Blue Archive ─To raven.Welcome to the kivotos.─   作:タロ芋

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話が進まないですね


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「なぁ、ほんの少しなんだよ。ほんの少し金貸してくんねー?」

 

「そうそう。人助けだと思ってさ〜」

 

「あんまりモタモタしてると怪我しちまうぜ?」

 

「…………」

 

 路地裏に連れ込まれ、時代錯誤ともいえる格好の所謂スケバン姿少女たちに囲まれレイヴンはぬぼ〜っと感情の見えない瞳で空を見上げていた。

 

 どうしてこうなったのだろうか? 

 

 レイヴンの胸中にそんな考えが過ぎる。

 思い返されるのは、この都市に来て適当な換金屋をエアのハッキング能力で見つけてもらい、バッグに突っ込んでいた銃器や雑誌の換金をしたことだ。

 意外にも銃器よりも雑誌がプレミアの付くような貴重なものだったらしかったのだが、それを敢えて黙って二束三文で買い叩こうとしたオートマタはエアに看破され、レイヴンに二三発ほどお話することになり、快く茶封筒いっぱいの現金を渡してくれた。

 

 恐らくはそれを見られていたらしく、こうしてガラの悪い連中に絡まれ、路地裏に引きずり込まれて銃口をグリグリと押し付けられているという訳だ。

 

 本来だったら恐怖を感じそうなものだが、ルビコンで様々な戦場を渡り歩いては主人たる敬愛するハンドラー・ウォルターの障害を文字通り破壊し尽くしてきたレイヴンにとっては、大して気にするようなものでは無い。

 

「なぁ」

 

「あん? ようやく渡す気になったか?」

 

 ずっと無言だったカモが反応を示したのか、スケバンAが口を開く。

 今の今までずっと口を閉ざしていたのは恐怖に怯えて喋ることが出来ないと思っていたのだが、次にでてきた言葉にスケバンたちは戸惑う。

 

(ソレ)を使うってことは命をかけてるってことだよね?」

 

「は?」

 

「この状況わかってんのかお前?」

 

 てっきり金を渡すかと思えば平坦な声でこちらに対する疑問を投げかけてくる。

 場違いな質問にスケバンたちは微かに剣呑な空気を放つが、次の瞬間に強制的に黙らされることになった。

 

「それは脅しの道具じゃない。殺しの道具だ。抜いたからには命をかけてもらうよ」

 

 ───システム 戦闘モード、起動

 

 そんな声が聞こえた気がした。

 

 ボキリッ、と音が響く。

 

「……は?」

 

 レイヴンに銃口を突きつけていたスケバンAの口から間の抜けた声が漏れた。

 彼女の目には手首が可動域とは逆の方向、あらぬ方向に無理やり曲げられている自分の手が写っていた。

 

「アッ、イッ、ガァァァァァツ!?」

 

「よっ……と」

 

「ゲアッ!?」

 

 痛みにうずくまるスケバンAの横っ面を蹴り抜いて吹っ飛ばし、彼女が動かなくなったのを見ればレイヴンは呆けた顔で固まる残りのスケバンBとCに飛びかかる。

 

「ッ、テメェ!!」

 

「なにして晒しとんじゃゴラァ!」

 

 ようやく事態を呑み込めたのかスケバンたちは持っていた銃を構えるが、視界が突然何かに埋め尽くされた。

 

「うお、なんだ!?」

 

「クソッ!!」

 

 驚き、自分の視界を埋めたものを引きはがそうとするがその行動はあまりにも致命的すぎた。

 

 響く殴打音。ドサリと倒れるふたつの音。

 それから程なくしてレイヴンは狭い路地裏から出てきた。

 

「ひー、ふー、みー……シケてる」

 

『当然のようにあの人たちの身ぐるみ剥ぎましたねレイヴン』

 

「ん、迷惑料」

 

 手に持ったいくつかの紙幣を数えつまらなそうに言うレイヴンにエアが呆れたように指摘するが、シレッとレイヴンは返す。

 スケバンたちの視界を奪うために使った外套を羽織り直したレイヴンは、自分がノしたスケバンたちを一瞥すらしなかった。

 

 道行く通行人たちはこんなことが日常茶飯事とでも言いたいのか、そんな様子にも気にした様子もなく道を歩く。

 

『それにしてもキヴォトスというところはルビコンに負けず劣らず治安が悪いですね……。

 道行く人達は皆、銃を下げてます』

 

「ん。あちこちでもドンパチやってる」

 

 スイスイと人混みの間を縫うように歩きながら、エアの何処か呆れたような声にレイヴンも同意を示した。

 ルビコンも世紀末的に治安が悪かったが、それはルビコニアンと企業との生存をかけた闘争だった。しかしキヴォトスは、話を遠くから聞く限り、店の並び順を割り込んだがどうこうや出された料理が気に入らなかったとか、ガンつけてきたとか等々下らない理由で簡単に銃口を突きつけ合うというあまりにもアレな治安の荒れようだ。

 

 その理由は恐らくだが住人たちが弾丸程度では大してダメージにならないからだろう。

 

 先程のスケバンたちも、レイヴンが頚椎や内臓を破壊する気で行った蹴りや拳に対してすら酷い打撲が出来る程度であったことから頑丈さが窺い知れる。といっても、関節等の強度はそこまでなのか、可動域とは逆に少し力を込めれば簡単に破壊することは出来たが。

 

「とりあえず活動拠点は欲しい」

 

『あの施設でもいいのですが、如何せん交通の便が悪すぎますからね。

 他にはやっぱりお金でしょうか?』

 

「ん、お金は大事」

 

 しみじみと呟くレイヴンにはルビコンでの出来事が思い起こされる。

 依頼を遂行したはいいが、差っ引かれる弾薬費や機体の修理費。欲しいパーツや武器の代金にエトセトラエトセトラ。

 

「ウォルターの言った通り普通の生活を送るためにね」

 

『……ですね』

 

 彼の願いを叶えるためひとまず最低限の生活を送れる用意をしなければ。

 幸いにもこの体のスペックはかなり高いことが今までの動きで理解出来ている。

 それにこれくらい治安が悪いということは相応に荒事専門の仕事もありそうだ。

 

 一先ず仮拠点を見付けてから資金を貯めて本格的な活動拠点を手に入れる。

 それにあの施設などはおいおい手を加えていけばいい。

 

 そのためには情報収集だ。レイヴンには頼れる友人のエアがいるから電子戦など怖いもの無しだ。

 幸い、さっきのスケバン共からかっぱらった金以外にも携帯端末を手に入れたため、エアが自由に電子世界に入ることが出来る。

 

 ルビコンで独立傭兵をしていたときも様々な依頼を受け、色んな陣営から評価を得て立場を作ってきた。

 それをもう一度やるだけ。難しいことでは無い。

 

「ん」

 

 適当なホテルを見付け、チェックイン。

 割り振られた部屋に入り、鍵とチェーンをかけバッグと外套を投げ捨てレイヴンはベッドに倒れ込む。

 

「今日は疲れた……」

 

『一日中歩き通しでしたからね。それに、戦い漬けの日々でしたから少しの間くらい休んでもバチは当たりません。

 ウォルターも仕事のあとは休むように言ってましたから』

 

「んー……そう、する」

 

 ようやく休めたからか、レイヴンが眠たげに何度も瞼を瞬かせた。

 肉体的な疲労もあるが、なによりも精神的な疲労が蓄積している。

 

「おやすみ、エア」

 

『おやすみなさいレイヴン。良い夢を』

 

 エアの言葉を最後にレイヴンは意識を完全に手放した。




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