それは静かに手首を伝って、すぐに乾いて消えた。
制御区域を突破した面々が、その足を止めたのは広い空間だった。
ハッキングを制し開かれたその場所には、二人の人物。
攫われていた砂狼シロコ……に、良く似た長身の女性、シロコ*テラー。
そして———その後ろで静かに佇む、
「遅かったね」
静かに目を伏せていた彼女がゆるりと目を開き、こちらと相対する。
その動作だけで、先生達は反射的に体を強張らせた。
「———死神と、死の神は別物」
そんな生徒達を見据えながら、シロコ*テラーはぽつりと呟き始める。
「"死の神……?それは、どういう……"」
「今、
そして、とシロコは続ける。
「『死神』なんて名前の人物は———他の世界の
「"…………は"」
「あの『死神』という通り名も、あの顔も、立ち振る舞いも……私が居た所には空似だとしても居なかった」
先生も、生徒も、空いた口が塞がらなかった。
一部の面々は理解ができないといった感じだが、聡明な生徒———特にハナコはその意味を理解する。
「———多次元解釈……いえ、並行世界の存在……という事でしょうか。死神さんがあの人だとすれば、貴女が『死の神』の方である事は一目瞭然でしょう。そもそも死の神とは何なのかと考えれば……人の死、物の死、もっとスケールを広げれば……世界の死、でしょうか?」
その推察に、シロコ*テラーは短い沈黙を返した。
「……やっぱり、貴女は答えが早い」
そこまで言われれば、後はもう流れるように答えが生まれる。
「……色彩は、この世界にだけ強く反応を起こしていた。私は後から気付いたけど……それが『死』の存在であり、『死』というテクストで己を隠した紛い物だという事は、すぐにわかった」
一瞬だけ、シロコの顔が哀しげを纏う。
それをすぐに振り払い、能面のような無表情を貼り付けて言い放った。
「———何故なら、『死』の存在は……世界を壊す為のものだから。その意義を
咆哮を推進力にして、低い体勢のまま突貫。
「———ッッ!!」
怒りを纏った私の突貫に、色彩は目敏く反応する。
極彩色の触手のようなモノが汚く刺し穿とうとするのを、
弾ける極彩色の流動体が大きく弾けるので、【ガルーラ】でそれらを弾きつつ推進力のブーストにした。
それでも頭は良いのか控えていた後続を更に放ち、仕留め切れなかった12の触手が迫る。
「退けェ!!」
しかし、風のように振られた【アカシャアーツ】がそれを打ち砕く。
八方へ広く弾け飛んだソレらを見る事なく、更に一歩———
「———グ」
と、踏み込んだ右脚に走る激痛。
視線だけをそちらにやると、いつから隠してたのか触手が一本、床と私の脚を串刺しにしていた。
同時に
「———この程度」
【電撃吸収】で回復しながら【真理の雷】と共に踏んで焼き焦がす。
『———!!?』
「G ィ ぁa!¿」
存在の声を成していない汚い鳴き声に混じって聞こえた、擦れるような娘の悲鳴。
単体攻撃で殴ったので触手だけが痛むと思っていたが、娘も対象に捩じ込んでいたようだ。
「チッ、下衆が」
色彩はどうやら、私を殺す為なら鬼畜な行為も厭わないらしい。
それ程までに私を殺したいか、
苛立ちが止まらない、
「———
【修羅転生】と【ブラッディチャージ】が発動し、ゴッソリ減った体力が【ネオ・カデンツァ】で瞬時に戻る。
そうして残った痛みで逆に澄み切った脳が、次の一手をスムーズに繰り出した。
「那月が安心してッ、
両刃の剣が風を斬って迫り、触手と衝突した刹那。
風船を割ったような音を響かせ、衝撃を殺し切る事など出来ずに周囲の触手と那月を掴んでいた手がごっそりと弾ける。
その剣戟はそれだけに留まらず、床や壁に深い裂傷を残した。
「……———ぐっ、
バチッ、と天井のライトが点滅する中でぐらりと倒れ込みそうな軽い身体に腕を滑らせ、走る激痛に耐えながら抱き寄せる。
懐かしい体温を感じて、私の中で走馬灯の様に
どうしてここに居るとか、色彩にくっつかれてたのはどうしてとか、私なんかが親でごめんだとか。
「那月……那月?」
色々言いたい事はあるのに。
「———e」
色々言わなきゃいけない事があるのに。
「ぇ」
どうして、そんな悲しそうな目をしてるの?
