私事ですが、ハルナは好きなキャラなのですが、オリジナルで書いている小説の主人公の名前もハルナなので、たまにこんがらがってしまいそうになります。
『これがお前のためにしてやれる、ただ1つのことだ……すまない』
半分夢うつつの状態でソファーでだらけていると、扉を叩く音と、男の声が聞こえた様な気がした。
「失礼します。報告書をお持ちしました」
扉の叩く音と共に入って来たのは、褐色肌で銀髪の少女だった。
長い髪をツインテールにしているが、顔はキリっとしていて、ギャップが良い感じだ。
「ありがとう。問題は無かったかしら?」
「一部施設の破損が酷い部分がありますが、それ以外は問題ありません。脱走者もゼロです」
多分その破損は、私がやらかした奴だろうな。
ロケットランチャーを爆発させるついでに、建物も結構な範囲壊してしまっていた。
瓦礫も結構降ってきていたので、修復も大変だろう。
「それなら良かったわ。それと、そこの子が連絡しておいた子よ」
「……この子……が?」
「ええ部活棟の案内と見送りをお願いするわね。名前は白凰エリスよ」
「初めまして。学校見学をしている白凰エリスと申します」
「……風紀委員会所属、一年の銀鏡イオリです」
怪しんでいると隠すことの無い視線だけど、アコさんさんに比べればかなりマシだろう。
「話しやすい言葉で構いませんよ。私は年下ですので」
「……ヒナ委員長」
「好きにして構わないわ。その子はトリニティと関係ないから、節度さえ保てばね」
「この見た目でですか?」
「……ええ」
イオリさんは私に指を向けながら、ヒナさんと会話をする。
この反応も慣れたものだ。
しかし、普通だと思ってたが中々良いブーツを履いている。
靴か……ゼロカスタムがある以上耐久力に気を付けないといけないので、イオリさんみたいなものを履けば、かかとの部分が直ぐに潰れてしまうだろう。
中に鉄の棒でも仕込めば大丈夫かもしれないけど、そうすればまた重量が増えてしまう。
体重を計ってはいないけど、私だけの体重ならばかなり軽いと思う。
しかしこの背中の大きな翼だったり、ゼロカスタムを足すと、一体いくらになるやら……。
「将来の後輩になるかもしれませんので、その様な反応をされると少々悲しいですね」
「……委員長?」
「あまり時間は無いのだから、早く行きなさい」
困惑しているイオリさんに対して、ヒナさんは犬を払う様に手を振る。
チラリとアコさんの方を見ると、何やらとても複雑そうな顔をしている。
中々風紀委員会も大変そうだ。
執務室を出る前にゼロカスタムをウェポンハンガーへと取りつけていると、再びイオリさんが私を指差し、とうとう出て行けと言われてしまった。
イオリさんはキリっとしてはいるが、案外面白い人なのかもしれない。
「……とりあえず行くから付いて来な。質問があれば聞いてくれて構わない」
「はい。宜しくお願いします」
ゲヘナの部活……今の所危ない所と大変な所しか見ていないけど、一体どうなのだろうか?
