本社の諜報部門が依頼主の制作した新兵器、移動型砲撃機ゴリアテをどこかの学園が奪取のため特殊部隊が襲撃をかけることを察知。それをさせない為に移送の護衛です。

 本来なら同じく系列企業のカイザーPMCが護衛をするはずでしたが、諸事情で徴用されるはずだった部隊が壊滅する事態に陥りました。……ついこの間レイヴンの受けた襲撃依頼の目標がカイザーPMCというのは関係ないでしょう。

 コホン、とにかくカイザーインダストリーは急遽護衛要員を確保するために傭兵を雇うことを決めたようです。

 そのメンバーは貴方を含めたいくつかの傭兵団が凡そ中隊規模まで雇用されています。

 貴方の割り当てられた仕事はゴリアテの格納されているコンテナの最終防衛ラインの死守です。なにか気になることはありますか?』

 

「襲ってくる特殊部隊の情報はないの?」

 

『ご安心ください。既に私から問い合わせて企業側から情報の提供をしてもらっています』

 

 エアが言えば、視界内にいくつかの資料が表示される。

 

『ミレニアムサイエンススクール所属の特殊部隊Cleaning&Clearing。略してC&C。

 構成人数は年によって変わりますが大体が4人から5人程。

 メンバーたちは学園の選りすぐりの実力者が選ばれ、裏の世界で『掃除屋』の異名で呼ばれているようです』

 

 ミレニアム学園のロゴの隣にM16を携えたメイドの横顔のロゴが現れ、ブレの酷い画像が添付された。

 

『ミレニアムの情報規制が厳しく、メンバーの詳細情報まではカイザー側も把握出来ていなかったようですが、唯一要注意人物としてコールサインOOとコールサイン01のシルエットのみ手に入れることが出来ました』

 

 2枚の画像とコールサインが表示される。

 小柄なシルエットに00が。長身のシルエットに01が。

 

『00の使用する武器は戦闘後に回収された薬莢の口径からサブマシンガン。01はアサルトライフル。どちらも近、中距離を間合いとしているようですね。

 ……今回の依頼はあくまでも目的地までの護衛です。レイヴンの配置された場所は先にも言った通り最終防衛ラインですから、例え突破されたとしても敵は酷く消耗していることでしょう』

 

「ん。でも、油断する理由にはならない」

 

『その通りです。サポートの用意は万全に済ませていますから安心してくださいね』

 

「ん、信頼してるよ」

 

 ハンガーラックにかけていたフードの着いた丈の長い外套を手に取り、袖を通して羽織る。

 机の上に置かれていたヘッドギアを掴んで頭に嵌め、位置を微調整した後に固定すれば目元を覆っていたバイザーが稼働して後頭部に移動。下ろしていたフードを被れば姿見に映る姿はすっかり名の知れた独立傭兵レイヴンだった。

 

 程なくしてガレージ内に振動が走り、ローターの回る音が聞こえなくなったことから目的地に到着したことをレイヴンは察する。

 

「よし、行こう」

 

 ガレージの扉が開けば外に出るとひんやりとした空気が頬を撫でた。

 時刻は深夜、空には無数の星々が瞬き天高く月が妖しく夜道を照らす。

 

「エア、ステルスを起動して」

 

『了解しました』

 

 事前に周囲をスキャンして敵影がないとはいえ念には念を入れ、ヘリに備え付けられているステルス迷彩機能を使用しておく。

 ヘリの装甲表面で微かに電気が走れば端から空気に解けるように風景と同化し、ものの数秒でその場にはなんてことの無い荒野が広がっているだけだった。

 

『合流ポイントにマーキングをしました。開始時刻まであと少しですから少し急ぎましょう』

 

「ん、わかった」

 

 踵を返し、レイヴンは目的地に向けて走り出す。

 

『……今回の依頼ですが不可解な点がいくつかあります』

 

 道中進んでる中、ふとエアがそう零す。

 

「……やっぱり?」

 

