Blue Archive ─To raven.Welcome to the kivotos.─ 作:タロ芋
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『9時方向に敵性存在です。規模はおよそ60!』
「ん」
地面を駆ける黒い影が一つ。
全身を黒い外套で覆い、フードの奥に隠された赤い瞳は遠くにいる機械の兵士たちを見据えていた。
距離にして数百メートルにして漸く兵士たちが気づいたのかライフルの銃口を向けてくる。
「…………ッ」
両足に力を込め、解放。地面が陥没するほどの勢いで空中に踊り出た。
「ワタリだ!」
「撃て撃て撃て!!」
「たった1人、この数に勝てるか!!」
「今日こそお前の無敗伝説は終わりだ!」
オートマタ兵士たちは襲撃してきた傭兵に向けて一斉に弾丸を放つ。
視界いっぱいに広がる弾丸の壁。こんな弾幕を前にすればどんな相手だろうとすぐに蜂の巣になるだろう。といっても。
今、相対してる相手は普通などでは無い
「何ぃ!!?」
「この弾幕を避けるだと!?」
兵士たちのセンサーに映るのは、黒い翼を広げ弾幕を縫うように避けていく姿。
そして、敵を有効射程に捉えた傭兵は、両手に握られていた銃身下部に大型の弾倉の取り付けられたマシンガン『DF-MG-02
バラララララッ!!!
耳をつんざく音を響かせ、火薬を燃やして音速へと至った弾丸たちは寸分たがわず兵士たちを貫き活動を停止させる。
そのまま引き金を引き続けながら突っ込み、落下地点にいた兵士の頭部を踏み砕けば撃ち尽くした銃身を別の兵士に投げつけ、懐に手を突っ込み別の銃を取り出した。
大型のショットシェルが特徴の重ショットガン『SG-027
普通のショットガン以上の密度の散弾が放たれ、まとめて兵士が吹き飛ぶ。かすっただけの兵士には姿が消えたかと思うほどの速度による飛び蹴りを放ち粉砕する。
兵士たちはどうにか傭兵を討ち取ろうとするが、射線には仲間の兵士がおり同士討ちを避けるために引き金にかける指を躊躇わせる。が、そんなもの襲撃者たる傭兵には関係なかった。
構わず引き金を引き続け、容赦なく敵の数を減らしていく。
ショットガンの弾が無くなれば殴打武器として使い。破損すれば徒手空拳で戦うか敵の武器を奪って使う。被弾しそうになれば敵を盾にして使い、使えなくなればソレをぶん投げるか足を掴んでぶん回して武器とする。
まさしく獅子奮迅といえる戦いぶり。ちょっと長めの曲が終わる程度の時間で小隊は壊滅し、その中央に作られた残骸の山で、1人のカラスだけが夕焼けに照らされた空の下で立っていた。
日数にして凡そ3ヶ月弱前、ブラックマーケットに突如として1人の傭兵が現れた。
彼女は全身を真っ黒な外套で覆い、様々な武器を使い分けて戦場を外套と同じ漆黒の翼で舞い例外無く全てを破壊する。
そして、彼女は依頼を選り好みすることはない。護衛対象だった存在に次の日には襲撃を行い、背中を合わせた同じ傭兵と別の依頼で敵対すれば躊躇いなく撃破する。
節操のない彼女の依頼成功率は今日に至るまで脅威の100%。
その有り様と戦う姿から裏の住人たちは畏怖と蔑称の意を込めて渡り鴉の意味を持つ『レイヴン』と呼んだ。
レイヴンがキヴォトスで目を覚ましてから気がつけば3ヶ月弱の時が経っていた。
時が経つのは早いもので、その間は様々な依頼を受けては遂行するという日々を過ごしていた。
そのおかげか良い意味でも悪い意味でも名が広まり、偶然にもルビコンにいた時と同じ傭兵名『レイヴン』という名で呼ばれていたのをエアから教わった時は、偶然もあるものだな〜と思ったりした。
初めの頃は無名だったからか依頼金を減らしたり払おうとしない輩も多かったが、その度にエアが社会的に、レイヴンが物理的に灸を据え、迷惑料も込めてぶんどったりもすれば、そういう輩は減っていききちんと依頼料が支払われるようになった。
そのお陰か目的のひとつだった資金は順調に溜まり名も売れたので、つい最近、漸く生活拠点を手に入れることが出来た。