「N¿ぃ げ! てe 」
———どうして、そんなことをいうの?
腹の奥から、重い衝撃が響いた。
「———まま」
耳鳴りとノイズで視界が定まらない中、聞き覚えのある声が聞こえてくる。
腕の中に暖かさを幻視した。
「———おはよう、ママ」
あの時よりもまだ高く幼い、懐かしい声だ。
そういえば、この子は撫でられるのが好きだった。
「———こほっ、けほっ……おかあさん、手……」
手を握り、寒さと不安に震える背中を優しく叩いていた。
暖かさに擦り寄って、安心した様に涙を止める姿があった。
「———お母さん、私なら心配しないで?お母さんだけに苦しい思いなんて、させないもん」
微笑んだあの子に、私は喜ぶ事なんてできなかった。
貴女の人生を、私のせいで崩れたのに。
私のせい、なんてことにしてくれなかった。
だから貴女は———
「———大丈夫だよ、お母さん。私はお母さんの笑顔が見たいんだもん。だから
「
「———かふっ」
吐血と同時に脳が緩く覚醒する。
お腹の鈍い痛みが、自分が那月に突き放されたのだという事を理解させた。
……いや、那月はそのまま押し出しただけ。
———嫌な事を思い出したものだ。
私が不甲斐ないばかりに
目の前には依然として変わり果てたあの子と、その周囲で蠢く色彩。
———なぁ、私は
どんな理由で、こんなに私の心を踏み躙るような事をしている?
どうして私をそんなにも目の敵にしている?
あの子に絡みつく手を引っ掴んで問い質してやりたい。
そうしてやりたいのに、私の身体はぴくりと震えるだけで動かない。
もう一度地面を蹴って
絡みつく汚い手を振り払って、もう一度『親』で在れるのに。
———視界が揺らいで、
遠くなる世界の中で、あの子の目が私をずっと見ている。
その瞳は、私に何かを訴え掛けているように見えた———
————————————
—————————
——————
———
『———貴様、此の様な処で勝手に
リン、と青い蝶が指先に留まっていた。
UA16万突破、お気に入り数2500突破していました。
皆様読んで頂きありがとうございます。
現在死神さんの心(と、読者の皆様の心)がだいぶ擦り減ってはいますが、ちゃんとどうにかなる算段はあります。
というか元々この最終編をどう終わらせるかはもう考えてあり、現状の一番の壁は丁度ここの部分という……
後日談として死神さんの"お話"も収録するので、書き切るまでどうかご期待頂ければと思います。
【スクカジャオート】
戦闘開始時に自動でスクカジャを発動する
【至高の魔弾】
敵全体に銃撃属性の特大ダメージを与える
【ガルーラ】
敵単体に疾風属性の中ダメージを与える
【アカシャアーツ】
敵全体に特大ダメージを1〜2回与える
【吸魔】
敵単体のSPを一定割合吸収し、吸収分を回復する
【電撃吸収】
電撃属性攻撃によるダメージを吸収する
【修羅転生】
自身の次の攻撃におけるダメージを3倍にするが、行動後にHPが50%消費される
【ブラッディチャージ】
HPを40%消費して自身の次攻撃におけるダメージを2倍に、クリティカル率を上昇させる
【ネオ・カデンツァ】
味方全体のHPを50%回復し、同時に味方全体の攻撃力、防御力、命中回避率を上昇させる
【剣の舞】
敵単体にクリティカル率の高い超特大ダメージを与える
随時更新の刈り取るさんのデータベース(更新に時間が掛かります)↓
https://syosetu.org/novel/349213/1.html
なんか刈り取るさんにして欲しい事を書き込む活動報告↓
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=315528&uid=276197