ETA【感想】
米津玄師「ETA」の感想だよ。歌詞切り取って好き勝手に言うよ。まずETAってなんすか?
検索窓にそのままぶち込んでみた。
「到着予定時刻」の英語表現を略称したものだと出た。
ほぉん、到着。で、どこに着くの? なんてことを考えたのは曲を聞いてからだった。
曲の始まりは、ハチ時代のボカロ曲を思い起こさせた。物語はドアを開ける音から始まった。
歌詞は「人のいない空港」から始まる。あ、それ知ってる。本来人が溢れてるような空間で、人が全くいなくて不気味なのを、リミナルスペースって言うんだって。
個人的な経験で僕がとりわけ強くそれを体感したのは、街に飲みに行った帰りの深夜零時を過ぎた札幌駅だった。その頃はまだコロナなんか気配もなくて、人がいないのが新鮮であり少し不気味で愉快だった。この街もこんな顔をするのだなあ、なんて。深夜でも明るいのはすすきのの方だ。
そんな不安を煽るような空間を思い浮かべさせて歌は続く。
いつまでもいつまでも道は続いていくと
(中略)
あの日々にいつの日か戻れますようにと
今この歌詞を書き写して思ったけど、この「あの日々」ってコロナの前だったりするのかな。
そんでなんて切ない曲調と歌詞だろう。なんでか絶望すら感じてしまう。
曲の中に空き缶を蹴り飛ばすような音が交じる。
この先で待っている あなたへと会いにいく
「この先」ってどこ?
僕はすぐに死後のことを思い浮かべた。
犬や猫って、生を全うしたら虹の橋のふもとで飼い主を待ってるなんて、慰めの詩がある。
僕の最愛の猫は僕のこと待ってくれるかな? 待たねえな。高確率で僕より先にそっちに行く母を迎えたら、一緒に虹を渡るだろう。みんな僕のこと置いていきやがって。なんてな。
そこでは一切の苦しみがないという。体も健康体になって、自由に走り回れて、ご飯も好きなだけ食べられる。そうして飼い主を待つのだ。そう言われたら、例えそれが空想だとしても猫が僕を待ってくれないとしても心の底から「よかった」と思って泣けた。車の中で。そんなことを思い出す。
待ってくれなくてもさ、人間みんな行き着く先は「死」だ。死ぬときは孤独だとしても、その先で「あなた」とまた会えるかもしれない。
曲全体の暗さというかおどろおどろしさというか、音で精神ボコボコにしてくる感じはamenによく似ていた。
もうおやすみ 古い友達
どうか安らかな夢で眠れますように
やっぱ死んでるな、その相手。ベストフレンドとやら。
その前にある「綺麗な花で飾りましょう」というのが献花にしか聞こえない。僕が病みすぎているのだろうか。
行きも帰りもない それでも飛び交うETA
いつまでもいつまでも道は続いていくよ
それは……「行きも帰りもない道」というのは、人生のことを言っているのだろうか。
だとしたらその到着というのはやっぱり「死」なんじゃないだろうか。
夢の中みたいだ 夢の中みたいだ 夢の中
泥濘に落ちていく 味のしないビーフシチュー
手紙の返事は停滞中
相手の死を受け入れられずにいるんだな。そんな姿を思い描いてしまうような言葉。
現実を受け入れられず、ぼんやりとビーフシチューを作ったものの、味がしない。手紙は言いたいことがまとまらないんだろう。きっと言葉で便箋をぐちゃぐちゃにしてしまうから。
なんでだろう、曲の中にそんな言葉はひとつもないのに「愛してる」って聞こえる気がする。溢れて止まらないくらいの愛。
死への、到着予定時刻はいつですか。向こうの世界で待ってる、あなたに会えるのはいつですか。
あなたに会いたい。それまでの、長く短い旅を穏やかに楽しむような、どうしようもなく切なくて痛ましいほど絶望的で甘い夢と淡い希望を添えたような曲だと感じた。



コメント