ソレはガレージも兼ねた大型ヘリで、外観はルビコンでの傭兵時代、オールマインドから貸与されていた移送ヘリとほぼ瓜二つと言っていい外観をしていた。
これを見た時、思わずこの場所に自分たち同様にあの
そしてその結果は、どうやらミレニアムサイエンススクールという学園のひとつが開発したものが理由あってブラックマーケットに流れてきた、というものだった。
ならば警戒する理由はないなとレイヴンはブラックマーケットのオークションで景気良く現ナマ一括払いで購入したのだ。
まぁ、そのせいでせっかく貯めていた資金の殆どがなくなってしまいエアに呆れられるという一幕もありつつ、レイヴンはそれなりの日々を送っていた。
そんなある日、誰かに言われなければずっと仕事をしてるレイヴンを見かねてエアが無理やり設けた休日で、エアが見てみたいと言っていた恋愛映画を彼女と共にぬぼーっとした目で鑑賞していれば。
Prrrrr……
「んー?」
『今いい所なのですが。誰ですかいったい空気の読めない人は?』
仕事用とプライベート用の2つある端末のうち、仕事用の端末から着信音が鳴る。
レイヴンは端末を手に取ればせっかくの二人の時間を邪魔されたのかどことなくエアの声にトゲが感じられた。
レイヴンに依頼を出す条件は、基本的にエアの制作したサイトに張られたリンクからメールを飛ばすことか、指定の番号による音声通話のみだ。
今回は後者の通話による依頼だった。
レイヴンが端末の画面をスライドすれば、丁度キスシーンだったモニターに通話画面が表示される。
『失礼ですがこちらは独立傭兵レイヴンの番号で合っていますか?』
スピーカーから腰の低い男の声が聞こえ、モニターのソナグラフが波打つ。
『ええ、合っています。ですが、サイトには今日は休日とあったはずですが?』
『存じています。そちらの都合を無視する形となって申し訳ありません……本日はどうしても貴方に仕事を依頼したいがために、こうして無理を押して連絡を取った次第です』
基本的には依頼のブリーフィングなどはレイヴンは傍聴に徹し、エアが対応する形となっている。
『…………そうですか。話程度は聞きましょう』
『感謝します。では、依頼内容の説明をさせてもらいます』
男が言えば、モニターにいくつかの資料が表示された。
『今回の依頼は複合企業カイザーコーポレーションの系列企業、カイザーインダストリーからのものです』
王冠を被ったタコのロゴと、その隣に王冠をかぶったタコを真上から見た形のロゴが現れ、ソレがカイザーインダストリーを示す。
『内容はカイザーインダストリーの製作した新兵器ゴリアテ移送の護衛です。
依頼理由は、本社の諜報部門から、とある学園の特殊部隊がゴリアテを狙って襲撃を掛けてくるという情報を得たからです』
資料が変わり、大型兵器の画像と幾つかの通信記録が移される。
『本来ならば同じく系列企業のカイザーPMCが護衛するはずだったのですが、理由あって配置されるはずだった部隊が壊滅する事態になった為に今回は傭兵を雇う手筈となりました。貴方以外にも複数の傭兵団を雇ったのですが如何せん木っ端です。
そのため、直近で連絡が取れてかつ実力も証明され、基本的にどんな依頼も引き受けてくれるという傭兵であるレイヴン。貴方に白羽の矢が立ったという訳です。
説明は以上です。カイザーインダストリー……ひいてはカイザーコーポレーションは貴方とは良い関係を築きたいと思っています。そちらにとっても悪い話では無いと思いますので、良いお返事を期待しております』
男が言い終えれば通信が終わり、モニターの画面が元に戻る。
『レイヴン、依頼成功による報酬金ですが相場からみて破格ですが……どうしますか?』
「……まぁ、断る理由もないしいいんじゃない?」
『…………分かりました。先方に依頼承諾の文を送りますね』
「ん、よろしく」
気軽に引き受けた依頼。これが後々面倒な事態になるのだが、その時のレイヴンとエアが気づくことは無かった。
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