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イオリとエリスが執務室からいなくなり、ヒナが大きなため息をついた。
「ヒナ委員長……彼女は一体何なのですか?」
「私にも分からないわ。それで、やっぱり駄目?」
ヒナがエリスを執務室まで連れてきたのは、何も案内だけが理由ではない。
得体が知れず、強大な力を持った存在。
一体何者なのかを調べるために執務室まで連れてきたのだ。
「はい。スキャンから画像検索を掛けてみましたが、ミレニアムとアビドス以外に引っ掛かりませんでした。それも、ここ数日のみですが……」
「ブラックマーケットも駄目?」
「セキュリティが脆弱な所は一通り確認しましたが、そちらもヒットは無いです。あの銃につきましても、同じくです」
あまりにも不自然。疑うには十分な結果。
人柄だけで言えば善良だが、ゲヘナを背負うものがそれだけで判断を下すのは間違いだ。
「それに……」
「ええ。指示しておいてなんだけど、私も驚いてるわ」
気まずそうな顔をするアコに対して、ヒナは少しだけ申し訳なく思う。
エリスが飲んでいたお茶だが、実は睡眠薬が入っていた。
悪いとは思いながらも、打てる手を打たなければならないのが、風紀を預かるものとしての責務なのだ。
だが……エリスは薬入りの最初の一杯を飲んでもけろりとしていた。
挙句に二杯目を飲んだ後も普通にお菓子を食べ、それからやっと眠りにつく。
その眠りもかなり浅いものであり、イオリが扉を叩いた音だけで目が覚め、更に睡眠薬特有の怠惰感も感じている様には見えなかった。
生徒ならば多少なかれ薬物に対して耐性を持っているが、エリスに使われたのはそれらを加味しても即座に眠気を誘う物。
無論気付け薬もしっかりと準備してあったが、ただ謎が深まるばかりである。
「装甲車を一撃で粉砕し、数百キロを背負っていてもそれを感じさせない姿。挙句にあの見た目なのに素性不明。ヒナ委員長はどうお考えですか?」
アコは心配半分、緊張な表情でヒナを見る。
トリニティか。或いはそれ以外か。何かしら目的があるとヒナは睨んではいる。
しかし、これだけ不自然だと逆に怪しく見えなくもない。
もしも本当に何か企んでいるのならば、あれだけ不用心に出されたものを飲み食いしないだろうし、給食部でも何か問題を起していた筈だ。
今の所ゲヘナの役に立つ事しかしておらず、ハルナの件はあるものの、あれはいつもの事なので捨て置いて良い。
「個人的に、ゲヘナに来て欲しいと考えているわ。危険はあるかもしれないけど、あの戦力が他に渡るのは避けたいところね」
「それ程……だったのですか?」
「廊下の窓から外を見て来なさい。そうすれば分かるわ」
「……分かりました」
アコは不思議に思い名からも廊下に出て、ゲヘナの敷地を見る。
そこには大きなクレーターが一つ出来上がっており、大きさからミサイルクラスの威力だと読み取ることが出来た。
アコまで上がってきた報告は、装甲車で温泉開発部が逃げ出したが、協力者により破壊されたまでだった。
破壊とは単純に走行不可にする程度と考えていたアコだが、クレーターから装甲車が消し飛んだのだと理解してしまった。
あれだけトリニティらしいのほほんとした雰囲気を出していたのに、その中身は……。
キヴォトスにはたった一人で全てをひっくり返す人間が何人も居るが、それらは大体肩書きがあり、おいそれと動けない。
更に大きな学校ならば一人は居るので、大きな争いが起こる前に介入し、睨み合いとなる。
これから先、もしもエリスがトリニティに入学すれば、その時点でゲヘナは一歩劣ることになる可能性がある。
今地表にあるクレーターを作れる火力を、何発も撃てると言うのならば、ヒナのいない戦場は絶対に負ける。
そう、アコの冷静な部分が計算を弾き出す。
「どうだった?」
「ヒナ委員長の考えはよく分かりました。あれに敵意がなく、友好的なのならば、味方に引き込むのは賛成です」
アコはたまに暴走することもあるが、ヒナが居る場ならば、私情を挟まず損得をしっかりと計算することが出来る。
「ありがとう。多分だけど、もしもエリスがトリニティに行ったとしても、そこまで心配することはないと思うわ」
「……それは何故ですか?」
正体不明であり、危険すぎる力を持っているとヒナ自身が話しているのに、何故心配ないのか、アコには分からない。
「最悪の事態になる前に、連邦生徒会が何か行動を起こすはずよ。それに、アコはエリスが何か悪いことをすると思う?」
