ブレイクは詩集『ミルトン』の序の一部として、1804年にこの一節を含む詩を書いた。詩の主題はキリストのイギリス訪問である(史実ではないだろう)。ブレイクが、「この闇の悪魔のひき臼たち(these dark Satanic Mills)」という章句で念頭に置いているのは、彼の住まいの近くにあったアルビオン製粉所であると言われる。この製粉所はワットらによる回転蒸気式の動力を用いた大工場で、高い生産性をもち、中小の製粉業者を破産させたそうだ。一日中煙を出して大きな音を立て、日々糊口(ここう)をしのぐ細民たちを破産に追い込む巨大工場は「悪魔」であり、それを製粉機の動きにかけて「ひき臼」とイメージしたのだろう。さすがブレイクだ。ポランニーはブレイクのこの章句を借り受け、人間、社会、そして自然による数多の抵抗を斥け、すべてを市場システムへと巻き込んでいく運動を「悪魔のひき臼」にたとえた。