『ええ。いくら護衛を行うはずだった部隊が壊滅したとはいえ、カイザーコーポレーションの規模ならばすぐにカバーが可能なはずです。

 だというのに、何故外様の傭兵を雇う必要があるのでしょう……。それも複数の傭兵団を……です。

 それでは連携や情報伝達などのミスの懸念が多くあります』

 

「ん。それもそうだね」

 

『それに、新兵器とは言っていますが、渡されたゴリアテの図面から読み取った限り目新しい技術が使われた気配はありません』

 

 エアの疑問にレイヴンは同意を示す。

 彼女の言うとおり、この依頼には不可解な点が多い。

 まず、傭兵を護衛に雇うという点だ。

 よっぽど切羽詰まるほど人員が不足しているならまだしも、カイザーコーポレーションは評判はともかくキヴォトス内で最大手といえる企業で、それを行うという時点で怪しさ満点だ。

 

 次に兵器にこれだけの熱量を注ぐ理由だ。

 ゴリアテはたしかに強力な兵器と言えよう。だが、エアの言った通りゴリアテは既存の兵器のアップデートを行った程度の性能でこんな規模など些か過剰ともいえる。

 

 さらにもう1つ。これを狙うのがミレニアムサイエンススクールである点だ。

 レイヴンはあまり詳しくは無いが、ミレニアムはキヴォトス随一の科学力をウリとした学園だ。

 あのヘリを使っている身からすれば、その技術力の高さからゴリアテ程度の兵器くらい自前で作れそうなものだというのに。

 わざわざ秘蔵の特殊部隊を使うという理由が思い浮かばないのだ。

 

『……レイヴン、警戒は怠らないように』

 

「ん。元からそのつもりだよ」

 

 エアからの警告にレイヴンは頷く。

 どんな依頼にも想定外の事態はつきものだ。それが故意か偶然なものかは別として。

 もし、害意を持ってくるのなら真正面から食い破り、舐めた真似をしてくれた愚か者の喉仏を引き裂いてやるだけだ。

 

 程なくしてレイヴンはカイザーインダストリーから教えられた合流地点の工場跡地にたどり着く。

 

「…………エア」

 

『ええ。人の気配がありません』

 

 目の前にある、光のない、打ち捨てられ朽ちかけたなにかの工場を見て、レイヴンはフードの奥で目を細めた。

 警戒度を跳ね上げ、レイヴンは何度か逡巡した後にゆっくりと歩み出す。

 

 敷地内には本来なら護衛を行う部隊がひとつも見えず、話し声も聞こえず、ただレイヴンの立てる小さな足音が木霊するのみ。

 空から降り注ぐ月光が陰影を強調し、余計な圧迫感を与えてくるが、レイヴンは気にした様子もなくポイントへと進んだ。

 

 ポイントにはすぐに到着した。そこはいくつかのコンテナや打ち捨てられたフォークリフトが置かれ、護衛対象のゴリアテも無ければ傭兵一人いない。

 

「……エア」

 

『レーダーを最大出力で使用します』

 

 レイヴンを中心にオレンジの波紋が広がる。

 視界に投影された立体地図に自分を囲うように光点が表示された。

 その数は5つ。高台のちょうど射線が通る位置に2つあり、自分を狙っているのは明白だ。

 

『…………どうやらカイザーは虚偽の依頼を出したみたいですね。レイヴン、どうやらカイザーは私たちと遊びたいみたいです』

 

 冷えきったエアの声が聞こえる。

 小粋なジョークを交えるくらいには愉快な気持ちになっているらしい。

 

「ん、とっとと終わらせてお礼しに行こっか」

 

 後頭部のバイザーが稼働し、目元を覆う。

 同時に懐から引き抜いたソレの引き金を引く。

 

 ドォンッ!!! 

 

 両腕に凄まじい反動が伝わり、銃口からは砲弾が吐き出され飛んでいけば直後に爆発音。

 

 メインシステム 戦闘モード起動

 

 バイザーがロックされ、センサーライトが妖しく光る。

 開戦の狼煙が今上がった。




続かないです。

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