「……」
アコは黙り、それ以上答えなかった。
風紀委員会の委員長として、エリスが不穏分子なのは変わらないが、自分を心配し、力を貸してくれる存在が問題を起こすとはヒナは思えなかった。
こればかりは私情であるが、もしもエリスが敵になるならば、ヒナは全力で相手をするだろう。
そんなエリスはミレニアムで正当防衛を理由にカツアゲをしているのだが、そんなことは知るよしもない。
「一応これから見張りをつけておいて。なるべく熟練の子をね」
「……承知しました」
話し合いも終わり、再び二人は手を動かし始める。
午前だけでも様々な事件が起きており、更にヒナが出張で出掛けてきた分。おまけにエリスの事での予算や報告書も増え、文字通り書類の山が出来上がっている。
エリスのことについて話していたのは、ちょっとした現実逃避もあったのだ。
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「ミレニアムもですが、ゲヘナも色々とありますねー」
「まあね。ただ、中には非公式に部活を作ってるとこもあるから、入るなら引っ掛からないようにね」
部活棟をイオリさんの説明を聞きながら一通り見て回り、自販機で買った飲み物を飲みながら休憩する。
「しかし、本当に分からないね。なんでまたゲヘナまで来るんだか……」
「良い学校ではないですか。皆さんイキイキとしていますし、楽しそうです」
「楽しければ良いってもんじゃないでしょ」
それはそうだけど、折角ならば楽しい学校生活を送りたい。
苛めやカツアゲをする不良も居るけど、風紀委員会が頑張っているわけだし、今くらいならば問題ないだろう。
「そのために、イオリさん達が居るわけではないですか。私みたいなか弱い生徒を守るのが、お仕事なんですから」
「あんたは問題を起こす方じゃないの? 聞いたけど、あの美食研究会と一緒に居たみたいだし」
「巻き込まれただけですよ。詳しくはハルナさんを捕まえて聞き出してください」
多分捕まえられないだろうけども。
イオリさんもそれが分かっているのか、物凄く私を睨んでくる。
なにも知らずに睨まれていたら、ただ怖いだけだけど、今は少し可愛く見える。
ヒナさんが言うにはイオリさんは、風紀委員会の中でも頭一つ抜けているようなので、仲を深めておいて損はない。
「……次はどこか行きたい場所はある? 時間にはまだ余裕があるけど」
「でしたら、軽く街の方の案内もお願い出来ますか? 本当なら観光しながらゲヘナ学園まで来るつもりでしたが、ハルナさんを運ぶことになったせいで、ほとんど見られていないのです」
「……案内するからついてきな」
あら、まさか普通に案内をしてもらえるとは思わなかった。
頼んでみるものだな。
午前よりも静かになった敷地を歩き、そのまま学園を出ていく。
歩いていると、風紀委員会の腕章を付けた生徒達がすれ違うたびにイオリさんへと挨拶をしていた。
とても慕われているようだ。
「街を案内するのは良いけど、何か見たいものとかあるの?」
「そうですね……珍しい所や、物が売っている場所が良いです」
「それって、ゲヘナだと犯罪の現場ってことになるんだけど?」
イオリさんは目を細目ながら呆れて、スマホで何かを調べ始めた。
……なるほど。そう返されるとは思わなかった。
珍しいとは人が居ない場所であり、珍しい物とは違法な物と取ることが出来る。
これが自治区が変わることによる、常識の変化か……。
「珍しいか分からないけど、時計塔や、足湯なんかがあるな。後は美食研究会が認めた店なんかも一つの名物になっているらしい」
「それはまた……」
「あまり言いたくはないけど、美味しいのは確かだ」
確かにハルナさんが言っていた通りなら、爆発されなかったお店とはそれだけ美味しいという証明になる。
問題を起しているからこそ、その証明の効力は大きいだろう。
お昼を食べてから結構時間も経っているし、おやつを食べるには結構いい時間だろう。
ヒナさんの所でお菓子を頂いていたが、それはそれである。
「でしたら足湯に浸かってから、デザートが食べられる美味しいお店を案内していただいても?」
「分かった。案内するから付いて来な。ただ、もしも途中で事件が起きたら、そっちを優先するから」
「分かりました。その時はお手伝いさせていただきますね」
「……状況によってはな」
完全に断ると思ったけど、何かヒナさんから言われているのだろうか?
まあいいか。足湯が楽しみだな