BLUE ARCHIVE -SONG OF CORAL- 作:Soburero
「レイヴンちゃん、おはようございます!」
「ああ……、おはよう。」
「ホシノは隣の部屋で仮眠をとっている。夜警に出ていたようだ。」
「……そうなんですね。じゃあ、もう少し寝かせてあげましょうか。」
(レイヴン、調子はどうですか。あまり眠れていなかったようですが。)
(問題ない。今の状況に混乱していただけだ。)
(……無理もないでしょう。様々な意味で、全く違う環境に飛ばされてしまったわけですから。)
あの後、エアの助けも借りながら、対策委員会のメンバーと話をして、この世界に関する情報を整理していった。
ここは、学園都市キヴォトスであること。
学校が、国家や企業に類する権力を持つということ。
キヴォトスの住人は銃弾や手榴弾程度では死なないこと。
そのため、銃火器をはじめとした武器の類が、一般的に流通していること。
その銃火器を、些細な喧嘩で持ち出すこと。
殺人や、それを行おうと攻撃することは、タブーであるということ。
自分は、アビドスの対策委員会の臨時メンバーとなること。
対策委員会のメンバーは自分を含めて6人であること。
その対策委員会のメンバーが、アビドスの全校生徒であること。
校舎の空き教室の1つが、自分の部屋になること。
情報を得れば得るほど混乱していく感覚は、昨日初めて体験した。
話を聞いているとき、ずっと頭痛と耳鳴りに悩まされていた。
2度目はないと思いたい。
ちなみに、ホシノが夜警に出ていたことを知ったのは偶然だ。
まだ暗いうちに目が覚めて、部屋で情報を整理していたら、ホシノが物資を補給しているところに出くわした。
少し問い詰めたら、自主的に夜警に出ていると話した。
ガラガラッ
扉が音を立てて開く。
ほかのメンバーが登校したようだ。
「おはようございます。」
「おはよう。って、やっぱり昨日のは夢じゃなかったのね……。」
セリカとアヤネが来た。
やはりと言うべきか、セリカは俺が仲間になることが気に入らないらしい。
「幻覚じゃなくて悪かったな。」
「もう、セリカちゃん。」
「……ごめんなさい。」
「構わない。俺が信用できないというのは、自然な感覚だ。」
「うっ、本人からフォローされるなんて……。バカみたいじゃない、私。」
皮肉も込めて口を開けば、アヤネがセリカをたしなめた。
素直に非を認めたのは少々意外、というのは、俺がルビコンに毒されすぎているせいなのだろうか。
ガラガラッ
再び扉が開く。確か残りのメンバーは――。
「おはよう。」
「あっ、おはよう、シロコ先ぱ、い……。」
「……誰だ、そいつ。」
シロコの背中に誰かいた。当人は何食わぬ顔で背負っている。
なぜ?誰だ?こいつらは見つけたものを拾ってくる癖でもあるのか?
また頭が痛くなってきた。
「わぁ!シロコちゃんが大人を拉致してきました!」
「拉致!?い、生きてますよね!?」
「みんな落ち着いて、速やかに死体を隠す場所を探すわよ。体育倉庫にシャベルとツルハシがあるから――」
「落ち着け、そいつ死んでないぞ。」
どうやら冷静なのは俺だけらしい。
生体反応を確認し、生きていることを伝える。
栄養失調と脱水を起こしているが、命に別状はないようだ。
「そうだよ、普通に生きてる大人だから。うちの学校に用があるんだって。」
”ど、どうも……。”
「拉致したんじゃなくて、お客さん?」
「わぁ、びっくりしました。まさか、昨日と今日でお客様が二人も来てくれるなんて。」
行き倒れてる客人なんて聞いたことがない。
そもそも、この砂まみれのアビドスに、何の用があってきたんだ。
最悪、俺が殺さなきゃなくなるかもしれん。
そうなると面倒だ。血の匂いはなかなか落ちない。
1度歩兵をACで踏んでしまったときは、どれだけ洗浄しても3日は落ちなかった。
「そ、そうですね……。でも、レイヴンさんは仕方ないにしても、来客の予定なんてありましたっけ……。」
「……このアビドスは、誰かしら迷い込むのが普通なのか?」
「何言ってるのよ!そんなわけないでしょ!」
正直それを疑いたくなるぐらいの出来事が連続している。
惑星封鎖機構あたりが調べてくれないだろうか。
”えっと、『シャーレ』の顧問先生です。よろしくね。”
「……え、えぇ!?まさか!?」
「連邦捜査部『シャーレ』の先生!?」
「わあ☆支援要請が受理されたのですね!良かったですね、アヤネちゃん!」
「はい!これで……弾薬や補給品の援助が受けられます。早くホシノ先輩にも伝えてあげないと。」
「……あれ、ホシノ先輩は?」
「いま、隣の教室でお昼寝してますよ。」
「じゃあ、私ホシノ先輩起こしてくるから。」
セリカはそういうと、ホシノの仮眠場所に向かっていった。
さて、また知らない単語が出てきたことで、そろそろ頭のCPUの負荷が限界だ。
いつスタッガーを起こしてもおかしくない。
こうなったら直接聞くのがいいだろう。
「……連邦捜査部?どういう部活だ?」
”学校の垣根を越えて、問題を解決するための部活だよ。”
”アヤネからの手紙を受け取ったからここに来たんだ。”
話を聞いてみると、シャーレとは、キヴォトスの中央機関”連邦生徒会”の下部組織。
超法規的権限をもって、問題を解消するための機関。
まだ立ち上がったばかりで、メンバーは顧問である”先生”1人。
1人に預けるには過ぎた権力だとは思うが、まず気になったことが1つ。
「なるほど。ならそんな部活の顧問が、なぜ一人でいる?護衛はどうした?」
”……えっと……。”
ある仮説が頭をよぎる。
外れてくれと願いながら口を開く。
「……護衛も連れずに一人でアビドスに来て、徒歩でここを探した結果行き倒れた、と。」
”はい、そうです……。”
「……バカなのか、お前?」
”うぐっ……。”
バカだ。ここまでバカだといっそ清々しい。
今ここで殺して、次を見繕ったほうがいいんじゃないかという気さえしてくる。
「まあまあレイヴンちゃん、そこまでにしてあげてください。」
「あはは……。先生、次は私たちが案内しますから、遠慮なく言ってくださいね。」
”お願いします……。”
あまりにも不安だ。
連邦生徒会は本当にこいつに権力を預ける気だったのか?
「うぅーん、まだ眠いよーセリカちゃーん。」
「ほら起きてホシノ先輩!シャーレの先生が来てるから!」
「んぇ……?先生?よろしくね。むにゃ……。」
「ああもう!ほら先輩、シャキッとする!」
そしてホシノは寝不足でふらついている。
セリカが必死に起こそうとしているがお構いなし。
”先生”に対してもこの対応だ。
1人で生きる算段が付いたらすぐに出ていくほうがいいかもしれない。
「……締まりが悪くてすまない、シャーレ。」
「うふふ。これが、私たち対策委員会の日常なんですよ。」
”そうなんだ。賑やかで素敵だね。”
「……俺は初めて知ったがな。」
”え?それってどういう――”
先生が俺に質問を返そうとした瞬間。
ババババババッ!!
「ッ!?銃声か!?」
(レイヴン、大規模な武装集団がこちらに向かっています!)
敵襲。数はおよそ20人。
武装もどうやら潤沢だ。
気になることは多いが、今やるべきことに頭を切り替える。
「チッ!敵が来る、備えろ!」
「相手は……カタカタヘルメット団のようです!」
「あいつら……性懲りもなく……!」
どうやらアビドスとは面識がある奴らのようだ。
各々が武器を握り、戦闘態勢に入る。
だが、戦いにおいて重要なのは情報だ。
そして、俺のそばには、情報戦のプロフェッショナルがいる。
「……土壇場だがこいつを紹介しておく。エア!」
『通信で失礼します。レイヴンのオペレーター、エアです。よろしくお願いします。』
「うわぁ!?いきなり回線に入ってきました!?」
エアが通信回線をハックしたことにアヤネが驚くが、それに構っている暇はない。
「エア、敵部隊をマーキング。可能なら通信を傍受しろ。」
『既に終わっています。回線を繋ぎます。』
やはり仕事が早い。彼女には何度助けられたことか。
通信が開くと、ヘルメット団の怒号が耳に飛び込んでくる。
『行け行けェ!!奴らはもう物資がない!!今がチャンスだ!!襲撃しろォ!!学校を占拠するんだァ!!!』
『ヒャーハハハ!!!』
「……頭の悪い奴らが来たな。」
こいつらはドーザーなのか?
キヴォトスにもコーラルが有るとなると厄介だ。
然るべき対応を取らなければならない。
まあ、今考えることではないだろう。
「本当よ!ほら先輩起きて!出動だよ!アビドスを守らないと!」
「んもーおちおち昼寝もできないじゃないかー。ヘルメット団めー。」
「行こう。先生のおかげで、弾薬も装備も十分。」
「はーい☆みんなで出撃です!」
各々装備を取り次第、迎撃のため外へと飛び出していく。
俺たちの役目は――。
「先生、レイヴンさん。ここでサポートをお願いします。」
”わかった。”
『データリンク開始、情報を共有します。』
こうなるとサポートは十分。必要なのは、火力か囮だ。
ちょうど、それを両取りできる方法がある。
「ここから射撃支援する。武器はないか!」
「えっ!?えっと……。これを使ってください!」
「よし、助かる。」
アヤネから予備のライフルを受け取り、装填して、適当な窓につく。
どうして使い方を知っているのかは考えてはいけないことだと直感が告げる。
「前線部隊、聞こえるか?校舎から射撃支援を行う。射線に注意しろ。」
『分かった。でも無理はしないで。』
『気を付けてくださいね、レイヴンちゃん!』
「了解。」
アビドスの全員が戦闘配置についた。
あとは、向かってくる敵を、全力で叩き潰すだけだ。
『ヘルメット団、間もなく交戦距離に入ります。』
『あいつら、ただじゃおかないんだから!』
『じゃ、ぼちぼちがんばろっかー。』
”私が指揮を執る、任せて!”
「「「「「「了解!」」」」」」
書き溜めが切れたので次の投稿は遅れます
気長にお待ちくださいませ…
次回
暴の化身、顕現
レイヴンが飲むシャーレのコーヒーは、甘い